旬!サバ美味発掘の旅
2008年10月15日放送
今回の番組について
北陸から京都や大阪へ続く、通称「サバ街道」。この道は、古くからサバの輸送路として知られ、沿道の地域ではサバを味わい尽くす文化が育まれてきました。
今回のガッテンは「サバ街道・小浜〜京都ルート」を踏破!「究極の焼きサバ」や「極上のしめサバ」を生み出す職人技を徹底取材し、家庭でも再現できる超簡単な方法の開発に大成功!
サバ街道の旅情を楽しみながらサバの新たな調理法も学べる、歴史グルメツアーです!
「福井・小浜で見つけた! 究極の焼きサバ」
最初に訪れたのは、サバ街道スタートの地・福井県小浜市。かつて全国有数のサバの水揚げを誇ったという小浜市でイチオシのサバ料理は何でしょうか? 地元の人に聞いてみると、出てきた答えは意外にも「焼きサバ」。
この焼きサバの特徴は、1匹を丸々焼き上げる豪快な形にあります。さらに、外がパリパリ・中がジューシーな2段階の食感に焼き上げることが最大のポイントです。
ジューシーさの目安となる重量を調べたところ、焼く前は586グラム、焼いた後は512グラム。重量比は87%でした。一方、家庭の主婦が焼いた一般的なものは、重量比が77%でした。一般的に、80%を下回ると、パサパサに感じられることが多くなります。小浜の達人の焼き方には、どのような特徴があるのでしょうか?
「焼きサバの達人 ジューシーさの秘密」
達人の焼き方を徹底調査。すると、達人の焼きサバの身の温度が、途中からずっと65℃を保っていることが判明。実はこの65℃こそが、焼きサバの身をジューシーに保つ秘けつです。
魚の筋肉を電子顕微鏡で拡大してみてみると、筋肉は65℃付近でふっくらしていることがわかります。これによって、脂や水を十分に抱え込むことができます。しかしこれを越えると、筋肉が逆に縮んできて、脂や水が押し出されてパサパサになるのです。
達人の焼き方の特徴をまとめると、「強火」の「遠火」の「上火」で焼くことでした。なかでも、上火で焼くというのがポイントです。
上火のメリット・その1「脂燃えが起こらない」
旬のサバは特に脂が多く、焼いている間にポタポタと脂が落ちます。コンロに網をひいて焼くなど、下に火がある場合は、落ちた脂が燃えることによって、部分的に焦げてしまうことが起こりえます。また、温度も不安定になります。この「脂燃え」が起こらないことが、上火のメリットです。
上火のメリット・その2「65℃を保つ」
達人の焼き方でサバに影響を与えるのは、「放射熱」という上からの熱だけです。熱せられた空気は焼き器の外に逃げていき、サバには影響を与えません。この「一方向からだけ」というのが最大のポイントです。一方向から加熱して身の温度が65℃になったタイミングで裏返すことにより、身の温度をずっと65℃に保つことができるのです。
一方、家庭の魚焼きグリルで焼いた場合、そもそもサバと火が近すぎることに加え、熱せられた空気がグリルの中をまわり、いわば“ダブル加熱”の状態になってしまいます。こうなると身の温度が急上昇し、パサパサになってしまうのです。
家庭の魚焼きグリルでは構造上、サバをパリパリ&ジューシーに焼くことは難しいのですが、何かよい方法はないものでしょうか?
「魚焼きグリルでできた! パリパリ&ジューシーの焼きサバ」
家庭の魚焼きグリルで、小浜流の表面パリパリ・中ジューシーの食感の焼きサバを作る、という課題に挑戦! 試行錯誤の結果、家庭で簡単にできるガッテン流の焼きサバが完成しました。
※詳しいレシピは後半の実習コーナーでご紹介します。
ガッテン流の焼きサバは、焼く前が101グラム、焼いた後は86グラム。重量比は85%で、ジューシーさを十分に感じられる重量比になりました。達人が焼くと常に83〜87%ですから見劣りしません。
ガッテン流の焼き方のポイントは、達人の焼き方の逆手を取り、「前火(=予熱)」の「両火(=上下から)」の「早火」で仕上げることです。
「潜入!サバが大好きな村 〜滋賀県高島市朽木〜」
サバ街道の難所・根来(ねごり)坂を越え、旅の第2チェックポイント・滋賀県高島市朽木へたどり着きました。ここで待ちかまえていたのは、サバが大好きだという多くの人々と数々のサバ料理です。
海に面した小浜から山里の朽木までは、歩くと10時間以上かかります。かつてサバは塩漬けもしくは焼いた状態で届いていたため、焼きサバをさらに加工して美味しく食べる調理法が考案されたものと考えられています。
朽木では、肉の代わりにサバを入れる「サバカレー」、塩サバに米を詰めて乳酸発酵させた「サバのなれずし」、サバのぬかづけ「へしこ」などが食べられていますが、その中でも朽木の人のイチオシの料理は「焼きサバそうめん」。焼きサバを、しょうゆ、酒、砂糖で10分煮て、その煮汁に素麺をさっとあわせます。焼いたサバをもう1度煮る、というのが最大のポイントです。
「サバそうめん」なぜうまい?
焼きサバそうめんのうまみの正体は、サバが死んだ後、体内に増えるイノシン酸です。生のサバを放っておくと、イノシン酸は分解され別の物質に変わってしまいますが、サバを焼くことで、日持ちがよくなると同時に、イノシン酸の多くが残ります。
さらにだしをとる際にグルタミン酸を多く含んだ昆布を使うことで、うまみの相乗効果が起こります。これをそうめんが吸い込むため、食べたときに強いうまみを感じるのです。
焼きサバそうめんの作り方
- 材料
- 焼きサバ 1尾
※切り身でもOKです
- 酒 100ミリリットル
- しょうゆ 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
- 塩 小さじ2分の1
- 水 300ミリリットル
- そうめん 2束
- 作り方
- 鍋に調味料を入れ煮立たせ、焼きサバを入れて10分ほど煮る。
※あらかじめ身をほぐしておいたほうが、だしがよく出ます。
- 硬めに湯がいたそうめんを、[1]の鍋に入れ、さっとあわせるとできあがり。
「伝統に挑戦! 極ウマしめサバを作れ 〜京都市〜」
旅の第3チェックポイント・京都市へやってきました。京都は伝統的に「しめサバ(京都・大阪などでは「きずし」と言う)」作りが盛んな土地です。
地元で評判のしめサバ名人にその作り方を見せてもらうと、美味しいしめサバを作るためには、塩加減が極めて重要であると言います。事実、達人はわずか0.1グラム単位でサバにふる塩の量を調整していました。これはなかなか素人にはマネできません。
そこで、家庭で簡単においしくしめサバを作るためにガッテンが編み出した方法は、「砂糖をアバウトにふる」という方法です。この方法は京都でも大評判でした。砂糖でしめることによって、しっとりした食感で塩辛くない極上のしめサバに仕上がるのです。
なぜ砂糖でしめサバができるのか?
サバをしめるそもそもの目的は、サバの表面近くの細胞にある水を抜くことです。水を抜くことで日持ちがよくなるのと同時に、サバのうまみを凝縮させて、表面に適度な歯ごたえを作り出します。
サバに塩をふると、浸透圧の関係でサバの表面に細胞の中の水が出てきます。ところがこの“仕事”は、砂糖にもできます。塩ではなく、砂糖をふっても、サバの表面に水が出てくるのです。
砂糖でしめると、しっとりした食感で、かつ美味しく仕上がる最大の理由は、塩と砂糖で分子の大きさが違うことです。砂糖は塩の分子量のおよそ6倍で、体積も大きくなります。
もともと、「分子量が小さい物質ほど、脱水作用が強い」という性質があります。塩は分子量が小さいために脱水作用が強いのですが、その小ささが災いして、細胞の中に少なからず入ってしまうという弱点も同時に持っています。したがって、ふりすぎると塩辛くなってしまいます。
これに対して、分子量が大きい砂糖は、脱水作用こそ塩ほど強くないものの、分子が大きいために、細胞の中にはほとんど入りません。したがって、多めにふっても甘くはならず、しかも、適度に水分を残してしっとりした食感に仕上がるのです。
旅の終着点は京都・出町柳
旅の終着点は、京都市出町柳。ここの商店街では、サバ街道を歩ききった人に巨大な白いサバに寄せ書きをしてもらっています。このサバにガッテンのシールをはらせてもらい、旅は終了しました。
実習コーナー
魚焼きグリルでガッテン流 焼きサバ
- 材料
- サバの切り身
※失敗を防ぐため、旬の脂ののった時期のサバを使うこと。旬でないときはノルウェー産のサバを使うのも良い。
- 塩 適量
- 作り方 (両面焼きグリルの場合)
- 魚焼きグリルを、5分間予熱する。
- サバの身の側にだけ塩をふる。(皮にはふらない)
- 予熱が終わったグリルに皮を上にして入れる。7分間焼くとできあがり。
- 作り方 (片面焼きグリルの場合)
- 魚焼きグリル、5分間予熱する。
- サバの身の側にだけ塩をふる。(皮にはふらない)
- 予熱が終わったグリルに身を上にして入れる。5分間焼く。
- ひっくり返してさらに5分焼くとできあがり。
「ガッテン流 しっとりしめサバ」
- 材料
※サバの大きさにもよるので、あくまでも目安です。
- サバ 1尾(800グラム)三枚におろす
- 砂糖 70グラム
- 塩 70グラム
- 酢(穀物酢) 500ミリリットル
- 作り方
- サバの身・皮の両側に砂糖をなすりつけるようにふり、40分間置く。
- 砂糖を洗い流して水気をふきとり、砂糖と同じように塩をふり1時間半置く。
※あらかじめ砂糖でしめておくことで、次にふる塩の量は適当でOK。塩が必要以上に身に入り込まない。
- 塩を洗い流し水気をふきとり、酢に10分間つけこむ。
- 骨がある場合は腹骨と中骨を取り除く。
※中骨は骨抜きで抜く。
- 皮をむく。
※皮は身に平行にしてひっぱるとむきやすい。
- 食べやすい大きさに切って、できあがり。
昆布じめサバとナスのみぞれ酢がけ
- 材料
- しめサバ 半身
- 大根おろし 3分の1本
※おろした後、水気を絞る。
- 長なす 1本
- ゆず
※1センチ×5センチ幅分を千切りにしておく
- 合わせ酢(調味料を合わせ、ひと煮立ちさせて冷ましたもの)
- かつおと昆布の一番だし 150ミリリットル
- 酢 100ミリリットル
- みりん 50ミリリットル
- 塩 小さじ1と2分の1
- 作り方
- しめサバを昆布ではさみ、2〜3時間置く。
※皮は、昆布に挟む前に向いておく。
※骨がある場合は、あらかじめとっておく。
- 昆布締めにした、しめサバを1.5センチ角に切る。
- 長なすを塩もみし、1.5センチ角に切る。
- 大根おろしに合わせ酢をかけ、千切りにしたユズを和える。(みぞれ酢完成)
- 昆布締めにしたサバと長なすの上に、みぞれ酢をかけてできあがり。