『解かれた魔法 運命の一日』〜第65話〜









                                                投稿者 フォーゲル






  (やっぱり、気になってたのか・・・)
 ここは学園の図書室。
 柾影の目の前には大量の魔法に関する魔導書やら文献やらが山積みにされていた。
 「やっぱり、教科書に載っている以上の情報は得られないか・・・・」
 そう言って魔導書を閉じる柾影。
 一週間前、いきなり何者かに襲われた柾影とシンシアさん。
 幸い、2人共怪我は無かったが、攻撃の跡を考え込むように見つめていたシンシアさん。
 その表情に、若干の不安が浮かんでいたことに柾影は気が付いていた。
 最も、その後は何事も無かったかのように笑顔を浮かべていたが・・・
 

 同化している俺には柾影がシンシアさんのことを心配していることが良く分かった。
 それは、今のこの行動―――
 放課後になるなり、図書室に籠って調べ物をしていることからも明らかだろう。
 気になるのは、柾影が調べている『魔法』の内容―――
 (『ユグドラシル』のことか・・・)
 俺は、『今の状況』を知っているから『ユグドラシル』絡みの何かがあるのかと考えたが・・・
 この時点では、柾影と『ユグドラシル』の間には何の繋がりも無いはずだ。
 (これも、『運命』って奴なのか?)
 柾影が魔導書を片付けて、帰り支度をしていると・・・
 「こんなところに居たんだ」
 「シンシアか」
 シンシアさんがゆっくりと柾影の方に近づいて来る。
 ちなみに、柾影がシンシアさんのことを呼び捨てにしているのは、『さん付けは無し!!』とシンシアさんに強制されたからだ。
 (・・・ってますますすももに似ているな)
 全く同じ経験をしたことがある俺としては、苦笑を浮かべたい気分だった。
 「どうしたんだよ」
 「『どうしたんだよ』じゃないよ。みんな待ってるんだよ」
 「ああ・・・そうだったな」
 柾影の『東洋魔法学講座』は一部生徒に大好評を受けていた。
 だんだん、聞きたい人達も増えて来て、その中には柾影を毛嫌いしていた人達もいた。
 「よし、じゃあ行くか」
 「急ごう、今日は時間もあるし、私個人としても楽しみにしてるんだよ」
 そう言って笑うシンシアさん。
 その表情は、一週間前に感じた不安気な表情は浮かんでいなかった。
 「気のせいか・・・」
 「・・・?何か言った?柾影さん?」
 「いや、何でも」
 柾影はそう答えるとシンシアさんの後に付いて歩き始める。





  「いや〜お前の話は面白いよ、柾影」
 柾影の話が終わった後、一人の男子生徒が柾影に話掛ける。
 「そうか?確かに東洋の魔法はこっちとは違う独自の発展を遂げてるからな」
 同化している俺もそれは感じていた。
 現に柾影がみんなに話していた内容はヨーロッパでは珍しいものが多いらしかった。
 「特に・・・アレだ。『四神』だっけ?本当にそんな『生き物』がいるのか?」
 「文献上の話だからな・・・でも過去の時代には存在していたらしいぞ」
 (なるほど・・・柾影は『四神』の存在を知っていたのか)
 俺がそんなことを考えていると、柾影はその男に逆に質問していた。
 「そういえば、こっちの魔法使いも魔法を使う時には、『マジックワンド』を使うんだよな?」
 「ああ、そうだぜ。お前の話を聞く限りじゃ日本ではそうじゃない魔法使いもいるみたいだけどな」
 その男子生徒は自分のマジックワンドを掲げて見せる。
 柾影の魔法知識は一介の高校生とは思えないほど、博識だった。
 例えば日本には、『自分の魔力を魔法としてではなく、例えば剣などの形で使えたりする一族もいる』というのは
 俺も知らなかったことだ。
 「それがどうかしたのか?」
 「ああ・・・ちょっとな」
 そう言う柾影の目はシンシアさんの方を向いていた。
 (あ・・・)
 その行動で、俺も思い至った。
 (そういえば、シンシアさんのマジックワンドって見たことないな・・・)
 シンシアさんも魔法科所属だから、マジックワンドを持ってるはずだ。
 (でも、世の中には魔法が使えなくても、魔法科に所属している生徒もいるらしいからな)
 実践面がダメでも理論面で優秀だと認められればそういう事例もあるらしい。
 (そういえば姉ちゃんが柊さんの幼馴染がそうだみたいな話をしてたっけ・・・)
 姉ちゃんが柊さんを『彼氏なんじゃないの〜?』とからかいながら問い詰めていたのを思い出す。
 「・・・そうか、そうか〜」
 その男子生徒は何故かニヤリとしながら、柾影を見る。
 「な、なんだよ、その目は」
 「柾影、シンシアは人気あるから、アタックするなら早めにしておいた方が得策だぞ」
 「なっ・・・!何でそうなるんだよ!」
 「違うのか?さっきからシンシアの方を熱い眼差しで見てるから俺はてっきり・・・」
 「違うって・・・」
 呆れながら答える柾影。
 しかし、俺は柾影の心が高ぶっているのを感じていた。
 





  「みんな今日はどうしたんだろう」
 疑問を感じながら、首を傾げるシンシアさん。
 今日は、シンシアさんの提案でみんなで遊びに行く予定だったのだが・・・
 「今日は補習が・・・」
 「家の手伝いが・・・」
 「家族で親戚の家に・・・」
 「野良犬にエサをやらないと・・・」とかいうのまであった。
 しかも全員が明らかに柾影に向かってアイコンタクトをしていったし。
 
 『頑張れよ!!』というメッセージ性が籠ったものだった。
 
 (なるほど、どうやら自分の気持ちに気が付いていないのは柾影だけか・・・)
 全くしょうがないな〜とか考えながら、俺はふと考える。
 (準さん達も俺とすももをこんな気分で見てたんだろうな)
 そんなことを考える俺。
 「まあ、みんな用事があるんならしょうがねーよ」
 「でも、私はちょっと嬉しいかも」
 「何で?」
 「・・・柾影くんと久々に2人きりだし」
 「えっ?」
 笑顔を浮かべながら言うシンシアさん。
 いくら、その言葉自体は柾影に向けられたものとはいえ、すももに印象が似ているせいか、
 俺までドキドキしてしまう。
 「あ、あの・・・」
 そんな柾影の顔を覗き込むように見つめるシンシアさん。
 「柾影くん・・・私・・・」
 「な、何だ?」
 ドギマギしながら答える柾影。
 「・・・プッ」
 「へっ?」
 「・・・ドキドキした?」
 ペロッと舌を出しながら答えるシンシアさん。
 「お、お前。からかったな?」
 「さあ、どうでしょう?」
 笑いながら走り出すシンシアさん。
 「お前、待て!!」
 苦笑を浮かべながらシンシアさんを追い、角を曲がって大通りへ。
 
 “ドンッ!”

 急に立ち止ったシンシアさんの背中に思いっきりぶつかる。
 「痛って〜おい、急に止まるなって・・・」
 だが、柾影の言葉にシンシアさんはなんの反応も示さない。
 「一体、どうしたんだよ・・・」
 柾影はシンシアさんの背中越しに大通りの様子を見て、異変に気が付いた。
 時間帯は夕方、当然買い物などをしている奥さん達などで、賑わっているはずだった。
 だが、今は人っ子一人見当たらない。
 (これは・・・)
 俺はこの状況に似た経験をしたことがある。
 師匠と一緒に伊織さんの結界に閉じ込められた時のことだ。
 (じゃあ、結界に閉じ込められた?)
 だが、柾影はそんな状況にはあったことは無いらしく、その心から感じられるのは戸惑いだった。
 「なんだ・・・これ」
 柾影が呟いたその時だった。
 「―――!!」
 急に気配が出現した。
 慌ててそっちを向く柾影とシンシアさん。
 そこには、全身黒ずくめの人間が4人立っていた。
 「何だ、お前達は?」
 シンシアさんを後ろに庇いながら、問いかける柾影。
 「・・・」
 しかし、黒ずくめの人間達は無言でマジックワンドを取り出す。
 「問答無用かよ!」
 柾影さんも『ウィステリア』を構える。
 『ディ・アルトル』
 黒ずくめの一人が唱えた呪文により生まれた黒い魔法弾が2人に向かって降り注ぐ。
 シンシアさんをかばいながら後ろに後退する柾影。
 そして―――
 『シニック・レリス・ライ・サル・イリング・ファーディルド!!』
 地面から壁がせりあがり魔法弾からガードする。
 だが、その壁を飛び越して、更に2人の黒ずくめが襲いかかる。
 本能的に柾影はそれを交わす。
 その時だった。
 一人は柾影に向かい、もう一人はシンシアさんに向かった。
 「しまった!」
 自分の方に向かった黒ずくめを牽制し、シンシアさんの方に向かう。
 だが、間に合いそうに無い。シンシアさんは固まったまま動けずに―――

 “フッ”

 その時、シンシアさんの姿が柾影の視界から消えた。
 (えっ?)
 そして次の瞬間!!
 「はぁっ!!」
 気迫の籠った声と同時に黒ずくめが崩れ落ちる。
 シンシアさんの魔力が籠った拳が深々と突き刺さっていた。
 「お、お前、強かったんだな」
 「まあね、一応護身術として、武術を少々ね」
 笑いながら答えるシンシアさん。
 「しかし、これで行けるか・・・」
 確かに、シンシアさんがある程度戦えるなら、何とかなるかも知れない。
 


 
 事実、その後の戦いは柾影達の有利に流れた。
 『シニック・レリス・ライ・アス・シュル・ザーフォル!!』
 柾影の放った光の衝撃波が最後の黒ずくめの男を打ち倒す!
 「これで・・・終わりか・・・」
 柾影が一息付いたその時だった。
 「・・・?」
 (身体が動かない!?)
 見ると柾影の影が黒ずくめから伸びた影と繋がっている。
 シンシアさんも足を動かせないような状態になっていた。
 「おい!」
 もう一人の黒ずくめが呪文を唱え始める。
 「クソっ!」
 そして、その呪文が完成し、柾影に向かって放たれようとしたその時。
 
 “ヒュゴウッ!!”

 突如飛んで来た光がその黒ずくめを打ち倒す!
 光の飛んで来た方向を見つめる柾影。
 その先には―――
 「ハァ・・・ハァ・・・」
 肩で息をしたシンシアさんが立っていた。
 魔力で出来た弓のようなものを構えて。
 (な、なんだと・・・)
 俺が驚いたのはその弓ではない。
 驚いた理由は―――

 (『ユグドラシル』の魔力・・・だと・・・)

 柾影の『今の』マジックワンド・ユグドラシル。
 それに似た魔力を、シンシアさんが生みだした弓が放っていた。






                                  〜第66話に続く〜


                          こんばんわ〜フォーゲルです。第65話になります。

                               少しずつ話が動き出した過去編。

                           柾影のことを理解してくれる人達も少しずつ増え、

                            シンシアともいい感じになって来た柾影。

                              しかし、またまた襲われる2人。

                        戦いの中で判明したシンシアと『ユグドラシル』の繋がりとは?

                            次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。

                                 それでは、失礼します〜



管理人の感想

フォーゲルさんより、解かれた魔法の最新話、65話をお送りして頂きました〜^^

柾影の過去編も、新展開を見せ始めましたね。それは柾影とシンシアの関係もそうですし、シンシアとユグドラシルの関係も気になります。

そしてまたも襲われた二人。果たして、狙われているのは柾影なのか、それとも・・・?

これからがワクワクするような展開ですね。次回も楽しみに待ちましょう!



2009.6.20