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Magical Child 1
誰も知らなかった大脳発達のプログラム
<1 序文             >
<2 用語解説           >
<3 約束された未来:すばらしき遺産>

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 〔 1 序文                〕
 〔 2 用語解説              〕
 〔 3 約束された未来:すばらしき遺    〕
 〔 4 マトリックテ変換:既知から未知へ  〕
 〔 5 相互作用としての知能        〕
 [ 6 ストレスと学習           ]
 [ 7 自然を悪魔払いする医術       ]
 [ 8 分娩室にて             ]
 [ 9 終わりははじまり、はじまりは終わり@]
 〔 9 終わりははじまり、はじまりは終わりA]

【 1 序文 】

●子どもは[知能の成長を司る生物プラン=遺伝的な暗号]を備えており、その<心/脳>は驚くべき能力を発揮するよう設計されている。生物は細胞の集合体だから、知能の成長を司る生物プランとは、『細胞の願い』と考えておくとよい。あるいはまた、「生命の願い」とか、大自然の力にもとづく「超意志」とも言える。

●人間が未熟児で生まれる、その自然の意図に添って環境を供与するならば、想像を絶する能力が育つであろう。
[例]
・ウガンダの子育て     (「マジカルチャイルド」62〜65p参照)
・ジツコ・スセディックの胎教(「胎児はみんな天才だ」参照)
・カール・ビッテの教育   (「早教育と天才」15〜104p参照)
・ストーナー夫人の教育   (「早教育と天才」203〜278p参照)
・茨城科学万博のトマト栽培 (「0歳」9〜13p参照)

●今日的な青少年の問題は、子どもの生物プランと大人の既成概念の相剋から問題が始まっており、別の表現をすれば、<心/脳>の発達を左右する地球システムと人間の生物的つながりから問題が始まっている、と結論してもよい。
幼児自閉症、脳障害、子供の自殺、親の子ども虐待、校則と反発、校内暴力、少年非行などは、自然と人間が共生していた縄文時代や弥生時代からみれば、経済重視の考え方が強くなってきたための、地球システムと人間の生物的つながりのアンバランスがもたらしている状態であろう。

●人間は、可能性に対する非実現の罪を一般的には意識しない。
これとは逆に、意識して可能性の実現を求め、しかも易しく実践した人がいる。
[例]
・ジツコ・スセディック   (「胎児は天才だ」参照)
・カール・ビッテ      (「早教育と天才」15〜104p参照)
・ストーナー夫人      (「早教育と天才」15〜104p参照)
・グレン・ドーマン     (「子どもの知能は限りなく」他参照)
・三石由起子        (「天才児を創る」参照)

●ピアスの主張
@大人を出発点として子どもに遡る心理学は過ちである。
A子どもが、世界を解釈し肉体的にそれに応ずるには、自分自身の知的な知識を組み立てなければならない。(子どもの知識の構造)
 ・・・生きるということは、自己内部に自己の世界を築くことだ・・・
B子どもの知的成長には、その肉体的成長に対応するいくつかの発達段階がある。子どもの脳システムや知識の構造は、成熟を司る一種の時刻表に従って特定の変換をする。
C子どもの脳システムや知識の構造の変換は、遺伝的に決定されており、どの子どもにも同じ順序で大体同じ年齢に起こる。(臨界期と理解してよい)
Dブルーナーは、ピアスの立場に異論を唱えた。学習バリアを知れば、ブルーナーの説には同意できない。
Eエプスタインはピアスの説と同じ立場をとっている。
 「すべての子どもは、ほぼ同じ発達段階で周期的な脳の急成長が起こる」 
この脳の急成長は約4年毎におこると主張した。

●子どもの遊びや空想
空想的な遊びやマジカルな思考は、遺伝的構造の中での主要な役割によるものである。

●ピアスの『マジカル・チャイルド』のねらい
子どもの心と知能の成長を司る自然のプランの外観をスケッチすることである。

【 2 用語解説 】

▼new brain と old brain
new brain =<新皮質> 前頭葉、中央溝、頭頂野連合などコンピューター部分で、生まれた時には白紙の状態である。
old brain =<旧皮質>と<古皮質> 中脳、間脳。35憶年の、生命進化のプロセスがプログラムされている。

▼bonding  (絆)
言葉を越えた心と心のコミュニケーションの一種。赤ん坊にとっては、「母親と絆が結べるか否か」「母親とどのような絆が結べるか」が発達成長の鍵となる。「たちきりがたい気持ち」

▼intentとcontent  (原衝動と対応物)
原衝動とは、old brain のプロセスから生じ、乳幼児を現実の世界との相互作用へと駆り立てる衝動をいう。乳幼児の行為のもととなるこの原衝動にはまったく意味内容がなく、常に外界からの対応物、内容を必要とする。

▼mind-brain,mind-brain-body
mind-brain   =<心/脳>   
mind-brain-body =<心/脳/体> 
心脳、心脳体は、互いに密接に関連しあった一つのシステムである。

▼biological plan  (生物プラン)
自然が人間の中に遺伝的に組み込んだ発達成長のプランをいう。身体的成長ばかりでなく<心/脳>の発達成長にも働く。

▼hologram (ホログラム)
ホログラムとは、全体の像があらゆる部分や断片の中にも含まれている一種の写真である。たとえば、花瓶を写したホログラム・プレートを半分に割り、それを結像させると、二つに割ったどちらからも全体像が得られる。この部分の中に全体があるという現象が、脳の特質に似ていることから、脳のホログラフィ理論が生まれた。この本では、人間の脳ばかりか、地球自体も一つのホログラムと捉えられている。

▼matrix (マトリックス)
マトリックス(母胎、子宮)とは、子どもが絆を結ぶ対象である。
マトリックスの特性
@あらゆる可能性の源泉を与える。
Aその可能性を探索するエネルギーの源泉を与える。
Bその探索を可能にする安全な場所を提供する。
子どもの知能は、マトリックスが提供した安全な場所に立ち、マトリックスから与えられたエネルギーを活用し、マトリックスから与えられた可能性を探索することによって発達する。
「うばふところ」と同じ。植物や野菜の種子と同じく生命躍動がてきるところをいう。

▼rough in , fill in (ラフ・イン、フィル・イン)
rough in=子どもが、環境との相互作用を通して、生の素材・情報を取り入れることである。 大脳へのインプット。
fill in =生の素材・情報を組織化することである。

▼barrier=障壁、障害
critical period=[物理]臨界の期間

【 3 約束された未来:すばらしき遺産 】

●脳に秘められた驚くべき可能性
細胞というのは、その遺伝子の中に、驚くべき可能性をもって開花の時を待ち、可能性を実現したいという原衝動をもって、この世に生をうけている。
出生児は、大人の二十分の一の体重しかないのに、大脳は大人の四分の一の容積をもっている。現在の人間は大脳の容積の4%〜5%くらいしか利用していないという。これで、残っている大脳の95%〜96%を活用したら人間はどうなるのだろうか。これが、課題である。遺伝的生物プランは、洋の東西を問わず貧富を問わず、共通に着実に進められる。自然が存在を認めている細胞には、驚くべき<心/脳>の可能性を秘めているといわざるを得ない。

●自然は既に問題を解いている
自然は、失敗のプログラムを仕組まない。知能を充分に発達させるためには、この生物プランの存在を認め、これと協調していかなければならない。そうすれば、現在われわれの抱えている子どもたちにまつわる諸問題の大半は現実のものとはなるまい。問題の多くは人為的なものであり、自然のはからいの無視に起因しているからである。自然そのものは、永劫の昔にあらゆる問題を解いてしまっているからである。(調和・バランス・和といってもよい)
「IQは、環境条件、とくに家庭での養育状態に密接な関わりをもつ」と発表した、スキールズ(1938年、アイオワ大学のハロルド・スキールズ) はアメリカ心理学協会から追放されかけた。
自然は、子にも親にも成功プログラムを組み込んでいる。
子どもを育てるプログラムだけは、仕組まれていない。
新しく生を享ける脳システムには、潜在的な天才的プログラムが仕組まれている。

●old brain と new brain
old brain、すなわち古い脳というのは、2〜3億年の昔から過去で学んだ学習事項を受け継いでいる。
new brainはもちろん新しい脳であり、これから各種プログラムをインプットする領域である。
(細胞それ自体、一つ一つが想像を絶する複雑な知性をもっており、各細胞は、ソノ知性によって働くのである。・・・TVで紹介された驚くべき透視力・・・)

●ホログラムとしての脳
自然は、どんなに単純で小さな脳システムの中にも、無限の情報量と無限の能力をプログラムできる。
土中微生物カニムシを見たとき、まさに感動に値する。
ハトの帰巣能力、サケの帰巣能力も周知の事実である。
ホログラム・・・等身大の鏡に自分が映っていると仮定する。この鏡をあやまってバラバラに割ってしまったとしても、理論的には、その小さな鏡に目を近づければ、やはり自分が映っているはずである。
脳は、『全能力のホログラム・プレート』の一つであり、全可能性を備えているホログラムである。

●部分に宿る全体像
誕生と同時に、脳はホログラムの断片として、地球ホログラムに身をさらし、それと相互作用をしながらその鮮明度を高めていく。
子ネコを、生後2〜3週間の発育上最も大切な時期に縦縞模様の壁の部屋だけで過ごさせると、そのネコは成長してからも縦縞的性質の物体しか目に入らなくなる。椅子の足は完璧によけることはできても、水平のはしご段には正面衝突してしまうのである。(臨界期の存在証明)
ハチや伝書バトは短期でよいが、人間は自立期間が長い。それだけに「相互作用による質量の鮮明化(伝達)が大脳のホログラム構築の成否を左右する」といえよう。

●開かれた知性と柔軟な論理
知性とは、知識を構造化し、情報処理ができるものである。
柔軟な論理とは、体験を整理し、他の体験と相互作用する方法を編みだす大脳システムである。
大脳が大きく精巧になればなるほど、その動物のホログラムの及ぶ範囲は広くなり、相互作用の知力や能力は増す。

●<新しい脳>はコンピューター
情報の構造化、記憶、推論、創造、美意識、情緒バランス、整理統合解釈などを司る。

●なぜ人間の子どもは成長が遅いか
人間の大脳プログラムは、他の生物のように特定の限定性がなく、膨大なプログラムを活性化しなければならない。したがって完全な知的発達を遂げるまで、即ち情報のインプットとその構造化、およびその機能化としての能力が自立するまでに、極めて長い期間がかかることになる。
old brain のホログラムの内容は潜在的であるために、new brain の大脳システムの中で情報のインプットを行ないそれを構造化し、現実に役立つ知識として構築されなければならない。そうすれば、それは意思決定を行なうコンピューター部門となる。new brain の大脳システムの中で構造化された知識に変換されると、われわれは意識的かつ柔軟な行動をとれるようになる。それがひいては創造性につながる。

●old brain からnew brain へ
赤ちゃんはold brain のプログラムによって、地球ホログラムと相互作用しながらnew brain のコンピューター能力を完成させていく。

●子どもを駆り立てる原衝動 : 成長は地球との相互作用から
手足の動き、はいはい、寝返り、お喋り、お座り、噛みつきなどの原衝動は、現実世界との相互作用によって自分の世界を構築していく、その過程である。
転ぶと痛いとか、火は熱いとか、生柿はしぶいという五感の感覚も、具体的なものとの相互作用によって自分の中に獲得していく。一切の体験、パターン認識は、既得パターンとの取捨選択により統合され、その子の知識構造の基礎をつくり、小宇宙が形成される。

●未知なるものとの交渉が知力を育てる
知力とは相互に作用しあえる能力のことである。そくてこの能力は新しい現象と相互作用することによってのみ、つまり既知から未知への移行こそが成長の鍵にも障害にもなり得る。

●深刻な過ち
現代はあまりにも技術文化中心の価値観に囚われ、深刻な過ちを繰り返しているのではないだろうか。もし、技術と<パーソナル・パワー>をとり違えると、われわれは深刻な問題に巻き込まれる。

●子どもらの叫びに耳を傾けよ
ニコラス・ティンバーゲンは、1973年のベル賞受賞の際、そのスピーチの三分の二を費やして、世界の技術先進国に爆発的に広がりつつある幼児の自閉症について述べている。
またベビーベットでの静かな死、脳障害、活動過剰の機能障害、知恵遅れ、学習不能が増大している。
アメリカの学校ではこの10年で見ても、学業成績の水準が急激に低下してきている。1974年から76年にかけての短い期間をとってみても、学校内の教育体制と規律は急激かつ決定的な衰退をみせている。ベテラン教師たちでさえ、肉体的にも精神的にも力尽きて、意味をなさぬでたらめに対処しかねている。14歳以下の子どもたちの自殺も過去15年間で数百倍に達している。また最近では、神経性食思欠損症と呼ばれる新しい奇妙な、身体の新陳代謝の衰弱からくる病気が、ティーンエイジャー、とくに少女たちにみられるようになった。
子どもたちの苦しい叫び・合図に対して、大人は既成概念の域を越えず、その子葉末節にこだわり続けている。そして今や、教育技術にせよ教育システムにせよ、しつけや行動にせよ、すべてが子どもにとっても親にとっても、混乱の極みに達している。
われわれは、子葉末節にこだわらず、われわれに内臓されている三十数億年の成果に目をむけ、子どもたちに組み込まれている不思議な<心・脳・体>の知恵を見詰めなおし、自由で全体性を供えた子育てを目指さなければならない。

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