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折々の記 2003 A

折々の記:…2003…【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】04/19〜       【 02 】05/01〜
【 03 】05/11〜       【 04 】05/19〜
【 05 】05/28〜       【 06 】06/01〜
【 07 】06/06〜       【 08 】06/09〜


【 08 】06/10〜

  06 10 フォント
  06 11 金子みすヾWorldの紹介
      大きな木(英文と日本文)
      A Mother's Lullaby(原爆後の子守唄)

 06 10(火)フォント

Fonts とは文字の書体のことをいう。

「スタート」「設定」「コントロールパネル」「フォント」を開きますと、フォント一覧ウインドウが表示されます。アイコンを一つずつ開くと、そのフォントで書かれたサンプルが表示される。

普通は「MS明朝」指定にしておけば、日本語も英語も印字できる。

「Chivalry」はドイツ語の装飾文字、「Musketeer」は同じく標準文字、「Romance」は英語の筆記体文字、「Symbol」はギリシャ文字が印字できる。

ワードパットでは明朝体も英語もドイツ語もどんなフォントでも、一つの頁に取り入れることができる。だがメモ帳ではこれはできない。

メモ帳ではドイツ語指定ならドイツ語は表示できる。ところが他の明朝体文章のあるメモ帳への「コピー」「貼り付け」はできない。

英語の「発音記号」を「外字エディタ」で作ることはできた。だが、まだどうすれば貼り付けできるのか判らない。

これができると、ホームページの「フォニックス」への発音記号が記入でき文章が完了する。

●昭和20年6月10日は土浦が大爆撃を受けた日である。

 06 11(水)金子みすヾWorldの紹介

薄命の詩人、金子みすヾ、研ぎ澄まされたその感性は、情緒のもやを通りぬけほんとうのことそのものに到達している。
http://home.owari.ne.jp/~fukuzawa/misuzu0%2C.htm

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第5章 さびしいとき
小学校時代の恩師の大島ヒデ先生はみすヾを回想して、「友達とけんかをしたということを聞いたことも見たこともありませんでした。みんな金子さんを、何かしら心の中で尊敬していたように見えました。本当に金子さんは、優しくて、ていねいで、色白でふっくらとしたきれいな少女でした」と述べている。

     私と小鳥と鈴と

   私が両手をひろげても、
   お空はちっとも飛べないが、
   飛べる小鳥は私のやうに、
   地面(じべた)を速くは走れない。

   私がからだをゆすっても、
   きれいな音は出ないけど、
   あの鳴る鈴は私のやうに、
   たくさんな唄は知らないよ。

   鈴と、小鳥と、それから私、
   みんなちがって、みんないい。

小学校で一年後輩だった中村ツルエさんは、「学校や道で顔を合わせたりすると、ほっと笑うんです。その笑顔を見ると、こちらまで嬉しくなるようでした。みんな金子さんのことを憧れていました」と回想している。

たしかに、みすヾは小学校や女学校で先生や級友たちの信頼が厚く、成績も優秀だった。ずっと級長も務めている。しかしそんな優等生の彼女にも心底からさびしいときがあったのだろう。

   さびしいとき

   わたしがさびしいときに、
   よその人は知らないの。

     わたしがさびしいときに、
   お友だちはわらうの。

     わたしがさびしいときに、
   お母さんはやさしいの。

     わたしがさびしいときに、
   ほとけさまはさびしいの。

みすヾは幼い頃から、周囲にやさしく、礼儀正しくて、いつも笑顔を絶やさなかった。しかし、決して人と争わない優しい人だっただけに、いろいろとものに感じて、深く考えることもあったのだろう。そしていつか彼女の心の奥深くで、生きることの根源的なさびしさのようなものが、ひそかに深められていたのかも知れない。

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●The Giving Tree……おおきな木

これは篠崎書林で売られている「おおきな木」という絵本です。
中学校で使っていた英語の本、平成5年ころから9年あたりまで東京書籍発行の「NEW HORIZON」三年の教材に“The Giving Tree”が載っていました。

「原作者シェル・シルヴァスタインは、作曲をしたり、漫画を描いたりする多才な児童文学者です。この作品は1本のリンゴの木と少年との交流を通して、愛の在り方を問いかける美しい作品です。何回も読んで鑑賞してみましょう。」と教科書にコメントを載せていました。

左端の数字は1頁2場面の場面順を表わしています。挿絵があるので言葉が少ないのです。

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The Givivg Tree …… 平成4年東京書籍出版の「NEW HORIZON」

01 Once there was a tree ... 
  and she loved a little boy. 

02 And every day
  the boy would come
  and he would gather
  her leaves
  and make them into crowns
  and play king of the forest.

03 He would climb up her trunk
  and swing from her branches
  and eat apples.
  And they would play
  hide-and-go-seek.
  And when he was tired,
  he would sleep in her shade.

04 And the boy loved the tree ...
  very much.
  And the tre was happy.

05 But time went by.
  And the boy grew older.
  And the tree was often alone.
  Then one day the boy came to the tree 
  and the tree said, “Come, Boy, come and climb up
  my trunk and swing from my branches
  and eat apples and play in my shade
  and be happy.”
  “I am too big to climb and play,”
  said the boy.
  “I want to buy things and have fun.
  I want some money.
  Can you give me some money?”

06 “I'm sorry,” said the tree,
  “but I have no money.
  I have only leaves and apples.
  Take my apples, Boy,
  and sell them in the city.
  Then you will have money
  and you will be happy.”
  And so the boy climbed up the tree
  and gathered her apples
  and carried them away.
  And the tree was happy.

07 But the boy stayed away
  for a long time ...
  and the tree was sad.
  And then one day
  the boy came back
  and the tree shook with joy
  and she said, “Come, Boy,
  climb up my trunk
  and swing from my branches
  and be happy.”

08 “I am too busy to climb trees,”
  said the boy.
  “I want a house to keep me warm,”
  he said.
  “I want a wife and I want
  children, and so I need a house.
  Can you give me a house?”
  “I have no house,” said the tree. 
  “The forest is my house, 
  but you may cut off my branches
  and build a house.
  Then you will be happy.”

09 And so the boy cut off her branches
  and carried them away to build his house.
  And the tree was happy.

10 But the boy stayed away
  for a long time.
  And when he came back,
  the tree was so happy
  she could hardly speak.
  “Come, Boy,” she whispered,
  “come and play.”
  “I am too old and sad to play,”
  said the boy. 
  “I want a boat that will take me
  far away from here.
  Can you give me a boat?”

11 “Cut down my trunk
  and make a boat,”
  said the tree.
  “Then you can sail away ...
  and be happy.”
  And so the boy cut down her trunk
  and make a boat
  and sailed away.
  And the tree was happy ...
  but not really.

12 And after a long time
  the boy came back again.
  “I am sorry, Boy,” said the tree,
  “but I have nothing left
  to give you-
  My apples are gone.”
  “My teeth are too weak for apples,”
  said the boy.

13 “My branches are gone,”
  said the tree.
  “You cannot swing on them-”
  “I am too old to swing on branches,”
  said the boy.

14 “My trunk is gone,” said the tree.
  “You cannot climb-”
  “I am too tired to climb,” said the boy.
  “I am sorry,” sighed the tree.
  “I wish that I could
  give you something ...
  but I have nothing left.
  I am just an old stump.
  I am sorry ...”

15 “I don't need very much now,”
  said the boy,
  “just a quiet place to sit and rest.
  I am very tired.”
  “Well,”said the tree,
  straightening herself up
  as much as she could,
  “well, an old stump is good (is=イタリック体)
  for sitting and resting.
  Come, Boy, sit down.
  Sit down and rest.” 
  And the boy did.

16 And the tree was happy.

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訳文は単行本「おおきな木」の本田銀一郎訳をもとにして、少し手を加えてあります。

   おおきな木

01 むかし りんごのきが あって・・・
  かわいいちびっこと なかよしでした。

02  まいにち
  ちびっこはやってきて
  きのはを
  あつめたり
  かんむりをこしらえたりして
  もりのおうさまきどりでした。

03 ちびっこは きのみきによじのぼり
  えだにふらさがり
  りんごをたべたりしたものでした。
  きと ちびっこは
  かくれんぼうしたり、
  あそびつかれて
  こかげでおひるねしたものでした。

04 ちびっこは きが
  だいすきでした
  だから きもうれしかったのです。

05  けれども ときはながれてました。
  ちびっこは すこしおとなになり
  きはたいてい ひとりぼっちでした。
  ところがあるひ そのこがひょっこりきたので
  きはいいました「さあ ぼうや
  わたしのみきにおのぼりよ。えだにぶらさがって
  りんごをおたべ。こかげであそんだりして
  たのしくすごしておゆきよ ぼうや。」
  するとそのこは 「ぼくはもうおおきいんだよ、
  きのぼりなんて おかしくて。
  ぼくは かいものがしてみたい。
  だから おかねがほしいんだ。
  おこづかいをくれるかい。」といいました。

06 きはいいました「こまったねえ、
  わたしにおかねはないのだよ。
  あるのは はっぱとりんごだけ。
  それじゃぁぼうや わたしのりんごをもぎとって
  まちでうったら どうだろう。
  そうすれば おかねもできて
  たのしくやれるとおもうよ。」
  そこで そのこはきによじのぼり
  りんごをもぎとって
  みんな もっていってしまいました。
  きは それで うれしかったのです。

07 だが それから そのこは
  ながいあいだ こなかったのです・・・
  きは かなしくておりました。
  ところが あるひ 
  そのこがひょっこり もどってきたので
  うれしさいっぱいになり からだをふるわせ
  きは いいました「さあ ぼうや
  わたしのみきに おのぼりよ
  わたしのえだに ぶらさがり
  たのしくすごして おゆきよ ぼうや。」

08 「きのぼりしているひまはないのだよ」
  おとなになった そのこはいいました。
  「あたたかな いえがほしい。
  およめさんが ほしい
  こどもが ほしい
  だから いえがいるのです。
  ぼくに いえをくれるかい。」
  きがいいました。「わたしには いえはないのだよ
  このもりが いえだからね。
  だけど わたしのえだをきり
  いえをたてることは できるはず
  それで たのしくやれるでしょう。」

09 そこでおとこは えだをきりはらい
  じぶんのいえをつくるため みんな
  もっていきました。きはそれでもきはうれしかったのです。

10 でも おとこのこは
  ながいあいだ こなかったのです。
  そして おとこがひょっこり もどってくると
  そのきは うれしくてうれしくて
  ものもいえない ほどでした。
  「さあ ぼうや」きは ささやきました
  「ここでおあそびよ。」
  おとこはいいました。
  としはとるし かなしいことばかりで いまさらあそぶきには なれないよ。
  ふねにのって ここからはなれた
  どこか とおくへゆきたいよ。
  ふねをくれますか」

11 きは いいました。
  「わたしのみきを きりたおし
  ふねを おつくり。
  それで とおくへ ゆけるでしょう・・・
  そして たのしく やっておくれ」
  そこて おとこはきのみきをきりたおし
  ふねをつくって 
  いってしまいました。
  きは それで うれしかった・・・
  だが それは ほんとうかなぁ。

12 ながいとしつきが きずさって
  おとこが また かえってきました。
  きはいいました。 「すまないねぇ ぼうや
  わたしには なんにもないの
  あげるものはもう なんにもないの
  りんごも ないし」
  わたしのはは よわくなって なんにもかじれないよ」
  と おとこはいいました。

13 きは いいました。
  「ぶるさがってあそぶ えだもないし・・・」
  「えだに ふらさがることも できないし・・・」
  「としよりだから えだになど ぶらさがれないよ」
  と おとこはいいました。

14 「みきもないから」と おとこはいいました。
  のぼれないしねぇ・・・」
  「とても つかれて きのぼりなんて!」
  「すまないねぇ、
  なにか あげられたら
  いいんだが・・・
  だが わたしには あげるものは なんにもない。
  いまのわたしは ふるぼけた きりかぶだから・・・
  すまないねぇ・・・」

15 いまや よぼよぼの そのおとこは
  「わしはもう たいして ほしいものはない。
  ちょっとすわってやすむ しずかなばしょさえあれば。
  わしはもう つかれはてた」
  「ああ それなら」と
  きは せいいっぱい 
  せすじをのばし
  「このふるぼけた きりかぶが
  こしかけてやすむのに いちばんいい。
  さあ ぼうや こしかけて。
  こしかけて やすみなさい」
  おとこは いわれるままに こしかけました。

16 きは それで うれしかったのです。
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●この種のもので心をうたれる英文教材としては「A Mother's Lullaby」がある。
 思いついたときに、転載しておく。

教材「A Mother's Lullaby」の前段に次のような説明がのっている。

   第二次世界大戦中の1945(昭和20)年8月6日、広島に原子爆弾(atomic bomb)
   が投下され、何十万という人がその犠牲になりました。
   広島の平和記念公園にある犠牲者の慰霊碑には次の言葉が刻まれています。

     安らかに眠って下さい
     過ちは繰返しませぬから

   戦争という過ちを二度と繰返してはならない・・・・・
   これはわたしたちひとりひとりが心に刻んでおくべきことです。

   ◇広島市の北のはずれに立っている、のっぽの古い木にも原爆にまつわる
    悲しい思い出があったのです・・・・・。

「A Mother's Lullaby」

In the north of the city of Hiroshima, an old, tall tree stands by the roadside. It has seen many things aroud it.
One summer night the tree heard a lullaby. A mother was singing to her little girl under the tree. “They look really happy,” it thought. “And the song sounds so sweet.”
Then the tree remembered something very sad. “Yes, that was some fifty years ago. I heard a lullaby that night, too. ”
The morning before that night, a big bomb fell on the city of Hiroshima. A great many people lost their lives, and many others tried to get away. They had burns all over their bodies. I was very sad when I saw those people.
It was a very hot day. Some of the people stopped beside me. They could not even stand, and fell down. I said to them, “Come and rest in my shade. You'll be all right soon.”
Night came. Some people were already dead.
Then I heard a faint voice. It was a lullaby. A young girl was singing to a little boy.
“Mommy! Mommy!” the boy cried.
“Don't cry,” the girl said. “Mommy is here.” Then she began to sing again.
She was also weak, but she tried to be a mother to the poor boy. She held him like his real mother.
“Mommy,” the boy was still crying. “Be a good boy,” said the girl. Listen to me, and you'll be all right.” She held the boy in her arms more tightly and began to sing again.
After a while the boy stopped drying and died. But the little mother did not stop singing. It was a sad lullaby. Then the girl's voice became weaker and weaker.
Morning came and the sun rose, but she did not move, either.

*歳をとればとるほどに、涙なくして読むことはできない。




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