『解かれた魔法 運命の一日』〜第8話〜
投稿者 フォーゲル
「♪〜♪〜♪」
わたしは鼻歌を歌いながら自分の部屋で出かける仕度をしています。
今日は、学園はお休み。外もいい天気でどこかにお出かけするのには丁度いいです。
「あら〜すももちゃん。今日はご機嫌ね〜」
「あ、お母さん」
お休みなのでゆっくりしていたお母さんがわたしに声を掛けてきます。
「お母さん、ちょっと見てもらいたいんですけど・・・」
「うん?何?」
「ちょっとリボンがうまく決まらなくて・・・」
わたしはそう言いながら、お母さんに背を向けます。
「分かったわ・・・ちょっと動かないでね」
鏡に写るわたしの頭のリボンがキレイな形に纏まって行きます。
「よし!これでOKよ!」
「ありがとうございます〜」
わたしはお母さんにお礼を言います。
「いいのよ〜だけど本当に今日はご機嫌ね〜」
「え〜そうですか?そんなこと無いと思うんですけど」
わたしはお母さんの言葉を否定します。
「そんなことないわよ〜端から見てもスゴイ嬉しそうだもん」
お母さんは笑いながら言葉を続けます。
「ねえ〜すももちゃん・・・ひょっとして『男の子とデート?』」
「えっ・・・」
お母さんの言葉にわたしは顔が真っ赤になります。
「ち、違います!!今日は兄さんの魔法科進級のお祝いじゃないですか・・・」
兄さんが魔法科に転科してから、姫ちゃんの指導のお陰で兄さんの魔法の腕前は確実に上がっているみたいでした。
それで、兄さんが今度魔法科の昇格試験に合格したので兄さんには内緒でパーティを開こうという話になりました。
(ちなみに準さんの提案です)
「だからそれで、プレゼントを探してこようかと思って・・・別に和志くんとデートって訳じゃ・・・」
「あら〜?私は『男の子とデート?』って聞いただけで和志くんの名前は一言も出してないんだけどな〜」
「・・・!!」
お母さんの誘導尋問に引っかかったことに気がついたわたしは思わず黙ってしまいます。
「すももちゃんもやるわね〜雄真くんにかこつけて、和志くんと・・・」
「お、お母さん!!」
「あ〜すももちゃんが怒った〜〜」
笑いながら言うお母さんにわたしは思わずため息を付きます。
(はぁ・・・全くしょうがないですね・・・)
「2人共・・・何やってるんだよ?こんな朝早くから・・・」
「あ、兄さん・・・起きてきたんですか?」
廊下の反対側、自分の部屋から顔を出した兄さんが呆れたようにこっちを見ています。
「俺の名前が出てきたから何かと思ったんだが・・・」
「あ〜そ、その何でも無いですよ!?」
「本当か?何かウソ臭いんだが・・・」
疑いの眼差しでわたしを見る兄さん。
(兄さんを驚かせるためなのに、ここでバレちゃったら意味無いです)
「すももちゃん。もう出かけなくていいの?」
お母さんの声にわたしは思わず時計を見ます。
「・・・あわわわわ・・・大変です〜」
和志くんとの約束の時間まで10分くらいになっていました。
わたしはバタバタと残りの準備をすると、
「兄さん、お母さん、行って来ます!!」
「行ってらっしゃい〜頑張ってね〜」
お母さんの声に送られてわたしは家を出ました。
「遅いな・・・すももの奴、何やってるんだ?」
俺は待ち合わせ場所のオブジェの前でため息を付く。
昨日、すももに誘われた俺は驚いた。
『わたしに付き合ってくれませんか?』
「いや、あの・・・でも俺達出会ってまだ一ヶ月くらいしか経ってないし・・・」
「?」
俺の言葉に疑問符を浮かべるすもも。
「そういうのはもっとお互いを良く知ってからのほうが・・・」
「・・・!!ち、違います!そういう意味じゃなくて!!」
「えっ!?」
すももの事情をよく聞くと雄真さんのためにパーティを開くのでそのプレゼント選びに付き合ってほしいとのことだった。
「な、何だ〜そういうことか?」
「そ、そうですよ〜ちゃんと話を最後まで聞いてください」
すももが頬を赤く染めながら呆れたように言う。
(そうだよな〜引く手あまたのすももが俺のことを好きになる訳が・・・)
事実、すももは1年・・・いや瑞穂坂学園男子の間ではかなり人気がある。
半年もしないうちに彼氏の一人や二人あっさり出来てる可能性はあるだろう。
(・・・)
それを考えると俺の心の中に何かモヤーっとした感情が生まれる。
その感情の正体は俺にはよく分からなかった。
黙り込んでいた俺にすももが声を掛ける。
「あの・・・和志くん・・・ひょっとして迷惑ですか?」
上目遣いで瞳をウルウルさせながら言うすもも。
(うっ・・・)
俺はその瞳を見つめながら口を開いた。
「そういうことなら、分かった。付き合ってやるよ」
「本当ですか!!ありがとうございます!!」
嬉しそうな顔で言うすもも。
(その顔とあの瞳でお願いされたら断れないだろうが・・・)
俺は口に出さずそんなことを考えていた。
「和志く〜ん!!」
俺がそんな昨日のことを思い出していると耳慣れた声が聞こえて来た。
「ごめんなさい〜!!待ちました?」
息を切らしながらすももが俺を見つけて走り寄ってくる。
「いや、俺も今来たところだ」
大きなリボンが息を整えるすももに合わせて上下に揺れる。
そのリボンと服の袖に付いてるリボンの色はオレンジ色に合わせている。
黄緑色の服とリボン・スカートのオレンジ色がよく似合う。
そして、胸には特徴的な白いアクセサリーが揺れていた。
「・・・どうしたんですか?和志くん?」
じっと見ていた俺にすももが聞いてくる。
「いや、すももの私服姿って初めて見たな〜と思って」
「どこか、おかしいところでもありますか?」
自分の姿をチェックするすもも。
「いや、結構似合ってるな〜と思うよ。可愛いし」
「な、何言ってるんですか〜おだてても何も出ませんよ?」
(別におだててる訳じゃないけどな・・・)
俺は心の中でそう呟く。
「さて、じゃあこれからどうするか・・・すももは何か考えてきたのか?」
「え〜とですね・・・魔法の道具みたいなものが見たいんですけど・・・」
「魔法の道具?」
「魔法科の兄さんに何か普段から役に立つようなものをプレゼントしてあげたいと思いまして・・・
でも、わたし魔法のことなんて全く知りませんし、好みも男の子と女の子では違うじゃないですか?」
「それで、数少ない魔法科で男友達の俺をアドバイザーに指名したってことか?」
「そうです!今日はよろしくお願いしま〜す!」
ペコリと頭を下げるすもも。
「別に頭を下げる必要はないけどな・・・」
俺はそんなことを考えながら色々と行く場所を検討していた。
「うわぁ〜いろんなものがあるんですね〜」
店内をキョロキョロしながら興味深そうに品物を物色するすもも。
俺がすももを連れて来たのは、最近よく行くようになったマジックアイテムのショップ。
瑞穂坂学園があるせいか、この町には結構な数のマジックアイテムショップがある。
中でもここは裏路地にあるせいか、穴場の店なのだ。
「あ、ねえ、和志くん?これって何?」
すももが指差したのはキラキラとした輝きを放つ生地だった。
「これか?これはな、『魔法服』を作る時に使うんだ」
「『魔法服』って・・・姫ちゃん達が魔法の実習とかの時に着ている服のことですか?」
「そうだよ」
「前から疑問だったんですけど、姫ちゃん達魔法使いの人って何でわざわざ魔法服着るんですか?」
「う〜ん・・・それはな・・・」
俺はどういう風にすももに説明したらいいものかと考えた。
「一般的には『自分の身を守るため』かな?」
最近は魔法の研究が進んで来たから、ある程度は魔法の力も人間の手でコントロール出来るようになってきた。
しかし、それでも『魔法は扱いを間違えれば危険な力』という認識は常にある。
魔法を万が一暴走させてしまった時にある程度ダメージを吸収してくれるようなものが必要だった。
そこで発明されたのが魔法の力をある程度蓄えておける生地だった。
「あの表面でキラキラ光ってるのがその生地に掛けられている魔法なんだ」
すももが見ている生地を見ながら俺は言葉を続ける。
「じゃあ、あの生地には自分の身を守ってくれる魔法が掛かってるってことですか?」
「こういう店においてあるのはたいていそうだと思う」
すももの質問に答える俺。
「最も、神坂さんや柊さんクラスになると自分の身は自分で守れるだろうから、ある程度の工夫はしているかもしれないけど」
事実、柊さんの魔法服は自分で作ったオリジナルだって言ってたし、柊さんの性格から考えると、
防御するというよりは攻撃力を上げるための魔法を魔法服にも掛けているだろう。
神坂さんは防御・攻撃補助系の魔法を掛けてあるような気がする。
(だけど・・・神坂さんの魔法服は・・・)
俺も神坂さんの魔法服姿は見たことがあるが・・・
(性格に似合わず結構露出が大きいんだよな〜ミニスカートだし、その上・・・)
神坂さんの魔法服姿を想像する。
(スタイル抜群であんなに体のラインがピッチリ出ている服を着られると、男としてはその・・・目のやり場に・・・
俺は学年違うからまだいいけど、同学年の魔法科の男子生徒は困ってるんだろうな〜いろいろと・・・)
「・・・くん?和志くん?」
「えっ?ああ、どうした?すもも」
「『どうした?』じゃないですよ、さっきから顔がニヤけてますけど・・・」
「な、何でもない。何でもないぞ〜」
「何か変なことでも考えてたんじゃないですか?」
「べ、別に!?『神坂さんの魔法服姿はセクシーだ』なんてそんなことは・・・!!」
口を滑らせたことに気が付いた時にはもう遅く、
すももはジト目で俺を見ていた。
「ふ〜ん・・・和志くんもやっぱり男の子なんですね」
「あ、あの〜すももさん?ひょっとして怒ってます?」
「いえ〜ただこれは兄さんに報告しないといけませんね」
「そ、それは勘弁してくれ〜」
(やっぱり怒ってるじゃん・・・)
俺は心の中でそんなことを考えていた―――
「和志くん、ありがとうございます〜」
わたしはお礼を言いました。
「いや〜お役に立てたのなら光栄だが・・・」
結局、和志くんのアドバイスも受けながらわたしが兄さんのプレゼントに選んだのは、
剣と盾の紋章が彫ってある銀製のブレスレットでした。
「兄さん、喜んでくれますかね?」
「というか、すももからプレゼント貰って雄真さんが喜ばない訳がないと思うけどな・・・」
「そうですか?」
「そうだよ・・・というか別に魔法の品にこだわらなくたっていいんじゃないか?」
「・・・でも愛情のこもった品物だったら姫ちゃんがあげるでしょうしね」
「・・・」
わたしの言葉に和志くんは何も言いませんでした。
少し重くなった雰囲気の中、わたし達はあるお店の前を通りかかります。
「あ・・・」
わたしは思わずそのお店の前で足を止めていました。
そこはわたしと兄さんの思い出のアンティークショップ・・・
「どうした?すもも」
わたしが足を止めたことに気がついた和志くんが戻って来ます。
「あ、ううん、ちょっと・・・」
そう言ってわたしはある一点を見つめます。
そこにはちょっとレトロな感じのアクセサリーがあるはずでした。
しかし、売れてしまったのかその場所には何もありません。
「あそこにはわたしと兄さんの思い出の品物があったんですよ」
「・・・」
和志くんは黙ってわたしの話を聞いています。
「いつか、兄さんがわたしの気持ちに気付いてくれるようなことがあったら、そのアクセサリーのことも思い出してくれるんじゃないかって・・・」
だけど、兄さんはわたしの想いに気付くことなく、姫ちゃんを選んだ・・・
「本当は分かってたんです。兄さんと姫ちゃんは両想いなんだってことは」
でも、わたしは心の中ではまだ、兄さんのことを諦め切れていなかったのかもしれません。
「わたしは別にいいんです。兄さんが姫ちゃんと一緒にいることで幸せなら」
「すもも・・・泣いてるのか?」
「えっ・・・」
和志くんの指摘にわたしは自分の頬を触ります。
確かに、わたしの頬は濡れていました。
「ダ、ダメですよね〜こんなことで泣いてちゃ」
「・・・そんなことないんじゃないか?」
和志くんはわたしの両肩を掴み自分の方を向かせます。
「辛い時は泣いたっていいんだぞ。自分の中に溜め込んでもしょうがないだろ?」
優しい目でそう言う和志くん。
その黒い瞳を見た時にわたしの心の中で何かが弾けました。
そして気が付くとわたしは和志くんの胸にしがみついていました。
「す、すもも?」
動揺した声を上げる和志くん。
「ごめんなさい・・・でも少しだけ・・・こうしててもいいですか?」
そしてわたしは、和志くんの胸の中で、思いっきり泣きました。
和志くんは―――
わたしが泣いているのを誰にも見られないようにするかのようにを抱きしめてます。
兄さんへの想いが涙と一緒に流れていくような感覚をわたしは感じていました。
何も言わず、時折慰めるようにわたしの髪を撫でる和志くん。
その和志くんの気遣いがわたしにとっては何よりも嬉しかった―――
〜第9話に続く〜
こんにちは〜フォーゲルです。『解かれた魔法 運命の一日』の第8話目をお送りします〜
今回はデート編(?)前編になります。
何かすごい勢いですももに完全フラグが立った気がしてならない(笑)
最後のアンティークショップのシーンはゲームのすももルートからネタを拝借しました。
すももルート終ってからだいぶ日が経ってるから、記憶が多少怪しい(汗)
『魔法使いが何故魔法服を着るのか?』の個人的考察も入れてみました。
春姫の魔法服は本人のスタイルの良さと相まってかなりエロ(ry)
次回はデート編後編になります〜ついにあのキャラが登場!?とだけ言っておきます。
それでは失礼します〜
管理人の感想
というわけで、第8話でした〜^^
今回はすもも視点が多かったですね。話のメインとなる終盤を彼女視点で書いたことによって、より雰囲気が伝わってきました。
内容は和志とすもものデート・・・とまではいかないかもしれませんが、まあほとんどソレに近いですよね。
年頃の男子と女子が二人きりで買い物・・・あっ、これデートだ(笑)
そしてアンティークショップの店先で、兄の事を想い出し泣き出してしまうすもも。
彼女にとって、まだ兄は初恋の相手であり、そして諦めきれない気持ちが向かう先。
それを完全に振り切るために流した涙。その場所が、他でもない彼の胸だったから・・・。
次回はあのキャラが登場ということで・・・個人的にはI・Sさんだと思うのですが。
それでは、次回もお楽しみに^^