『解かれた魔法 運命の一日』〜第66話〜
投稿者 フォーゲル
「・・・」
誰もが寝静まっている真夜中の時間帯。
しかし、この日の柾影は眠れないらしく、ベットの中で何度も寝返りを打っていた。
(まあ、気になるよな・・・)
もちろん、夕方に柾影とシンシアさんを襲った連中に関してのことだ。
奴らは、シンシアさんの『光の弓』が発動した後も攻撃を続けて来た。
しかし、その攻撃は明らかに『光の弓』が発動した後とは違っていた。
(かなり、単調だったんだよな・・・)
明らかに手加減をしている様子がバレバレだった。
現に、柾影が黒ずくめの男の一人を倒すと、さっさと退却していった。
これらのことから、察するに・・・
(シンシアさんの『光の弓』が何らかの原因なのは間違いないな)
シンシアさんは、奴らが退却する姿を思いつめたような眼差しで見ていた。
「明日、シンシアに詳しく聞いてみるか・・・」
柾影も俺と同じことをポツリと呟いた。
「ふぁ〜・・・」
結局、ほとんど眠れなかった柾影。
眠い目を擦りながら、下に降りて行く。
「どうした?柾影。目が赤いぞ」
髭を蓄えた貫禄のある男性が柾影に向かってそう話し掛ける。
(そうか、この人が・・・)
「何でも無いよ、親父」
俺の予想通りの言葉を口にする柾影。
朝食を取るために椅子に座った時、近くにあった新聞の記事が目に入る。
【古代のマジックワンド・『ユグドラシル』博物館から盗まれる】
(な、何!?)
元の時代の全ての元凶でもある『ユグドラシル』それが姿を消した―――
記事によると、ベルリンの博物館に展示されていたはずの『ユグドラシル』が盗み出されていたということだった。
「親父、このニュースって・・・」
「ああ、それでな、ヨーロッパ中の魔法連盟が厳戒態勢に入ってるんだ」
「厳戒態勢?何でだよ?」
「お前も、知ってるだろう?『ユグドラシル』の伝説を」
頷く柾影。
「もちろん、伝説に過ぎないのかも知れないが、『ユグドラシル』がそれだけの伝説を残せるほどの魔力を秘めたマジックワンドだというのは確実だ」
「でも、その魔力は封印されてるはずだろ?」
「ああ、でも『ユグドラシル』に関しては未だに謎の部分が多い。何があるか分からないからな。一応、謙三兄さん達にも連絡しておいた」
「叔父さん達に?何でだ?」
「『ユグドラシル』が古代に起こした『ラグナロク』それが起こった時に、日本でも『四神』が現れたとか文献に残ってるからな。
それに合わせて、魔法絡みのアイテムは能力が活性化される可能性があるんだよ」
(ひょっとして・・・俺の青龍暴走や師匠のお姉さんの『式守の秘宝』の事故もその『魔力活性化』が原因の一つか?)
俺がそんなことを考えてると―――
「ほら、あなたも柾影も、いい加減に出ないとマズイんじゃないの?」
母親の言葉に、時計を見る柾影。
「本当だ。じゃあ俺はそろそろ出るから」
「ああ、気を付けていけよ」
父親の声に送られて柾影は自宅を出た。
(う〜ん・・・何かした訳じゃ無いよな・・・)
夕方、人影の無い川沿いの道を歩きながら、考え込む柾影。
俺もそうだが、柾影も戸惑っていた。
他ならないシンシアさんのことだ。
学園に付くなり、昨日のことを詳しく聞こうとシンシアさんの教室を訪ねた柾影。
しかし、シンシアさんは、柾影の姿を見るなり―――
フッと視線を逸らした。
“えっ?”
そして、それ以降、休み時間、昼休み、放課後とシンシアさんの姿は教室には無かった。
昨日のこともあったのか、心配になった柾影はクラスメイトを呼び出して、詳しい事情を聞きだした。
そして、返って来た答えは―――
「1時限目だけで早退かよ・・・」
だが、柾影はそれはウソだと思っていた。
明らかに昨日のことが影響している。
・・・最も、クラスメイトには『藤林くん、あなたシンシアに何か変なことしたんじゃないでしょうね?』とか疑われたが・・・
『どう考えても、昨日のことが原因だな』
「お前もそう思うか?ウィス」
『ああ、それにもう一つ気になることがある』
「何だよ?」
『それは・・・』
ウィスが言葉を続けた時のことだった。
“ゾクッ”
不意に悪寒が背中を走り抜ける。
柾影は不意にジャンプする。
今まで居た場所を氷が覆う。
(な、何だ!?)
柾影はバランスを立て直しながら、自分を襲って来た奴を見つめる。
今回は覆面をした男が一人。
「今回は一人なんだな?」
だが、男は意外なことを口にした。
「シンシア・ニアハートの友人だな?」
「・・・だったら、どうする?」
「ここで死んでもらう」
「なっ?それはどういう意味だ?」
だが、男は何も答えずに、小声で呪文を唱え始める。
「クソッ!」
柾影も呪文を唱え始める。
先に完成したのは覆面の魔法だった。
男の影が変な形に伸び、それが刃の形になると柾影に襲い掛かる。
それを柾影は、あるいは交わし、あるいはウィスで叩き落す。
『シニック・レリス・ライ・レガス・フォル・ハーレス!!』
ウィスから5発ほどの握りこぶしくらいの魔力弾が放たれる。
しかし、それらは覆面にあっさり交わされる。
「どうした、そんなものか?」
嘲笑う覆面。
しかし、次の瞬間・・・
“ドォォォォォォン!!”
覆面の背中に攻撃魔法が炸裂する。
「油断大敵だぞ」
俺は今更ながら柾影の魔法の実力を目の当たりにして驚いていた。
今の魔法は俗に『誘爆魔法』と呼ばれるもので、単純に説明するならば一つの魔法弾が爆発した瞬間に
他の魔法弾が爆発の範囲内にあると、その爆発の威力を取りこんで威力が倍増するというものだった。
こうすることで一発目が遠くで爆発しても誘爆しながら目標に当たる頃にはかなりの威力になっているのだ。
「なかなかやるな・・・しかし」
覆面は河原に逃れる。
「待て!」
『おい!柾影、深追いはするな!』
ウィスが訝しむ声を上げる。
「分かってる!でも・・・」
柾影はその先の言葉を飲み込んだ。
(シンシアに何が起こっているのか・・・あいつから事情を聞き出せれば・・・)
草が生い茂る河原を必死に追いかける柾影。
その時だった。
覆面がまた呪文を唱えていることに気が付いた。
そして、次の瞬間―――
“ピキッ”
いきなり柾影の足がつんのめり動かなくなる。
足元を見ると、柾影の足が凍っていた。
“ピキピキピキッ”
生い茂る周りの草が凍り始め、柾影の動きを止める。
気が付くと、あっと言う間に柾影は凍った草に絡み取られてしまった。
覆面は何も言わず、手のひらに魔力が集まって行く。
(クッ・・・クソッ!!)
同化している俺にも焦りが生まれる。
しかし、次の瞬間―――
男は魔力の溜まった手のひらをおもむろに明後日の方に向ける。
その瞬間、飛び来た魔法弾と覆面の魔力が相殺された。
それと同時に、柾影を縛っていた氷の草が解けて無くなる。
気が付くと、覆面の男の周囲には、4人の男達がいた。
(ど、どういうことだ?)
柾影は驚いてた。もちろん俺もだ。何故なら―――
その男達は以前、俺とシンシアを『襲った』4人の男だった。
「柾影くん!!」
「シンシア!?」
シンシアさんは柾影の姿を見るなり、抱きついて来た。
「良かった、無事だったんだね」
「あ、ああ・・・」
そんな俺達の余所に4人の男達は覆面男を警戒するように包囲していた。
「さて、どうする。アンタに勝ち目は無いと思うが・・・」
男の言葉に覆面は腕を振り上げると―――
(!?)
柾影に驚きの感情が生まれる。
しかし、それを口にするより早く覆面男は姿を消した。
「・・・今回はお礼を言います。だけど」
シンシアさんがそう口を開いたのは、覆面の魔力反応が近くから完全に消えてからだった。
「分かっています。でも私達としては、あなたの力が必要だということを忘れないで下さい・・・『シンシア様』」
「・・・」
男の言葉に何も答えないシンシアさん。
男もこれ以上は何を言っても無駄だと悟ったのか、転移魔法を使って仲間達と姿を消した。
「・・・」
「・・・」
黙りこくるシンシアさんと柾影。
しかし、埒があかないと思ったのか柾影は口を開く。
「お前、『魔法連盟』に命を狙われてるのか?」
「!!」
明らかに動揺するシンシアさん。
「今回、俺を襲った男の腕には『魔法連盟』の所属であることを証明するタトゥーが腕に入っていた・・・なあ、シンシア、お前に何が起きてるんだ」
「柾影くん・・・私のことは・・・」
「放っておけってのは、無しだぞ。それに俺だって当事者なんだからな」
シンシアさんの肩を抱き目を覗き込んで言う柾影。
はぁっ・・・とため息を付くシンシアさん。
「出来ることなら誰も巻き込みたくなかったんですけどね・・・」
「それで、何が起きてるんだ?」
「それを説明するには、私の力―――『ウルスカディ』について知ってもらう必要があります」
シンシアさんの力―――あの『光の弓』のことか?
そうしてシンシアさんは語り始めた―――自分の『力』について―――
〜第67話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第66話になります。
今回はシンシアを取り巻く状況の変化について詳しく書いて見ました。
かなりややこしい状況に陥っているシンシアを柾影は守れるのか?
そして、シンシアの力『ウルスカディ』とは?
博物館から姿を消したユグドラシルも含めて次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。
それでは、失礼します〜
管理人の感想
フォーゲルさんより、解かれた魔法の第66話をお送りして頂きました〜
前話に引き続き、またも襲われる柾影。しかし今回は、どうやら違う相手で・・・しかも、助けたのはこの前襲ってきた連中。
シンシアと魔法連盟の関係・・・いや、もはや因果とも呼べる確執が気になりますね。
やはりユグドラシルが盗まれたことが関係しているのでしょうか。
ウルスカディという単語も気になりつつ、今日はこの辺で。また次回も期待しましょう!