新潟県中越地震から2年が経過。
復旧活動も着々と進み、復興への段階に入っている。 しかし、道路や建物
などハードは建て直せばいいが、尊い生命は二度と戻っては来ない。 また、人の心の奥深くに刻まれた傷は容易
には癒されない。
災害に限らず事故、伝染病など有事に備えての要援護者の名簿作りは欠かせない。 ところが、その名簿作りが、
要援護者の自主申告制が基本なので個人情報保護やプライバシー保護を盾になかなか完備されないでいる。
リストが行政機関のみならずNPO、ボランティアや民間機関にも渡るため提供する側が慎重になり過ぎる所謂、
「過剰反応」がその要因のひとつにある。 確かに、個人情報を悪用しての犯罪が後を絶たず、特に地方の高齢者
や障害者などの一般に社会的弱者をターゲットにする事件が多発しているのは事実である。
個人情報保護法が全面施行されてから、十分な理解がなされないまま、「保護」のみを強調した過剰な反応が
世上蔓延し、緊急時に混乱を生じたケースも少なからずあった。
危機管理の観点からも、要援護者名簿の整備は
今や喫緊事であることは待たない。
ただし、その取扱いを含め、十分な管理体制の構築が不可欠であると同時に、
個人情報を提供する側も法の主旨を理解しておく必要がある。 同法は、個人を規制対象としているのではなく、
取扱う事業者の適正な利用と保護のバランスをルール化したものであることを改めて強調したい。
一方、町、村などの比較的小規模な行政単位の地方においては、住民は何処に誰が、どのように暮らしている
かは、お互いわかっている場合が多く、改まって名簿を作る必要性に対して希薄である「過剰反応」とは反対の
「過小反応」ともいうべき一面も見られる。 さらに、緊密な共同体での慣習から個人情報の漏洩の危険性に対して
無頓着であり、疑うこともなく求められるがままに、利用目的も提供先も確かめずに安易に自己の個人情報を提供
してしまう場合も多い。
個人情報をプライバシーに係わるような保護すべき情報と基本情報を峻別し、ますます高度化する情報社会に
逆行する誤った「保護」のみを強調する個人情報保護であってはならない。
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