07 07(金) 北朝鮮 ミサイル発射…朝日新聞社説 |
北朝鮮ミサイル発射 無謀な行動に抗議する 北朝鮮がミサイルの発射実験を強行した。きのう未明から朝方にかけて6発、さらに夕方1発という異様さである。日本などと交わした発射凍結の約束を破り、国際社会の制止も無視した。 無謀で無責任な行動に強く抗議する。 実験では3種類のミサイルが発射された。短距離の「スカッド」、中距離の「ノドン」、長距離の「テポドン2」である。北朝鮮が保有する弾道ミサイルのそろい踏みといった有り様だ。 いずれもロシアに近い日本海に落下した。外国を攻撃できる兵器をこれだけ持っているのだと見せつけ、威嚇するのが目的なのだろう。 ●威嚇は許されぬ 米国のアラスカにも届くといわれるテポドン2に注目が集まっていた。だが、打ち上げ直後に失敗したと米政府などは見ている。 日本にとってより深刻なのはノドンだ。日本列島がすっぽり射程内に収まる。北朝鮮はこれを200基配備しているという。核弾頭が積まれていたらと、ぞっとした人は少なくないだろう。 北朝鮮は93年にノドンの、98年にはテポドンの発射実験をした。その後、99年に発射凍結を米国に約束した。02年の日朝平壌宣言でもそれを確認した。今回の発射はこれをすべてほごにするものだ。 北朝鮮は核兵器を保有していると宣言した。核不拡散のための国際的な約束に背を向け、監視の目をかいくぐって開発したものだ。そんな国が弾道ミサイルを持ち、発射実験で周辺国を威嚇するのは許しがたい。 北朝鮮はミサイル本体や技術を中東などに輸出してきた。ただでさえ不安定な地域にミサイルの火種を持ち込むのは無責任きわまりない。 核保有宣言といい、ミサイルといい、一連の行動は「ならずもの国家」と呼ばれても仕方あるまい。 ●対応は厳しく冷静に 北朝鮮はミサイルの開発、実験は主権に属することであり、他国の干渉は受けないと主張している。だが、国際社会の秩序を乱し、近隣国を威嚇するような国がいくら「自主権」を言っても、そのまま認めるわけにはいかない。 北朝鮮は国際社会からの猛反発は承知のうえなのだろう。それでもなおミサイルを発射したところに、北朝鮮の外交的な行き詰まりが見て取れる。 核放棄をめぐる6者協議が停滞するなかで、米国などは金融や人権で締め付けを強めている。だが、米国と直接協議したくても応じてくれない。日本も拉致問題などで圧力を強める。頼みの中国もさほど味方してくれない。 こんな局面を転換するにはミサイルという脅しのカードを使うしかないと見たのだろう。いつもの「瀬戸際作戦」だ。 ミサイルは、米国の独立記念日に合わせて発射された。北朝鮮問題に多くの時間を費やした日米首脳会談の直後、ロシアでの主要国首脳会議の直前でもある。挑発の狙いは明らかだ。 一方で、今回の発射をめぐっては、北朝鮮内部の統制の乱れを指摘する見方もある。独裁国家の、外からはうかがい知れない危うさである。 日本政府は北朝鮮の貨客船、万景峰号の入港を半年間認めないなど9項目の措置に踏み切った。強い抗議の意思を示すには当然だ。さらに送金や貿易の停止などの制裁措置も検討していくという。 国連の安全保障理事会は緊急会合を招集した。北朝鮮に強いメッセージを送る必要がある。いたずらに危機をあおっても逆効果であること、6者協議に誠実に向かい合ってこそ生きる道が開けてくることをはっきりと伝えるべきだ。 米国も「あらゆる必要な措置をとる」としつつ、外交的な解決を目指すという。冷静に、しかし厳しい態度で臨むという方針で足並みをそろえたい。 ●日中韓連携を強めよ 重要なのは国際社会の一致した行動だ。日本政府は国際協調を率先して追求してもらいたい。北朝鮮の出方を見つつ、段階的に対応する構えが大事だ。 北朝鮮の問題を解決するにはやはり米国の存在が大きい。だが、イラクやイランへの対応に追われ、危機感をもって向き合ってこなかった面は否めない。 ミサイルの脅威を肌で感ずるのは日本と韓国だ。緊張の高まりには中国も安閑としてはいられまい。なのにこの3カ国の協調が何とも心もとない。 ミサイル発射と時を同じくして、韓国の海洋調査船が竹島周辺の、日本が主張する排他的経済水域(EEZ)に入った。日本の抗議は無視された。この問題では双方が突っ張り合い、感情的なもつれを増幅させるばかりだ。 底流には、盧武鉉大統領の民族感情をあおる強硬姿勢とともに、小泉首相の靖国神社参拝も大きく響いている。靖国問題は、日中でも首脳の相互訪問をもう5年も閉ざしている。 だが、平穏な環境をつくることこそが3カ国の利益が共通する最重要の課題ではないのか。日中韓の政治指導者は優先順位を間違ってきたとしか思えない。 米国の関与を促すと同時に、北朝鮮の暴発を防ぎ、危機の水準を下げるために3カ国の協調を早急に立て直すべきだ。 |
「金英男さん会見」「北の情報戦に惑わされるな」 横田めぐみさんの夫とされる金英男(キムヨンナム)さんが6日、訪朝した日本人記者団と平壌市内で会見した。日本のメディアとの初の会見である。 金英男さんは、先に母や姉と感激の再会を果たした後、韓国メディアを対象に記者会見した。 二つの会見が北朝鮮にとって日韓両国向けのメディア戦略の重要な舞台であることは想像に難くない。拉致問題で日韓を離反させ、幕引きムードを作るのが狙いだ。 北朝鮮当局は記者団をめぐみさんが一時住んだといわれる招待所やめぐみさんの「遺骨」を焼いたとされる火葬場に案内した。日朝実務者協議での北朝鮮側主張を3時間にわたって詳細に説明したのは「拉致は解決済み」と強調したかったからだろう。 会見で金英男さんはめぐみさんとの出会いやプロポーズ、そして「幸せだった」結婚生活について事細かに述べた。夫婦とキム・ヘギョンさんの家族の写真も公表した。そこには温かな家庭の営みがあったのだろう。 めぐみさんの拉致については、特殊機関に勤めている人の過去は問わない、だから夫婦でも聞かなかったという。本当にそうなのか。にわかには信じ難い話だ。 会見に加わった娘のキム・ヘギョンさんは祖父母の横田滋さん、早紀江さん夫妻に対し「孫娘に会いたければ、こちら(平壌)に来てください」と語った。これはまさに北朝鮮当局のメッセージだ。 金英男さんと再会した姉金英子(キムヨンジャ)さんを通じて明らかにされた発言についても質問に答えた。金英男さんはめぐみさんの「遺骨」に「他人の遺骨が混じっていたかもしれない」と語ったとされることについて「そういう意図で発言したことはない」と否定した。めぐみさんが幼いころに交通事故にあったとの話については「めぐみは小さい時、頭を打ったと言った。それが交通事故だったかどうかは記憶にない」と言葉を濁した。 韓国メディアとの会見で金英男さんは、めぐみさんの死亡した状況について「これについてはいろいろの説があるが、別の機会があれば話す」と語った。これは今回の日本人記者との会見を念頭に置いた発言だろう。 にもかかわらず、めぐみさんの「遺骨」に関しても新たな事実は聞けなかった。ちぐはぐな答えもあった。日本の国民が抱く疑問にきちんと答えたとは言い難い。 拉致問題に関してほとんど沈黙していた北朝鮮だが、めぐみさんの夫としての金英男さんが注目を集めてからは彼を通じてメッセージを積極的に発信している。 金英男さんは金英子さんにこんなことも言った。 「(日本側はめぐみさんの拉致について)すべて真実を知っているのに勝手な対応をしている。もう放っておいてくれと、(日本側に)伝えてほしい」 北朝鮮は拉致被害者を特殊機関に勤務させ、今度はスポークスマンに仕立て上げようというのか。 北朝鮮の情報戦に惑わされてはならない。
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07 08(土) 北朝鮮外務省報道官発言全文 |
07 09(日) 行政職員の熱心なブログ意見 |
07 11(火) 木曽義仲と開田高原 |
07 14(金) 教育勅語の「教育の淵源」 |