『解かれた魔法 運命の一日』〜第75話〜
投稿者 フォーゲル
「よ〜し、行くか・・・」
授業が終わり、俺は立ち上がる。
「和志くん、一緒に帰りましょう」
後ろの席からすももが声を掛ける。
「そうだな」
俺達は連れだって、廊下に出る。
ここまでは、今までと同じなのだが・・・
決定的に違うことがある。
「えへへ〜」
「あ、あの〜すももさん」
「何ですか?」
「人前でそこまでピッタリくっつくのはどうかと思うんだけど・・・」
俺達が式守家から帰って来てから、決定的に違うことの一つ。
すももが以前にも増して、俺に甘えることが多くなった。
「別にいいじゃないですか?隠す必要も無いですし。それとも・・・嫌なんですか?」
顔を伏せるすもも。
分かってる。これも音羽さん直伝の泣き落し攻撃だということも。
だけど・・・
「い、嫌な訳じゃないけど・・・」
「そうですよね〜なら問題無いですよね」
笑顔でますます俺にくっつくすもも。
周りの視線が・・・
最も、最初は男子の嫉妬に近い視線とかが多かったのが、
最近は、すももの『好き好きオーラ』のせいか、どっちかと言うと『また、あの2人は・・・』みたいな、
呆れたような視線が多い。
それに・・・
俺にピッタリとくっつきながら、笑顔を浮かべるすもも。
(この笑顔が曇るくらいなら、人前で恥ずかしい想いをした方がまだマシだ)
式守家での激闘を思い出しながら俺は、そんなことを考えていた。
「いらっしゃいませ〜!!」
ドアを開けると元気なウェイトレスさん達の声が響く。
「2人共、相変わらずラブラブね〜」
姉ちゃんが笑いながら俺達に近づく。
どこか遊びに行く前にすももが『Oasis』に用事があるらしいので寄っていくことにしたのだ。
「はい!!」
「す、すももちゃん、反論もしないなんて・・・完全に浮かれてるわね」
呆れたように肩をすくめる姉ちゃん。
「あれ?姉ちゃん。いつもと服装違うな」
「気が付いた?もうすぐクリスマスだからね。『Oasis』も特別仕様よ」
いつものウェイトレスの服装に赤と白のカラーリングが増えている。
「カズくん、似合うかな?」
「ああ、というか姉ちゃんは何着ても大抵似合うだろ?」
「ありがと。でも・・・」
「すももちゃんがムッとしてるよ。吾妻くん?」
不意に割って入った声に、俺は後ろを振り向く。
「あっ、神坂さんに雄真さん」
「べ、別にムッとなんか・・・」
少しだけ怒りながら、ソッポを向くすもも。
「すももには似合わないなんて、誰も言ってないだろ。どんな服だってすももが着たらその瞬間、俺の中では一番だ」
「か、和志くん・・・」
俺の言葉にすももの顔が赤くなる。
「どうでもいいけど、和志もすももも、いい加減離れたらどうだ?」
やっぱり、不機嫌モードの雄真さんがたまらず忠告する。
「それに、春姫に用事があって来たんだろ?すもも」
「あ、そうでした。姫ちゃん。こっちに来てくれますか?」
絡んでいた俺の手をようやく離し、神坂さんを引っ張って行くすもも。
「・・・」
「やっぱり、名残惜しそうだな、和志」
「イ、イヤ、ソンナコトハ、ナイデスヨ」
「思いっきり、動揺している時点で認めているようなもんだと思うが・・・」
そんな会話をしながら、ふと雄真さんが俺の顔を見て呟く。
「どうしたんだ?和志?」
「えっ?いや・・・こんなことしてていいのかなって・・・」
柾影が式守家で俺達の前から姿を消してから、大分経つ。
「いつ、柾影が『ユグドラシル』を完璧に使いこなして俺達の前に姿を現すか分からないのに・・・」
「とは言ってもな〜今柾影がどこにいるか分からない以上、こっちから仕掛けることは出来ないぞ」
『恐らく、『ユグドラシル』の能力で作った結界の中にいるだろうから、こちらから仕掛けるのは不可能。だったら、
柾影が姿を現した時点で動いて決着を付けるしかないわね』
それが御薙先生の下した判断だった。
『それまで、一般生徒達に動揺が広がらないように、みんななるべく普段通りに過ごしててね』
そういう訳で、俺達は普段と変わらないように生活している訳だ。
最も、俺やすももは師匠による特訓を。雄真さん達も特訓しているみたいだし、姉ちゃんも頻繁に関西魔法連盟と連絡取っているみたいだけど。
「お待たせしました〜」
ふと、振り返るとすももと神坂さんが立っていた。
「もう、いいのか?春姫?」
「うん、大丈夫」
「すもも、一体何を話してたんだよ」
「べ、別に何でもないですよ〜?」
様子から察するにすももが神坂さんに相談があったみたいだが・・・
「きっと、クリスマスに『和志くんが喜んでくれるのはどうすればいいですか?』みたいな相談よね。すももちゃん」
「お、お母さん!違いますよ」
会話に割って入って来た音羽さんに反論するすもも。
「だけど、そんな会話が出来るなんて羨ましいな〜」
ため息交じりに呟く姉ちゃん。
「あら、渚ちゃんなら、男の子の方から寄ってくるんじゃないの?」
「それが、なかなか・・・クリスマスだって予定は無いですし」
「じゃあ、私達と一緒に過ごすってのはどうかしら?『ブリティッシュ』の予約GET出来たのよ〜」
『ブリティッシュ』といえば、瑞穂坂市内でもトップクラスの高級レストランだ。
「凄いじゃん、どうやって取ったんだ?かーさん?」
「鈴莉ちゃんが顔パスが効くらしいのよ〜で、その後はオールで過ごす予定」
「オールって・・・かーさん達年を・・・」
「何か言った?雄真くん?」
「い、いや・・・」
ニッコリ笑顔で、しかし妙な迫力に何も言えずに黙りこむ雄真さん。
「でも、お母さん、確かに兄さんの言うとおりですよ」
たしなめるように言うすもも。
「え〜、だって今まで毎年、家族で過ごしてたのに、今年からは雄真くんもすももちゃんもラブラブなクリスマスだろうし・・・」
『なっ・・・』
固まるすももと雄真さん。
「それに〜2人共朝帰り濃厚だし」
『えっ?』
その言葉に今度は俺と神坂さんが固まる。
「・・・何を想像したんだ?和志」
少しだけ怒筋を浮かべながら問い掛ける雄真さん。
「そ、そういう雄真さんだって、似たようなもんでしょう?」
雄真さんの問いかけに反論する俺。
「この中でマトモなのは私だけみたいね」
姉ちゃんが呆れたような声で肩を竦めるのが分かった。
「全く、音羽さんは・・・」
ガックリと疲れた表情で歩く俺。
「ゴメンね、和志くん」
『Oasis』を出た後、俺達は今度こそ久々のデートを楽しむために学園の敷地内を歩いていた。
ちなみに、すももはやっぱりピッタリと俺にくっついている。
「いや、大丈夫だよ。それに慣れないとな。音羽さんは・・・」
「お母さんが何ですか?」
「い、いや・・・何でもない」
(さすがに、恥ずかしいな。『音羽さんは、将来“お義母さん”になる人だし』とは言えない・・・)
「?」
疑問を浮かべるすももの顔を見ながら俺がそんなことを考えてると・・・
“ズガガガガァァァン!!”
右手の『使鬼の杜』から爆発音がした。
思わず顔を見合わせる俺とすもも。そして―――
“ダッ”
「和志くん!?待って下さい!!」
走り出した俺を追ってすももが付いて来るのが分かった。
最初は柾影が予想以上に早く出現したのかと思った。
しかし、爆発音のした方から感じる魔力波動のパターンは・・・
現場に到着した俺が見たのは・・・
「いった〜い・・・なかなか上手く行かないわね。って・・・和志じゃない?どうしたのよ?」
「柊さん・・・脅かさないで下さいよ」
俺は思わずヘナヘナとその場に座り込んだ。
「今日は、バイトが休みだったからね〜ちょっと特訓してたのよ」
『こんなところで何やってるんですか?』
俺の質問に柊さんはそう答えた。
『我を完璧に使いこなせるようになってもらわないと困るのでな』
そう答えたのはパエリア・・・って。
「パエリアさん、いつもと雰囲気が違いますね」
俺と同じ疑問を抱いたすももが問い掛ける。
「ああ、今、パエリアはパエリアじゃないのよ」
『?』
「今、パエリアの中には『麒麟』の人格が出てるのよ」
そういえば、俺が召喚系の魔法を使った時も、レイアの人格が消えていたような気がする。
「アンタや雄真の『四神』の力は先祖代々受け継いでいる力のせいか、コントロールしやすいみたいだけど、
あたしは、『麒麟』に『力を貸しなさい!!』って言って力を借りてるからね、特訓しないと完璧に力を使いこなせないみたいなのよ」
(神に命令する柊さん・・・いろんな意味でさすがだ)
「和志、何か変なこと考えてない?」
ジト目で俺を見る柊さん。
「い、いえ・・・」
「さて、もう少し頑張るかな?・・・使いこなせないと命に関わるしね」
“ギュッ”
(えっ?)
ふと見るとすももが強く俺の制服の裾を掴んでいた。
「じゃあ、俺達は、行きますね。ジャマすると悪いですし」
「すももちゃんとクリスマスのデートスポットでも下見するの?」
笑いながら言う柊さん。
「そういう柊さんだって、もうすぐ『春が来る』みたいじゃないですか?姉ちゃんが言ってましたよ。
最近、『イギリスの彼氏』と連絡頻繁に取ってるみたいだって」
「なっ・・・!!ち、違うわよ!幼馴染がもうすぐ留学終わって帰って来るみたいだから、最近の日本のことを教えてあげてるだけよ!渚も結構、口が軽いのね・・・」
笑いながら柊さんと会話する俺。
しかし、さっきのすももの行動が気になり、そっとすももの表情を窺う。
すももは―――笑っていた。
しかし、その表情に少しの不安が浮かんでいたのを、俺は見逃さなかった。
〜第76話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第75話をお送りします〜
久々のラブコメ話で作者的にも、筆が進みました。
ラブラブぶりが更に加速する和志とすもも。
何気に音羽達に引っ張られて、性格が『困った大人達』に近づいている渚にも注目です。
1話で終わる予定でした幕間話ですが、もう1話続きます。
次回は・・・もっとラブラブ?
楽しみにして頂けると嬉しいです。
それでは、失礼します〜
管理人の感想
解かれた魔法、第75話をお送りして頂きました〜^^
前回までのシリアス全開な空気とは打って変わって、らぶらぶな幕間劇でしたね。
というか、学園自体相当久し振りなような(笑)
何というか、すももがかわいすぎますね。事件の方も一段落ついて、余計に甘えるようになった・・・というよりは。
私としては、それ以上に不安に感じているように思えました。柾影とシンシアの過去の話もその要因ですが、こうした日常生活の中にも、杏璃の特訓のようにやはり事件の影がちらつく・・・。
次回もラブラブ話ということで。今回同様、ニヤニヤしながら読ませて頂きましょう!