プライバシーコンサルタント  山田詩乃武のコラム 

 

 過 剰 反 応

                                                              2005.11.23

 
 

    個人情報保護法が四月に全面施行されて半年以上が経過した。そもそもこの法律は個人を規制するもの

  ではなく、適用される対象者は個人情報を取り扱う事業者であり、事業者に対してその適正な取り扱いを義務

  付けているものである。巷間、理解不足やマスコミ報道等によるネガティブ情報に誘引されているのか、個人

  情報の取り扱いに関して戸惑いと共に過剰とも思える反応を示す事業者も少なからず見受けられる。 例えば

  運動会など学校行事における写真を「出さない」、入院患者への知人のお見舞いが受付で「拒否される」など

  日常生活に支障をきたす場合である。この場合、取扱事業者である学校や病院は、違反かどうかすぐに判断

  がつかないと、安全策のひとつとして「出さない」選択肢を安易に選んでいるケースが多いようである。 このこ

  とは、漏洩事故を起こせば違反者には損害賠償請求や最悪の場合、刑事罰が課されるという情報だけが先行

  し、それにより事業者が恐怖感を募らせているのかも知れない。

    法の第一条には「・・・、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と

  明記されている。 有用性とは、換言すれば個人情報が今後ますます地球規模的に進展する情報社会では必

  要不可欠であることを意味し、それ故に、同法は《保護》と同時に《流通》も促進するために成立した法でもある。

    事業者が過剰に反応するのは、きちんと法を理解し、義務付けられている保護体制を構築していないからで

  はないだろうか。事業者の中には、義務だからしかたなく構築するという消極的姿勢の者も少なくないようである。

  一方、個人情報保護は社会的責任の一環であり、顧客重視の観点からも積極的に体制構築に取り組んでいる

  者もいる。両者の差は明白であり、後者は体制構築を整え、従業者に対しての教育も成されているから、万が一

  漏洩事故が起きたとしても、慌てずに対応が可能である。つまり、事業者は法に則り保護体制を構築し、個人情

  報の取り扱い運用手順などが組織内に浸透していれば、過剰な反応を示すことはないはずである。

    翻って、私たちは社会生活を営むうえで、今後も必要ならば氏名や住所などの基本情報は勿論のこと、機微

  な情報も提供せざるを得ない場合もある。これらの自己情報を提供する情報主体である個人も個人情報の保護

  と流通のバランスを認識し、提供先の保護体制が万全かどうかを見極め、自己の責任の中で判断する知識も持

  ち合わせる必要を要求されるのが高度情報社会であることを理解すべきであろう。

 

 
     
 

 * 掲載コラム一覧 *

 
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      ・ 過剰反応 2005.11.23  
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      ・ 住民基本台帳法改正のきっかけ 2005.10.21  
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