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ドッツの教え方 3
常識を打ち破る画期的な方法


【ドッツの教え方 01】 【ドッツの教え方 02】
【ドッツの教え方 03】 【ドッツの教え方 04】
【ドッツの教え方 05】 【ドッツの教え方 06】
【ドッツの教え方 07】 【ドッツの教え方 08】
【ドッツの教え方 09】 【ドッツの教え方 10】
【ドッツの教え方 11】 【ドッツの教え方 12】

     〔 内容 〕             〔 ドッツの教え方 No 〕

第一章  赤ちゃんは宇宙人                     01
    一 幼児の頭脳は幼稚ではない                01
    二 六歳までと六歳すぎの子供の頭脳は全く違う        01
    三 バール博土とストーナー夫人の証言            01
    四 赤ちゃんの頭脳に働くコンピューター           02
    五 算数のコンピューター能力を示す子供達の例        02
    六 ドッツに成功した田中和生先生の手紙           03
第二章  幼児の頭の働き                      03
    一 人間の頭はコンピューター                03
    二 コンピューター能力は〇歳に近いほど高い         03
    三 三種類の記憶                      03
    四 神経回路の開き方                    03
    五 大切な神経回路の髄鞘化                 04
    六 子供の創造性を高めるのに大切なシナプスづくり      04
    七 学ぶことが楽しい頭脳                  04
    八 幼児の頭は幼稚ではない                 04
    九 無理に学習させてはだめ                 04
    十 学ぶのが楽しい子供に育てると十歳前後で大学へ行ける   04
第三章  マジカルな幼児の頭脳                   05
    一 幼児にはマジカルな頭脳の働きがある           05
    二 絶対音感の能力                     05
    三 幼児の頭脳に働く直感像                 05
    四 幼児の頭脳に働くコンピューター             05
    五 幼児は主に潜在脳を働かせている             05
    六 幼児の脳波はアルファー波                06
    七 アルファー脳波が潜在意識を働かせる鍵          06
    八 六歳で意識の障壁と音の壁                06
    十 実例に学ぶ                       06
    十一 私の子供達での実験                  06
第四章  ドッツカードて幼児に算数を教えよう            07
    一 ドッツカードの作り方                  07
    二 トッツカードを子供に見せる法              07
    三 ドッツカードで四則計算を教えるカリキュラム       07
    四 ドッツカリキュラム一覧表                08〜09
第五章  ドッツによる算数の効果的な教え方              10
    一 絵カードを作って見せることから             10
    二 乗り物カードを見せて成功                10
    三 アルファー脳波を活用すること              10
    四 気分をリラックスすること                10
    五 ドッツが楽しいものであることを、子供にわからせること  10
    六 子供の能力を信ずること                 10
    七 変化が大切                       11
    八 成功する月齢                      11
    九 親の態度にかかっている                 11
    十 北海道帯広市 森野さんからの便り            12

【 第一章 赤ちゃんは宇宙人 】

【 六 ドッツに成功した田中和生先生の手紙 】

 この章の最後は直接アメリカのドーマン博士のもとて学び、わが子にドッツカードで算数を教えることに成功した神戸の田中和生先生からの手紙を紹介します。・・・私の最も尊敬する七田先生から、同じように尊敬しているドーマン博士のドッツカードの使い方についての原稿の依頼をうけ、喜びと同時にすこし戸惑いを感じました。と申しますのは、私がやったのは正統なドーマン博士のドッツ方式と多少異なるからです。何しろ子どもは一歳十一ヶ月、少し始めるのが遅いのではないかと思われました。(それは、やっていくうちにそうではないことがわかってきましたが)それに私は世界中で一番程度の悪い弟子であると思います。なにしろ、フィラデルフィアのドーマン博士のもとには世界中の偉い学者が集まってこられます。なかにはノーべル賞クラスの学者が何人かいらっしゃるわけですから・・・。それに食事の時は博士とテーブルをはさんて真正面です。私は七田先生とちがって肉食なので、生野莱が全然食べられません。それでサラダに手をつけないので、博士に叱られながら、食べておりました。七田先生は、完全な菜食主義ですが、先生からはまだ叱られたことはありません。先生から叱られるのは、これからかなと思いつつ本題に入ります。
 始めに結論を申し上げておきますが、ノウハウだけではありません。もちろんノウハウは大切です。そのためのドーマン・ドッツ方式ですから。大切なのは、教材、順序それにタイミングは言うまでもありません。実施する場所、時刻、回数それらがうまくドーマン理論にかみ合わされているかということです。
 しかし、ここで一番大切なことは、これ抜きでは必ず失敗するということは、(殆どといっていいほど失敗したケースにあてはまる原因は)子供に対する態度です。特に子供が関心を示さないように見受けられるとき、教えている方がカッカしてしまうことです。それに覚えているかどうか確かめるためのテストをしたがること、それから、学問を教えているような錯覚に陥ること、これは失格です。何も教えないほうがよいかもしれません。本当ですよ!あくまでのびのびと、おおらかに、楽しくにこやかに、こんな素晴らしいこ褒美は他にないという気持ちでやることが肝心なことです。これはなにもドッツ方式に限ったことではありません。幼児教育全般に通ずることです。これが出来たら九十九パーセント成功したも同然です。
 まず、ドッツカードを作ることから始めます。白いポスターケント(画用紙)縦横が二十八センチの正方形のものに、赤い丸 (直径が約二センチ) を描きます。赤い紙を丸く切り抜いて貼ってもいいし、印鑑のように赤い丸を押して作ってもいいのです。最初は1のカードですから、赤い丸を一つだけ描きます。出来上がったら、子供に見えるようにし、嬉しそうにニコッとして「イチッ!」とはっきりした声で叫びます。続けて2から10のカードを作ります。一つ一つ出来上がったら1のカードの時のように「ニッ!」「サン!」・・・「ジュウ!」と言っていくのです。ニコニコすることを忘れずに。
 全部出来上がったら、1から順序よく揃えて、「今から数のおけいこを始めます。用意はいいですね」ニコニコしながら、そして、あくまでも礼儀正しく「イチ、ニ、サン、・・・ジュウ」一枚が一秒くらい、はっきりと聞こえるように、リズミカルに一気に終わるようにします。これで一回分のトレーニングは終わりです。「これは1です。これは2です」「これは〜です」というようなことは絶対に言ってはいけません。終わったらオーバーなくらいにほめてあげます。
 一日に三回から六回位がよいと思います。子供の機嫌がよいときに行ないます。調子の悪いときは絶対にやらないこと。簡単に失敗します。これは強制的にやるものでもないし、何かの罰でもありません。数のトレーニングはとっても素晴らしいことで、むしろご褒美にやってあげたいのです。
 一から十までのトレーニングは十五日から二十日かかると思います。私の場合は、調子の悪い日が何日かあったので、ほぼ一ケ月かかりました。一回しかやらなかった日が合計十日くらいあったと思います。言い忘れましたが、テストは絶対にやってはダメです。失敗します。人情として自分の子供が一体どれくらい出来るのか、わかっているのか、全くわかっていないのかイライラすることが必ずあります。本当にしょっちゅうそんな気持ちがおこってきます。けれども子供を信じて、おおらかな気持ちになることです。二〜三ケ月もしないうちに効果は自然にわかってきます。
 次に2から11までを行ないます。1から10までのカードしかありませんから、11のカードを作ります。カードが出来上がったら、はっきり子供が見えるようにして「ジュウイチ」と言います。にこにこを忘れずに。そして2から11のカードを次々見せながら「ニ、サン、シ、・・・ジュウイチ」までを行ないます。やはり一日三回から六回くらい、一回が約一分、あくまで礼儀正しくします。その次は3から13、4から13、5から14というように一つずつスライドしていきます。毎日一つずつスライドしていくやり方が正式なやり方ですが、私は自信がなかったので同じことを二日から三日くらい続けました。本当は正式な方がよいのかもしれません。(もっと早く教えることができたかもしれません)何しろ、正直なところ自信がありませんでした。博士に叱られるかもしれません。フィラデルフィアでドーマン博士の講義を受けたときにそれを聞くのをすっかり忘れておりました。何しろ博士にお会い出来ただけで嬉しくて嬉しくて毎日ボーッとしておりました。そんなことで一から百まで終わるのか四ヶ月くらいかかりました。子供もよくこんな出来の悪い先生についてきてくれたものです。「子供こそ最良の先生」ですね。

 これも正式な方法ではありませんが、正式には三十まで終わったら、たし算に入るわけです。今迄行なったことと平行しながら、たし算を教えていくのですが、やはり私の自信のなさで、百までが終わってからたし算に入りました。もちろん数字はまだ教えておりません。はじめに「きょうはたし算をおこないます。〇〇ちゃんがとってもおりこうにしているので、たし算をやりましょうね。では礼!」と言ってお互いにおじぎをします。そして、「一たす一は二」といって二のカード、「一たす二は三」といって三のカード、「一たす三は四」といって四のカード、・・・一たす十まで次々と言いながらカードを見せます。一日三回ずつ行ないました。
 たし算が加わってくると時間が多少かかってくるのですが、僅か何分かのことなので一日三回以上は必要です。それに、くり上がりのことは気にしなくても構いません。子供には全然困難なことではないのです。何しろわれわれ大人より、はるかに程度が高いのです。そのようにして、毎日三回から五回おなじことを繰り返します。「二たす一は三」「二たす二は四」「二たす三は五」と言うようにです。もうここまでくれば毎日少しずつスライドさせていっても構いません。ただし一日分の回数は三回から五回で同じことを繰り返します。
 たし算の答えが五十くらいになってから始めて数字を教えました。子供はすでに一から十まで全部ではありませんが知っておりました。間違って覚えているものもあって、苦になって嫌がり、やりずらかったことを覚えております。このこと(数字は何時から始めるか)は、いずれ早い時期に詳しいデータをとって結論を出さねばなりません。
 そのようなことでいつものトレーニングに数字を加えて、一回分が三分から五分、一日分が合計三十分足らずです。約二ヶ月で一から百までの数字を覚えました。もうここまでくれば、数字カード(ドッツカードの半分位のサイズで黒い太めのマジックインキで数字が正しくきちんと書かれてある)を使って一枚一枚子供に見せながら、はっきりした声で「三たす八は十一」「九たす二たす五は十六」「十二たす六たす三は二十一」など一回一回答えが違った計算、多項式の計算を教えてもかまいません。ただし、一回分のトレーニングは一分から三分までとします。一回分を十分も二十分もかけてはいけません。三歳までの幼児にものを教えるコツは、一分から三分まで、すばやくはっきりと教えることです。子供がちょっと物足りないという顔をする位が適当です。物足らない顔をしたときは「また後でやりましょうね」といってニコニコしながら、お互いに挨拶をして抱き締めてあげましょう。

 ひき算も同じ要領で、始めはドッツカードだけを使って「十ひく一は九」「十ひく二は八」「十ひく三は七」から「十一ひく一は十」「十一ひく二は九」・・・三回目は、「十二ひく一は十一」「十二ひく二は十」というように行ないます。そして「三十ひく一は二十九」「三十ひく二は二十八」くらいになって、数字力 −ドを使ったひき算が加わってきます。ひき算がここまでくれば「五ひく二は三」「十六ひく三は十三」「二十四ひく十八は六」「十六ひく二ひく七は七」というランダムなひき算を行なってもさしつかえありません。
 一回分がドッツカードのたし算、ひき算、数字カードのたし算、ひき算、それぞれ十題ずつですが、カードを取り出すのにもたもたして五分位かかるかもしれませんが、あせらずに、落ち着いて行なうことです。子供はいつも相手の態度、感情を観察し、続み取ってしまいます。何度も繰り返し言いまが、これは楽しくて素晴らしいことなのです。
 かけ算はたし算と同じ要領で、たすというところをかけるにするだけです。わり算はひき算と同じですが、ただわり切れる数だけ行ないます。私の場合は、たし算、ひき算、かけ算、わり算ともに百を越えない範囲でしか行なっていませんのて、それ以上のことはわかりません。
 かけ算、わり算に入ってからも、時間は少しかかりますが、今まで通りたし算、ひき算のトレーニングは続けます。この時期には、+−×÷の記号を使って問題の書いてあるカードを作って使用してもかまいませんし、むしろそうすべきでしょう。
 私の場合、一歳十ヶ月の子供から始めましたので、他のケースは余りわかりませんが、もっと早い時期、満一歳前後位が好ましいと思われます。しかしその場合、それまでの〇歳の時期にいろいろな環境をつくり、接する態度、教具、トレーニングが必要です。七田先生に詳しく教わればよいと思います。一歳十ヶ月から始めて、五ケ月目位にたし算、七ケ月目にひき算、九ケ月目にかけ算、十ケ月目にわり算のぺースで進んできたと思います。一年足らずでしたが、以外とのんびり楽しく行なうことができました。
 ただこの子の場合は、〇歳から文字遊びや知惠遊びのトレーニングを受け、三歳までに漢字、ひらがな、カタカナ、英単語が読め、二歳半位で書くことが出来ました。はさみ、ナイフ、のこぎり、ローラースケート、スケートボードを使いこなすことが出来ましたので、数だけが一寸遅いかな、という程度なので、一概に同じぺースで進んでいくとは限らないと思います。でも、出来るだけ早い時期に行なえば、それだけ成功率は高いと思われます。(一九八一年 八月)

  ドーマン博士のこと

一  ドーマン博士の著書
 アメリカのフィラデルフィア、人聞能力開発研究所長のドーマン博士は、脳障書児の画期的治療法を開発された方として著名です。博士は脳障害児が普通児にも勝る発達を遂げるところから、正常児はどうであろうと脳の開発研究を正常児にまで広げられ、赤ちゃんを知的に育てる方法をいろいろ開発されました。博士はこれまでに幼児の頭脳開発に関する著書を次々に出しておられますが、それらは次のようなものです。
 ドッツ方式による幼児に算数を教える方法を学ぶには、このうちのサイマル出版から出ている「幼児は算数を学びたがっている」を是非、一読されることをおすすめします。

・How To Teach Your Baby To Read 「ドーマン博士の幼児開発法」 講談社
・Teach Your Baby Math      「幼児は算数を学びたがっている」サイマル出版
・What To Do About Your Brain-injured Child 「親こそ最良の医師」サイマル出版
・The Universal Multiplication Of Intelligence
・How To Give Your Baby Encyclopedic Knowledge

二  ドーマン博士の人間能力關発研究所
 ドーマン博士はアメリカのフィラデルフィアで人間能力開発研究所というのを開いておられ、ここで小さな幼児に読み方を教えたり、算数を教えたりする方法を、世界中から集る両親達に講習しておられます。
 もし、本だけでなく、実際に指導を受けたいという希望をお持ちの方は、下記の所に問い合わせを出してごらんになればいいでしょう。
   The Institute For The Achievement Of Human Potencial
   8801 Stenton Ave.,Philadelphia,
   Pennsylvania 19118,U.S.A.

【 第二章 幼児の頭の働き 】

【 一 人間の頭はコンピユーター 】

 人間の頭脳は、原理的にはコンピューターと同じです(ノバート・ウィーナーの人脳コンピューターHBC理論)。この人脳コンピューターが働くには、大別して三つの大変重要な領域があります。その三つが互いにうまく機能しあって、脳の働きを生じます。ところで、いろいろな機能がうまく絡みあって、成果をだしていく仕組みを、システムと言います。では、人脳コンピューター・システムは、どのようになっているのでしょうか。その解明が、この章のねらいです。
 まず人間の頭脳にある三つの重要な領域とは何でしょう。それは脳幹と古い皮質と新しい皮質の三つの領域です。その構造を簡単に説明しますと、脊髄に続いて頭の芯にあたる部分に脳幹があります。その脳幹をとりまいて旧皮質があり、その外側に新しい皮 質があるのです。
 それぞれの領域は、コンピューターとしての機能を分かちあう重要な働きを分担しています。まず、中心の脳幹は、脳のコンピューターとしての機能をまとめる中心部です。ここが言わば心臓部です。次の古い皮質を代表する働きは、記憶装置の部分としての働きです。古い皮質の働きは海馬(ピポカンパス)が代表しています。古い皮質は、記憶の宝庫と覚えて頂いて結構です。次に一番外測の新しい皮質の部分は、大脳新皮質と呼ばれる部分で、左脳と右脳に分かれ、左脳は論理的思考を、右脳は非論理的感性の働きを担当しています。  以上三つの領域が、バランスよく機能しあって、秀れた大脳の働きを生み出しているのです。幼児教育においては、このバランスのとれた発達を考えることが最も重要なことです。
 ところで、この三つの領域の発達には順序性があり、ソ連の心理学者ビゴツキーの言葉を借りて表現しますと、次のようになります。「生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、始め下から上へ、そしてやがて上から下へと発達する。この発達は非可逆的である。生まれた赤ちゃんの頭脳の内部において、下のシステムに支えられながら展開し、分化してきた上のシステムが、やがては下を支配し始め、上下の階層関係を作っていく。そして個体発生では一番遅くできたシステムが、系統発生的、個体発生的に古いシステムを支配し始める。つまり下から上への支配関係から、逆に上から下への体系にかわる」
 ここが大変重要なところです。上からの発達は三歳からはじまり、上(新しい皮質)の発達が進むと下(古い皮質)の発達はおさえられて十分に働くことが望めなくなります。これが脳のシステムの特徴なのです。つまり、高度なコンピューターの働きをする下のシステムに対する働きかけが、三歳になると、二歳時代のようには、うまくいかなくなってくるのです。だからこそ、三歳までの教育が、非常に重要な意味をもってくるのです。あとからでは、秀れた頭脳に作りかえられないという点に、教育の適期の問題があります。

【 二 コンピューター能力は〇歳に近いほど高い 】

 人間の脳の秀れたコンピューター能力は、出産時に近いほど高いのです。その時期に働きかけられるほど、高い能力となって姿を現し、働きかけがないと、急速に消えていきます。
 赤ちゃんはこのコンピューター能力で言葉を覚えていくのであって、頭の出来上がった大人が、単なる記憶で覚えていくのとはまるで違った覚えかたをしていくのです。赤ちゃんはこのコンピューター能力で身の廻りに五カ国語あれば、何の混同も起こすことなく、五カ国語を身につける、という離れ技さえやってのけます。
 コンピューター能力のまだ非常に高い一歳、二歳の頃に、ドッツ方式て算数を教えますと、二歳、三歳の時には、たす・ひく・かける・わるの四則の混合算を瞬時にやってのけるという、算数のコンピューター能力を発揮します。
 真に秀れたコンピューター能力は三歳までですが、六歳まではまだコンピューター能力があり、四歳、五歳から始めても、カレンダーの曜日を瞬時に言い当てたり、六歳で将棋や碁が初段になり、大人をコロコロ負かすような子供が育ちます。
 こうして六歳までに育てられたコンピューター能力が、その子供がそれ以後学習し、能力を発揮する根幹になります。このコンピューター能力は、三歳を過ぎてから習得するのは難しく、上の働き(大脳皮質の働き)がほとんど完成する六歳を過ぎてからではほぼ不可能になってしまいます。

【 三 三種類の記憶 】

 人間の記憶には三種類あります。生まれるとすぐ働き始める生命レベルの記憶と、イメージ記憶、言葉の記憶の三種です。
 生命レベルの記憶は、人間が生まれながらにして持っている脳の神経細胞に、遺伝子として組み込まれている記憶で、種族の記憶といわれるものです。猫が鼠を追いかけ、鶏は泳がない、あひるは泳ぐ、人間は立って歩くなど、種族としての記憶です。赤ちゃんはこの生命レベルの記憶で、生まれるとすぐ母親のおっぱいを探し、吸いつき乳を飲みます。種族の記憶は生命保持に大切な生命レベルの記憶です。
 この記憶は海馬の組織のDNA(デオキシリボ核酸)と呼ばれる記憶分子(遣伝子)の働きで、生まれつき脳細胞に含まれているものです。この記憶分子DNAには「三歳までに見たり聞いたりしたことを、貴重なデータとしてストックせよ」と生まれながらの指示が組み込まれています。人生初期の三歳までに取り入れられたデータは、その人の性格、思考、態度の基本型を作ってしまいます。「三つ子の魂百まで」という諺は、これを良く言い当てています。遺伝子にはその他、大脳の働きによりデータを収集せよ、基本回路のシナプス作りをせよ、という指示が組み込まれているのです。
 記憶を司どる海馬の組織には、DNAのほかにRNA (リボ核酸) という遣伝子を含まない空白の記憶分子があります。(F[ぱるす出版「頭脳の鍛え方」)DNAの司令により、生まれると同時に取り込まれるイメージ記憶が、このRNAの空白部に組み込まれ、データづくりを行なっています。
 イメージ記憶は、言葉によらない直感による記億で、パターン記憶とも呼ばれます。同じことを何度も繰り返すと、それがパターン化され記憶されてしまうのです。犬や猫がもっている記憶は、このレベルまでの記憶で、犬は主人のにこやかな顔色を見て、尾を振って喜んでじゃれついてきたり、棒を持ったけわしい主人の顔を見た時には、過去のイメージが記憶によみがえって、たたかれる前にいち早くしっぽを巻いて逃げ出します。
 この記憶は深く、直感、コンピューター能力と結びついています。こどもの直感力、コンピューター能力を高めるのに、このパターン記憶の訓練は非常に重要です。
 第三の記憶は、言葉による記憶です。この記憶は人間だけのもので、人間が自分の意思で、覚えようとして覚える記憶です。この記憶が盛んになるのは、三歳を過ぎてからで、人間の思考力、技術力と大きく結びついています。
 幼児教育は、以上の三種の記憶の発達にそった働きかけを、行なわなくてはなりません。
 三種の記憶の発達の順序を示しておきます。

   生命レベルの記憶  誕生時に始まる
             受容能力最高・感覚の発達期
   イメージ記憶    生後六ヶ月より
             直感・想像力の発達期
   ことば記憶     三歳より
             思考技術の発達期
【 四 神経回路の開き方 】

 生まれたばかりの赤ちゃんの脳細胞は、まだお互いにつながりがなく、つながりがないからシステムとしての働きがありません。ところが生まれたその時点から、外界の見聞きしたことが刺激となって、個々の神経細胞から芽を出し合い、互いに近くの細胞と結びあって非常に複雑な回路を開いていきます。こうして出来た神経回路(ネットワーク)を流れる電気信号(インパルス)の伝わり方が、頭の良さを決定します。できる子、できない子の差といってよろしいでしょう。そこで問題は、ネットワークがどのように作られていくかを知ることです。
 今、脳の働きの善し悪しは、ネットワーク(神経回路)の差だと言いましたが、中でも基本回路の働きが問題です。特に基本回路は三歳までに出来上がってしまい、それまでに得た知識、体験により、脳幹・海馬・大脳この三つの間に基本回路を開き、それ以後の神経繊維のシナプス作りは、この基本回路を元にして行なわれるので、三歳までに秀れた基本回路作りをしておく必要があるのです。
 この時までに秀れた基本回路を開いておくと、後からできる回路は非常に働きやすくなり、従って知的な面でも、創造的な面でも脳が働きやすくなるのです。
 脳幹・海馬・大脳の働きが、高度にバランスがとれている程、直感力や創造性の高い子どもが育ちます。
 この三つのうち、脳幹、海馬の働きを高度なものに高め得るのは、大脳が働き始める三歳前で、それまでの働きかけにより、脳幹は秀れたコンピューター能力、情報処理能力を身につけ、海馬は秀れた記憶の能力を身につけます。大脳が働き始め、大脳の支配が始まると、抑止力が働き、もはや脳幹、海馬を秀れたものにする働きかけが、殆ど不可能になります。
 さてそこで、その神経回路の開け方です。脳細胞は、赤ちゃんが生まれ、見聞きしたことが刺激となって、脳の神経細胞から神経繊維が伸びて、互いに隣の神経繊維と結びあって連結部をつくり、回路が開けていきます。この神経繊維の結び目、連結部をシナプスといい、新しい回路を複雑に開いていきます。
 こうしてできていく回路に、実は個別回路と一周回路の二つがあるのです。日常の生活体験で開けていくのは個別回路です。生活回路ともいいます。この生活回路からやがて一周回路が誕生し、これが脳幹、海馬を結ぶ一周回路、すなわち基本回路を開いていきます。
 これらの回路はどちらも同じ体験をくり返すほど、回路同士の連結を強め、それ自身伝達のより太い回路に成長し、脳幹、海馬、大脳をバランスよく働かせるほど、一周回路は太くなり、機能のよい基本回路がひらけます。(ぱるす出版「頭脳の鍛え方」)

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