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ウェークリー八方台

 (このコーナーは藤田よしおをはじめプラスワンのメンバーが日々の出来事や感想をエッセイ風にまとめたものを毎週、テーマを変えて連載します。)

  「映画『折り梅』と音声アシスト(副音声)」 (2003-1-22)  
 

 昨日の日曜日、長岡リリックホールで上映された映画「折り梅」を観に行った。
映画のストーリーは、家に同居する事になった夫の母親が、次第にアルツハイマー型痴呆症に陥り、一時家庭の中は混乱し、様々な出来事を経験するが、最後には病気をありのままに受け入れることで次第に家族が力を合わせて危機を乗り越えていき、その事がきっかけで家族がひとつにまとまってゆくという、実話を元にしたドラマだ。
 痴呆症を指して「次第に忘れてゆくことの恐怖」と言う表現や「自分が変わらなければ誰も変える事はできない。」と言う言葉が心に残る。
 この上映会は「けやきの会」という重度の知的障害の子供をもつ父親を中心に結成された会が主催したもので、自ら運営する施設の運転資金の一部を作るために年一回実施しているもの。
 会員の意見で、昨年実施した副音声付き映画「盲導犬ハッピー」に引き続き視覚障害者向けの音声アシスト(副音声)を付けることになった。
 当然の事ながら、私を含め視覚障害者は「見る」というハンディから、映画や演劇に対してはつい尻込みしてしまう。しかし見えなくなった者にとって「見たい」という欲求は人一倍強いように思う。
 今年度予算でリリックホールに「アシストフォン」という副音声装置が導入された。
別室でボランティアのナレーターがモニターを見ながら台本を読み、視覚障害者は映画を観ながら胸にぶら下げた小型の受信機で赤外線電波を受信し、ヘッドフォンでその音声を聴取する。他の観客には一切影響を与えない形で伴に映画を楽しむことができるシステムだ。
 副音声はセリフ以外の映画の情景をできるだけ簡略に説明し、視覚障害者は頭の中で風景を描きながらストーリーを追う。
 最後のシーンで痴呆の義母と嫁が1枚のハンカチをキャッチボールしながら互いに流れる涙を拭き合うシーンや徘徊する祖母をあわてて自転車で探し回る光景、梅園の風景、夕日の木曽川などのシーンが、まるで見えているかのように見て取れた。私自身も何回もハンカチで涙を拭いながら、久しぶりに感動の1時間50分を過ごすことができた。
 今回の映画には字幕スーパーは付いていたのだが、副音声は付いていない。市民映画館を作る会のNさんや音声訳の会のSさんやMさん、それに私も含め7人のスタッフで実行委員会を組織し、手作りの副音声を作ることになった。
しかし長岡では初めての試みで全く経験も知識も無い。手探り状態の中で、けやきの会の会員で床屋さんを営むKさんが、仕事の傍ら、徹夜をしながら2週間近くかかって副音声の台本を書いてくれた。素晴らしい台本だった。語り過ぎもせず不足することもなく、自然に映画の中に入り込むことができた。
 映画を見ながら手で流れる涙を何度も拭いた。映画の感動もさることながら、他の大勢の観客と同じ空間で共に映画を観ているという、夢のような時間を過ごしている喜びと、そのために徹夜で台本を書いてくれ、また見えない所で私達のために必死に台本を読んでくれているスタッフの存在が、映画の感動と重なって涙となったに違いない。

(03年1月20日  ふう)

 
 

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