『解かれた魔法 運命の一日』〜第59話〜
投稿者 フォーゲル
“ズガァァァァァン!!”
耳をつんざくほどの大きな音が聞こえる。
(な、何だ!?何が起こったんだ!?)
そして、気が付くと俺の体が宙に浮いていた。
「か、和志くん、何が起きてるんですか!?」
俺と同じような状態になっているすももが不思議そうに問いかける。
その問いには答えずに俺は下を見る。
俺達の体は今まで、護国さんの話を聞いていた部屋から2〜3mほどの高さに浮いている。
部屋の中は、見事に底が吹き飛ばされ、その爆発の衝撃で屋根も無くなっていた。
「大丈夫ですか?皆さん」
高峰さんが声を掛ける。
その周りには、いつものようにタマちゃんが・・・
いや、違う。
いつもは緑色のタマちゃん達が今は紫色に染まっていた。
そのタマちゃん達からは高峰さんの魔力ではなく、別の魔力を感じていた。
「どうやら、うまくいったようですね」
そういう高峰さんの額には汗が浮かんでいた。
俺の想像通りだとすると、多分高峰さんは『玄武』を召喚したのだろう。
更に、コントロールしやすくするために、直接召喚するのではなくタマちゃんを通して魔力を放出した。
俺達の周りを取り巻くタマちゃん達の間に、亀の甲羅の形をした魔力が見える。
しかし高峰さんが『玄武』を召喚するほどの事態ということは・・・
俺は下の方を見る。
下には、護国さんと・・・黒い髪にショートヘアの一人の女の子。
「あ・・・」
彼女の姿を見たすももが呟くような声を上げる。
「知ってるのか?すもも」
「は、はい・・・さっき和志くんと伊吹ちゃんが居なくなった時に、わたしと小雪さんの前に姿を見せたんですけど」
そう言いながら、すももは考え込むような表情をする。
下にいる護国さんが手を挙げると一度だけ下ろす。
それに合わせるかのように、ゆっくりと、俺達の体が下がって行く。
そして、丁度床があった位置で、ピタリと止まる。
(そうか、俺達の体を空中に浮かせたのは、護国さんの魔法か・・・)
それに合わせて、高峰さんが『玄武』を召喚して、下から来た魔法攻撃をガードしたってことか・・・
「私のことが分かりますか?護国さん?」
感情を抑えた声で問いかける彼女。
「・・・分かっておる。鳥野伊織殿。関西で藤林家の補佐を務める『風流四家』の一つ、『鳥野家』の後継者―――」
「そして、あなたに『青龍捕獲』の任務を受けて、行き先で死んだ鳥野邦彦(くにひこ)の妹です」
「!!」
俺の脳裏にあの時の光景が蘇る。
「お主の目的は分かっておるよ・・・」
疲れたような口調で言う護国さん。
「そうですか・・・だったら」
伊織さんはマジックワンドを護国さんに向けた。
その先がキラリと光ったかと思うと―――
「グウッ!!」
その声と共に護国さんが膝を付いた。
「護国!!」
師匠が思わず護国さんに走り寄ろうとして―――
「来るでない!!伊吹!!」
その声に師匠の足が止まる。
「な、こ、これは・・・」
見ると師匠の足もとに魔法陣が浮かんでいた。
「これは・・・捕縛魔法・・・ですか?」
呻き声を上げる高峰さん。
俺とすももの足元にも同じ魔法陣が発現していた。
(クソッ・・・彼女が仕掛けたのか?)
その俺の考えがすぐに否定されることになる。
「何故だ!何故こんなことをする!?護国!!」
(えっ!!)
師匠のその言葉に思わず俺は、護国さんの顔を見る。
護国さんの顔には、自嘲の笑みが浮かんでいた。
「これは、わしの罪だ。罪は償わなければならぬ」
「覚悟は、出来ているということですね」
彼女の―――伊織さんの表情は無感情だった。
「クッ・・・」
それから何時間同じ光景が続いただろう。
伊織さんのマジックワンドから生まれた光の矢が護国さんの体を貫く。
それを黙って受け続ける護国さん。
「クソッ!!護国!!早く魔法を解くのだ!このまま黙って殺されるつもりか!?」
師匠の声には今やハッキリと焦りの色が浮かんでいた。
「・・・」
その問いに何も答えない護国さん。
(護国さん・・・本気でこのまま殺されるつもりか!?)
「か、和志くん・・・」
「す、すもも・・・大丈夫か!?」
同じく護国さんの捕縛魔法で動きを封じられているすももに俺は声を掛ける
「わ、わたしは大丈夫です・・・そ、それよりも」
すももは、今も無表情で護国さんに攻撃を続けている伊織さんに目を向ける。
「は、早く伊織さんを止めないと・・・」
「ああ、分かってる・・・このままじゃ本当に護国さん・・・」
「い、いえ、それもありますけど・・・」
すももは考え込むような表情を見せる。
「このままじゃ、伊織さんも危険なことになるかも・・・」
「どういうことだ?」
「わ、わたし、さっき和志くん達がいなくなってた時、伊織さんの姿を見たって言いましたよね」
すももの言葉に頷く俺。
「その時、わたし伊織さんが泣いてるのに気がついたんですよ・・・きっと伊織さん、迷ってるんじゃないですか?」
「迷う?」
「伊織さんは心の奥底では自分のしていることが間違ってるということに気が付いてるんだと思います。でも・・・」
すももは俺の目を見て言う。
「今は、自分の心にウソを付いているような状態なんだと思います」
俺はその言葉を聞いて、伊織さんを見る。
確かにそう表情は『この行動が正しい』と自分に言い聞かせている―――
そんな感じにも見えた。
「・・・これで終わりです」
伊織さんが突き出した手のひらに強力な魔力が収束していく。
(マ、マズイ!!)
「護国!!」
師匠の悲痛な叫びが響く。
そして―――次の瞬間。
光が護国さんに向かって放たれた。
“バチィッ”
聞こえたのは、魔力が弾かれた音だった。
「な、何であなたが・・・」
俺の目の前には伊織さんが立ち尽くしている。
「あ、吾妻殿・・・」
俺の後ろでは倒れこんだ護国さんがいた。
あの時、俺は少なくなっていた『青龍』の力を自分の足のほうにコントロールして、護国さんの捕縛魔法から抜け出して、
何とか、2人の間に割って入った。
(『青龍』の力のコントロールの応用と護国さんの力が弱まっていたことが幸いしたな・・・)
「伊織さん・・・っていいましたっけ?・・・もうやめましょうよ、こんなこと」
俺はそう話し掛ける。
「何で・・・あなたはそう割り切れるの?」
「・・・」
「あなただって、この人が刺客を送らなければ、今頃家族達と幸せに暮らしていたはずよ!なのになぜこの人を庇うの!?」
俺に問いかける伊織さん。
「・・・俺だって、完全に割り切った訳じゃないです」
「!!」
「和志くん・・・」
すももの声が俺の耳に聞こえてくる。
「でも、恨んだところで母さん達が帰ってくる訳じゃないし。それに何より・・・」
俺はすももを見る。
「俺には大切な人がいる。もし俺が復讐なんかしたら、悲しむ人がいるんです」
俺の言葉に伊織さんは下を向き―――
「そう、残念ね・・・あなたもお兄ちゃんを殺した張本人。でもあなたの過去を知って、私の気持ちを分かってくれるかと思ったのに・・・
やっぱり、あなたも私の敵よ!」
“ブワァッ”
その言葉と共に、伊織さんから圧倒的な魔力が噴き出してくる!!
「やめて下さい!伊織さんの大切な人が悲しみます!!」
伊織さんの変わって行く瞳の色を見ながらすももが叫ぶ。
「私はこうすることでないと―――愛する人に答えられない―――あの人の目的のためにも」
『!!』
その言葉に俺とすももは顔を見合わせる。
伊織さんの愛する人って―――
そんなことを考えてる間に、伊織さんは腕を一振りする。
その腕から、魔力の衝撃波が生まれる。
(なっ!?)
俺はすももを押し倒すようにして交わす。
師匠や高峰さんも傷ついた護国さんをガードしながらそれをよける。
(どういうことだ!?呪文の完成が異様に早いぞ!?)
次々に生み出す魔力衝撃波を俺達は必死に交わし続ける。
いつの間にか、俺達は一か所に集められていた。
「あ、あれは、『悪意に満ちた魔力』の力だ」
護国さんが必死に言葉を紡ぐ。
「喋らなくてもよい、護国!!」
「彼女の家、『鳥野家』は異界から悪意に満ちた魔力を召喚出来る異端の家なのだ。普段はそれを生き物に憑依させてそれを使役するのだが・・・
今の彼女は『神の力』が異常な方向に暴走して直接彼女の体に魔力が流れ込んでいるのだ」
「そんな・・・じゃあこのままだと・・・」
伊織さんの周りに魔力が収束し、放たれる。
(!!)
俺達が覚悟を決めて目を閉じた時―――
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
聞きなれた声と共に、その魔力が薙ぎ散らされる!!
俺達の目の前には一人の人物が立っていた。
「信哉!!」
「伊吹様、遅くなりました」
その手には緑色の刀身をした剣が握られていた―――
〜第60話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第59話になります〜
今回は伊織の復讐と護国の責任の取り方。和志の過去に対する考え方がメインですね。
愛する人が悲しむから、復讐なんてしないという和志と、
愛する人のために自分の復讐も利用するという伊織の考え方の対比が表現出来てればいいなと思います。
まあ、最後だけ見ると、『あれ、主人公は和志ですよね!?』
というツッコミが入りそうですが(笑)
次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは、失礼します〜
管理人の感想
とうとう伊織が動き始めましたね。しかしまさか、青龍の捕獲に彼女の兄まで参加していたとは・・・。
そしてそれを差し向けた張本人である、護国に復讐をと魔法を使う。・・・悪意に満ちた魔法を。
何とか和志の活躍もあり、最悪の事態は防げたものの、劣勢なのには変わりなく。
しかしここ一番で我らが主人公、信哉が登場!・・・ってあれ? 何か違うような・・・(笑)
それでは、今回もありがとうございました〜^^