『父と戦争』
page 9
ここから暫く写真日記風になる。 写真もプロの物らしく、定形のA6になり、シーンもドキュメンタリー風になる。 あの大陸の茫漠たる風景である。 ここの道無き道を人馬は進むのである。 「6ケ師の敵」とは何の事だろうか?6個師団の敵と戦うつもりなのか。 父の部隊は戦闘隊ではなかった。 何かヒロイックな心境になっていたのだろうか。 |
↑ 日記の一節。 昭14.7.11 晴 翼城東方於西橋村 追撃を前に 遠く 大行山脈を見 近く 大岳山脈の麓に立つ 重畳と重なり合うあの山 この尾根に敵のいき吹き が見える 待て 6ケ師の敵 |
← 上の写真の裏書きである。 カタカナ入りの文字が戦中の文章らしく 雄々しい。 上写真のキャプションは戦後の物である。 左端の文章は招集されなかった長兄の猛雄に当てた物に相違ない。末弟の悌治も応召していたのだから。 「お母さん」の文字にジンとさせられる。 父も弟も未だ独身であった。長兄は既婚で、新潟で内科医をしていた。ひとり長岡の地に残した母(私の祖母「ミタ」)を気遣う気持ちがにじんでいる。 |
|
左下の隊列、前から二人目が 堀田中尉。 |