『解かれた魔法 運命の一日』〜第57話〜
投稿者 フォーゲル
“ギィィィィッンン!!”
『風神雷神』と『虎徹』、2つのマジックワンドが真正面からぶつかり合う。
接触した衝撃か、魔力の余波が周辺に流れる。
その魔力の影響を気にもせずに、純聖殿は俺との間合いを一気に詰める。
早い斬撃が俺に向って振り下ろされる!
パワーも載った斬撃を、俺は何とか受け止める。
「クッ!!」
俺は風神の力を解放する!
“ブワァァァッ!!”
『風神雷神』から猛烈な烈風が生まれる。
その風に乗って、俺は後ろに下がる。
それを利用して俺は純聖殿と間合いを取る。
「兄様!!」
沙耶が俺に向って声を掛けるが、その場から動かない。
恐らく、沙耶も分かっているのだろう。
自分が俺と純聖殿の戦いに干渉したら、足でまといになることを。
「何故だ・・・何故純聖殿が父上のことを知っている!?」
ジリジリと間合いを計りながらそう問いかける俺。
「知っていて当然だ。私はその昔上条家の剣術を習っていたのだからな。崇哉殿は私の兄弟子にあたる人物なのだ」
純聖殿も少しずつ間合いを詰める。
「崇哉殿は強い人だった。私など足元にも及ばぬほどにな」
そう語る純聖殿はどこか遠い過去を懐かしむようだった。
「やがて、崇哉殿は上条家を継ぎ、結婚して子供を授かる。信哉殿、沙耶殿。君達をな」
そこまで語ると純聖殿の姿が消える。
「!?」
驚く俺の横に殺気が現れる。
次の瞬間には俺のいた場所を『虎徹』が横薙ぎにする。
俺は、それから身を交わすと、体が流れる純聖殿に向って『風神雷神』を振り下ろす!
“ガギィィン!!”
だが、純聖殿はその一撃をかろうじて受け止める。
「こうしていると懐かしい。結婚した後、一度だけ崇哉殿と手合わせした時のことを思い出す」
純聖殿は過去のことを語り続ける。
「あの時は、完璧に敗北したのだ。そして思わず聞いていた。『どうしたらそこまで強くなれるのですか?』と」
「父上は何と?」
こんな会話をしながらも、俺と純聖殿の斬撃の応酬は続いていた。
「『私は何も変わっていない。ただ変ったことがあるとすればそれは“守るものが出来たから”ということだな』そう言っていた」
「・・・」
「だが、その崇哉殿が亡くなった奥様を復活させようとして、『式守の秘宝』を暴走させたと聞いた時・・・分からなくなったのだ」
「何がです」
「『本当の強さ』とは一体何かだ」
純聖殿は語り続ける。
「いつの間にか、崇哉殿は『自分でその強さを維持出来ない』ほどに弱くなっていたのでは無いかと考えるようになっていた」
「純聖殿・・・」
「その時だ、伊織殿に紹介されて、行方不明になっていた柾影殿に出会ったのは」
いつの間にか、俺は少しずつ純聖殿の剣戟に押されて下がり始めていた。
「初めて会った瞬間に、私は柾影殿の強さを理解出来た。その意志の強い眼差しは誰も畏怖を抱く『孤高の強さ』だった」
“ギィン!”“ギィン!”
少しずつ、純聖殿の斬撃の威力が上がって行く。
「その後、柾影殿の過去を知って分かったのだ。『失うものの無い強さ』が『本当の強さ』なのではないのかとな!」
振り下ろされる『虎徹』を受け止める俺。だが―――!!
“バキィィィッ!!”
斬撃の威力に耐え切れなかったか、『風神雷神』が折れる!
それでバランスを崩し、更に強烈な一撃を喰らって社まで弾き飛ばされる俺。
「兄様!」
沙耶の叫び声が俺の耳に入る。
「崇哉殿の息子である君を倒すのは忍びないが、これも柾影の目的のため、悪い!」
純聖殿の魔力の高まりと同時に、瞳の色が銀色に変る。
以前にやられた『神の力』を使う状態。
(まずいぞ、『風神雷神』が無い状態であれを喰らえば・・・!)
ふと、その時に俺の目に『あるもの』が目に入る。
「我の前にその力を示せ!『フェンリル』よ!」
純聖殿の言葉と同時に、『虎徹』から魔力が溢れる。
その魔力はやがて銀色の狼の姿を作る。
「行け!」
純聖殿はその言葉と共に、『虎徹』を振り下ろす。
銀の狼が俺に向って突撃する。
(父上・・・力を貸してくだされ!!)
俺は崩れかけた後ろにあった『もの』を夢中になって掴んだ!
“ズガガガガガァァァン!!”
『フェンリル』は間違いなく、信哉殿を吹き飛ばした!
「兄様!!」
沙耶殿の悲痛な叫びが響く。
(これで、目的の一つは達成されたが・・・)
私の心は痛みを覚えていた。
(何なんだ?何故こんなに動揺する?)
そんな俺の疑問に答えるように、瓦礫と煙の向こうから声がした。
「確かにそうかも知れぬ・・・」
「!?」
「純聖殿の言うとおり、父上は弱かったのかもしれない」
瓦礫の中から信哉殿が現れる。
手に上条家の宝剣『建御雷』を手にして。
「だが、父上はこうも言っていた。『守るべきものがある人は無限に強くなれる』とも」
“パチッ、バチッ!”
信哉殿の言葉に答えるように建御雷はその刀身から魔力を迸らせる。
「純聖殿、柾影殿も確かに強いのでしょう。でもその強さに『先』はあるのですか?」
「・・・」
「その強さは『迷い』が生じた時には恐ろしく脆いものだと、俺は思うのです」
力強く語る信哉殿。
「俺達、人間は迷った時、支えあえるから強いのではないでしょうか?
支え合える強さが人の持っている『本当の強さ』じゃないかと俺は思います」
「だが、それでも俺は・・・柾影の強さを信じる。あいつの孤高の強さを!!」
私は再び魔力を『虎徹』に集中させる。
そして、『フェンリル』をもう一体召喚する。
再びフェンリルが信哉殿に向って突撃した。
だが、それは建御雷の一振りで消滅する。
建御雷の刀身からは雷撃と風撃が同時に生まれていた。
(さしずめ、別名を付けるなら『風雷神剣』とでもいうべきか)
私はそんなことを考えながら、最後のフェンリル召喚を使う。
「そうですか・・・でも、それは!!」
信哉殿も建御雷から魔力を引きずり出す。
最後のフェンリルを、私は『虎徹』に込める。
「何っ!?」
これでフェンリルの魔力も最後の一撃に込めることが出来る。
信哉殿の驚きの声を聞きながら、私は最後の一振りに掛けた。
私は一直線に間合いを詰めると、信哉殿に『虎徹』を振り下ろした!
“ガギィィィィッン!!”
「な・・・に?」
私の一撃は信哉殿に受け止められた。
そのまま『虎徹』が跳ね上げられる。
「はぁぁぁ!!」
信哉殿の一撃がそのまま私に向って振り下ろされる。
その一撃が当たる瞬間、私の目にはハッキリ見えた。
建御雷の刀身に鎧甲冑姿のまさに『軍神』とも呼べる姿が写っていた。
(そうか、つまり信哉殿は私と同じ方法で建御雷を強化したのだな・・・完敗だ)
俺の意識はそこで消えた。
(う〜緊張するな・・・)
俺はそんなことを考えていた。
護国さんが師匠を治療するまでの間、俺達は大広間で待たされていた。
「和志くん、大丈夫ですか?」
俺の隣りに座っているすももが話し掛けてくる。
「あ、ううん、大丈夫だ」
何とか動揺を消す俺。
「だけど、すもも、お前大物だな〜こんな状況でも平然としているなんて」
「え〜こう見えてもわたしも緊張してるんですよ、一体どんなお話なのかなって・・・」
「高峰さん、何か分からないんですか?」
俺は後ろにいる高峰さんに話し掛ける。
「いえ、私も何も聞いていませんし、ただすももさんの『力』のこととかは分かるような気がします」
「それも先見の力ですか?」
「さあ、どうでしょう?」
笑う高峰さん。しかしその顔に一瞬翳りが浮かんだのを俺は見逃さなかった。しかし―――
「皆のもの、待たせたな」
その疑惑は部屋に入って来た師匠の声で遮られた。
「伊吹ちゃん、もう腕は大丈夫なんですか?」
「ああ、何とかな」
師匠はそのまま、すももの隣りに座る。
そして―――
「まずは、皆さん遠いところを良く来て下さった」
上座に腰を下ろした護国さんが挨拶をする。
最初に会った時はフランクな印象だったのだが、こうして見るとさすがに関東魔法連盟トップの式守家の当主だけが持つ
威厳と迫力に満ちていた。
ジッと俺達を見て、護国さんはすもものところで視線を止めた。
「やっぱり、見れば見るほど似ておるな・・・宏行(ひろゆき)に・・・)
「!!」
その言葉に驚きを浮かべるすもも。
「どうしたんだ?すもも?」
問い掛ける俺にすももは驚くべき言葉を言った。。
「その名前は、わたしの本当のお父さんの名前です・・・」
「護国、どういうことだ?すももの父上と式守家には何か関係があるのか?」
師匠も驚いた表情で護国さんに問い掛ける。
「・・・むしろ『四神』の力を受け継ぐもの全てに関係あるのだ」
そう言ってから、護国さんは俺を見る。そして―――
「吾妻殿・・・すまぬ!」
そう言って深々と頭を下げる護国さん。
「ど、どうしたんですか?」
そう問いかける俺に、護国さんは驚くべき言葉を告げた。
―――『青龍が暴走した時に、刺客を送りつけたのはこの私だ』―――
俺の頭が一瞬真っ白になる。
グルグルと頭の中をあの時の光景が蘇る。
直接的な要因は俺にあったとはいえ、そのきっかけは―――
その時だった。
“ソッ・・・”
俺の手の上に柔らかい感触があった。
(すもも・・・)
俺の隣りに座ったすももが優しい眼差しで俺を見ていた。
―――『和志くん、大丈夫だよ、わたしがそばにいるから』―――
すももの視線がそう言っていた。
その眼差しのお陰で、少し落ち着きを取り戻した俺は、
「どういう、ことですか?」
そう護国さんに問い掛けていた。
「・・・それを説明するには、『四神家』の歴史から語らなければならないのだ」
そう言って、護国さんは語り始める。
四神家の歴史、そしてあの暴走事故のきっかけを―――
〜第58話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第57話になります。
今回は前半が信哉の戦い、後半は護国の口から語られる真相への振りですね。
前半部分では『真の強さ』とは何か?をテーマにしてみたんですが、どうでしょうか?
「建御雷」の強さにも注目して頂けると嬉しいです。
後半は、読者の皆さんが『意外な展開・・・』とか思ってくれる人が多いといいんですが。
すももの父と護国の関係。何故護国は『刺客』を送りつけてまで、『青龍』を何とかしようとしたのか―――
次回はそこらへんに注目して頂けると嬉しいです。それでは!!
管理人の感想
というわけで、解かれた魔法51話をお送りした頂きました〜^^
純聖と信哉の戦いもついに決着!「虎鉄」とフェンリルを扱う純聖を圧倒してしまった「強さ」。
それは建御雷の力でもあるかもしれませんが、純聖が過去に捨てた、「人と人とのつながりが生む力」だったのでしょうね。
そして後半にはサプライズが。青龍の暴走時、あの刺客たちは護国の手によるものだった・・・。
激昂しそうになった和志を、すももが無言で止めたシーンが印象に残りました。
それでは!