『解かれた魔法 運命の一日』〜第56話〜









                                    投稿者 フォーゲル







  「伊吹、久しぶりだな」
 そう言って柔らかく笑いかける護国さん。
 「ああ、そちらには変ったことはないのか?」
 「嫌、こちらには特に変ったことは・・・何かあったのか?」
 「実はだな・・・」
 師匠は、今自分と俺に起こった出来事を護国さんに話した。
 「何?魔物に襲われただと?」
 「ああ、幸いその魔物は私とここにいる吾妻和志とで倒したのだが・・・」
 「吾妻?」
 護国さんは俺の方を見る。
 「あ、吾妻和志と言います。師匠には大変お世話になっています」
 「そうか・・・そなたが『青龍』の継承者の・・・」
 俺をジッと見つめる護国さん。
 その表情に一瞬、憂いが走ったのを俺は見逃さなかった。
 (・・・?)
 だけど、その表情は一瞬で護国さんから消えていた。
 「ということは、そちらのお嬢さんが・・・」
 護国さんの視線は俺からすももに向いていた。
 「小日向すももです。初めまして」
 「そうですか・・・あなたのことは以前『秘宝事件』で伊吹が謹慎処分を受けてた時に聞きました。『私には大切な親友がいると』」
 「なっ・・・さ、護国!!余計なことは言わなくて良い!!」
 顔を赤くしながら反論する師匠。
 「そうですか〜伊吹ちゃん。ありがとうございます。私も伊吹ちゃんは『大切な親友』ですよ」
 ニッコリと笑うすもも。
 その顔を見て、思わず視線を逸らす師匠。
 「おや、伊吹さん、照れてるんですか?」
 『伊吹の姐さんももう少し素直になってもいいと思うんやけどな〜』
 「なっ・・・べ、別に照れてなどおらぬ!!」
 高峰さんとタマちゃんの言葉に真っ赤になって反論する師匠。
 (その態度がもうテレまくりだって証明してるようなもんだと思うんだけど・・・)
 もちろん、口には出さず心の中でそうツッコム俺。
 「そ、それよりもだ!!護国!和志とすももに会いたかったのだろう?」
 話題を切り替えようと本題を話し出す師匠。
 「ふむ、そうだな。だがその前に・・・」
 護国さんには師匠に歩み寄ると、右手を思いっきり掴む。
 「・・・!!」
 師匠の顔が苦痛に歪む。
 「伊吹ちゃん!?」
 すももが心配そうな声を上げる。
 そして―――
 (うっ・・・)
 俺は思わず息を呑んだ。
 師匠の右腕、肘の部分あたりまでが雪でも振りかけたように真っ白くなっていた。
 「やっぱり・・・『白虎』を使ったな、伊吹」
 「・・・」
 黙り込む師匠。
 「あれほど、『宝珠』を持ってないのだから使うなといっておいたのだが・・・」
 「『宝珠』ってこれですか?」
 俺は胸元から青く光る宝珠を取り出す。
 この宝珠のおかげで(それとすももの魔力のお陰もあるけど)俺は『青龍』の力をコントロール出来ている。
 「ああ、そしてその『宝珠』はそれぞれ『四神』に対応している」
 師匠の腕を掴んだまま、厳しい口調で言う護国さん。
 「伊吹、『白虎』の宝珠は・・・」
 「分かっている。那津音姉様の事件の後、行方不明だと言うのもな。だが・・・」
 師匠は俺達の方を見て言う。
 「私の大切な者達のために、どうしても『白虎』を完全に使いこなせるようにならねばならんのだ」
 師匠はジッと護国さんの目を見て言う。
 「護国、お主は知っているのだろう?『宝珠』がどこにあるのか?」
 「ここにあるといえばある。無いと言えば無い」
 師匠の質問に護国さんはそんな不思議な言葉で答えた。
 「どういう意味だ?」
 「・・・それに答える前に、まずは伊吹の腕を治療せなばな」
 護国さんは師匠を引きずるように歩き出す。
 「皆さんも、伊吹の治療が終わるまでくつろいでいてください」
 「こ、こら護国!話さぬか!」
 「・・・どうします。高峰さん?」
 高峰さんに俺は話を振る。
 「現状では、どうすることも出来ませんし、ひとまずは護国さんの指示に従いましょう。すぐに戦いになるでしょうし」
 「そうですね」
 俺達も護国さんと師匠の後に付いて歩き始める。
 その時―――
 「――――!!」
 一瞬だけ、一瞬だけだが、俺は突き刺さるような『殺意』を感じた。
 「どうしました?吾妻さん?」
 「い、いや・・・何でも無いです」
 高峰さんの問いにそう答える俺。
 俺は慌てて、護国さんと師匠の後を追う。
 「似ておるな・・・やはり」
 ふと、護国さんがそう呟くのが俺の耳に入った。





  
  (やっぱり・・・倒せなかったな・・・)
 私は物陰に潜みながら、そっと門から家の中に入って行く護国さん達の姿を伺います。
 手の中には、さっき結界を張ってその中に放り込んだ魔物を召喚した時、媒介にした昆虫がいました。
 結界の中で彼らに倒されたことで、今や虫の息でした。
 この世に存在している生物に、柾影さんが持っている『ラグナ=ワンド』から召喚した『悪意に満ちた魔力』を
 憑依させることで、魔物を作りだしたのです。
 その『魔力を召喚させる』能力は私が柾影さんから分け与えられた力です。
 (ゴメンね・・・せめて苦しまないように・・・)
 私は目を閉じるとそっと呪文を唱える。
 やがて呪文が完成すると―――
 その昆虫は光に包まれて消えました。
 (さてと・・・これからどうするか)
 『彼』は絶対に倒さなきゃいけない。彼は柾影さんの計画のジャマだし、何より―――
 
 “トサッ”

 私のふところから何かが落ちました。
 それは、私の大切にしているロケットペンダント。
 地面に落ちたそれの蓋が開きました。
 (お兄ちゃん・・・)
 それは私が大好きだったお兄ちゃん。
 いつも、私のことを大切にしてくれた。
 10年前のあの日―――兄さんが亡くなるまでは。
 兄さんは『任務』を受けて、その場所で―――
 亡くなった原因は『魔力の暴走』。
 そして、その中心に一人の少年がいたことを私は知った。
 『彼』は兄さんの仇。だから―――
 私はそんなことを考えながら、ペンダントを拾う。
 ペンダントの中の兄さんは心なしか泣いているように見えた―――





  “ガサッ・・・ガサッ・・・”
 俺は獣道を踏み分け、笹などが茂る道を踏み分ける。
 「こっちで良いのか?沙耶」
 後から付いて来る沙耶に手を差し伸べながら俺は問い掛ける。
 「ええ、文献や上条家に伝わる古文書などを読み進めた結果、こちらで間違い無いはずです」
 式守家の本家から北へ大分離れた山の中。
 そこに上条家の宝剣・建御雷が封印されているはずだった。
 「しかし、こんな山の中に封印されているとは・・・」
 「仕方ありません。父上の犯した罪はそれだけのことなのですから・・・」
 それきり、黙り込む沙耶。
 父上のしたことは決して許されることではない。
 それが原因で那津音様は亡くなり、伊吹様は心を閉ざしてしまわれた。
 だが、父上の想いも分からなくは無い。
 もし、一度でいいから二度と会えないと思っている人物にもう一度会えるとしたら―――
 俺がそんなことを考えていると―――
 「兄様!!」
 沙耶が驚いた声を上げる。
 「どうした?沙耶?」
 「『風神雷神』が・・・」
 俺は風神雷神を見る。
 「な・・・これは・・・」
 『風神雷神』が手を触れてもいないのにカタカタと震えていた。
 そういえば、父上から聞いたことがある。『上条家の『宝剣』を継ぐ資格がある人間が使うマジックワンド』には、
 『宝剣』と共鳴して反応しあうことがあると。
 「どうやら、近いようだな・・・」
 「急ぎましょう!兄様!」
 沙耶の声に頷くと俺達は目的地に急いだ。




  唐突に視界が広がった。
 そこには、綺麗に整理された社があった。
 その周りには、美しく整備された日本庭園が広がっていた。
 「な・・・これは」
 上条家の式守家に対する立場から考えると、ボロボロに荒れ果てていてもおかしくないと思っていたのだが・・・
 「どうやら、ここは上条家の魂が眠る場所のようです」
 「『使鬼の杜』と似たような場所ということか?」
 「おそらくは・・・」
 当たりを見渡す沙耶。
 「きっと、護国様が手配して時々手入れなどをしてくれていたのでしょう」
 「改めてお礼を言わねばな・・・」
 「そうですね」
 2人で感謝しながら、俺達は社に近づく。
 そこに建御雷が封印されているはずだった。
 社に辿り付き、沙耶と頷きあい、俺は社の扉を開けた。
 『・・・』
 しばし、その光景に見とれていた。
 長さは風神雷神と同じくらい、しかしその緑色に輝く刀身は神々しいまでの輝きを放っていた。
 間違い無い、これが上条家に伝わる宝剣―――建御雷。
 俺がゆっくりと手を伸ばした―――その時。
 
 “ゾクッ”

 俺の背中を悪寒が走り抜けた。
 沙耶も同じものを感じたらしく、同時に左右に飛ぶ。

 “ズガシャーーーン!!”

 後ろから飛びきた衝撃波が社を吹き飛ばす!!
 だが、建御雷だけは何事も無かったかのようにその場に佇んでいた。
 「なるほど、さすがは宝剣と呼ばれるだけのことはある」
 そう言いながら現れたのは―――
 青くて短い髪、俺より一回り以上大きな体格。手には抜き身の竹光―――
 前に、藤林殿と一緒に遭遇した男。
 名は確か―――純聖殿と言ったか。
 俺は、風神雷神を構える。
 「ほぉ・・・」
 純聖殿は俺の姿を見て―――驚くべきことを言った。
 「初めて会った時には分からなかったがそのマジックワンド、醸し出す雰囲気・・・さすがは崇哉殿の息子というべきか?」
 「なっ・・・」
 純聖殿が父上の名を出したことに俺は一瞬虚を衝かれた。
 「はぁぁぁ!!」
 その隙を逃さず、純聖殿は一気に間合いを詰めて来た―――!!
 





                        〜第57話に続く〜


                こんばんわ〜フォーゲルです。第56話になります〜

                     今回は、謎が多くなりました。

                 前半最後の、護国の言葉は誰に対するものなのか?

                        伊織の兄の仇とは?

                何気にモンスターの発生理由は今回解明してますが。

          姿を表した建御雷。そして純聖と崇哉の関係性は?などに注目して頂けると嬉しいです。

              次回は信哉vs純聖のバトルからスタートになると思います。

                       それでは、失礼します〜


管理人の感想

こんばんは、皆さま。フォーゲルさんより、「解かれた魔法」の第56話をお送りして頂きました〜^^

いやぁ、伊吹テレまくりですねぇ。・・・いや、むしろデレまくりか?(笑)

さて、フォーゲルさんの言うように、今回は謎が多く残った一話でしたね。

式守家の宝珠――白虎の宝珠の在り処。

伊織の兄の仇・・・和志が幼き頃に起こった魔力の暴発と言うと、まさか・・・?

そしてついに「建御雷」に辿り着いた信哉達と、それを阻止しようとする純聖。次回以降のバトルも楽しみですね。


それでは!



2009.1.22