発話どおりの表記〔2〕 方言として 
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表紙
P 1
音韻
P 2
表記(母語)
P 3
表記(方言)
P 4
表記(状況)
P 5
逆綴り
P 6
呪文語幹
P 7
野卑配慮
P 8
語法1
P 9
語法2
P 10
欠落
< 通常表記・語法と異なるものに下線を付記しました >
  ハグリッド   スタン   アーニー   マンダンガス   トンクス   スカビオール   アミカス   ゴイル   ウィンキー
  ルビウス・ハグリッド ( 森の番人、「魔法生物飼育学」の先生 )
   Harry looked up into the fierce, wild shadowy face and saw that the beetle eyes were
  crinkled in a smile.
   ‘Las' time I saw you, you was only a baby,’ said the giant. ‘Yeh look a lot like yer dad, but
  yeh've got yer mum's eyes.’                    ( 第1巻 『賢者の石』 p39 )

   ハリーは恐ろしげな、荒々しい黒い影のような男の顔を見上げ、黄金虫のような目がクシャクシャになって
  笑いかけているのを見つけた。
  「最後におまえさんを見た時にゃ、まだほんの赤ん坊だったなあ。あんた父さんそっくりだ。でも目は母さん
  の目だなあ」 と大男は言った。
  翻訳者はつらいよ  ≪ その1 なまり ≫
  ハリー・ポッターのひとつの魅力は会話にある。読んでいるとまるで声が聞こえてくるようだ。学校で
  子供に読み聞かせると生徒はシーンとしてききほれるとか。家庭では父親と母親がどちらが子供に読み
  聞かせる権利を得るかで争うとか。
  しかし、日本語の翻訳に音の感触まで移しかえるのは至難の技だ。
  一番人気のキャタクター、ハグリッドは、独特のスコットランド風のなまりではなす。この魅力は訳し
  きれない。つらい …       ( 第1巻 翻訳 『賢者の石』 ≪ ふくろう通信 号外 ≫ )
  is = am, are : ⇒ I'se.
  I'se [ aiz ] ( = I is )= I'm [ aim ] = I am の短縮形 ( 時には I will, I shall としても
   使用する ): 一般的な評価では、これは明らかに文法無視による誤りである。しかし、イギリスの
   方言話者の中には、be 動詞 is を総ての人称に使用する者はかなりある。したがって、無学者による
   文法無視と非難されても無理ない表現であるが、この表現は、イギリス方言からの伝播だと推察される
   点がかなり含まれる。また、I's, Ize とも綴る。      ( 『アメリカの文学方言辞典』 )
  yeh [ ji:, j ] = you [ ju:, j ] 〔 代 〕 あなた( 方 ) : 15世紀頃に、主格に使用され
  た ye と、目的格に使用された you の区別がなくなり、you が両方を表すようになった。実際の
   yeh は、you の弱形から生じたもの、また、ye から生じたものと考えることは可能であるが、
  基本的には、19〜20世紀のコックニーから生じたもので、yer からの異形である。つまり、現代の
   you と同一に使用されている。               ( 『アメリカの文学方言辞典』 )
  yer 1 [ jr ] = you [ ju: ], 《弱形》 [ jr ] 〔 代 〕 2人称の主格、目的格 : 一般に俗語では、
  yer [ jr ] = ye [ ji:, j ] である。 ye と you の文法機能は同一 ( ⇒ ye )であり、yer は you
  として使用されている。つまり、yer は、現代の you と同一に使用されている。 ⇒ yer 2
  yer 2 [ jr ] = your [ ju ], 《弱形》 [ jr ] 〔 代 〕 あなた(方)の : イギリス方言では、
   yer = ye となっている。 ye と you の文法機能は同じになっており、you の弱形は
  [ j, jr ]なので、yer を you として使用しても当然である。しかし、属格を表す yer は、
  基本的には your の方言形と考えたい。 your の弱形は [ j, jr ]であるから
   yer [ jr ] が生ずるのは自然である。 ⇒ yer 1
                               ( 『アメリカの文学方言辞典』 )

   The giant chuckled.
   ‘True, I haven't introduced meself. Rubeus Hagrid, Keeper of Keys and Grounds at
  Hogwarts.’                     ( 第1巻 『賢者の石』 p40 )

   大男はクスクス笑いながら答えた。
   「さよう、まだ自己紹介をしとらんかった。俺はルビウス・ハグリッド。ホグワーツの鍵と領地を守る
  番人だ」
  meself [ mslf, mi− ] 〔 代 〕 《 口語 》 = myself    ( 『研究社 新英和大辞典』 )

   ‘Shh!’ said Professor McGonagall.
   ‘I met him!’ growled Hagrid. ‘I musta bin the last ter see him before he killed all them
  people! It was me what rescued Harry from Lily an' James' house after they was killed! Jus'
  got him outta the ruins, poor little thing, with a great slash across his forehead, an' his parents
  dead ... an' Sirius Black turns up, on that flyin' motorbike he used ter ride. Never occurred ter
  me what he was doin' there. I didn' know he'd bin Lily an' James' Secret-Keeper. Thought he'd
  jus' heard the news o' You-Know-Who's attack an' come ter see what he could do. White an'
  shakin', he was. An' yeh know what I did? I COMFORTED THE MURDERIN' TRAITOR!’
  Hagrid roared.               ( 第3巻 『アズカバンの囚人』 p153 )

   「しーっ!」 とマクゴナガル先生。
   「俺はヤツに出会ったんだ」 ハグリッドは歯噛みをした。
   「ヤツに最後に出会ったのは俺にちげぇねぇ。そのあとでヤツはあんなにみんなを殺した! ジェームズと
  リリーが殺されっちまったとき、あの家からハリーを助け出したのは俺だ! 崩れた家からすぐにハリーを連
  れ出した。かわいそうなちっちゃなハリー。額におっきな傷を受けて、両親(ふたおや)は死んじまって・・・・・・
  そんで、シリウス・ブラックが現れた。いつもの空飛ぶオートバイに乗って。あそこになんの用できたんだか、
  俺には思いもつかんかった。ヤツがリリーとジェームズの『秘密の守人』だとは知らんかった。『例のあの人』
  の襲撃の知らせを聞きつけて、なにかできることはねえかと駆けつけてきたんだと思った。ヤツめ、真っ青
  になって震えとったわ。そんで、俺がなにしたと思うか? 俺は殺人者の裏切り者を慰めたんだ!
  ハグリッドが吠えた。
  ter [ r ] = to [] 〔 前 〕 〜の方へ : イギリスでは、17〜9世紀半ば頃までに語尾及び
  子音の前の[ r ]は脱落した。そこで、[] で終わっていると、もともとの綴り字には " r " がついて
  いたものだろうと類推して、綴り字に " r " を加える場合がある。勿論、綴り字だけでなく、実際の
  [ r ]を加えて発音する場合もある。また、このような類推は、 " r " を発音する地域の近くに住む
   " r " を発音しない地方の話者によって始められたといわれている。( 『アメリカの文学方言辞典』 )
  what 《 非標準 》 《 単一関係詞として 》 ・・・の ( もの, 人 ) ( who, which, that ) : She's the
  one 〜 told me. 彼女が話してくれた.       ( 『ランダムハウス英和大辞典』 )

   ‘Yeh don' know them gargoyles at the Comittee fer the Disposal o' Dangerous Creatures!’
  choked Hagrid, wiping his eyes on his sleeve.  ( 第3巻 『アズカバンの囚人』 p162 )

   「おまえさんは、『危険生物処理委員会』ちゅうとこの怪物どもを知らんのだ!」 ハグリッドは袖で
  目を拭いながら、喉を詰まらせた。
  them [ ðem ] = those [ ðouz ] 〔 形 〕 それらの 〔 代 〕 それらの( もの ) :
   一般的には、全くの文法的誤りと考えられる。しかし、イギリス方言話者は、人称代名詞を様々に
   ( 標準文法から見れば )使用している。この them もかなり広い範囲でごく普通に those の意味に
   使用されている。                    ( 『アメリカの文学方言辞典』 )

  them 《 方言・俗 》 a [ 指示形容詞的 ]= those : some of 〜 apples そのリンゴのいくつか.
  b [ 主格として ] = those : Them are the women I meant. あれが私の言った女たちだ.
                                ( 『研究社 新英和大辞典』)

   Fang the boarhound came timidly out from under the table and laid his head on Hagrid's knee.
   ‘I've not bin meself lately,’ said Hagrid, stroking Fang with one hand and mopping his face
  with the other. ‘Worried abou' Buckbeak, an' no one likin' me classes −’
   ‘We do like them!’ lied Hermione at once.
   ‘Yeah, they're great!’ said Ron, crossing his fingers under the table. ‘Er − how are the
  Flobberworms?’
   ‘Dead,' said Hagrid gloomily. ‘Too much lettuce.’
   ‘Oh, no!' said Ron, his lip twitching.
   ‘An' them Dementors make me feel ruddy terrible an' all,' said Hagrid, with a sudden
  shudder. ‘Gotta walk past 'em ev'ry time I want a drink in the Three Broomsticks. 'S like
  bein' back in Azkaban −'
   He fell silent, gulping his tea. Harry, Ron and Hermione watched him breathlessly. They
  had never heard Hagrid talk about his brief spell in Azkaban before. After a brief pause,
  Hermione said timidly, ‘Is it awful in there, Hagrid?’
   ‘Yeh've no idea,’ said Hagrid quietly. ‘Never bin anywhere like it. Thought I was goin' mad.
  Kep' goin' over horrible stuff in me mind ... the day I got expelled from Hogwarts ... day me Dad
  died ... day I had ter let Norbert go ...’
   His eyes filled with tears. Norbert was the baby dragon Hagrid had once won in a game of
  cards.
   ‘Yeh can' really remember who yeh are after a while. An' yeh can' see the point o' livin' at all.
  I used ter hope I'd jus' die in me sleep ... when they let me out, it was like bein' born again,
  ev'rythin' came floodin' back, it was the bes' feelin' in the world. Mind, the Dementors weren't
  keen on lettin' me go.’
   ‘But you were innocent!’ said Hermione.
   Hagrid snorted.
   ‘Think that matters to them? They don' care. Long as they've got a couple o' hundred
  humans stuck there with 'em, so they can leech all the happiness out of 'em, they don' give a
  damn who's guilty an' who's not.'
   Hagrid went quiet for a moment, staring into his tea. Then he said quietly, ‘Thought o' jus'
  letting Buckbeak go ... tryin' ter make him fly away ... but how d'yeh explain ter a Hippogriff
  it's gotta go inter hidin'? An' − an' I'm scared o' breakin' the law ...’ He looked up at them,
  tears leaking down his face again. ‘I don' ever want ter go back ter Azkaban.’
                        ( 第3巻 『アズカバンの囚人』 p163 )

   ボアアウンド犬のファングがおずおずとテーブルの下から現れ、ハグリッドの膝に頭を載せた。
   「このごろ俺はどうかしとった」
   ハグリッドがファングの頭を片手で撫で、もう一方で自分の顔を拭きながら言った。
   「バックビークが心配だし、だーれも俺の授業を好かんし――」
   「みんな、とっても好きよ!」 ハーマイオニーがすぐに嘘を言った。
   「ウン、すごい授業だよ!」 ロンもテーブルの下で、手をもじもじさせながら嘘を言った。
   「あ――レタス食い虫は元気?」
   「死んだ」 ハグリッドが暗い表情をした。「レタスのやり過ぎだ」
   「ああ、そんな!」 そう言いながら、ロンの口元が笑っていた。
   「それに、吸魂鬼のやつらだ。連中は俺をとことん落ち込ませる」
   ハグリッドは急に身震いした。
   「『三本の箒』に飲みにいくたんび、連中のそばを通らにゃなんねえ。アズカバンさ戻されちまった
  ような気分になる――」
   ハグリッドはふと黙りこくって、ゴクリと茶を飲んだ。ハリー、ロン、ハーマイオニーは息をひそめて
  ハグリッドを見つめた。三人とも、ハグリッドが、短い期間だが、アズカバンに入れられたあのときの
  ことを話すのを聞いたことがなかった。やや間をおいて、ハーマイオニーが遠慮がちに聞いた。
   「ハグリッド、恐ろしいところなの?」
   「想像もつかんだろう」 ハグリッドはひっそりと言った。
   「あんなとこは行ったことがねえ。気が狂うかと思ったぞ。ひどい想い出ばっかしが思い浮かぶんだ・・・・・・
  ホグワーツを退校になった日・・・・・・親父が死んだ日・・・・・・ノーバートが行っちまった日・・・・・・」
   ハグリッドの目に涙が溢れた。ノーバートはハグリッドが賭けトランプで勝って手に入れた赤ちゃん
  ドラゴンだ。
   「しばらくすっと、自分が誰だか、もうわからねえ。そんで、生きててもしょうがねえって気になる。
  寝てるうちに死んでしまいてえって、俺はそう願ったもんだ・・・・・・ 釈放されたときゃ、もう一度生ま
  れたような気分だった。いろんなことが一度にドォッと戻ってきてな。こんないい気分はねえぞ。
  そりゃあ、吸魂鬼のやつら、俺を釈放するのはしぶったもんだ」
   「だけど、あなたは無実だったのよ!」 ハーマイオニーが言った。
   ハグリッドがフンと鼻を鳴らした。
   「連中の知ったことか? そんなこたぁ、どーでもええ。二、三百人もあそこにぶち込まれていりゃ、
  連中はそれでええ。そいつらにしゃぶりついて、幸福ちゅうもんを全部吸い出してさえいりゃ、誰が有罪で、
  誰が無罪かなんて、連中にはどっちでもええ」
   ハグリッドはしばらく自分のマグカップを見つめたまま、黙っていた。それから、ぼそりと言った。
   「バックビークをこのまんま逃がそうと思った・・・・・・遠くに飛んでいけばええと思った・・・・・・だけんど
  どうやってヒッポグリフに言い聞かせりゃええ? どっかに隠れていろって・・・・・・ほんで――法律を破る
  のが俺は怖い・・・・・・」
   三人を見たハグリッドの目から、また涙がボロボロ流れ、顔を濡らした。
   「俺は二度とアズカバンに戻りたくねえ」
  me [ mi ] = my [ mai ] 〔 代 〕 私の : この発音の変化はアイルランド訛りの特徴の一つ
  である。しかし、この発音はまた、舞台で使用される場合は常に me ( = my ) Lord. であり、また、
  無強勢の場合は、 [ ai ] > [ i ] となる場合が多い。 ( my の弱形は[ mi ]である )
                               ( 『アメリカの文学方言辞典』 )

   Their only chance of talking to him was during Care of Magical Creatures lessons.
   He seemed numb with shock at the verdict.
   ‘'S'all my fault. Got all tongue-tied. They was all sitting there in black robes an' I kep'
  droppin' me notes and forgettin' all them dates yeh looked up fer me, Hermione. An' then
  Lucius Malfoy stood up an' said his bit, and the Committee jus' did exac'ly what he told 'em ...’
   ‘There's still the appeal!’ said Ron fiercely. ‘Don't give up yet, we're working on it!’
   They were walking back up to the castle with the rest of the class. Ahead they could see
  Malfoy, who was walking with Crabbe an Goyle, and kept looking back, laughing derisively.
   ‘'S'no good, Ron,’ said Hagrid sadly as they reached the castle steps. ‘That Committee's in
  Lucius Malfoy's pocket. I'm jus' gonna make sure the rest o' Beaky's time is the happiest he's
  ever had. I owe him that ...’      ( 第3巻 『アズカバンの囚人』 p216 )

   話ができるのは「魔法生物飼育学」の授業中しかなかった。
   ハグリッドは判決を受けたショックで放心状態だった。
   「みんな俺が悪いんだ。舌がもつれっちまって。みんな黒いローブを着込んで座ってて、そんでもって
  俺はメモをボロボロ落としっちまって、ハーマイオニー、おまえさんがせっかく探してくれたいろんなもん
  の日付は忘れっちまうし。そんで、そのあとルシウス・マルフォイが立ち上がって、やつの言い分をしゃ
  べって、そんで、委員会はあいつに『やれ』と言われた通りにやったんだ・・・・・・」
   「まだ控訴がある!」 ロンが熱を込めて言った。「まだ諦めないで。僕たち、準備してるんだから!」
   四人はクラスのほかの生徒たちと一緒に、城に向かって歩いているところだった。前の方に、クラッブと
  ゴイルを引き連れたマルフォイの姿が見えた。チラチラと後ろを振り返っては、小バカにしたように笑って
  いる。
   「ロン、そいつぁダメだ」 城の階段まで辿り着いたとき、ハグリッドが悲しそうに言った」
   「あの委員会はルシウス・マルフォイの言うなりだ。俺はただ、ビーキーに残された時間を思いっきり
  幸せなもんにしてやるんだ。俺は、そうしてやらにゃ・・・・・・」
  スタンレー・シャンパイク ( 「夜の騎士バス」の車掌、 18、9歳の魔法使い )
   ‘What were you doin' down there?’ said Stan, dropping his professional manner.
   ‘Fell over,’ said Harry.
   ‘'Choo fall over for?’ sniggered Stan.
                 ( 第3巻 『アズカバンの囚人』 p31〜 ≪ 以下同じ ≫ )

   「そんなとこですっころがって、いってぇなにしてた?」 スタンは職業口調を忘れていた。
   「転んじゃって」とハリー。
   「なんで転んじまった?」 スタンが鼻先で笑った。
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   ‘'Choo looking at?’ said Stan.
   ‘There was a big black thing,’ said Harry, pointing uncertainly into the gap. ‘Like a dog ...
  but massive ...’
   He looked around at Stan, whose mouth was slightly open. With a feeling of unease, Harry
  saw Stan's eyes move to the scar on Harry's forehead.
   ‘Woss that on your 'ead?’ said Stan abruptly.
   ‘Nothing,’ said Harry quickly, flattening his hair over his scar. If the Ministry of Magic was
  looking for him, he didn't want to make it too easy for them.
   ‘Woss your name?’ Stan persisted.
   ‘Neville Longbottom,’ said Harry, saying the first name that came into his head. ‘So − so
  this bus,’ he went on quickly, hoping to distract Stan, ‘did you say it goes anywhere?’
   ‘Yep,’ said Stan proudly, ‘anywhere you like, long's it's on land. Can't do nuffink underwater.
  'Ere,’ he said, looking suspicious again, ‘you did flag us down, dincha? Stuck out your wand
  'and, dincha?’
   ‘Yes,’ said Harry quickly. ‘Listen, how much would it be to get to London?’
   ‘Eleven Sickles,’ said Stan, ‘but for firteen you get 'ot chocolate, and for fifteen you get an
  'ot-water bottle an' a toofbrush in the colour of your choice.’

   「いってぇ、なに見てる?」 スタンが聞いた。
   「何か黒い大きなものがいたんだ」 ハリーはなんとなく隙間のあたりを指した。「犬のような・・・・・・
  でも、小山のように・・・・・・」
   ハリーはスタンの方に顔を向けた。スタンは口を半開きにしていた。スタンの目がハリーの額の傷の方
  に移っていくのを見て、ハリーは困ったなと思った。
   「おでこ、それなんでぇ?」 出し抜けにスタンが聞いた。
   「なんでもない」
   ハリーは慌ててそう答え、傷を覆う前髪をしっかり撫でつけた。魔法省がハリーを探しているかもしれ
  ないが、そうたやすく見つかるつもりはなかった。
   「名めえは?」 スタンがしつこく聞いた。
   「ネビル・ロングボトム」 ハリーは一番最初に思い浮かんだ名前を言った。
   「それで――それでこのばすは」 ハリーはスタンの気をそらそうと急いで言葉を続けた。
  「どこにでも行くって、君、そう言った?」
   「あいよ」 スタンは自慢げに言った。「お望みしでぇ。土の上ならどこでもござれた。水ん中じゃ、
  なーんもできねえが。ところで」
   スタンはまた疑わしげにハリーを見た。
   「たしかにこのバスを呼んだな、ちげえねぇよな? 杖腕を突き出したな、ちげえねぇよな?」
   「ああ」 ハリーは短く答えた。「ねえ、ロンドンまでいくらかかるの?」
   「11シックル。13出しゃぁ熱いココアがつくし、15なら湯たんぽと好きな色の歯ブラシが
  ついてくらぁ」
  イギリスのアクセントと方言 : ロンドン  
  • / h / はほぼ完全に欠落
  •    
  • // と / f / の対立は、失われることがある

  •       語頭に来る例  thin  / fin /
          語中に来る例  Cathy  / /
          語尾に来る例  both  / bouf /    ( 『イギリス英語のアクセントと方言』 )
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       Stan was watching Harry's stunned face with great enjoyment.
       ‘This is where we was before you flagged us down,’ he said. ‘Where are we, Ern?
      Somewhere in Wales?’
       ‘Ar,’ said Ernie.
       ‘How come the Muggles don't hear the bus?’ said Harry.
       ‘Them!’ said Stan contemptuously. ‘Don' listen properly, do they? Don' look properly,
      either. Never notice nuffink, they don'.’

       ハリーのあっけにとられた顔を、スタンは愉快そうに眺めていた。
       「おめえさんが合図する前には、おれたちゃここにいたんだ。アーン、ここぁどこだい? ウェールズの
      どっかかい?」
       「あぁ」 アーニーが答えた。
       「このバスの音、どうしてマグルには聞こえないの?」 ハリーが言った。
       「マグル!」 スタンは軽蔑したような声を出した。
       「ちゃーんと聞いてねえのさ。ちゃーんと見てもいねえ。なーんにも、ひとーっつも気づかねえ」
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       ‘Scary-lookin' fing, inee?’ said Stan, who had been watching Harry read.
       ‘He murmured thirteen people ?’ said Harry, handing the page back to Stan, ‘with one
      curse
    ?’
       ‘Yep,’ said Stan. ‘In front of witnesses an' all. Broad daylight. Big trouble it caused,
      dinnit, Ern?’
       ‘Ar,’ said Ern darkly.
       Stan swivelled in his armchair, his hands on the back, the better to look at Harry.
       ‘Black woz a big supporter of You-Know-'Oo,’ he said.
       ‘What, Voldemort?’ said Harry, without thinking.
       Even Stan's pimples went white; Ern jerked the steering wheel so hard that a whole
      farmhouse had to jump aside to avoid the bus.
       ‘You outta your tree?' yelped Stan. ‘'Choo say 'is name for?’

       「オッソロシイ顔じゃねーか?」 ハリーが読むのを見ていたスタンが言った。
       「この人、十三人も殺したの?」
       新聞をスタンに返しながらハリーが聞いた。
       「たった一つの呪文で?
       「あいな。目撃者なんてぇのもいるし。真っ昼間だ。てーした騒ぎだったしなぁ、アーン?」
       「あぁ」 アーンが暗い声で答えた。
       スタンはくるりと後ろ向きに座り、椅子の背に手を置いた。その方がハリーがよく見える。
       「ブラックは『例のあのしと』の一の子分だった」 スタンが言った。
       「え? ヴォルデモートの?」 ハリーは何気なく言った。
       スタンはニキビまで真っ青になった。アーンがいきなりハンドルを切ったので、バスを避けるのに農家が
      一軒まるまる飛び退いた。
       「気はたしかか?」 スタンの声が上ずっていた。「なんであのしとの名めえを呼んだりした?」
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      ‘Yeah,’ said Stan, still rubbing his chest. ‘Yeah, that's right. Very close to You-Know-'Oo,
      they say ... anyway, when little 'Arry Potter put paid to You-Know-'Oo' − Harry nervously
      flattened his fringe down again − ‘all You-Know-'Oo's supporters was tracked down, wasn't
      they, Ern? Most of 'em knew it was all over, wiv You-Know-'Oo gone, and they came quiet.
      But not Sirius Black. I 'eard he thought 'e'd be second-in-command once You-Know-'Oo 'ad
      taken over.
       ‘Anyway, they cornered Black in the middle of a street full of Muggles an' Black took out 'is
      wand and 'e blasted 'alf the street apart, an' a wizard got it, an' so did a dozen Muggles what
      got in the way. 'Orrible, eh? An' you know what Black did then?’ Stan continued in a
      dramatic whisper.
       ‘What?’ said Harry.
       ‘Laughed,’ said Stan. ‘Jus' stood there an' laughed. An' when reinforcements from the
      Ministry of Magic got there, 'e went wiv 'em quiet as anyfink, still laughing 'is 'ead off.
      'Cos 'e's mad, inee, Ern? Inee mad?’

       「それよ」 スタンはまだ胸を撫でさすっていた。
       「そう、その通りよ。『例のあのしと』にどえらく近かったってぇ話だ・・・・・・とにかく、ちいせえ
      『アリー・ポッター』が『例のあのしと』にしっぺ返ししたときにゃ」 ――ハリーは慌ててまた前髪を
      撫でつけた――「あのしとの手下は一網打尽だった。アーン、そうだったな? おおかたは、
      『例のあのしと』がいなくなりゃおしめぇだと観念しておとなしく捕まっちまった。だーがシリウス・
      ブラックは違ったな。聞いた話だが、『例のあのしと』が支配するようになりゃ、ブラックは自分が
      ナンバー・ツーになると思ってたってぇこった」
       「とにかくだ、ブラックはマグルで混み合ってる道のど真ん中で追い詰められっちまって、そいで
      ブラックが杖を取り出して、そいで道の半分ほどぶっ飛ばしっちまった。巻き添え食ったのは魔法使い
      一人と、ちょうどそこにいあわせたマグル十二人てぇわけよ。しでえ話じゃねえか? そんでもって
      ブラックがなにしたと思う?」 スタンはヒソヒソ芝居がかった声で話を続けた。
       「何したの?」
       「高笑いしやがった。その場に突っ立って、笑ったのよ。魔法省からの応援隊が駆けつけて
      きたときにゃ、ヤツはやけにおとなしくしょっ引かれてった。大笑いしたまんまよ。――ったく狂ってる。
      なぁ、アーン? ヤツは狂ってるなぁ?」
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘They 'ad a job coverin' it up, din' they, Ern?’ Stan said. ‘'Ole street blown up an' all them
      Muggles dead. What was it they said 'ad 'appened, Ern?’
       ‘Gas explosion,’ grunted Ernie.
       ‘An' now 'e's out,’ said Stan, examining the newspaper picture of Black's gaunt face again.
      ‘Never been a breakout from Azkaban before, 'as there, Ern? Beats me 'ow 'e did it.
      Frightenin', eh? Mind, I don't fancy 'is chances against them Azkaban guards, eh, Ern?’

       「あとの隠蔽工作がてぇへんだったよなぁ、アーン? なんせ通りがふっ飛ばされっちまって、マグルが
      みんな死んじまってよ。ほれ、アーン、なにが起こったってことにしたんだっけ?」
       「ガス爆発だ」 アーニーがブスッと言った。
       「そんで、こんだぁ、ヤツが逃げた」 スタンは頬の削げ落ちたブラックの顔写真をしげしげと見た。
       「アズカバンから逃げたなんてぇ話は聞いたことがねぇ。アーン、あるか? どうやったか見当もつか
      ねぇ。オッソロシイ、なぁ? どっこい、あの連中、ほれ、アズカバンの守衛のよ、あいつらにかかっ
      ちゃ、勝ち目はねぇ。なぁ、アーン?」
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘'Ear about that 'Arry Potter? Blew up 'is Aunt! We 'ad 'im 'ere on the Knight Bus, di'n't we,
      Ern? 'E was tryin' to run for it ...’

       「『アリー・ポッター』のこと、きーたか? おばさんをふくらましちまってよ! この『ナイト・
      バス』に乗せたんだぜ、そうだなぁ、アーン? 逃げよーって算段だったな・・・・・・」

       Stan leapt onto the pavement beside them.
       ‘What didja call Neville, Minister?’ he said excitedly.
       Fudge, a portly little man in a long, pinstriped cloak, looked cold and exhausted.
       ‘Neville?’ he repeated, frowning. ‘This is Harry Potter.’
       ‘I knew it!’ Stan shouted gleefully. ‘Ern! Ern! Guess 'oo Neville is, Ern! 'E's 'Arry Potter!
      I can see 'is scar!’

       スタンがバスから二人のわきの歩道に飛び降りた。
       「大臣、ネビルのことをなーんて呼びなすった?」 スタンは興奮していた。
       ファッジは小柄なでっぷりとした体に細縞の長いマントをまとい、寒そうに、疲れた様子で立っていた。
       「ネビル?」 ファッジが眉をひそめながらくり返した。 「ハリー・ポッターだが」
       「ちげぇねぇ!」 スタンは大喜びだった。
       「アーン! アーン! ネビルが誰か当ててみな! アーン! このしと、アリー・ポッターだ!
      したいの傷が見えるぜ!」
      d'ja [ ] = did you [ did ju: ]: did you を雑に発音すると、相互同化により [ di] とな
      る。次に、強勢のない第1音節の [ di ] が脱落して [ ] が成立した。また、語尾の [ ] について
      は ⇒ don'cher.

      don'cher [ dunr ] = don't you [ dunt ju: ] : don'che は相互同化によって生じた発音
      であるが、語尾の [ r ] は、you = yer ( = ya = yuh ) の発音がかなり一般的であるために生じた
      ものと思われる。yer については ⇒ yer.

      yer 1 [ jr ] = you [ ju: ], 《弱形》 [ jr ] 〔 代 〕 2人称の主格、目的格 : 一般に俗語では、
      yer [ jr ] = ye [ ji:, j ] である。 ye と you の文法機能は同一 ( ⇒ ye )であり、yer は you
      として使用されている。つまり、yer は、現代の you と同一に使用されている。 ⇒ yer 2

      yer 2 [ jr ] = your [ ju ], 《弱形》 [ jr ] 〔 代 〕 あなた(方)の : イギリス方言では、
       yer = ye となっている。 ye と you の文法機能は同じになっており、you の弱形は [ j, jr ]
      なので、yer を you として使用しても当然である。しかし、属格を表す yer は、基本的には your の
      方言形と考えたい。 your の弱形は [ j, jr ]であるから yer [ jr ]
      が生ずるのは自然である。 ⇒ yer 1
                                   ( 『アメリカの文学方言辞典』 )
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘'Ow come you di'n't tell us 'oo you are, eh, Neville?’ said Stan, beaming at Harry, while
      Ernies's owlish face peered interestedly over Stan's shoulder. ( 'Ow - owlish : 語呂合わせ )

       「なーんで本名を教えてくれねぇんだ。え? ネビルさんよ」
       スタンがハリーに向かって笑いかけた。その肩越しにアーニーのふくろうのようなメガネ顔が興味津々で
      覗き込んでいる。

       ‘Just outside Birmingham,’ said Stan happily, answering Harry's unasked question as Ron
      struggled up from the floor. ‘You keepin' well, then, 'Arry? I seen your name in the paper
      loads over the summer, but it weren't never nuffink very nice. I said to Ern, I said, 'e didn't
      seem like a nutter when we met 'im, just goes to show, dunnit?’
                             ( 第5巻 『不死鳥の騎士団』 p464 )

       「バーミンガムのちょっと先でぇ」 ハリーが聞きもしないのに、スタンがうれしそうに答えた。
      ロンは床から立ち上がろうとじたばたしていた。「アリー、元気だったか? おめぇさんの名前
      (なめぇ)は、この夏さんざん新聞で読んだぜ。だがよ、なぁにひとっついいことは書いてねえ。
      おれはアーンに言ってやったね。こう言ってやった。『おれたちが見たときゃ、アリーは狂ってる
      ようにゃ見えなかったなぁ? まったくよう』」
      累加否定   否定辞が重ねられる場合、(−)×(−)=(+) のようにけっきょく肯定(ただし純粋の肯定よ
     りはいくぶん効果は弱くなるか、または修辞的な技巧の場合かえって強い意味になるかであって、まった
     く同じではありません。例:It is not unknown to him. = It is somewhat known to him. / I am not
     ungrateful
    to you. = I am very grateful to you. ) になるときと、 I can't do nothing. のように、それ
     が肯定にならずやはり否定であって、否定を確認する効果をもつときと両様の場合があります。一般に二
     重否定( double negation )と言いますが、けっきょくは否定となる後者の場合には、肯定でないことを明
     らかにし、また否定辞が3つ以上重なることもあるので、累加否定( Cumulative negation ) と呼ぶこと
     もあります。
       ところで、否定同士で肯定になるのはすぐ納得がいきますが、それがもとのままの否定であるのはどう
     も合点がいかぬということになります。しかし、これは現代の論理的思考に慣れたわれわれが固定した視
     点からものをみるためであって、実は前後が逆なのです。すなわち、否定を表すのに否定辞をくり返すこ
     とは、古くはきわめて普通であったわけで、OE, ME には否定辞を累加した形式は随所にみられます。
     つまり、現代の構文が − ( a + b ) と表現するところを、むかしは ( −a ) + ( −b ) というように
     していたわけです。それが否定辞を繰り返さなくなったのは、ラテン語の影響や学校教育などの普及による
     ものであり、かつ否定辞 not が確立したからで、けっして言語自体の必然からではありません。
     むしろ否定をくり返すほうが自然であったのは、一体に否定辞は小さく軽いことばであるために注意されない
     おそれがあり、意図が間違いなく伝えられるためには否定辞をくり返すほうが効果的であったからです。
     また、文頭に否定牽引が行われる場合、長い文ではうっかりすると被伝達者の側において否定が忘れられる
     おそれがあります。つまりだめ押しの真理が働いて否定を累加すると考えてよいわけです。
       したがって、感情が強い場合には教養のある人でも使用しますし、また文語ではなくて、主として口語
     に見出されることも了解されます。一般に俗語卑語の類にこれが多いというのも、以上のような条件を考
     慮に入れれば、うなずけるでしょう。
       次に否定辞が重なるときに、肯定にもなれば否定にもなるというのでは、言語の日常使用に混乱が生
     じないか、ということですが、これはあまり心配する必要はありません。通常の場合は場面や文の制約が
     ありますから、そのいずれであるかはわかります。しかし、その弁別法を一般的に述べるとなると、厄介な
     問題がないわけではありません。Jespersen は同一の観念や語に関し否定辞が重ねられる語 [ 特殊 ]
     否定の場合は相殺されて肯定となり、異なった語にかかる場合は相殺が行われず否定となると言うので
     す。前者は not un-common の類、後者は I didn't say nothing. の類ですが、
       I don't say uncommon things. / He did not go to Oxford for nothing. (オックスフォードに行っ
       たかいがあった)
     のような場合には異なった語に否定辞がついているのに文全体の意味は肯定になります。そこでもう少
     し整理してみますと、累加否定になるのは同一の節の中で意味上の文 [ ネクサス ] 否定が反復される
     場合であると言えます。語否定を文否定とするときには意味上肯定になります
       It was not for nothing that he read Plato. 〔 COD 〕.
       しかし、 I can do nothing. の nothing や No one went there. の no は形式は語否定ですが、
     意味上は文否定の効果をもちます。したがって、これをさらに否定して I can't do nothing. / No one
     didn't go there. としてもこれらの文の意味は肯定にはなりません。 She couldn't hardly wait. など
     も同じです。                     ( 『英語語法大事典』より抜粋 )
       アーニー・プラング ( 夜の騎士バスの運転手、 年配の魔法使い )
       ‘If he weren't when he went to Azkaban, he will be now,’ said Ern in his slow voice. ‘I'd
      blow meself up before I set foot in that place. Serves him right, mind ... after what he did ...’
                      ( 第3巻 『アズカバンの囚人』 p35 ≪ 以下同じ ≫ )

       「アズカバンに入れられたとき狂ってなかったとしても、いまは狂ってるだろうな」
       アーンが持ち前のゆっくりした口調で言った。
       「あんなとこに足を踏み入れるぐれぇなら、おれなら自爆する方がましだ。ただし、ヤツにはいい見せ
      しめというもんだ・・・・・・あんなことしたんだし・・・・・・」
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       Ernie suddenly shivered.
       ‘Talk about summat else, Stan, there's a good lad. Them Azkaban guards give me the
      collywobbles.’

       アーニーが突然身震いした。
       「スタン、なんか違うこと話せ。たのむからよ。あの連中、アズカバンの看守の話で、俺は腹下しを起こし
      そうだよ」
      summat [ s mt, sm- ] adv., n. 《 方言 》 = somewhat ( 『研究社 新英和大辞典』 )
      マンダンガス・フレッチャー ( 不死鳥の騎士団の団員、ブラック家からいろいろな品物を盗む泥棒 )
       ‘I've toldjer, I'd sooner be a protector,’ said Mundangus.
       ‘Shut it,’ growled Moody. ‘As I've already told you, you spineless worm, any Death Eaters
      we run into will be aiming to capture Potter, not kill him. Dumbledore always said You-Know-
      Who would want to finish Potter in person. It'll be the protectors who have got the most to
      worry about, the Death Eaters'll want to kill them.’       ( 第7巻 『死の秘宝』 p48 )

       「言っただろうが。俺は護衛役のほうがいいって」 マンダンガスが言った。
       「黙れ」 ムーディが唸った。「おまえに言って聞かせたはずだ。この意気地なしめが。死喰い人に
      出くわしても、ポッターを捕まえようとはするが殺しはせん。ダンブルドアがいつも言っておった。
      『例のあの人』は自分の手でポッターを始末したいのだとな。護衛のほうこそ、むしろ心配すべきなのだ。
      死喰い人は護衛は殺そうとするぞ」
       トンクス ( ニンファドーラ・トンクス、不死鳥の騎士団の団員 )
       ‘Wotcher,’ said a familiar voice as he came out of the marquee again and
      found Tonks and Lupin at the front of the queue. She had turned blonde for the occasion.
      ‘Arthur told us you were the one with the curly hair. Sorry about last night,’ she added
      in a whisper, as Harry led them up the the aisle.  ( 第7巻 『死の秘宝』 p116 )

       「よっ」
       ハリーがテントの入り口に戻ってくると、聞き覚えのある声がして、列のいちばん前にトンクスとルーピン
      がいた。トンクスの髪は、この日のためにブロンドになっていた。
       「アーサーが、髪がくるくるの男の子が君だって教えてくれたんだよ。昨夜はごめん」 二人を案内する
      ハリーにトンクスが小声で謝った。
      wotcher interj. 《 英俗 》 《あいさつ・呼びかけ》 よう、こんにちは ( Hello ).
      ◆ “What cheer?” のロンドン訛り. やや古臭い言い回しになりつつある. ( また watcher ) [1894]
                                 ( 『ランダムハウス英和大辞典』 )
       スカビオール ( フェンリール・グレイバック ( 狼人間 ) の仲間 )
       ‘Slytherin,’ said Harry automatically.
       ‘Funny 'ow they all thinks we wants to 'ear that,’ jeered Scabior out of the shadows. ‘But
      none of 'em can tell us where the common room is.’
       ‘It's in the dungeons,’ said Harry clearly. ‘You enter through the wall. It's full of skulls
      and stuff and it's under the lake, so the light's all green.’
       There was a short pause.
       ‘Well, well, looks like we really 'ave caught a little Slytherin,’ said Scabior. ‘Good for you,
      Vernon, 'cause there ain't a lot of Mudblood Slytherins. Who's your father?’
                                 ( 第7巻 『死の秘宝』 p365 )

       「スリザリン」 ハリーは反射的に答えた。
       「おかしいじゃねえか。捕まったやつぁみんな、そう言やぁいいと思ってる」 スカビオールの嘲り
      笑いが、薄暗いところから聞こえた。「なのに、談話室がどこにあるか知ってるやつぁ、一人もいねえ」
       「地下室にある」 ハリーがはっきり言った。「壁を通って入るんだ。髑髏とかそんなものがたくさん
      あって、湖の下にあるから明かりは全部緑色だ」
       一瞬、間が空いた。
       「ほう、ほう、どうやら本物のスリザリンのガキを捕めえたみてぇだ」 スカビオールが言った。
      「よかったじゃねえか、バーノン。スリザリンには『穢れた血』はあんまりいねえからな。親父は誰だ?」
      ain't [ eint ] = am not, are not, is not, have not, has not, don't を表す : NEDによれ
      ば、これは are not の縮約形であり、また、 am not にも使用されるという。エスペルセンも、この説を
      とる。しかし、H. H. Bender は、明らかに同時に2つの起源があったといっている。つまり、
      @ am not の省略形で、 amn't を経た後、 ain't となったもので、今でもアイルランドには残っている。
      A are not の省略形であり、1706 年まで遡ることができ、その ain't は 1778 年まで遡ると。
      また、カームは、ain't は、子音の前の “r” が脱落しているイギリスの習慣によって、aren't から生じた
      と推測している。その他、E. P. Willard は、ain't は be 動詞というよりは、have 動詞から生じたと述
      べている。以上の様に、その起源については不明な点は多いが、俗語や方言では、メンケンが述べて
      いるように、be 動詞、及び have 動詞全体に使用されるのが普通である。
                                  ( 『アメリカの文学方言辞典』 )
       アミカス・カロー ( 死喰い人、妹のアレクトとともにホグワーツ校の新任教師となる )
       ‘She ain't answering, you old besom! You open it! Garn! Do it, now!’
                               ( 第7巻 『死の秘宝』 p475〜 )

       「妹が答えねえんだよ、この婆ぁ! てめえが開けやがれ! さあ開けろ! いますぐ開けやがれ!」
      garn int. 《英口語・ロンドン方言》 ばか言え 《不信・嘲笑の意を表す》.
      〔 《1886》 《転訛》← Go on ! 〕         ( 『研究社 英和大辞典』 )
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘What've they done, the little whelps?’ he screamed. ‘I'll Cruciate the lot of 'em 'til they
      tell me who did it − and what's the Dark Lord going to say?’ he shrieked, standing over his
      sister and smacking himself on the forehead with his fist. ‘We haven't got him, and they've
      gorn and killed her!’
       ‘She's only Stunned,’ said Professor McGonagall impatiently, who had stooped down to
      examine Alecto. ‘She'll be perfectly right.’
       ‘No she bludgering well won't!’ bellowed Amycus. ‘Not after the Dark Lord gets hold of
      her! She's gorn and sent for him, I felt me Mark burn, and he thinks we've got Potter!’
       ‘“Got Potter”?’ said Professor McGonagall sharply. ‘What do you mean, “got Potter”?’

       「ガキども、何しやがった?」 アミカスが叫んだ。「誰がやったか白状するまで、全員『磔の呪文』
      にかけてやる――それよりも、闇の帝王が何とおっしゃるか?」
       妹の上に立ちはだかって、自分の額を拳でバシッと叩きながら、アミカスが甲高い声で叫んだ。
       「やつを捕まえていねえ。その上ガキどもが妹を殺しやがった!」
       「『失神』させられているだけですよ」
       屈んでアレクトを調べていたマクゴナガル教授が、イライラしながら言った。
       「妹さんはまったく何ともありません」
       「何ともねえもクソもあるか!」
       アミカスが大声を上げた。
       「妹が闇の帝王に捕まったら、とんでもねえことにならぁ! こいつはあの方を呼びやがった。
      俺の闇の印が焼けるのを感じた。あの方は、俺たちがポッターを捕まえたとお考えにならぁ!」
       「ポッターを捕まえた?」 マクゴナガル教授の声が、鋭くなった。「どういうことですか?
      『ポッターを捕まえた』とは?」
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘We was told he might come in here!’ said Carrow. ‘I dunno why, do I?’

       「俺たちは、ポッターがここに来るかもしれねえ、と言われただけだ!」 カローが言った。
      「なんでもへったくれも、ねえ!」
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘We can push it off on the kids,’ said Amycus, his pig-like face suddenly crafty. ‘Yeah,
      that's what we'll do. We'll say Alecto was ambushed by the kids, them kids up there,’ he
      looked up at the starry ceiling towards the dormitories, ‘and we'll say they forced her to
      press her Mark, and that's why he got a false alarm ... he can punish them. Couple of kids
      more or less, what's the difference?’

       「ガキどもに、なすりつけてやる」
       アミカスの豚のような顔が、突然、ずる賢くなった。
       「そうだとも。そうすりゃいい。こう言うんだ。アレクトはガキどもに待ち伏せされた。上にいる
      ガキどもによ」
       アミカスは星のちりばめられた天井の、寝室のある方向を見上げた。
       「そいでもって、こう言う。ガキどもが、無理やり妹に闇の印を押させた。だから、あの方は間違い
      の報せを受け取った・・・・・・あの方は、ガキどもを罰する。ガキが二、三人減ろうが減るまいが、たいした
      違いじゃねえだろう?」
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘It's not a case of what you'll permit, Minerva McGonagall. Your time's over. It's us
      what's in charge here now, and you'll back me up or you'll pay the price.’

       「ミネルバ・マクゴナガルよぅ、あんたが許すの許さないのってぇ場合じゃねえぜ。あんたの時代
      は終わった。いまは俺たちがここを仕切ってる。俺を支持しないつもりなら、つけを払うことになるぜ」
       ゴイル ( クラッブと一緒にマルフォイの下で行動するホグワーツの生徒 )
       ‘We was hiding in the corridor outside,’ grunted Goyle. ‘We can do Diss-lusion Charms
      now! And then,’ his face split into a gormless grin, ‘you turned up right in front of us and
      said you was looking for a die-dum! What's a die-dum?’    ( 第7巻 『死の秘宝』 p505 )

       「俺たちは外の廊下に隠れていたんだ」 ゴイルがブーブー唸るような声で言った。「俺たちはもう、
      『目くろます術』ができるんだぞ!」 ゴイルの顔が、間抜けなニヤニヤ笑いになった。「そしたら、
      おまえが目の前に現れて、髪ぐさりを探してるって言った! 髪ぐさりってなんだ?」
       ウィンキー ( ドビーと同類の屋敷しもべ妖精、女性 )
       ‘As you see, elf, the Dark Mark was conjured here a short while ago,’ said Mr Diggory.
      ‘And you were discovered moments later, right beneath it!’ An explanation, if you please!’
       ‘I − I − I is not doing it, sir!’ Winky gasped. ‘I is not knowing how, sir!’
       ‘You were found with a wand in your hand!’ barked Mr Diggory, brandishing it in front of
      her. And as the wand caught the green light that was filling the clearing from the skull above,
      Harry recognised it.              ( 第4巻 『炎のゴブレット』 p120 )

       「見てのとおり、しもべよ、いましがた『闇の印』が打ち上げられた」 ディゴリー氏が言った。
       「そして、おまえは、その直後に印の真下で発見されたのだ! 申し開きがあるか!」
       「あ――あ――あたしはなさっていませんです!」
       ウィンキーは息を呑んだ。
       「あたしはやり方をご存知ないでございます!」
       「おまえが見つかったとき、杖を手に持っていた!」
       ディゴリー氏はウィンキーの目の前で杖を振り回しながら吼えた。浮かぶ髑髏からの緑色の光が空き地を
      照らし、その明かりが杖に当たったとき、ハリーはハッと気がついた。

       ‘Master Barty, Master Barty,’ sobbed Winky through her hands. ‘You isn't ought to tell
      them, we is getting in trouble ...’  ( 第4巻 『炎のゴブレット』 p594〜 )

       「バーティ坊ちゃま。バーティ坊ちゃま」
       ウィンキーは顔を覆ったまま啜り泣いた。
       「この人たちにお話してはならないでございます。あたしたちは困らせられます」
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       ‘Noooo ! ’ wailed Winky. ‘Master Barty, Master Barty, what is you saying?’

       「あぁぁぁぁ」 ウィンキーが嘆き叫んだ。
       「坊ちゃま、バーティ坊ちゃま。何をおっしゃるのです?」

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