『解かれた魔法 運命の一日』〜第50話〜








                                      投稿者 フォーゲル






  朝日が昇って来る中、私は藤林家に向けて車を走らせていた。
 「すいません。こんな朝早くから、渚のために」
 後部座席に座っている2人に私は声を掛ける。
 「大丈夫ですよ。渚ちゃんの晴れ姿は私達も見たいですし」
 「そうですか?でもそちらの男性は、辛かったようですね」
 もう一人の男性はすっかり眠っていた。
 「コラ、ハチ!・・・すいません。綾乃さん」
 後ろの女性―――渡良瀬さんが私に申し訳なさそうに私に謝る。
 「謝る必要は無いですよ」
 「だけど、渚ちゃんが魔法使いの偉い人になるんですよね」
 感慨深そうに言う渡良瀬さん。
 「意外ですか?」
 「いえ、そういう訳じゃないですけど、普段からとっても気さくでそんな雰囲気は感じさせないですから・・・」
 「・・・あなたは渚と親しいんですね」
 「ええ、『親友』ですから」
 「短い期間しか、付き合い無いのにですか?」
 「えっ?」
 「ああ、気を悪くしたのならゴメンなさい、ただあなたがあまりにも自信たっぷりに『親友』って言葉を使ったから、不思議でね」
 「でも、そう言うのは時間とかは関係ないんじゃ無いですか?」
 渡良瀬さんは、考えながら言う。
 「例え、短い時間でもお互いに相手のことを少しでも理解出来たらそれは親友と呼んでもいいんじゃないですか?」
 相手のことを理解―――
 私は柾影のことを思い出していた。
 私と義人、柾影は、昔からの幼馴染。
 いつか、柾影が藤林家の後継者になった時には、全力でサポートする。
 それが私達3人の約束だった。
 口には出さないけど、柾影を子供の頃から知っている純聖さん。そして、柾影を小さい時から慕っている伊織にしても、
 それは同じだろう。
 だけど・・・
 私は伊織が言っていたことを思い出していた。
 『それが結果的に柾影さんを苦しめていることになるなら、止めてあげる勇気も必要なんじゃないかと思います』
 確かにここ数日の柾影の様子はおかしい。
 妙に焦り始めている。まるで時間が無いかのように。
 それを象徴するのが、私に渡された黒いマジックワンド。
 これを使えば確実に一般人を巻き込むことになる。
 いくら何でもそんなことが許されていいのかと思う。
 それに何より、ヨーロッパに行く前の柾影はそんなことを進んでやるような奴では無かった。
 「ねえ、渡良瀬さん」
 「何ですか?」
 「もし、渚や小日向君が何か間違ったことをしようとしていると思ったら、あなたはどうする?」
 私は渡良瀬さんにそんな質問をしていた。
 「そうですね・・・」
 渡良瀬さんはしばらく考えた後、口を開いた。
 「やっぱり、止めると思います」
 「それでも、渚達が考えを変えてくれなかったら?」
 「その時は、ハリ倒してでも止めます。それが親友としての勤めだと思いますから」
 静かにだけど、深い決意を込めて言う渡良瀬さん。
 間違ってる―――
 そもそも私が柾影のしていることにそういう考えが浮かんで来たことが意外だった。
 「ふぁ〜・・・」
 渡良瀬さんが大きなアクビをする。
 「何か・・・私も眠くなって来ました」
 「寝てていいですよ?着いたら私が起こしますから」
 「そうですか?じゃあ・・・失礼します」
 そのまま眠りに落ちていく渡良瀬さん。
 ―――私の計画通りに。
 だが、私の心に釈然としないものが生まれ始めたのも事実だった。




 
 
  (どうしたのかしら・・・)
 式典の始まる朝、私の心には不安が生まれ始めていた。
 美和ちゃん達から連絡が来ないのだ。
 もし、無事に『麒麟』の力を手に入れたのなら、もうとっくに戻って来ててもおかしく無いのに・・・
 (まさか・・・)
 頭に生まれた不吉な考えを私は振り払う。
 とにかく、今は3人の無事を祈るしか無かった。
 「はい!終わりましたよ!」
 私の魔法服の着付けをしてくれた女性が声を掛ける。
 この式典は正式に藤林家の後継者が私だと言うことを証明するための式典だ。
 だから、着る魔法服も儀式に乗っ取った公式的なものなのだ。
 ちなみに私の着ているのは、女性用の公式的な服装だ。
 白をベースにした、イメージだと巫女さんの白拍子のような服装だ。
 「あ、ありがとうございます」
 そのまま、私はその女性に案内されて、そのまま両親のところに向かう。
 両親が控えている部屋の前に立ち一礼。
 「お父さん、お母さん、渚です」
 「入るが良い」
 お父さんの重々しい声に答えて、ゆっくり部屋に入る。
 そこには、私と同じく儀式用の魔法服に身を包んだお父さんとお母さんが居た。
 「渚・・・これからお前は藤林家の後継者となる。辛いこともあるかも知れないが精進するように」
 「お父さんと私もあなたに期待しています」
 「はい、これから皆さんの期待に答えられるようにご指導よろしくお願いします」
 「よし、では参るか?」
 「はい」
 その言葉と共に私はお父さんと共に儀式の会場に向かう。
 そこには、関西魔法連盟を構成する人達がいる。
 そこで、お父さんが皆さんを見ている前で私を後継者に指名する。
 後は、飲めや歌えやのドンチャン騒ぎ。
 無事に終わればの話だけど
 (とても無事に終わるとは思えないのよね・・・)
 もし、綾乃さん達が動くとしたら指名される前の話のはず。
 となると、そろそろ・・・
 そんなことを考えながら、私達は会場に付く。
 「では、行くぞ、渚」
 「はい!」
 私は一歩足を踏み出した。




  会場には、今回の式典に招待された人々が集まっていた。
 そして、小日向君や神坂さん達の姿も見える。
 神坂さんは、私の姿を見て笑ってくれた。そして―――
 小日向くんは、少しボーーーッとしていた。
 それを見た神坂さんが、小日向君をムッとした感じで睨む。
 私はそれを見て苦笑するしか無かった。
 (神坂さん・・・ヤキモチ焼きなんですね)
 心の中で笑いながら、私はあることを考えていた。
 (柊さんもいない・・・)
 2人の隣りに柊さんの姿が見えない。
 私の心にはますます不安がつのる。
 ふと、見ると今回の儀式に立会人の綾乃さんがいた。
 その隣りに義人さんの姿が見えない。
 (義人さんもまだ戻ってないですね)
 美和ちゃん達は義人さんにやられた可能性は低いということです。
 「では、これより後継者指名の儀式を行う」
 お父さんの後に付いて、私は舞台の中央に進む。
 恭しく儀式の手順をこなし、最後に―――私が皆さんの前で挨拶をする。
 『皆さん―――このたび、藤林家の後継者として―――』
 私がそこまで、挨拶をしたその時だった。
 不意に会場の中心から、圧倒的な魔力が吹き上がる!
 ハッキリと私に向けられた敵意と魔法が同時に私に向かって来る。
 それと同時にお父さん達が私のガードに入る。
 『アル・ライルネス・リレート・ディス・シルガ・ドレスト!!』
 私のよりも魔力も密度も濃い魔力の竜巻が私をガードする。
 “ギャギィッ”
 嫌な音と共に魔力が弾ける。
 「・・・どういうことだ?柾影?」
 ハッキリ言うお父さん。
 その視線は会場の中心に佇む影―――『ラグナ=ワンド』を手にした柾影さんに向いていた。
 「さすが、藤林家現当主の謙三さん。俺の存在に気が付いていたか」
 「最初は、何かの間違いだと思っていた。だがお庭番に『風流四家』の不審な動きを探らせているうちに、お主の存在を確信したのだ」
 そして、私の方を向く。
 「すまない。渚。本当はお前を巻き込むことはしたく無かった、だがこうでもしないと、彼らが動いてくれないと思ったからだ」
 「大丈夫です。私は藤林家の後継者ですから」
 「すまない・・・」
 お父さんはもう一回謝ると、柾影さんに向き直る。
 「それで、柾影よ。お主の目的は何だ。藤林家の後継者の座・・・という訳でも無いのだろう」
 いつの間にか、会場に居た人達は消えていました。
 きっと柾影さんのカムフラージュの魔法だったんでしょう。
 「俺の目的の成就のためにそこの『青龍』の力を借りた女と『朱雀』の力を使える男と力を借りた女の命を奪うためだ」
 小日向君と神坂さんの方を見ながら言う柾影さん。
 「それは、させぬぞ・・・」
 自分のワンド、隼がモチーフになったワンドを構えながら言うお父さん。
 「ほう?どうするんですか?」
 「こうするんだ」
 お父さんはワンドを一振りすると、次の瞬間―――
 不意にお父さんと柾影さんの姿が消えた。
 「お父さん!?」
 きっと柾影さんと戦うために場所を移動したのでしょう
 でも、お父さんも『四神』の力を持ってません。
 お父さんじゃ、勝てない・・・
 私は急いでお父さん達を探そうと魔力を探知し始めます。だけど―――
 「そうはいかないわ!」
 綾乃さんの魔法が私の動きを止める。
 「こんなことはしたくないけど・・・柾影の目的のために、渚、あなたには死んでもらうわ」
 「・・・どうしても戦うしかないんですね」
 私はそう呟くと儀式用の裾の長い魔法服を膝上20cmくらいまで破く。
 これで動きやすいはずです。
 「おっと、俺達も忘れてもらっちゃ困るぜ」
 「そうだよ!」
 小日向くんと神坂さんが、私の隣りに並ぶ。
 「2人共・・・」
 だけど、その状況でも綾乃さんは余裕の表情だった。
 「あなた達2人には別に戦ってもらう相手がいるわ」
 『??』
 2人が疑問を浮かべた瞬間。
 会場の外から、魔法が飛んで来る!!
 『ディ・ラティル・アムレスト!!』
 2人のハモった防御魔法がその魔法を打ち消した!!
 その爆音に隠れるように、人影が小日向君に向かって拳を振り下ろす!!
 「グッ!!」
 何とか『クロウ』で受け止める小日向君。
 やがて、魔法の煙が消えて、その攻撃をした人間の姿が見えてくる。
 その人物の姿を見て―――小日向君の表情が変わる。
 黒いマジックワンドを構えた紫の長い髪の『女性』―――
 タキシードに身を包んだ男の子―――
 「準・・・ハチ・・・」
 小日向君の呆然とした声が響いた――――




                        〜第51話に続く〜


               こんばんわ〜フォーゲルです。第50話になります〜

       ついに50話目です。正直書き始めた時にはこんなに長くなるとは思ってなかった(汗)

          確実に60話以上は超えそうですが、気長にお付き合い頂けると嬉しいです。

           内容に関しては、ついに渚達がバトルに突入で山場なんですが・・・ 

           綾乃は自分の行動に疑問を抱き始めているのが付け入るスキになるかと。

      そして、雄真達は自分達に攻撃して来た準とハチをどう止めるのかにも注目してほしいですね。

                       それでは、次回もお楽しみに!!



管理人の感想

とうとう当日となりました。渚の襲名式典・・・とは仮初めの、最後の戦いの。

式典の途中で唐突に行われた柾影の攻撃。それを食い止め、柾影と相対する藤林家現当主の渚の父。

さらに渚には綾乃が。そして助太刀に入ろうとした雄真と春姫には、意外な敵が・・・。

おそらく精神作用の魔法で操られていると考えられる、準とハチ。はたして雄真たちに戦う手段はあるのか?



2008.11.14