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私製本「0歳教育」

【私製本「0歳教育」の概要】 【躾・その考え方と親の責務 】
【胎児教育・その1     】 【幼児の能力を育てる・その1】
【胎児教育・その2     】 【幼児の能力を育てる・その2】
【誕生と乳児・その1    】 【幼児の能力を育てる・その3】
【誕生と乳児・その2    】 【幼児の能力を育てる・その4】
【0歳児の年間計画    】 【幼児の能力を育てる・その5】



誕生と乳児・その2

誕生と乳児・その2
「親の愛情とは、わが子のしあわせを願って、何かを、してやること」


誕生と乳児・その2(昭和63年4月)

 「誕生直後の親子の在り方の中に、親子の絆づくりの大切なものがある」ということで、前回では、誕生直後の赤ちゃんとお母さんについてお話いたしました。

 赤ちゃんが生まれるまでは、第1にお母さんのお腹の中という安全な場所で、第2にあらゆるエネルギーを与えられ更に、第3に妊娠5ヶ月目あたりから自分の大脳の発達に即して、お母さんからあらゆる情報を提供してもらって自分のいろいろの能力の基礎を大脳にインプットするという3つの環境を与えられて成長してきたわけであります。

 お母さんが経験するお産という極めて大変な過程は、赤ちゃんにとっても極めて大変な過程であるわけであります。

 誕生直後というのは、お腹の中のとても安全な場所から、それこそ未知の、初めての世界での生活が始まるわけでありますから、その不安というものは大変であり、「この世に生まれてもお母さんのお腹の中と同じように安心して生活できるんですよ」という環境を誕生直後つくりだしてやることが、一番大切なことになるわけでございます。

 今月は赤ちゃんが生まれた時の望ましい働きかけについてお話したいと思います。

 この前お話しましたように、人以外のあらゆる動物は母親がひとりでお産をし、その子供をいとしんで育てあげるというその姿を基本において、お話申しあげます。勿論人間の場合助産婦さんなり、その道の慣れた方に一緒にいてもらってよいわけでございます。

[誕生直後の親子]

・まず初めに、赤ちゃんの頭が現れ、誕生の長い旅は完了します。

・赤ちゃんは呼吸をし、初めて肺に空気がはいった驚きの泣き声をあげます。

・母親は赤ちゃんの脇の下に指をすベリこませ、体が出てくるのをたすけてあげます。

・母親は急な動きをさけ、静かに赤ちゃんをとりあげ、ゆっくり上体をそらし、腹を下にした赤ちゃんを優しく自分の胸に抱きあげます。赤ちゃんは今出てきたばかりの腹の上にぴったり寄り添います。子宮の世界を離れ、新しい世界にはいった赤ちゃんは今までと違った形だが、ここで母親の温かい肌の世界に戻れるわけであります。

・それから両手で赤ちゃんをゆすってあやし、言葉がけをし、メロディーを口づさみ、そのまま子宮の中と同じようにしてあげます。2〜3分のうちに呼吸は安定します。赤ちゃんは血液と酸素を母親からもらっているので、急ぐ必要は全くありません。赤ちゃんの心臓は、まだ完全に肺に血液を送れるようになっていません。この移行に数分かかりますが、赤ちゃんに備わった機能は間違いなく働くようになります。酸素の供給元が二つあることにより、移行は静かで緩やかにおこなわれます。

・赤ちゃんは母親のお腹の上にのせられて、次第にリラックスしはじめます。心臓の音に気づき、聞き覚えのあるハミングや歌や言葉をききます。胎内との類似点がわかってきますとリラックスできます。

・赤ちゃんは注意深く、ためらいがちに息をし、馴染みのなさに少し泣いたりします。

・数分して、呼吸は一息ずつ楽になり、規則的になってきます。

・赤ちゃんが母親の乳首に触れることがひきがねになって後産がはじまります。

・胎盤を排出する収縮が最後に残っていた血液と酸素を赤ちやんに送るのを助けます。

・この時点で他のものは部屋をでます。

人生でもっとも大切な、出産後の一時間、この間に、不思議で測りしれない神秘的な形で、絆が確立されていきます。

・赤ちゃんの腕が動きます。手をのばし、足がのびます。除々に全身が動き始めます。赤ちゃんと母親の誕生直後の相互作用が始まるわけであります。

・母親は、優しく緩やかにマッサージをはじめます。先ず背中から、始めは、緩やかなリズムで軽く愛撫し、やがて全身を剌激してあげます。そして、厚い胎脂を皮膚にすりこむようにします。この絶え間ない剌激は、消化、排泄、感覚プロセス、網様体の形成などの数多くの身体プロセスを活性化させます。これはとても大切であります。

・赤ちゃんは誕生に備えて、分娩ストレスで剌激ホルモンが満たされ、脳の中には大量の新しい神経連結がつくり出されていますが、母親の愛撫が、そのストレスを静め、ホルモンの生産量を引き下げて、心身の隅々まで活性化の基礎を与えていきます。赤ちゃんは、既知の世界から未知の世界へと移っていくことが、楽しいことだということを、こうした過程で身につけていきます。

・母親は赤ちゃんにしてあげることが多いので、胎盤の排出に注意を払う必要はありません。へその緒を焦って切らなくていいのです。血管は自然に役目を終え、とじられているからであります。

・母親は、自分で用意したたらいの湯に、赤ちゃんを入れてあげます。石鹸は使いません。産湯は赤ちやんに、出てきたばかりの子宮と似た環境を与えることになります。

・赤ちゃんは子宮の世界と同じような環境を与えられ、子宮の世界と新しい世界との適合をし、ストレス・リラックスの周期が完成されていきます。赤ちゃんは感覚的な負担に苦しむことなく、ショック症状の中に置かれることもありません。

・赤ちゃんは、母親の手と、聞きなれた声に支えられて、温かい湯に浮かびます。

・ここで、赤ちゃんは、本当に目を醒まします。液状環境は馴染みがあり、大脳システムは新しい環境に素早く転換していきます。赤ちゃんは目を見開き、見ることに専念します。「ここはどこなの?」「どこにいるの?」といった精力的な探求による知識の吸収が始まります。

・全感覚にわたつて目醒めた赤ちゃんは、ゆったりと産湯につかります。母親はそれまで薄暗くしてあった部屋のあかりを少し明るくしてあげてもいいでしょう。カーテンを少し開けてやってもいいでしょう。赤ちゃんは明るい方に顔をむけ、長いこと眺めるでしょう。蛍光燈は感覚の負担になるので初めは使いません。湯の中で、母親の優しいマッサージを受けながら、赤ちゃんは絶えず動きます。赤ちゃんが少しでも不快な素振りをみせたら、母親はその体をふき、自分の体に戻します。

・赤ちゃんに乳首を含ませてもいいでしょう。授乳によって母親の腹部の筋肉がしまっていきます。この時点での母乳には、絆づくりの行為を促し、出産ストレスを散らせる役目をするホルモンが含まれているようです。

・母親は、赤ちゃんの体を自分の体に密着させ、目と目を合わせ、微笑み、歌い、話しかけます。自分の祈りや願いを語り、自分の楽しいことを語り、一生懸命育児にかかわることや育児記録の計画を語り、返事を待ち、あやし、愛を限りなく伝えてあげます。

・それが夜明けなら、窓を開けて小鳥の嘲りを聞かせてあげてもいいでしよう。

・二人は寄り添い、自然の設計通りに温め合い、愛しむようにします。

・母親は、自分の鼓動や声以外の音を聞かせるために、静かな音楽をかけてやってもいいでしょう。

・母親は、ゆっくりと、一度に1つずつ、赤ちゃんにとっての初めての世界の構成要素を、生まれる前にしていたように赤ちゃんに紹介していきます。そのために、赤ちゃんの諸感覚は、胎内にいたと同じように、たやすく軽やかに活動を始めます。赤ちゃんの中脳にある網様体も完全に活性化し、誕生直後の、固有の独特の成長プロセス、成長過程は、すべて予定通り機能を開始いたします。

このような過程を通していくと、数時間のうちに、赤ちゃんは笑うようになります。誕生直後の緊張・興奮が喜びに変わってくるからです。

 赤ちゃんは自分が何処にいるのかわかります。即ち、安全な場所である母親の胎内と同じ環境にいることを知るからであり、それは喜びであることを知るからであります。

 赤ちゃんの新しい感覚器官系統への刺激は、すべて順序よく、静かに穏かに、しなやかに優しく、絶え間なく行なわれてきますと、赤ちゃんは人生最大の節づくりを体験し、既知から未知への最も大きな移行を見事に果たすことができるわけであります。


・母親は赤ちゃんと常に一緒にいることがいいのであります。

 母親は、赤ちゃんを帯で胸にだき、いわばカンガルー方式のカンガルー服を使い、起居寝食、終日行動を共にするようにします。このスタイルなら常に赤ちゃんと目と目を合わすことや言葉がけができ、触れ合いは持続され、適温が保たれます。母親が何をしていようと、赤ちゃんは好きなときに必要なだけ眠り、1日に50〜60回、乳房をしゃぶることができます。

 母親は赤ちゃんが眠っていても気にしません。赤ちゃんは静寂や完全な沈黙より、胎内にいた時と同じように動きや騒音のほうがずっと慣れており、母親が仕事で動き廻っていても簡単によく眠ります。

 この子育ては驚くほど少ない睡眠量でたり、そして充分なのであります。このカンガルー式子育ては、いろいろの学問や研究の結果での具体的方法の最上なものであり、赤ちゃんの情緒とか知能とか絆とか、完全な形で発育し、素晴らしい成長がみられる方法だといわれています。

 もう少し時間を欲しいのですが、時間になりました。

 次回は「0歳児の年間計画」についてお話いたします。

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