本年1月4日から10万円を超える現金振込は、ATMでは出来なくなり原則(註)として運転免許証などの本人
確認書類の提示をし、窓口での振込となった。 窓口の効率性追求、振込手数料及び人件費削減などのため
ATM振込を推進してきた金融機関ではあるが逆行することになった感がある。
これは、「振り込め詐欺」予防のためと思っている人が多いかも知れない。 実際には、OECD(経済開発協力
機構)内に事務局を置く、マネー・ローンダリング(資金洗浄)及びテロ資金供与に関する国際的な対策と協力の
推進を目的に召集された国際的枠組みであるFATF
(Financial Action Task Force on Money Laundering:金融
活動作業部会)
策定による特別勧告実施の一環としての送金時の本人確認の強化によるものであり、これを受け
金融庁では本人確認法施行令の改正をし、現金振込において従来の200万円から10万円までと大幅に引き下げ
られた。
理論的には10万円ずつ分けて振込めば現金でもATMで可能だが、手数料もその都度かかり、なおかつ、時間
もかかるし煩わしい。 それ以上に「資金洗浄」だと疑われたり、後ろめたさを感じる精神的ストレスの負担の方が
大きい。
キャッシュカードでの10万円超の振込みは従来通りATMでも可能であるが、そのキャッシュカードも偽造、不正
利用、紛失などのリスクが高まってきている。 インターネットバンキングの振込みは便利であるが、リスクもある
意味で大きく、また高齢者などにはまだまだ抵抗感を持っている人も多いし、実際、利用者も少ない。 現金その
ものを持たずマネーが数字に集約されペーパーレス化が進めば、個人情報などの本人確認がより厳格化される
とともに、何より金銭感覚が麻痺していくようである。
今や、現金振込に現されるように全国津々浦々、一般庶民にも身近に関わる行為となったテロ対策であるが、
今後、誰が、いつ、どこで、誰(どこ)に、いくら振込んだかが記録されFATFの監視の対象になる。 「誰が」、
「誰に」の個人情報は安全・安心と引き換えに国境を越えて収集されていく。 高度情報社会のグローバル化は
益々加速し、私たちの個人情報も知らず知らずのうちに蓄積され、その膨大な情報量の中においては、個々人の
権利としての「自己情報コントロール権」など埋没しかねない。
註:国税や地方税の納付の場合は「本人確認は必要ない」という例外の対象となっている。
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