『解かれた魔法 運命の一日』〜第48話〜
投稿者 フォーゲル
「それで、俺達が最初にやらなきゃならないことは何だ?」
勢い込んで聞く小日向くん。
「もちろん、最初は麒麟の力を手に入れないといけないわね」
私達―――特に柊さんを見ながら言う御薙先生。
「確かに今のままだと、あたしは足でまといになっちゃうしね」
「お〜柊も自分を客観的に見られるようになって来たか」
「失礼ね。雄真。あたしはいつだって冷静よ」
「そうか?とてもそうは見えないぞ」
「まあまあ2人共、落ち着いて」
また口ケンカを始めそうな2人を笑いながら宥める神坂さん。
3人共、緊迫しそうな空気を落ち着かせるためにやってるのだと私には分かった。
「で、渚・・・その『麒麟』はどこにいるのよ」
「うん、文献だと『麒麟』が封印されているのは、『扇花渓谷(せんかけいこく)』と呼ばれる場所なの」
「ちょっと待てよ。扇花って・・・」
驚く小日向くんを見ながら呟く私。
「そう。そこには扇花家の人間がその場所に入るためのキーになっているの」
みんなの視線が一斉に美和ちゃんに集まる。
「私は、柊さんをそこまで案内して、渓谷の封印を解けばいいんですね」
「・・・綾乃さんが敵になっている以上、それしか方法が無いわ。美和ちゃん、お願い!」
「分かりました」
「よ〜し、それじゃみんなで早速行くわよ!」
勢いこんで立ち上がる柊さん。
「待ちなさい、柊さん」
そんな柊さんを止めたのは御薙先生だった。
「どうしたんですか?御薙先生?」
「確かにみんなで行った方がいいけど、あんまり大勢で動くと相手にに悟られる可能性が高いわ」
「じゃあ、どうするんですか?御薙先生」
神坂さんの問いに御薙先生は難しい顔で答える
「危険な賭けだけど、2手に別れるしかないわね。それも柊さん達の方は少数で」
「それしか無いのか?母さん」
「他に方法は無いわ」
キッパリと答える御薙先生。
「それに時間を掛けすぎると綾乃さん達に先に動かれる可能性もあります」
御薙先生をフォローするように言う私。
「それでどういう風に分けるかだけど・・・まず今回の主役でもある渚ちゃんはここに残って貰った方がいいのよ。
そう考えると・・・」
こうして私達は作戦を実行した。
「もしもし、どうしたんですか?」
私は自分の部屋の前で寝ていた人―――私の見張りをしていた人を起こします。
「あ、ああ渚様・・・いえ何故か急に眠くなりまして」
その表情には不信感はありません。
(どうやら、お屋敷の人間全員が綾乃さん達の味方って訳じゃ無いみたいですね)
ちょっと安心しながら私は言葉を続けます
「風邪なんか引かないようにして下さいね」
「は、はい、分かりました。それで何か御用でしょうか?」
「ええ、私のお友達を寝室まで案内して上げて下さい」
私の後ろに立つ小日向くんと神坂さんを目で差します。
「はい、分かりました」
「じゃあな、藤林」
「明日、頑張ってね」
「あ、そういえば・・・」
見張りの人が質問をして来ます。
「もう一人お友達の方がいたような気がしますが・・・それに美和様と御薙様も姿が見えませんが」
(・・・!!)
当然の質問に私達が固まったのは一瞬だった。
「ああ、あいつですか?」
口を開いたのは小日向くんだった。
「あいつは、美和ちゃんと意気投合したみたいで、今日は扇花家の方に泊まるって言ってましたよ」
「それで、一足先に帰りましたよ」
「そうなんですか?でもそれなら私共に声を掛けても・・・」
「きっと、あんまり良く寝てたから、起こすのもはばかられたんじゃないですか?」
小日向くんと神坂さんの話に合わせる私。
「そうですか・・・ではお2人共、こちらへ・・・」
不意に2人がこっちを向く。
(うまくいったな(ね)!)
2人の表情はそう語っていた。
とりあえず、こっちの方はうまく行った。
綾乃さん達は、明日私が正式に藤林家の後継者に指名させる前に動くだろう。
それまでが勝負になるはず。
(後は頼んだわよ。美和ちゃん。柊さん。御薙先生。2人をよろしくお願いします)
私は3人の無事を心から祈っていた。
“ハァ・・・ハァ・・・”
あたし達は真夜中の山道を走っていた。
結局、メンバー分けは雄真と春姫が渚のガードも兼ねて、藤林家に残ることになった。
そして、あたしと美和、御薙先生が『麒麟』の所へ向かっていた。
「美和!その場所はまだなの?」
「後、少しです!」
このまま何事も無く、『麒麟』のところまで辿り付ければいいんだけど・・・
その時だった。
『!!』
私と御薙先生。2人の足が止まる。
そして―――
『オン・エルメサス・ルク・アルサス・・・』
あたしは呪文を唱え始める。
「どうしたんですか?2人共?」
足を止めたあたし達に近寄る美和。
その背後に、光が見えた。
警告したいけど、今声を掛けたら呪文が中断されてしまう。
そして―――美和に向かって魔法弾が飛んで来る!
『エル・アムスティア・ラル・セイレス・ディ・ラティル・アムレスト!!』
魔法弾が炸裂するのと、御薙先生の防御魔法が美和の背中に展開されたのはほぼ同時だった。
『・・・エスタリアス・アウク・エルートラス・レオラ!!』
それを確認してから、あたしは呪文を解き放つ!!
あたしの魔法弾は、光が飛んできた方向に向かって飛んで行く!
だけど、それはあっさりと弾き散らされた。
「ちっ・・・あの時の女か?」
闇の中から一人の男が出てくる。
「義人さん・・・」
美和が息を呑みながらその男の名前を呟く。
「お前達の目的は分かっているぞ。だからこそここから先には行かせる訳にはいかない」
マジックワンドをあたし達に向けて構える義人。
「待って下さい!私達は別に義人さん達と戦いたい訳じゃ・・・」
「じゃあ、今すぐここから引くことだな。そうすれば俺は何もしねーよ」
「そ、それは・・・出来ません」
「だろうな・・・『麒麟』の力が無いとお前達は何にも出来ないんだしな」
「義人さん、姉さん達は何を考えてるんですか!?今からでも遅くありません!こんなことは・・・」
「残念だが、それは出来ない。あいつは・・・柾影はもう自分の命を掛けている。ここまで来たらもう引けないんだよ」
「そんな・・・」
「・・・もういいわ」
そんな2人の会話を打ち切ったのは他ならないあたしだった。
「結局、口で言っても分からない奴は実力行使で止めるしかないのよね」
「ほう、以前俺にボコボコにされたくせに、そういうことを言うか?」
戦闘態勢に入る義人。
そんな様子を見ているあたしに後ろから御薙先生がそっと声を掛ける。
「柊さん、美和ちゃんを連れて『麒麟』のところへ行きなさい」
「えっ?」
「今、柊さんがやるべきことは彼と戦うことじゃないでしょう?」
「でも、あいつは、どうするんですか!?」
「彼は・・・私が食い止めるわ」
「・・・分かりました」
確かに御薙先生の言う通り今のあたしは一刻も早く『麒麟』の力を手に入れて、渚達の所に戻らないと・・・
「美和・・・こっちに来なさい」
美和があたしの隣に来たのを確認すると、あたし達と御薙先生は頷いた。
「じゃあ行くわよ!」
御薙先生は呪文を唱え始める。
それと同時にあたしと美和は義人に向かってダッシュする!
「ほう、そう来るか・・・」
義人も呪文を唱え始める。
そして、呪文が放たれるタイミングで、あたしは美和に抱きつく!
「何っ?」
『アムフェイ!!』
あたしと美和の体がフワリと浮く。
そして次の瞬間―――
『エル・アムダルト・リ・エルス・ディファナ・ディネス!!』
御薙先生の生み出した巨大な炎弾が炸裂した。
そしてその爆風で宙に浮いたあたしと美和は吹き飛ばされて義人の後ろの林の中まで飛ばされる。
うまく呪文をコントロールして、着地した後あたし達は後ろを振り返らずにダッシュした。
「ここは、わたしがあなたを喰い止めるわ」
「大魔法使い・御薙鈴莉が相手をしてくれるとは光栄です。しかし・・・」
「何かしら?」
「すでに息子に『神の力』を譲り渡したあなたが俺に勝てるとでも?」
「どうかしら?ただ、魔法は力が全てじゃないわよ」
あたし達の耳に聞こえたのはそこまでだった―――
御薙先生と別れた後、あたし達は無言で走り続けた。
全ては早く『麒麟』の力を手に入れて、御薙先生の所に戻るために・・・!!
あたしは『神の力』の強大さを知っている。いくら御薙先生でも・・・
“ドンッ”
不意に立ち止まった美和の背中にあたしは思いっきりぶつかった。
「ちょっと!?美和、どうしたのよ?」
「・・・着きました」
「えっ?」
「ここが扇花渓谷の入り口です」
だけど、目の前にには黒々とした森が広がるだけ。
「本当にここなの?」
「ええ・・・見て下さい」
美和はその場にしゃがみこむと一つの石板に目をやる。
「この石板が、そうなの?」
「そうです。見てて下さい」
美和は石板に手を当てる。すると―――
石板が光輝く。
「な、何これ?ま、まぶしい・・・」
その光の中にあたしの意識は消えていった。
「・・・っ。うん」
意識を取り戻したあたしは目を開ける。
そこには―――
まさに『渓谷』と呼ばれるほどキレイな光景が広がっていた。
流れる川、紅葉が美しかった。でも・・・
(この重苦しい雰囲気・・・どっかで・・・)
「うっ・・・」
あたしの近くに倒れている美和も目を覚ます。
「美和?大丈夫!?」
「ひ、柊さん・・・」
美和はゆっくりと起き上がると周囲を見渡す。
「ここが扇花渓谷ですか?」
「美和。アンタここに付いて何か知らないの?」
「はい・・・姉さんからここは『式鬼の杜』と対になってる場所だとは聞きましたが・・・」
「!!」
(そっかこの雰囲気は、伊吹の事件の時に行った式鬼の杜に感じたものと同じなのね)
「何でも『式鬼の杜』は魂が眠りに付く場所で、ここは魂が活性化される場所らしいですけど・・・」
美和がそう呟いた時だった。
『・・・誰じゃ!?』
その声に振り向いたあたし達の前に一体の獣が存在していた。
ライオンというか獅子を連想させるその姿―――
(こいつが―――)
「アンタが『麒麟』!?」
あたしの問いにその獣は―――
『だとしたら、どうする』
そう答えた―――
〜第49話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第48話になります〜
今回は動き出す杏璃達と、それを防ごうとする義人という構図がメインですね。
杏璃達を逃がすため、義人の前に立ちはだかる鈴莉。しかし、勝算は・・・
久々にバトル描写を書いたので、腕がなまってないかと心配だったりします。
果たして杏璃は『麒麟』の力を使えるようになれるのか?
ちなみに『麒麟』のフォルムは『キ○ンビール』のラベルを想像してもらえればいいかと(笑)
次回も楽しみにしてくれると嬉しいです。それでは!!
管理人の感想
第48話。ついに行動を起こし始めた雄真たち。
麒麟を手に入れるべく、その封印場所へと急ぐ杏璃と鈴莉と美和。しかしその先には、義人が立ちはだかっていた。
・・・雄真や春姫ではなく、鈴莉が向かったのは最良の選択といえたでしょうね。常に冷静な彼女だからこそ、多対一に持っていける状況をあえて捨て、杏璃を先に向かわせた。
しかし神の力は既に雄真に渡してしまった鈴莉。不敵に笑うその意味は・・・?
そして麒麟と向かい合った、杏璃の取る行動は・・・?
次回も楽しみです^^