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折々の記 2006 @

【心に浮かぶよしなしごと】

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  04 08 小沢一郎
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04 08(土) 小沢一郎

0407 民主党代表に小沢一郎氏が決まった。大きな政治のニュースである。

●まずやフーニュースを見てみる。


小沢氏宣言「わたし自身が変わる」=窮地の民主救えるか
(時事通信) - 4月7日23時0分更新

 民主党の新代表に小沢一郎氏が選出された。自ら率いた旧自由党を解党し、民主党に合流して2年7カ月。「がけっぷち」に追い詰められた民主党の再出発の先頭に立った小沢氏は記者会見で「自己変革」の必要性にまで言及した。小沢氏に付きまとう「こわもて」のイメージを払拭(ふっしょく)して、指導力を発揮する決意を示したものだ。果たして小沢氏は究極の民主党救世主となり得るか−。
 ◇イタリア映画のせりふも引用
 「まず何よりもわたし自身が変わる」。7日午後、都内のホテルで開かれた両院議員総会。投票に先立つ立会演説会で小沢氏は、イタリアの名画「山猫」の中で、主役が変革を訴えた場面に感銘を受けたと紹介し、そのせりふを引用しながら、「政治生命のすべてをつぎ込む」と強調した。
 小沢氏の強権的手法を警戒してきた中堅議員は、「一方的押し付けはしないという意味ではないか」と評価。小沢氏を支持した若手議員からは「小沢氏がイタリア映画の話をするなんて、イメージが変わった」との声も。
 ただ、今回の代表就任は、偽メール問題というハプニングが引き金となったものだが、小沢氏自身は、早い段階から民主党の中枢に身を置いて政権交代を目指すシナリオを描いていた節がある。 



<民主党代表選>小沢氏が大差で選出 菅、鳩山両氏起用へ
(毎日新聞) - 4月7日23時24分更新

 民主党は7日午後、東京都内のホテルで両院議員総会を開き、代表選を実施した。党所属国会議員191人による投票の結果、小沢一郎前副代表(63)が過半数の119票を獲得し、新代表に選出された。小沢氏は選出後の記者会見で、菅氏や鳩山由紀夫幹事長を重要ポストで処遇し、挙党態勢を確立する考えを表明した。


<民主党>「まず私自身が変わる」…演説で小沢新代表
(毎日新聞) - 4月8日3時9分更新

 民主党の小沢一郎新代表は7日、党両院議員総会の演説で「まず私自身が変わらなければならない」と述べ、強権的と批判され続けた政治手法を改め、円満な党運営に当たる姿勢を強調した。その後の記者会見でも「皆さんには大変評判が芳しくないが、できるだけ私も変わらなくてはいけない」と重ねて自己変革をアピールした。



民主 大差で小沢新代表 剛腕に浮沈賭ける
(産経新聞) - 4月8日2時54分更新

 前原誠司代表の辞任に伴う民主党代表選が七日午後、両院議員総会で国会議員による投票(無記名)で行われ、小沢一郎前副代表(63)が菅直人元代表(59)を破って初当選、新代表に選出された。有効投票総数百九十一で小沢氏百十九票、菅氏七十二票の大差となった。金田誠一衆院議員は病気のため欠席した。
 小沢氏は記者会見で「党再生と政権への道に使命と責任の重大さを感じる。全身全霊で頑張る」と述べ、挙党態勢の確立と政権交代の必要性を訴えた。焦点の菅氏の処遇は「二人三脚だ」とし、鳩山由紀夫幹事長とともに重要ポストへの起用を示唆、八日にも新執行部を発表する。
     ◇
 ≪やりたいようにやられれば≫
 選挙はやってみるもんだ。地に落ちた民主党人気が、代表選の実施で急回復しているという。投票の模様をNHKのみならず、民放二局(関東地区)も生中継したほどで、一週間前の前原誠司代表辞任が遠い過去のようだ。
 小泉マジックと巨大与党に手も足も出なかった民主党にとって、とんでもない不祥事が発端だったとはいえ、野党の党首選びに国民の耳目が集まったのは何よりの宣伝となった。
 問題はむろん、これからだ。野党のやるべきことはただ一つ、政権をとること。この目標のために戦略を立て、国民との約束であるマニフェスト(政権公約)をどうつくるかが、小沢一郎代表の肩にのしかかる。
 この際、「挙党一致」などとケチなことを言わないで、小沢さん、好き勝手にやられればいかがだろう。
 自ら「ぼくは話がヘタだから」と言うように、説明不足の性癖はこれからも変わるまい。「記者会見はサービスだ」という発言も過去にあった。
 側近と称した人も次々に氏の下を去り、小泉内閣で有力大臣になっている人もいる。「剛腕」というのはマスコミがつくった虚像で、本当は気の小さい人なんだ、というグチを何人の元側近から聞いたことか。
 それでも、民主党議員は大差で小沢氏を起死回生の「切り札」に選んだ。彼の持つビジョン、何よりも自民党を一時は瀕死(ひんし)状態に追いやった「権力政治家」としての突破力を期待してのことだろう。
 そうであるならば、小沢氏に「みんな仲良く」といった微温的な党運営を求めてはいけない。小沢氏は「私も変わらなければいけない」と言うが、無理に愛想笑いをする必要はない。昔を知る者にとってはどうも気持ちが悪い。
 憲法でも外交でも経済政策でも、個々の民主党議員の考えは、自民党以上にバラバラ。靖国問題もそう。マニフェストも装丁は立派だが、中身は薄かった。党としての根本政策がはっきりしないから有権者も「民主党に任せよう」という気になれない。彼が早急にやらねばならないのは、この一点だ。
 「小沢民主党」が本格的に始動すれば、党内摩擦は大きくなるはずだ。そうでなければ逆におかしいし、「小沢流」が気に入らなければ、新党をたちあげればいいだけの話。考え方が水と油の人間が同じ党を構成する方が不健全ではないか。
 その小沢氏に最も脅威を感じているのは、同じ昭和十七年生まれで、彼の古巣である旧竹下派をぶっ壊した小泉純一郎首相だろう。野党に強面(こわもて)党首が登場したことで、政治が少し面白くなってきた。(乾正人)



<民主党>新代表決まる 「ニュー小沢」に再生を期待
(毎日新聞) - 4月8日1時43分更新

 偽メール問題の混乱で結党以来の危機に直面した民主党は、小沢一郎新代表に再生を託した。党内に強いアレルギーがある小沢氏だが、組織票に加え、がけっぷちに追い込まれた危機感から多くの若手議員票が小沢氏に流れたとみられる。「ニュー小沢」は巨大与党にどう、立ち向かうのか。そして、小沢氏は本当に変われるのか。挙党態勢の構築、政策の対立軸の構築など、前途は多難だ。【尾中香尚里、須藤孝】
 ◇小沢氏、若手の支持受け圧勝…菅氏、浮動票奪えず
 「変わらずに生き残るために変わらないとならない。ウィ マスト チェンジ トゥー リメイン ザ セイム」
 イタリア統一戦争を描いた映画「山猫」で以前から好んで引用するせりふを小沢氏は引き合いに出し「私自身がまず変わる」と演説で訴えた。
 菅直人氏陣営の幹部、江田五月参院議員会長は「(演説での)小沢氏のこの言葉が、みんなの心を打った。若い人たちから小沢氏に期待を込めた票が入ったのは事実」と敗因を振り返った。
 47票差の大差だが、小沢、菅の両陣営とも「予想通り」という受け止め方も多い。小沢氏は、自らの支持グループ(約30人)のほか、旧社会党系グループ(約20人)、鳩山グループ(約20人)、旧民社党系グループ(約25人)の支持で組織票を固めた。一部は菅氏側に流れたものの、これだけで過半数の97票に近づく。
 小沢氏はこの上に党内無党派層や自主投票の中堅・若手グループの一部も取り込み着実に票を重ねたことが大差につながった。
 小沢氏への若手議員の期待は大きかった。毎日新聞の事前調査で、衆院当選1、2回の若手(48人)の5割強が小沢氏に投票する意向を示したのに対し、菅氏へは2割弱。「民主党としては未知数の小沢氏にかける」(衆院当選1回)という声が相次いだ。当選3回の衆院議員は「3、4期以下は小沢氏をよく知らない人が多い。イメージだけで『小沢アレルギー』というほど強くない」とも話す。
 各種世論調査で小沢氏の支持率が高いことも選挙基盤の弱い若手に影響を与えたと見られる。当選1回の衆院議員は小沢氏支持の理由に「支持者へのアンケートで小沢氏が1位だった」ことを挙げた。
 これに対し、菅氏側が頼みにしたのは今回、自主投票となった中堅・若手グループや、党内無党派層などの浮動票だった。菅陣営は選対に演説の専門チームを設置して演説内容を徹底的に精査。演説での浮動票獲得を狙った。投票直前、演説原稿の作成にあたった若手議員は「20〜30票は離れている。演説で一発逆転するしかない」と語った。
 「36年小沢さんとつきあってきたが、あんなに真剣に演説したのを見たのは初めてだ」――。投票後、渡部恒三国対委員長は記者団に語った。
 ◇「挙党一致」演出に躍起 
 「民主党もオールスターキャストで全員が力を出し切れば、政権交代という『金メダル』を必ず取ることができる」
 7日の投票前演説。小沢氏は、先月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝した野球の日本チームを引き合いに、党再生のため「挙党一致態勢の確立」の必要性を訴えた。「王ジャパン」には菅氏も演説で言及していたが、独善的な党運営への懸念が強かった小沢氏の言葉だけに、党内にはより強いインパクトを与えた。
 「小沢代表」は本当に挙党態勢で党運営を行うのか。党がかつての新進党のように壊れることはないのか――。代表選の焦点は、結局はこの一1点に尽きていた。それを承知していた小沢氏は今回、自ら「挙党一致」の演出に躍起となった。
 最後まで模索した「話し合い一本化」路線が崩れ、選挙戦が避けられないとみるや、小沢氏は菅氏と並んで苦手のテレビ番組をはしご。「さわやかな選挙」の演出を狙う菅氏に付き合い続けた。菅氏とのツーショットを国民の前に多くさらし、選挙後の対立の懸念を払しょくする狙いだった。
 7日午前、議員会館の事務所で同党の当選1回の議員数人から「挙党一致態勢の構築を」との申し入れを受けた小沢氏は、相次ぐテレビ出演をねぎらわれると「あまり好きではないから、どうもかなわんなあ」と笑顔を見せた。
 最初の試金石は、代表選を戦った菅氏の処遇。小沢氏は就任会見で菅氏について「私にはない優秀な資質を持っている」と持ち上げた。菅氏を支持した若手議員は「再び9月に新任されるような党運営を念頭に置くと思う」と、早くもけん制モードだ。
 小沢氏を支持した旧社会党系議員は「代表選は相手陣営から(支持を)引きはがすのだから、しこりが全くないなんてあり得ない。しかしそれを乗り越えて『挙党態勢を作る』と言うのだから、勝った方が努力しないといけない」と語った。
 ◇「対案路線」修正へ
 「小沢代表」の誕生は、民主党にこれまでの代表交代と質的に違う変化をもたらしそうだ。なかでも顕著に変化しそうなのが国会運営だ。
 対案路線を掲げ小泉政権に「改革競争」を挑んだ前原誠司前代表と異なり、小沢氏がより対決型にシフトするのは必至。小沢氏を支持する議員の一人も「前原氏は自民党と連携しそうに見えた。小沢氏ならそんなことはない」と断言する。
 確かに、小沢氏がかつて野党第1党党首として率いた新進党は、住宅金融専門会社(住専)処理関連法案の阻止を目指し「ピケ戦術」を展開。政策論争重視で審議拒否を嫌う同党の従来の国会戦術は、大きく変質する可能性が高い。
 政治路線も変わりそうだ。民主党は結党以来、鳩山由紀夫、菅直人、前原の各氏ら、さきがけから旧民主党結党に参加した議員が代表を務める時期が長かった。旧民主党は「政局より政策志向」と言われ、ややリベラルな路線をとっていた。
 しかし98年、前年解党した新進党の出身者が多く入党し、03年には自由党と合併。所属議員全体ではむしろ保守色が強まった。同党が基本政策の面でしばしば党内の不協和音が目立つのにはこうした「頭」と「体」の路線の違いという事情もあった。自民党幹事長を務めた小沢氏の代表就任が、両党の違いをさらに見えにくくする可能性もある。
 ただ、かつて「普通の国」という言葉で知られた小沢氏流のタカ派路線が強調されると、同氏を支持する旧社会党勢力とのあつれきが表面化しかねない。7日の記者会見で小沢氏は対中関係や首相の靖国神社参拝問題への見解を問われたが、具体的には話さなかった。
 ◇自民、対決姿勢を警戒…ポスト小泉に影響も注視
 小沢代表誕生を受け与党は「自民党の手の内を知る手ごわい相手だ」(小泉純一郎首相)と警戒すると同時に「ポスト小泉」レースに与える影響を注視している。当面は小泉政権と対決姿勢を強めるとみており、23日投開票の衆院千葉7区補欠選挙が自民、民主双方に重要な初対決とる。
 「大差だなあ」。小泉首相は官邸執務室で、代表選をテレビで見ながらこう漏らし、一緒にいた自民党の武部勤幹事長に「改革競争をしっかりやろう」と語った。
 43歳で前原誠司氏が代表に就任した当時、自民党には、次期総裁選びで安倍晋三官房長官に追い風になるとの見方が強かった。政界全体を通じ世代交代が加速するとの観測が強まったためだ。今回、民主党は若さよりも党の変革を志向し小沢氏を選んだ。自民党森派議員は「小沢・民主に対抗して安倍さんのように若い人がいいか、福田康夫元官房長官のようなベテランという流れになるかわからない」と語り、総裁選びへの影響はなお見極めが必要と説明。首相は記者団に「すぐポスト小泉に変化があるとは言えないのではないか」と語った。
 一方、安倍氏は7日の記者会見で「われわれもしっかり気を引き締めて掛からなくてはならない」と語った。若い議員にはかつて小沢氏が剛腕を振るった時代の経験が無いせいか「9月代表選までもたず党がガタガタになるのでは」など、冷ややかな見方も多い。【田所柳子】
 ◇小泉首相「人間、変わらない」
 小泉純一郎首相は7日夜、民主新代表となった小沢氏が人間的に変わったとの見方があることについて首相官邸で記者団に「人間というものは、なかなか変わらないものだ」と述べた。
 首相は小沢氏について「わたしが初当選したとき、小沢さんは主流派。わたしは反主流派。面白い巡り合わせだと思う。自民党時代は小沢さんが総裁候補でわたしなんか全く相手にされなかった」と指摘。小沢氏が自民党との対立軸を強調している点については「自民党の幹事長をやっていたのだから、基本的にはそう変わらない」と述べ、けん制した。【小山由宇】



民主新代表に小沢氏 菅氏に47票差
(共同通信) - 4月8日0時8分更新

   民主党は7日午後、都内のホテルで新代表を選出する両院議員総会を開き、投票の結果、小沢一郎前副代表が菅直人元代表を47票の大差で破った。小沢氏は選出後の記者会見で、挙党態勢の構築に向け菅氏と鳩山由紀夫氏を代表代行や幹事長などの要職に起用する意向を表明。8日午後に三者が党本部で会談し、新執行部の骨格が固まる。小沢氏の任期は前原誠司前代表の残任期間の今年9月末まで。「送金指示」メール問題で危機にひんする党再生が最大の課題で、代表選で生じたしこりをぬぐい去れるかが焦点だ。
 小沢氏の得票は119票、菅氏72票で無効票はなかった。
 小沢氏は記者会見で、挙党態勢を構築する必要性を指摘。新執行部での菅、鳩山両氏の処遇について「3人が力を合わせることを考えないといけない。オールスターでそれぞれが特長を発揮する態勢ができればいい」と述べた。


●続いていくつかの新聞社の社説を見る。


民主新代表「ニュー小沢」は本物か
(朝日新聞 2006年04月08日)

 「剛腕」「壊し屋」。自ら「芳しくない評判」と苦笑するニックネームがついて回る小沢一郎氏が、民主党の新代表に選ばれた。

 衆参両院議員による代表選挙の投票結果は小沢氏119票、菅直人氏72票。大差の勝利だった。

 幹事長までつとめた自民党を割って出て、政権交代を実現した決断力。自民党の手の内を知り尽くし、選挙戦略にも長(た)けた老練さ。抜きんでた知名度。

 そうした点で、小沢氏に並ぶ人は少ない。まして総選挙大敗、偽メール問題と、立て続けの危機に見舞われている民主党である。ここは一度、小沢氏に任せてみるしかない――。そんな空気が「小沢待望論」として党内に広がったということだろう。

 だが、小沢氏にあのニックネームがついた由来を思い起こせば、不安を覚える人も少なくないのではないか。

 10年前、菅氏と鳩山由紀夫氏を中心に結成された民主党の結集軸は「反自民」とともに「反小沢」だった。当時の野党第1党、新進党党首だった小沢氏の、強引な手法や体質に対する反感である。

 会議や記者会見を嫌い、側近と言われた人物が次々と去っていく上意下達の強権ぶり。民主党がめざす、党の内外を緩やかに結ぶネットワーク型の組織と肌合いはおよそ異なる。

 小沢氏にも自覚はあるようだ。代表選では所属議員の事務所を一つひとつ回って頭を下げた。立会演説では政権交代のために「私自身を改革する」と誓った。かつてとは違う「ニュー小沢」を見てもらいたい、ということなのだろう。

 その気持ちを、選挙戦の単なる戦術に終わらせてもらっては困る。寄り合い所帯の意見をまとめるのは至難のわざだ。その一方で、巨大与党に立ち向かうには鮮明な対立軸を掲げることが急がれる。

 まずは執行部人事で本当の挙党態勢を実現できるかどうか。コンセンサスづくりへのねばり強い努力も必要だろう。

 小沢氏がもし、かつて党内対立の果てに新進党を解体させたのと同じ轍(てつ)を踏むことになれば、「政権交代こそ真の構造改革」という小沢氏と民主党の夢は夢のまま終わる。政権交代を普通のことにしていかねばならない日本の政治にとっても、失うものは大きい。

 この5年、民主党では4人の代表が任期半ばで次々と辞めてきた。政権をめざす政党のリーダーがくるくると交代するのは本来、望ましいことではない。

 だが、今回の小沢新代表の任期は前原氏の残り任期の9月までだ。秋には改めて、党員やサポーターも参加する正式な代表選の審判を受けることになる。

 その間に、活発な党内論議の先頭に立ち、今回の代表選で打ち出した「共生」「公正な国」「アジア外交の強化」といった理念や政策を肉付けし、ひとつにまとめ上げてもらいたい。

 「ニュー小沢」は本物か。それはこれから半年間の小沢氏が見せてくれる。



「ニュー小沢」を見せてほしい
(毎日新聞 2006年4月8日)

 さまざまな不安や不満を抱えながらも、所属議員は選挙と権力闘争の「プロ」に望みを託したということだろう。民主党の新代表に7日、小沢一郎氏が選ばれた。だが、偽メール問題で党への信用が地に落ちた中での船出である。小沢氏も党も、あらゆる面で現状から脱皮しないと出直しは簡単ではない。

 「まず私自身が変わらなくてはいけない」。この日の演説で、小沢氏はこう語った。剛腕と称されてきた小沢氏だが、93年、細川政権を誕生させて以降は、実際には失敗の連続だったといっていい。党を作っては壊す。自らの考えに従わない議員は排除する。表舞台に出たがらない……。

 小沢氏がどう変わろうとしているのか必ずしも明確ではないが、こうした負のイメージがつきまとっていることは本人が百も承知だろう。そして、今回が小沢氏にとっても「最後のチャンス」と決意しているのも間違いなかろう。

 小沢氏が剛腕ぶりを発揮できたのは、かつて自民党幹事長など政権の中枢にいて、黙っていても権力を行使できた時代の話である。すでに「小沢氏は過去の人」と感じている国民も少なくないだろうし、「政治のプロ」が嫌悪される風潮もある。加えて今は、党首の言動がどれだけアピールするかが、選挙の流れも決する時代だ。

 新代表として、まず心がけてほしいのは、国会や記者会見などオープンな場で、自らの考えを丁寧に国民に説明することではなかろうか。そして、この日、「徹底的に政策論議する」と自ら語ったように、党内の議論や手続きも大事にしてもらいたい。そんな、「ニュー小沢」を見てみたいと思う。

 一方、所属議員も、決まった以上は全員で代表を支えることだ。今回の代表選でも、特に中堅議員の間には「小沢氏も菅直人元代表も嫌」と距離を置く空気が目立った。かといって前原誠司前代表の「若さの失敗」に対する負い目もあってか、中堅グループからは候補者を擁立する動きもなかった。

 評論家のように批評するだけといった冷めた姿勢が民主党の一体感を損ねてきたことは再三指摘してきたところだ。むしろ、「小沢アレルギー」が強いと言われる中堅議員こそ積極的に小沢氏と議論を重ねた方がいい。そして激論の末、一度決めたら、その方針は守る。もう、まともな「大人の政党」に脱皮する時だ。

 小沢氏は今後、来年の参院選と次期衆院選に向け、選挙を重視した党運営を進めることになるだろう。だが、当面の緊急課題は開店休業状態に陥って久しい国会を、まともな姿に戻すことである。

 小沢体制の下、全党一丸となって国会対応を立て直し、まず政府・与党をきちんとチェックし、追及する。国民はそれができるかどうかを注視している。ようやく根づき始めた政権交代可能な2大政党化時代が、再び「自民党1強時代」に逆戻りするかどうかの岐路だ。「小沢氏でダメなら9月にまた選び直す」などと悠長なことを言っている場合ではないのだ。



[小沢民主党]「“剛腕”に賭けた党の再生」
(読売新聞 2006年4月8日1時38分)

 「結党以来最大の危機」からの再起を、民主党は、小沢一郎氏に託した。

 小沢氏は47歳の若さで自民党の幹事長を務めた。自民党を離党し、1993年の細川政権誕生の立役者になった。“剛腕”と称される政治力への期待感が、代表選での勝利をもたらしたのだろう。

 小沢氏は、2大政党制のもとでの政権交代こそが真の構造改革だと訴えた。だが、政権交代を実現するには、いくつものハードルがある。

 党の基本政策をまずは、一致させなければならない。憲法、外交・安全保障政策は「右」から「左」まで幅がある。

 「寄り合い所帯」体質を改め、党内で合意を形成することは容易ではない。

 例えば、自衛隊と別組織の国連待機部隊構想だ。小沢氏が以前、旧社会党出身の横路孝弘衆院副議長らと合意した。

 別組織論は、かつて自衛隊派遣の形を取らないための、いわば迂回(うかい)策として考え出された。自衛隊が数々の国連平和維持活動(PKO)に参加し、イラクなどで国際協力活動の実績を挙げている今となっては、時代遅れというしかない。

 小沢氏は、政策立案、国会論戦のすべてにわたって政権の選択肢を示す「対立軸路線」を取る、としている。

 年金、介護、高齢者医療は基礎的部分を消費税でまかない、公正で安定した社会保障制度を確立するという。では、消費税率をいつ、どの程度引き上げるべきなのか、具体的に示してもらいたい。

 先の衆院選の敗因には、労組の支援を受ける民主党が、郵政民営化問題の対案を示せなかったことがあった。

 小沢氏は今回の代表選で、労組との関係の深い、旧社会党系、旧民社党系のグループの支援を受けている。果たして、労組依存から脱却できるのかどうか。重要な課題の一つである。

 小沢氏の党運営について党内には懸念も少なくない。新進党の党首時代、“純化路線”を取り、反小沢派を排除した。自由党時代も党が分裂、側近議員が離れた。「壊し屋」との異名もある。

 「私自身が変わらなければならない」と小沢氏が繰り返したのも、従来の小沢流では挙党態勢を築けない、という判断があったからではないか。

 小沢氏は、来夏の参院選で与党を過半数割れに追い込むための戦略を練るだろう。だが、審議拒否など旧態依然とした抵抗戦術を取るようでは、有権者の信頼は得られまい。政局の思惑優先ではなく、あくまで政策で勝負すべきである。

 迂遠なようだが、それが小沢氏の言う「信頼される民主党」への近道だ。



小沢代表 強い民主党をどうつくる
(信濃毎日新聞 2006年4月8日)

 民主党の新代表に小沢一郎氏が選出された。偽メール問題で失墜した信用を立て直し、求心力を高める課題を背負っての登板である。党内論議を尽くした上でのリーダーシップ発揮を期待する。

 4年前に鳩山由紀夫氏が任期途中で辞任して以来、菅直人氏、岡田克也氏、前原誠司氏と、任期を全うしないまま代表の座を退くケースが続いている。いずれの場合も、代表を党全体で支える空気が乏しい中での交代だった。

 特に偽メール問題では、収拾にもたつく前原代表を「お手並み拝見」とばかりに突き放してみる空気が否めなかった。後継代表は話し合いで一本化し、選挙を避けるべきだとする声が最後まで残ったのは、党のまとまりのなさを議員自身が自覚しているためでもあるのだろう。

 小沢氏が119票、菅氏が72票の得票だった。激しい多数派工作の末の結果である。小沢執行部の最初の仕事は、適材適所の挙党態勢をつくることだ。しこりを引きずるようでは党立て直しは難しい。

 小沢新代表にとって難しいのは、基本政策で党内をどうまとめるかだ。小沢氏は自民党で幹事長など要職を務めてきた政治家である。安全保障、経済政策など、掲げる政策は保守色も濃い。

 旧社会党や菅氏を中心とするグループなどには、弱者重視の社会民主主義的な考えの議員も少なくない。そうしたグループを置き去りに、保守的な政策ばかり前面に押し立てるようでは、自民党との違いはますます分かりにくくなる。国民に向け「もう一つの選択肢」を提示する役目も果たせない。

 政党が分かりやすい公約を掲げ、党首が首相候補として信を問うのが小選挙区制の選挙戦だ。来年の参院選、さらには総選挙へ向けて党内論議を戦わせ、分かりやすい政策、政治理念を打ち出すこと。そして党のイメージをさらに鮮明にする取り組みが大事になる。

 小泉・自民党は弱点を幾つも抱えている。最大の泣きどころはアジア外交の行き詰まりと、社会に広がる格差の問題だ。

 野党第一党の役目は突きつめて言えば、政権交代が可能な緊張した政治状況を作りだし、維持することだ。民主党が弱体なままでは日本の政治は良くならない。

 国会の会期はまだ残っている。小泉政治の問題点を徹底的に突く論戦を、小沢・民主党に求めたい。


以上の記事を折々読み返し、民主党の進み方に注目していきたい。

【折々の記 2006 @へ】