『解かれた魔法 運命の一日』〜第51話〜









                                    投稿者 フォーゲル







  「準!ハチ!どうしたんだ!?」
 2人に呼びかける小日向君。
 だけどその声に答えたのは―――
 『ザイル・リケイルド』
 感情の無い渡良瀬さんの抑揚の無い声だった。
 黒い魔力弾が小日向君達を襲う。
 「うわっ!!」
 左右に飛んでそれを交わす小日向君達。
 「小日向君!神坂さん!」
 私の声に遠く離れた場所から小日向君が親指を上げて答える。
 その様子を見て安心した私は綾乃さんに向き直る。
 「綾乃さん・・・2人に何をしたんですか!?」
 「見ての通りよ。私達の仲間になって貰ったわ」
 「ふざけないで下さい!2人は何の関係も無いでしょう!」
 「違うわよ。渚達の友達ってだけで十分理由になるわよ。利用価値もあるわ」
 冷たく笑う綾乃さん。
 「・・・」
 私は無言でスー君を構える。
 「渚、私と戦うの?初めて会った時から、私を慕ってくれたあなたが?」
 「・・・正直、嫌です」
 私は唇を噛み締めながら言う。
 「でも、綾乃さんが私の大切な人を傷つけるというのなら・・・ためらいはしません」
 「そう・・・」
 綾乃さんも無言でマジックワンドを構える。
 その時だった。
 「―――!!」
 綾乃さんの表情が変わり、呪文を唱え始める。
 私も気が付いた。
 強大な魔力がこちらに向って来るのが分かった。
 私も防御呪文を唱え始める。
 遠くで小日向君達も防御呪文を唱えている。
 そして―――
 『・・・ライガ・エスタリアス・アウク・エルートラス・レオラ!!』
 聞き覚えのある声が上から聞こえたような気がした。





  「みんな、大丈夫!?」
 一瞬意識を失った私の耳に聞こえて来たのは、柊さんの声だった。
 「杏璃ちゃん!無事だったんだね!」
 「当然でしょ!『麒麟』の力も手に入れたわよ!」
 神坂さんの声に答える柊さん。
 「姉さん!何やってるの!?」
 私のボロボロの服を見た美和ちゃんが綾乃さんを問い詰める。
 その手には桜の枯れ木が握られていた。
 それを何故か感慨深そうに見る綾乃さん。
 「・・・義人は?」
 「あいつならあたしがふっ飛ばしてあげたわよ」
 綾乃さんの問いに腰に手を当てて言う柊さん。
 私の目は見逃さなかった。その答えに綾乃さんが動揺したのを。
 (綾乃さん・・・迷ってる?)
 私のそんな考えを断ち切るように美和ちゃんが叫ぶ。
 「姉さん!お願い、前の優しかった姉さんに戻って!」
 「美和・・・それは無理よ。渚達を―――『四神』を滅ぼさないと柾影の目的は達成されないの」
 「綾乃さん。それは柾影のためでしょう?あなた自身はどうしたいと思ってるの?」
 いつの間にか、小日向君達と一緒に渡良瀬さん達と対峙していた御薙先生が声を上げる。
 「・・・私は・・・」
 綾乃さんは一瞬沈黙した後、ブンブンと頭を左右に振る。
 まるで、迷いを断ち切るように。
 綾乃さんが合図すると渡良瀬さんは呪文を唱え始める。
 そして、次の瞬間、小日向君達と渡良瀬さん達の姿が消えた
 「彼らには、足止めに徹してもらうことにしたわ。まだ神の力を手にしたばかりのあなたと渚のコンビの方が相手しやすいでしょうしね」
 「言ってくれるじゃない・・・」
 パエリアを構えながら言う柊さん。
 「美和ちゃん!危ないから下がってて!!」
 「わ、分かりました」
 美和ちゃんが下がるのを確認しながら、私は呪文を唱え始める。
 心にやり切れない想いをかかえながら―――





  “グルワァァァァ・・・!!”
 化け物の姿を正面に捉えながら、俺は呪文を唱える。
 『エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ・エル・アダファルス!!』
 魔法の炎が化け物を打ち倒す。
 だが、息つくヒマも無く、次の化け物が俺に狙いを定める。
 『エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ・エル・アダファルス・アデムント・アス・ルーエント・ディ・アストゥム!!』
 しかし、その化け物は響いた呪文の声と共に消えた。
 「大丈夫!?雄真くん!?」
 「サンキュー、春姫」
 しかし、化け物はまだまだいるようだった。
 「しかし、キリが無いな・・・」
 「そうだね・・・」
 背中合わせに立ちながら息を整える俺と春姫。
 しかし、それよりもやっかいなのは・・・
 不意に、影が差す。
 俺と春姫はとっさにそれの攻撃を交わす。
 その影―――ハチは俺に狙いを定めると矢継ぎ早に攻撃を仕掛ける。
 俺達がこの場所に転移した時、同時に出現した化け物、RPGのゲームに出てくるようなモンスター達を倒すのはともかく、
 それに紛れて、魔力で強化された拳で攻撃してくるハチがやっかいだった。
 ハチを傷つけないように化け物を倒さなければならないからな・・・
 (それに早く何とかしないと・・・)
 俺は転移した森の中から遠くに立ち上る煙を見ていた。
 あそこが多分、転移して来た先、藤林や柊も戦っているはずだ。
 俺がそのことに気を取られた瞬間―――
 “ズドンッッッ!!”
 化け物が適当に放った魔力弾の流れ弾が俺の近くに着弾する。
 「うわっ!!」
 「雄真くん!!」
 今度は母さんが俺のフォローに入る。
 母さんの防御呪文が俺を流れ弾の余波から守る。
 「大丈夫!雄真くん」
 いつの間にか合流していたのか春姫も一緒だった。
 しかし、合流したのはかえって良く無かったかもしれない。
 3人が1ヶ所に固まったことで、ここぞとばかりに化け物達の攻撃が一箇所に集中する。
 「これは・・・あんまり長く持たないかもね」
 母さんの防御魔法による障壁が薄くなりかけている。
 「母さん!諦めるなよ!」
 今は準とハチは後ろに下がって様子を見ている。
 (イチかバチか・・・試して見るか)
 俺は呪文を唱え始める。
 『エル・アムダルト・リ・エルス・ファイラスル・・・』
 「・・・!!ゆ、雄真くん!それは」
 母さんは気がついたみたいだ。
 「『朱雀』の召喚魔法だ・・・」
 「だ、ダメよ!そんなことしたら確実に渡良瀬さん達も・・・」
 「ああ、だから・・・」
 俺は、横目で春姫を見る。
 「・・・うん!」
 俺の考えを察したのか、春姫も呪文を唱え始める。
 「な、なるほどね・・・」
 母さんも俺の考えを察したらしい。
 『・・・オル・ディ・ファルニース!!』
 身体から魔力が引き出されるの感じながら俺は上を見上げる。
 そこには、火の鳥の姿があった。
 膨大な魔力を見ながら春姫に目で合図する。
 俺の腕を掴んだ春姫は呪文を解放する。
 『・・・リアラ・カルティエ・ディ・エル・クォーナ!!』
 その呪文を受けると召喚された朱雀が的確に化け物達を打ち倒す!
 春姫の指示通りに。
 俺が特訓で『朱雀』召喚出来るようになった時に、春姫が考えたコントロール方法だった。
 俺と春姫は『朱雀』の存在を認識した魔法式を使っている。
 『だったら、式守さんの騒動の時に使った干渉魔法でなら、雄真くんが出した朱雀を私にもコントロール出来るんじゃ・・・』
 そう言った春姫の言葉でこの方法は生まれた。
 正直、賭けだったけど、上手く行ったみたいだ。
 春姫の指示に従って『朱雀』は最後の化け物を打ち倒す。
 それと同時に『朱雀』は消える。
 「春姫、ありがとう。助かった」
 「ゆ、雄真くんこそ・・・」
 「・・・2人共、まだこれからよ」
 化け物が居なくなった今、後は準とハチをどうにかすればいいだけだ。
 2人は今動かずにこちらを見ている。
 どうしていいのか分からないのか・・・それとも・・・
 「2人共、渡良瀬さん達について気が付いたことはある?」
 「そういえば・・・私は高溝くんからは攻撃されてないですね」
 「俺も、ハチからだけだな・・・」
 「なるほどね・・・」
 母さんは何かを考えて、そして―――
 「2人を止められるかも知れない。雄真くん達も協力してくれるわね」
 「もちろんだ!」
 「分かりました!」
 そして、俺達に作戦を耳打ちする。
 その作戦は俺にとって衝撃的なものだった。
 




  「行くぞ!春姫、母さん!!」
 「うん!」
 「分かったわ!!」
 俺は2人に声を掛けると真っ直ぐに準達に向って突っ込む。
 走りながら俺は、母さんの作戦を思い出していた。
 

 「まず、2人を操っているのはあのマジックワンドよ」
 「マジックワンドがですか?」
 母さんの言葉に驚く春姫。
 俺も準が持っている黒いマジックワンドに目をやる。
 「マジックワンドが意思を持つことはあなた達も分かっているわよね」
 頷く俺と春姫。
 「だったら、持ち主を操ろうとするマジックワンドがいてもおかしくないわ」
 「講釈はいいよ。問題はどうすれば2人を元に戻せるんだ?」
 「幸い、精神を魔法で操作されてる訳じゃないから・・・渡良瀬さんの手からマジックワンドを放せれば・・・
  高溝くんは、渡良瀬さんから肉体強化の魔法を掛けられてるだけだから、渡良瀬さんを止めれば、自然と高溝くんも元に戻るわ」
 「分かった!で俺と春姫は何をすればいいんだ?」
 「神坂さんは、高溝くんの動きを封じて欲しいの、多分雄真くんに向って来るから・・・」
 「分かりました!」
 「そして、雄真くんは、渡良瀬さんの動きを止めて欲しいの、どんな方法でもいいから。そうすれば
  私が魔法でマジックワンドだけを吹き飛ばすわ!!」




 (どうすればいい・・・どうやって準の動きを止める!?)
 俺が突っ込んで来るのを見て、準は春姫と母さんに攻撃呪文を、ハチは俺に向って来る。
 ハチが俺に向って魔力強化された拳を振り上げる。
 『ディア・ダ・オル・アムギア!!』
 その瞬間、春姫の捕縛魔法がハチを縛り上げる!!
 「ゴメンね!高溝くん!」
 春姫の謝る声が聞こえて来る。
 俺はその声を聞きながら、ハチの横をすり抜ける。
 そして―――
 俺は準の近くに辿り付いた。
 (渡良瀬さんが驚いて動きを止めてくれる方法なら何でもいいから―――)
 母さんの声が蘇る。
 その時、俺はある方法を思いつく。とんでもない方法だった。 
 とはいえ、それ以外の方法は思いつかなかった。
 (ええい!もうどうにでもなれ!)
 俺は準の肩を抱くと―――その唇にキスをした。
 明らかに準の目が驚いたような表情を浮かべる。そして―――
 『ディ・アダファルス!!』
 動きが止まった準の手から母さんの魔法がマジックワンドを弾き飛ばした。





  「うっ・・・うん?」
 準が目を覚ましたのはそれからしばらくしてからのことだった。
 「準!大丈夫か!?」
 「あ、あれ・・・雄真・・・それに春姫ちゃんに御薙先生・・・」
 頭を振りながら答える準。
 「おかしいわね〜渚ちゃんの代理だって言う綾乃さんに迎えに来て貰って・・・それで・・・そこから覚えてないのよね」
 準は考えこむ。
 「それに、何か凄く嬉しいことがあったような・・・」
 「そ、それは思い出すな!出来れば一生!」
 「?・・・雄真、何か隠してない?」
 疑いの目を向ける準。
 「春姫ちゃん、何か知らない?」
 その問いに春姫も苦笑いを浮かべるだけだった。
 その時―――
 “ドォォォォン・・・”
 遠くから爆発音が聞こえた。
 その音の方を見る。
 音はちょうど藤林達と、綾乃が戦っているあたりからだった。
 顔を見合わせる俺と春姫。
 「2人共、先に行きなさい。私も渡良瀬さん達を魔法連盟に保護して貰ってから追いつくから」
 「分かった、行くぞ春姫!」
 「うん!」
 俺達は頷き合って走り出す。
 もう一つの戦いの場所へ――――





                        〜第52話に続く〜


               こんばんわ〜フォーゲルです。第51話になります。

      藤林家編クライマックスとも言える戦い、まずは雄真&春姫&鈴莉vs準&ハチでした。

              朱雀召喚など見所で手に汗握って頂いたら幸いです。

           まあ、決着がある意味ギャグだったのは賛否両論あるかと思いますが(汗)

            それしか思いつかなかったとはいえ、雄真的にはトラウマものだ(笑)

       春姫も相手が杏璃やすももだったらヤキモチも焼くんだろうが、準じゃ苦笑いするしかないかなと。

                    次回は渚&杏璃vs綾乃になりますね。

                 予告としては戦いのキーポイントは美和になるかと。

                       それでは、失礼します〜



管理人の感想

今更ですが、タイトルの「運命の一日」っていうのは、この最終決戦の日のことなのかなぁ?なんて思い始めた雅輝です(ぇ

今回はVS準・ハチ編でしたね。

さらに大量のモンスターたち。その正体も気になりますが、何といってもそれらを一瞬で薙ぎ倒した朱雀のシーンでしょう!

雄真が発動で、春姫が制御っていうところがまたいいですねぇ。恋人同士ならではのコンビネーションといいますか。

そして止め方は・・・鈴莉の「どんなことをしても」というセリフの時点で、今回の結末が予想出来てしまった私は歪んでいるのか?(笑)

まあ雄真も、すももや杏璃相手では流石に出来なかったでしょうね。そんなことをしたら春姫に殺さr(ry

次回は渚&杏璃VS綾乃ですかね。こちらも楽しみです〜^^



2008.11.29