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ウィ ークリー八方台

 (このコーナーは藤田よしおをはじめプラスワンのメンバーが日々の出来事や感想をエッセイ風にまとめたものを毎週、テーマを変えて連載します。)

  「私とバリアフリー」 (2003-9-20)  
 

 バリアフリーは1960年代に朝鮮戦争の際の傷痍軍人の社会復帰のために、アメリカで最初に生まれた考えである。日本では80年代に取り入れられ、現在ではハートビル法(高齢者、身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律)や交通バリアフリー法などに生かされている。
1995年の「障害者白書」は、物理的バリア、制度的バリア、意識のバリア、そして文化・情報のバリアの4つが課題であると指摘している。
 このうち私のような視覚障害者の場合、日常的に感じるのは物理的バリアとしての「移動」のバリアと「情報」のバリアである。前者は文字どおり外出や家庭内での移動であり、これに対する、いわゆるバリアフリー策として白杖やガイドヘルパーなどによる誘導、私のように盲導犬による歩行などの方法があり、更に点字誘導ブロックや音響信号機の存在があげられる。また後者に対するバリアフリー策にはボランティアによる朗読や、最近のように音声パソコンを使用した新聞や本、メール読みなどの方法がある。広い意味では点字などもバリアフリーの仲間とも言えるだろう。
 私はこれらのバリアの他に「認識」のバリアを挙げている。色の識別や他人の顔の見分けなどにも苦労しているからだ。 これらに対しては例えば電話のダイヤル「5」にある点字、シャンプーのボディー側面のデコボコ。などの工夫がなされている。
 ところで私が自宅でやっているバリアフリー対策は、何と言っても整理整頓である。家の中では置いておく場所をキチンと決め、使ったら必ず元の場所に戻しておく。
使いたい時には黙っていてもその近辺に手を伸ばせば間違いなく取れる。逆に普段何も無い所には断りのないとき以外は何も置かない。だから私は家の中ではまるで見えているかのように動き回っていて、初めて我が家を訪れる人を驚かせている。これは家人にも協力してもらっているから、家の中は整理が行き届いていて一見きれいに見えるから一石二鳥だ。
 先日、私の家に市内S中学校の生徒数人が視覚障害者の生活について調べに来た。その後、子供たちから点字の礼状をもらったが、その中に「藤田さんの家は階段とかもバリアフリーが無かったので驚きました。」と書かれてあった。子供たちにとってバリアフリーとは段差の無いことだと思っているらしく、読みながら思わず苦笑いした。
 バリアフリーといっても障害の種別によっては利害がまるで相反する場合も多い。
例えば歩道の段差。肢体障害者の車椅子やお年寄りにとっては段差はできるだけ小さいか、あるいは全く無いにこしたことはない。しかし視覚障害者にとって一定の段差は境界を知る唯一の手段だ。まったく段差の無い歩道では知らないうちに車道に飛び出してしまうことさえある。従ってある程度の段差は視覚障害者にとっては逆にバリアフリーなのである。
 また聴覚障害者と視覚障害者とではコミュニケーションの手段がまったく異なり、双方の間では手話通訳を介さない限り会話が成立しない程だ。当然、バリアフリーについても対応はまったく異なってくる。一方は視覚で、またもう一方は聴覚でバリアを補っている。
 先日、常任委員会で静岡市のある保健福祉センターを視察した。高齢者福祉から児童福祉、障害者福祉や保健施設などが入った総合福祉センターだ。きわめて機能的で利用率も高いという。この施設に音声誘導装置が設備され、手に持ったリモコンスイッチを押すと目的地を案内してくれる。そう広くはない館内に音声が響いていた。しかし使ってみて便利とは思ったが果たしてこの館内で必要なのだろうかと首をかしげた。バリアフリーの目的は人と人とのふれあいであり、「心のバリアフリー」こそ、
私たちが目指すバリアフリーの原点だろう。

(03年10月18日  ふう)

 
 

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