『解かれた魔法 運命の一日』〜第58話〜
投稿者 フォーゲル
「そもそも、『四神家』の歴史ははるか昔、平安時代から始まるのだ」
ゆっくりと、しかし、厳かな口調で語り始める護国さん。
「そんな昔なんですか・・・」
「やっぱり、歴史があるんですね」
感心しながら話に聞き入る俺とすもも。
師匠と高峰さんはこの辺の話は知っているのか、黙って話を聞いている。
「その当時の世の中というのは、貴族が天皇を中心に政治を行う世の中だった。政治も安定していたが唯一天皇が懸念していたことがあった」
「それは、何ですか?」
「その当時、京都周辺に出没し始めていた『魔物』の存在だ」
「魔物だと?」
護国さんの言葉に訝しげな声を挙げる師匠。
さっきの魔物の姿が俺の脳裏にも蘇る。
「おそらく、伊吹と吾妻殿を襲った魔物も似たような存在なのかも知れぬな」
そんなことを言いながら、護国さんは話し続ける。
「とにかく、その当時の天皇も魔物の出現には手を焼いていたようだ」
「あれだけの強さではな・・・」
さっきのことを思い出したように呟く師匠。
「そこで天皇は、京都の地で眠っていた『四神』の力を借りることにした」
「それが、和志くんや伊吹ちゃんの使える力のことですね」
「そうだ。そして、『四神』に選ばれたのが『御薙』『式守』『高峰』そして『辰巳(たつみ)』の4つの家がそれぞれに選ばれ、そして4家の補佐役に
『藤林家』が選ばれた」
なるほど、姉ちゃんの家が力を持ってるのはそれが理由か、しかし・・・
「あれ?和志くんの家の名前が・・・」
すももは俺と同じ疑問を浮かべたようだ。
しかし、俺達の疑問にはお構い無しで話を進める護国さん。
どうやら、護国さんの表情を見る限り、『話を聞いていれば分かる』ということらしい。
「4家と藤林家は『四神』の力を使って京都の町を魔物から守っていた。しかし、ある日事件が起きた」
「事件?」
「突然、魔物の力が凶暴化し、一斉に京都の町を襲った。もちろん我らの先祖も頑張って対抗したのだが、使える力にも限界があり追い詰められた」
「護国さん、それはもしかして・・・」
「うむ、平安時代は千年前、丁度ヨーロッパでは『ラグナロク』が起こっていたのではないかと私は推測している」
高峰さんの問いに答える護国さん。
その結果、魔物の力が増幅していたという訳か・・・
「その時、追い詰められたご先祖様を救ったのが・・・一人の少女だったという」
「少女?」
俺の声に護国さんはゆっくりと頷く。
「その少女は、少ししか残っていなかったご先祖様達の『四神』の力を『融合』させることが出来たという」
『!!』
俺、師匠、高峰さんの視線が一斉にすももに集まる。
その少女が・・・
「魔物を倒し、事の顛末を知った天皇は彼女の家『豊涼(ほうりょう)家』を取り立ててその功に報いたとのことだ」
「めでたし、めでたしってことですね」
ホッとした表情を浮かべるすもも。
しかし、護国さんは浮かない表情。
やっぱり世の中そう単純には行かないらしい。
「豊涼家を加えたご先祖様達はその後も京都の町を守り続けた」
護国さんが話を再開したのは、しばらくたってからだった。
そのことから考えても、これから語られる内容は辛いものになることは間違いなかった。
「しかし、その頃から魔物に変わる新たな『不安要素』が出てくることになる」
「何なのだ?」
「源氏と平氏・・・いわゆる『武士』の台頭だった」
師匠の問いに考えながら頷く護国さん。
「武士達はその武力を背景に朝廷・・・天皇や貴族に対する発言力を強めていったのだ」
確かに、人間力を持つと、それを誇示したいと思うのは当然のことだろう。
「それに対抗する為の策として、天皇や貴族達が考えたのが、ご先祖様達の力を利用することだった」
「四神の力を自分達の防衛手段に利用しようとした・・・ということですね」
「そんなことのための力では無いと思うのだがな」
高峰さんと師匠の会話を聞きながら、護国さんも頷く。
「伊吹と同じようにご先祖様達も反対したらしい。『私達の力は京都の民達を魔物から守るためのものだ』とな」
護国さんは淡々と語る。
「しかし、天皇や貴族はその答えに納得しなかったようでな。ご先祖様達を脅迫したらしい」
「脅迫?」
訝しげな俺を見ながら護国さんは話を続ける。
「『我らに協力しないのなら、お主達を処罰する』とな・・・」
「処罰って・・・どうやってですか?」
「権力を持ってる人達なら何でも出来ますよ。無実の罪を着せるとかですね・・・」
「そんな!!ヒドイです!」
高峰さんの言葉に、怒るすもも。
「そして、その最初の標的になったのが・・・豊涼家の人間達だった」
ここらへんの話はあまり喋りたくないのか、感情を抑え気味に話す護国さん。
「豊涼家の『神融合魔力』は確かに驚異的な力だった。しかし、『それだけ』だったのだ」
「どういうことですか?」
「その魔力は自分達で攻撃魔法などに使用することは出来なかったのだ。それに豊涼家の魔力は我々『四神家』の補佐のためのもののようだ」
確かに、すももの力も俺や雄真さん達がピンチの時にだけ発現していた。
「天皇や貴族は『豊涼家の当主が謀反を企んでいた』という無実の罪で兵を差し向けた。しかし・・・彼女はすでに居なくなっていた」
「危険を察して逃げたんですね」
すももの言葉に頷く護国さん。
「そう・・・四神家の一つ『青龍』の力を使う辰巳家の当主が彼女を連れて逃げたのだ」
『!!』
思わず顔を見合わせる俺とすもも。
俺はその時思った。辰巳家の当主もきっとその彼女のことを愛していたのだろう。
俺が今、こうしてすももを愛しているように。
「当然、天皇は追手を掛ける。その話は我らのご先祖様達にも来た。ご先祖様達は頑なにそれを拒んだ。しかし、他の・・・一般の魔法使い達はそうでは無かった」
「2人を捕えれば、地位も名誉も思いのままであろうしな・・・気に入らぬ」
師匠の憤りの感情を含んだ声が聞こえる。
「当然、単純な実力では、辰巳家の当主の方が上だった。しかし数が数だけに2人は追い詰められた」
“ギュッ・・・”
ふと気が付くと、すももが俺の手を強く握っていた。
俺はその手を、さっきとは逆に強く握り返す。
「追い詰められた辰巳家の当主は、彼女を守ろうと『青龍』の力を使い―――暴走させてしまった。その魔力の余波は周りを吹き飛ばし、多くの人間を死に至らしめた」
『・・・・・』
俺も、すももも、師匠も、高峰さんも。
ただ黙って護国さんの話を聞いていた。
「その後、辰巳家の当主は京都を追放された」
「・・・よく処刑されずに済んだな」
師匠が驚きの声を上げる。
「ご先祖様達と―――何より豊涼家の当主が天皇に懇願したらしい。『全ての責任は自分にある』と。その効果もあってか、2人共処刑されずに済んだのだ。
最も、豊涼家の当主も島流しにされて、2度と合うことは無かったらしいが」
「・・・悲しいです」
すももの声は、涙声になっていた。
「その後、武士が天皇から権力を奪い、源頼朝が鎌倉に幕府を開いたのと同時に我らのご先祖様も関東に移動してきたのだ。京都の方は藤林家に任せてな」
護国さんは話を終えて、一息付く。
「その後、辰巳家はどうなったんですか?」
俺の質問に護国さんは言葉を続ける。
「そのことは、私達のご先祖様も気にしていたらしくてな。調査をしていたらしい。その結果分かったことは・・・」
護国さんはゆっくりと口を開く。
「彼らは名を変えて、一魔法使いとして暮らしていた。名を古い言葉で『東』を意味する『吾妻』に変えて」
(やっぱり・・・)
「『青龍』は東を守護する聖獣だ。彼らにはそれを忘れないようにするという意味と、何より自分達の先祖がしたことは間違っていないと思いたかったのかも知れぬな」
「・・・」
黙りこむ俺。
でも、ご先祖様のことを間違っていると責めることは出来ない。俺がご先祖様と同じ立場だったら、きっと同じことをしていただろう。
「月日が流れ、時代が移り変わって、私達の間でも吾妻殿の家をどうするかは懸念材料だった」
話が自分達の世代になって来て、護国さんの表情は記憶を探りながら語る感じになってきた。
「その内に、ヨーロッパから重大な情報から伝わって来た」
「『ラグナ=ワンド』の行方不明事件ですね」
高峰さんが護国さんをフォローする。
「そうだ。その情報を聞いた時、わしは迷った。世界で何かが動き始めている。早急に『四神』を集めた方がいいと」
「その時に・・・俺達に刺客を?」
「いや、その時は止められたのだ。那津音にな」
「那津音姉様に?」
「そうだ。『無理矢理にやろうとすれば、きっとご先祖様達の二の舞です!!』とな」
少なくとも、那津音さんは刺客を送ることには反対だったようだ。
「その頃だったか・・・宏之殿と出会ったのは」
「わたしのお父さんですか?」
すももの問いに頷く護国さん。
「そうだ。那津音は伊吹とは逆に防御呪文や結界魔法が得意だったのでな。その当時そちら方面の魔法の理論に詳しかった宏之殿と親しくなったらしい」
「お父さん、伊吹ちゃんのお姉さんと知り合いだったんですね」
驚いたように言うすもも。
「彼の話や生いたちを聞いているうちに、私は彼が豊涼家の血を引いている人間だと分かった。ちなみに彼も自分の過去について知りたがっていたのだ。
『自分の魔力はもう少しで消えるから』と言っていた。
「どういうことだ?護国よ。現に今すももは魔力を持っているではないか?」
師匠の疑問に護国さんが答える。
「宏之殿は、『自分達の魔力は『四神』の力がそばにいないと発現しない。その期間が長かったことが原因だと言っていたな」
「じゃあ、すももの魔力が今活性化しているのは・・・」
「おそらく、『四神』の力が雄真さんだけだったのが、ここ一年の間に伊吹さんや私、和志さんに知り合ったことで活性化したんでしょうね」
高峰さんが納得したように頷く。
「那津音は元から吾妻殿と宏之殿の家系の因縁を知っていたようでな。そのことも相談していたようだ。
そして、那津音は危険が無い限りは、無理に干渉しないという方針を打ち出した。私もそれに従った。あの事故が起こるまでは」
「式守の秘宝の暴走か・・・」
師匠が苦い顔で呟く。
「あの事故で那津音が死に、宏之殿はショックからか、式守家を出て行った」
多分、その後宏之さんは音羽さんと知り合い、そしてすももが生まれたのだろう。
「そして、私は、魔力の暴走の脅威を間のあたりにして、不安定な魔力を野放しにしておくことに不安を感じた。そして―――」
「私のお兄ちゃんを刺客に送った」
『!!』
その声と共に急激に刺すような魔力が膨れ上がる。
(上!?いや―――)
次に衝撃が襲って来る直前、高峰さんが呪文を唱える姿が見えた―――
〜第59話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第58話になります〜
まずは、ほぼ一カ月ぶりの更新になることをお許し下さい。
PCを買い換えたことによる設定変更やデータ移動でやっと今日からマトモに使えるようになりました。
内容は前半部分は、四神家の成り立ちと豊涼家(すももの先祖)の因縁。
後半は、現代でのすももの実父と式守家の関係性などに付いて書いてみました。
次回は謎の攻撃を仕掛けた人物(まあバレバレでしょうが)とのバトルがメインかなと。
次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは、失礼します〜
管理人の感想
解かれた魔法、58話をお送りして頂きました〜^^
今回は、護国による過去話。四神の家系と、その力を融合できる豊涼家の成り立ち。
権力争いに使われようとしていた四神の力。それに抵抗し、手を取り合って逃げた辰巳家と豊涼家の当主。
しかし、青龍の暴走により・・・。
すももの不思議な能力についても、これでだいぶ明らかになりましたね。
次回は急襲してきた人物とのバトル。「私のお兄ちゃん」あたりがポイントですね(笑)