プライバシーコンサルタント  山田詩乃武のコラム 

 

 安 全 と 監 視 社 会

                                                              2005.11.15

 
 

    政府は、「テロ対策基本法」制定に向け来年の通常国会に提出する考えをまとめた。この法案は、テロ対

  策として情報収集、入国審査、テロ使用物質管理、重要施設警備など関係機関や国民の責務として規定し

  ている。米国は、911テロ以降「愛国者法」の制定や「国土安全保障省」の創設など、過剰反応といえるほ

  ど躍起になってテロ対策に取り組んでいる。入国審査においても、米国国土安全保障省は日本に対して協

  力要請を促したばかりである。国家安全保障で協力関係を締結している日本も、これに呼応するように米国

  並の監視社会を招来することになるであろう。安全保障という大義のもと、街のいたるところに監視カメラが設

  置され、各種行政機関と民間データベース会社は情報の共有をし、氏名、住所、性別などの基本情報はもち

  ろんのこと、家族構成、交友関係、閲覧したウェブページ、通話、趣味、嗜好、政治信条さらには、いつ・どこ

  で・何を・どのように買ったかなど些細な情報さえも記録されファイリングされていく。当局は、これらのデータ

  ベースをプロファイリングすることにより危険人物を割り出していく。

     権力が個人データを掌握すれば個人情報保護法にいう「本人の開示請求」など国土安全保障の前では何の

   役にも立たない。実際、米国ではこれが現実である。ジョージ・オーウェルが描いた近未来小説「1984年」の監

   視社会における絶対的独裁者であるビッグ・ブラザーとは次元が異なるものの、個人のプライバシーが存在しな

   くなる点においては同じである。「あなたの身の安全のためには、やむを得ません」といわれ、選択の余地さえ

   なく、自らのプライバシーを他者にゆだねてしまう。日本国憲法13条の「人格権の尊重」すら脅かされつつある

   社会の入口に現代人は一歩、足を踏み入れているのかも知れない

 

 
     
 

 * 掲載コラム一覧 *

 
      ・ ダイレクトメール(DM)発送の制限 2008.4.24  
      ・ 個人情報(Personal Identifiable Information)とプライバシー(Privacy) 2007.4.5  
      ・ 日興コーディアル不正会計事件は内部告発によるものか!? 2007.3.1  
      ・ 改正男女雇用機会均等法における個人情報 2007.2.20  
      ・ 10万円超の現金振込における本人確認 2007.1.4  
      ・ 佐渡市個人情報保護条例の改正について 2006.12.1  
      ・ 住民基本台帳法の一部変更 2006.11.16  
      ・ 危機管理における個人情報 2006.10.29  
      ・ 地方の高齢者を狙う悪徳詐欺商法 2006.09.21  
      ・ 迷惑メール 2006.05.15  
      ・ 容疑者のプライバシー 2006.04.27  
      ・ 業務改善命令 2006.04.26  
      ・ 公益通報と内部告発 2006.03.25  
      ・ ファイル交換ソフト「ウィニー(Winny) 2006.03.10  
      ・ 人間は過ちを犯しうる存在 2006.02.15  
      ・ 個人情報保護法に係わる新法制定及び法改正の動向 2005.12.09  
      ・ 過剰反応 2005.11.23  
      ・ 安全と監視社会 2005.11.15  
      ・ No Place To Hide 2005.10.25  
      ・ 住民基本台帳法改正のきっかけ      2005.10.21  
      ・ 調達も地球規模的に      2005.10.07  
      ・ 自己情報の積極的開示判断      2005.08.17    

 

     

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