『父と戦争』
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ここから暫く写真日記風になる。
写真もプロの物らしく、定形のA6になり、シーンもドキュメンタリー風になる。

あの大陸の茫漠たる風景である。
ここの道無き道を人馬は進むのである。
「6ケ師の敵」とは何の事だろうか?6個師団の敵と戦うつもりなのか。
父の部隊は戦闘隊ではなかった。
何かヒロイックな心境になっていたのだろうか。
 日記の一節。  
昭14.7.11 晴
翼城東方於西橋村
追撃を前に 遠く
大行山脈を見 近く
大岳山脈の麓に立つ
重畳と重なり合うあの山
この尾根に敵のいき吹き
が見える
待て 6ケ師の敵

上の写真の裏書きである。
カタカナ入りの文字が戦中の文章らしく 雄々しい。
上写真のキャプションは戦後の物である。

左端の文章は招集されなかった長兄の猛雄に当てた物に相違ない。末弟の悌治も応召していたのだから。
「お母さん」の文字にジンとさせられる。
父も弟も未だ独身であった。長兄は既婚で、新潟で内科医をしていた。ひとり長岡の地に残した母(私の祖母「ミタ」)を気遣う気持ちがにじんでいる。
左下の隊列、前から二人目が
堀田中尉。

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