『解かれた魔法 運命の一日』〜第49話〜







                                        投稿者 フォーゲル







  「だったら、話は早いわ!」
 あたしはパエリアを『ビシィィィッ!!』と『麒麟』に突きつける。
 「ちょっとアンタの力を貸して貰うわよ」
 「あ、あの柊さん?お願いするならもうちょっと下手に・・・」
 美和が後ろからツッコミを入れるがあたしはそれを無視する。
 『ふむ・・・』
 考え込むように沈黙する『麒麟』。
 『お主が我の力を求める理由は知っている。だが・・・』
 『麒麟』はそこで言葉を切る。そして―――

 “ズグン”

 その瞬間あたりの空気が変わった。
 そして、『麒麟』の身体から魔力が迸る!
 とっさにあたしと美和は地面に身を伏せる。
 それは、あたし達を攻撃した物では無かった。けどただ放出しただけの魔力で周りの木や草花が根こそぎ吹き飛ばされる。
 (こ、これが『神の力』!?)
 あたしの身体を震えが走る。
 そして、同時に『神の力』を操っている雄真や和志がスゴイと思った。
 『我の力を行使しようと思ったら、これだけの力に耐えなければならない。それに耐えられるのか?』
 あたしを挑発するように言う『麒麟』。
 「そ、それでも・・・」
 魔力の奔流に耐えながら、あたしは立ち上がる。
 「それでも、あたしはアンタの力が必要なのよ!」
 『よく分からぬな・・・』
 「何がよ?」
 『以前の・・・『魔法しかすがるものの無い』お主なら我の力を求めるのも分かるが・・・』
 (こいつ、あたしの過去を知ってる?)
 あたしの疑問を他所に『麒麟』は喋り続ける。
 『しかし、今のお主が『魔法』に拘る理由は無いだろう?何故なのだ?何故我の力を求める』
 「決まってるじゃない!渚達を助けるためよ」
 『しかし、お主は『四神』の継承者の血を引いている訳ではないだろう?お主には関係無いではないか?』
 「あんた達『神』には分からないかも知れないけど、そういう風な扱いされるとあたしがムカツクのよ」
 いつぞやのあたしやすももちゃん達を巻き込まないようにしていた時のことを思い出して言うあたし。
 『・・・』
 沈黙する『麒麟』。
 ここぞとばかりにあたしは言葉を続ける。
 「それに、あたし自身が後悔したくないっていうか・・・とにかく見てるだけって言うのは嫌なの」
 『・・・随分と難儀な性格をしているのだな』
 「放っといてよ!これがあたしの性格なんだから、あたしはこう生きるって決めてるのよ!」
 言葉を続けるあたし。
 『生きる・・』
 「そうよ。アンタ達『神』と違ってあたし達は生きてられる時間は短いんだから、出来るだけのことをやっておかないと!」
 『例えそれで、死んだとしてもか?』
 「そうね。少なくとも『ああしておけば良かった』って後悔はしないわね」
 また沈黙が落ちる。
 『分からぬな・・・』
 『麒麟』が訝しげに唸る。
 (ダメかしら・・・)
 あたしは絶望的な感じでジッと『麒麟』の様子を伺う。
 『分からぬが・・・お主という人間に興味は持った』
 「どういう意味よ?」
 『お主に力を貸して、お主の生き方を見て見るのも一興だな』
 「じゃあ・・・」
 『お主に力を貸してやろう』
 『麒麟』の姿が光輝く。
 「助かるわ」
 『何、気にするな、お主の言葉では無いが、我が『こう生きる』と決めたのだから―――』
 その言葉を最後にあたしの意識は消えた―――




  「う・・・うん・・・」
 あたしは首を振りながら立ち上がる。
 そこは渓谷では無く、入り口の石板のある場所だった。
 近くに美和が倒れている。
 「美和!美和!」
 近寄って身体を揺さぶる。
 「あ・・・柊さん。『麒麟』はどうなったんですか?」
 「あたしの感覚だと多分、力を貸してくれたと思うんだけど・・・」
 あたしの身体には今までには無いほど魔力が充実していた。
 「・・・って美和、アンタそれは何よ?」
 「えっ?」
 美和の手には桜の枯れ木のような物が握られていた。
 「な、何でしょう?・・・あっ」
 美和の手の平の文様の輝きが増していた。
 「・・・姉さん」
 そういえば、この文様は扇花家の後継者が綾乃から美和に変わる前兆かも知れないんだっけ・・・
 あたしがそんなことを考えてたその時だった。
 
 “ドカァァァァァァン!!”

 不意に聞えて来た爆発音。
 「今はそんなことを考えてる場合じゃないわね」
 急いで戻らないと御薙先生が・・・
 「美和、急ぐわよ!!」
 「は、はい!!」
 そう言ってあたし達はパエリアに乗る。
 「パエリア、フルスピードで頼むわよ!」
 『分かりましたぞ。杏璃様、全身に魔力が溢れております。若返ったようですじゃ』
 これも『麒麟』の魔力を受けているせいか、パエリアも声の感じが若返っている。
 そして、次の瞬間、あたし達は猛スピードで夜の森の上に舞い上がった。





  (ハァ・・・ハァ)
 「さすが、大魔法使い御薙鈴莉だ。神の力も持たずに、俺を足止め出来るとは凄いですね」
 「褒めてくれて、ありがとう」
 不敵に笑う私。
 「まさか、神の力を『受け止める』んじゃなくて『受け流す』という方法を使うとは」
 「私も『四神』の力を使えた人間よ。ナメないで欲しいわね」
 『神の力』はそれぞれに特定の『魔力の波動パターン』がある。
 私は自分が『朱雀』を使役していた時の経験を利用して、義人の魔法攻撃の波動パターンを読み取り、
 自分の魔法式の波動パターンから、似たような部分を使って干渉し、攻撃を受け流し続けた。
 こちらから攻撃は効かなくても、こっちが立ち続けていれば、義人は、柊さん達を追えない。
 「だが、もう魔力は限界のようですね」
 「・・・」
 確かに、受け流し続けるのも限界に来ていた。
 「あなたに敬意を表して、俺の最大呪文で倒してあげましょう」
 義人は呪文を唱え始める。
 「いいのかしら?『私だけ』を注意していると痛い目を見るわよ」
 「?」
 一瞬、訝しげな目をする義人。そして、次の瞬間―――
 「チッ!!」
 舌打ちしながら横に飛ぶ。
 
 “ドンドンドンッ”

 義人のいた場所を攻撃呪文が撃ち砕く。
 
 「何とか、間に合ったみたいね、柊さん」
 「当然です!後はあたしに任せて下さい」
 自信に満ち溢れた柊さんがそこには立っていた。




  御薙先生は疲れ切った様子だった。
 「美和、御薙先生を連れて下がってて、こいつはあたしが何とかするから」
 「わ、分かりました」
 御薙先生を連れて下がる美和。
 「何とかするとは・・・『お前が俺を倒す』って言ってるように聞こえるんだが?」
 「そのつもりだけど?」
 「舐めるな!!」
 『シン・ライルズ・オーディスト・アウラ・ファレスト!!』
 既に片目が緑色―――神の力を使っている状態の義人が放った魔力弾があたしに向かって飛んで来る。
 『オン・エメルサス・ルク・アルサス・ライガレスト・ダズ・ディシェイド!!』
 それをあたしの『麒麟』の力を使った防御魔法がそれを打ち消す!
 「くっ!やっぱり『麒麟』の力を使えるようになっていたか?」
 舌打ちしながら、あたしから間合いを取る義人。
 あたしは内心、驚いていた。
 新しい呪文を作っている時間は無かった。
 それなのに、あたしの口からは自然と『麒麟』の力を使った呪文を唱えていた。
 (あのトーナメントの時に、雄真達の身に起こったのも似たような現象だったのかしら?)
 そんなことを考えながら、あたしは呪文を唱え始める。
 『オン・エメルサス・ルク・アルサス・ライガレス・エスタリアス・アウク・エルートラス・レオラ!!』
 “ググっ”
 あたしの手の中に今までに感じたことのない手ごたえが生まれる。
 「いっけーーー!!」
 その声と共に、無数の魔法弾が義人に飛んで行く!
 『シン・ライフォールド・オーディスト・アウラ・フィルスト!!』
 防御障壁が義人の目の前に展開される。
 障壁に当たって、魔法弾は破裂する。
 その破裂した魔法弾が周辺に電撃を撒き散らす!
 「クソッ!!」
 それを交わす義人。
 (これも、『麒麟』の魔力のせい?)
 雄真や春姫の魔法に『炎』和志の魔法に『氷』の追加効果があるように『麒麟』には『電撃』の追加効果があるようだった。
 「なるほどな・・・どうやら本当に前とは違うようだ」
 「だから、そう言ってるじゃない」
 「ここからは、本気でいくぞ!」
 「望むところよ!」
 あたし達は同時に次の呪文詠唱に入った。
 



  その後は一進一退の攻防が続いた。
 義人とあたしの呪文がお互いに相手を追い詰めるけど、決め手が無い。
 その時だった。
 東の空から朝日が昇って来た。
 (マズイわね・・・もうあまり時間が無いわ)
 朝になってもあたし達が戻らないとなると、綾乃達が不振がる。
 そして、それは―――義人達も同じようだった。
 「これでケリを付けてやる!!」
 義人は、呪文を唱え始める。
 『シン・ライス・オーディン・トールデスト・アウラ・フォニック!!』
 義人の身体から魔力が立ち上る!
 そして、その魔力は馬に跨った騎士の姿を形作る。
 「神の魔法の究極系、召喚系統の魔法だ!これで・・・終わりだぁ!!」
 あたしの『麒麟』と同じ雷系らしい『オーディン』の姿をした魔力があたしに向かって降り注ぐ。
 (どうしよう、このままじゃ・・・)
 逃げるというのは論外だ。
 とても逃げ切れるもんじゃないし、御薙先生と美和を放っておく訳にも行かない。
 その時だった。
 『オン・エメルサス・ルク・アルサス・・・』
 あたしの口がまた勝手に呪文を紡ぎ始める。
 (これは・・・)
 あたしはあのトーナメントの時、雄真と和志に起こったことを思い出した。
 春姫に聞いたら、2人共『口が勝手に呪文を唱えた』と言ってたらしい。
 つまり、今のあたしも召喚系の呪文を唱えているってことになる。
 2人と違うのは―――あたしは意識がハッキリしているということ。
 “そうだ、素直に我をイメージしろ”
 頭の中に『麒麟』の声が響く。
 『・・・ウィミル・ライガファエル・ゼオートラス・ディオーラ・ギガレスト!!』
 あたしの頭上に、獅子のフォルムを持った魔力が生まれる。
 「いっけぇぇぇぇぇ!!」
 あたしの声に答えて、獅子は騎士を飲み込みながら巨大化していく。
 「な、何だと!!」
 そのまま『麒麟』は義人に向かって収束していった。
 「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
 そして、魔力の消え去った後には義人の姿は無かった。



  「ハァ・・・ハァ・・・」
 あたしは思わずその場に倒れかける。
 そのあたしを抱える人がいた。
 「大丈夫、柊さん」
 「御薙先生・・・」
 笑顔を浮かべた御薙先生だった。
 「あいつは・・・?義人は・・・?」
 「大丈夫、魔力が直撃した後、『誰か』が連れてったみたいだから」
 「連れてったって・・・」
 あの状況で動ける人間が・・・
 ふと、御薙先生の顔を見る。どうも御薙先生はその人間に心当たりがあるようだった。
 「それに、柊さんのおかげで分かったこともあるしね」
 「何ですか?」
 「多分、義人・・・いや綾乃達の『神の力』はおそらく『不完全』なものよ―――
 御薙先生の口からそんな言葉が漏れた。






  「ふぁ〜眠いぞ・・・」
 私の隣りにいるハチが大きなあくびをする。
 「こら、ハチ!これから渚ちゃんの晴れ舞台に私達も出るんだからシャキっとしなさい」
 「そうは言うけどな〜準。さすがに朝早すぎないか?」
 「まあね・・・」
 私達は朝日が昇るか昇らないかの時に、準備して待っててくれるように言われた。
 私は、胸元にバラのブローチが付いたドレス。
 ハチはタキシードだ(ちなみに全く似合ってない)
 その時、車がホテルのフロントの前に止まった。
 そして、その車の中からメガネを掛けたプラチナブロンドの女性が降りて来た。
 「渡良瀬準様と高溝八輔様ですね」
 「そうですけど?」
 「私、渚様の代理でお2人をお迎えに上がりました扇花綾乃と申します―――」








                       〜第50話に続く〜


              こんばんわ〜フォーゲルです。第49話になります〜

         今回は『麒麟』の力を手に入れた杏璃のリベンジマッチという感じですね。

        それと、謎だった召喚系統の魔法についても今回で詳細は判明したかと思います。

           鈴莉の義人足止め法も理にかなってるな〜と思って頂ければ嬉しいです。

         次回はついに50話目にして、『藤林家編』の山場になると思います。

       思いっきり巻き込まれることが確定した準とハチも含めて楽しみにして頂けると嬉しいです。

                      それでは、失礼します〜


管理人の感想

ども、雅輝です。

ついに杏璃が麒麟という名の神の力を手に入れました!

いうなれば、とても「杏璃らしい」説得の仕方でしたね。生きる――それは命という概念すら超越した神たちにとって、新鮮に聞こえたのかもしれません。

そして義人との一騎討ち。両者、神の魔法による一進一退の攻防。

決め手となったのは、具現化した神の力。鈴莉は義人の神――オーディンを不完全だと言っていましたが、そのわけは?

そして準たちに迫る綾乃の影。次回も目が離せません!



2008.11.5