9月に発売された「プロファイリング・ビジネス」は、原題が「No
Place To Hide(隠れる場所はどこにもない)」
である。米国の個人情報産業は、マーケティングを中心とした企業を主たる顧客としていたが、2001年の同時
多発テロを境に国家安全保障の大義のもと、政府が最大の顧客に取って代わった。彼らが保有している個人
情報は、その数のみならず内容も微に入り細に入り、そこにはプライバシーの欠片もない。
米国は1890年に
The
right to be let alone. ( ひとりにしておいてもらう権利)としてプライバシー権を確立し、1974年にはプライ
バシー法も成立している。米国人は、そもそも人種や民族の多様国家として、個人の権利としてのプライバシ
ー
に対しては世界でも敏感であるはずが、こと安全保障のためにはすすんで自らの個人情報を提供するのである。
今や、個人情報産業はビッグ・ビジネスとなり、その蓄積量は日々増殖し、もはや後戻りすることはない。
個人情報が、地球規模的にファイリングされ、個人は丸裸にされていく。自らが預かり知らぬところで、もうひと
つの自分がデジタル世界に存在することになる。情報化社会が進展すればするほど、利便性の裏には、負の
側面も付加されていく。個人情報の保護は、現代人が真剣に考えなければならない重要な課題だと考えさせ
られた一冊でした。
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