社会学教育の実用性に関する試論
ー「生活史」「自分史」学習をツールとした青少年教育の視点から


序論   

第1章 社会学教育の現状と障碍

第2章 教育目的の明確化と青少年教育の課題との関連

第3章 「ライフヒストリー・自分史」の活用

第4章 アンケート調査による学習者の意識と背景

第5章 学習者本位の目標による再生―先行実践事例

第6章 「総合的な学習」としての社会学教育

第7章 結論―残された課題の整理

おわりに

参考文献・メディア

資料


序 論

筆者は、高等学校までの教科として「社会科」が好きで、得意科目としてきた。高校入学当初、近現代史を学ぶ史学を志望していたが、高校二年だった1995年に、社会学の存在を知り、より近代を中心に学ぶ社会学を、大学で学ぶことを志望して、東洋大学社会学部社会学科に入学し、入学前のイメージと、実際の社会学教育とのギャップを経験した。しかし、それを抱えつつも、自由なテーマを追求できるということそして、志望して入ったという意地をはりつつ、ある程度惰性のまま学習を続けた。しかし、三年次も後半になったころ、就職活動や進路の検討を前にして、「大学で何を学んだのか」という問いに直面することになった。他学部の知人からは、「社会学部はアピールがたいへんだね」と言われたりもした。それをきっかけに、改めて社会学を見つめなおしてみた。するとどうだろう、一年のときには全く実感が湧かなかった理論や、受け入れられなかった考え方が、なんとなくわかってきた。個別分野や調査などを学んだことで、総体としての社会学理論が少しずつわかってきたのであろう。
 このような自分自身の経験と、同学の人間からも同様の印象や経験をもつ者が少なくないこと、そして「社会学教育」論という研究分野が存在していることを知り得て、社会学教育、特にその教育(⇔学習)目的について興味を持ち、研究を続けてきた。
 この間に、社会学教育の目的について、社会学者養成の目的以外の新たな目的の必要性を痛感するとともに、学習者と社会学界との関係について、各大学大学案内において学習者に対してどのような情報発信をしているか、そして学習者はどのような情報を受けてイメージ構築しているかを構造的に研究し、それをもとに学習者の「自己」を起点とした教育を提言した。
 本論においては、社会学教育を取り巻く課題や問題点を概観しつつ、学習者を中心とした社会学教育の目的を論証し、アンケート調査による学習者分析により、「青少年教育としての社会学教育」という新たな視点から、その方法論としてのライフヒストリー(生活史)研究や「自分史」教育というツールを用いた、社会学の実用性理論を試みたい。