『解かれた魔法 運命の一日』〜第46話〜









投稿者 フォーゲル







  「美和ちゃん・・・」
 部屋の外で立ち尽くす美和ちゃんに思わず声を掛ける私。
 重苦しい沈黙が落ちる。
 「あ〜もう!止めよ!止め!!」
 その沈黙を打ち破ったのは柊さんの声だった。
 「美和、単刀直入に聞くわよ」
 「ち、ちょっと杏璃ちゃん・・・」
 思わず止めに入る神坂さん。
 「春姫、あたしがこういう雰囲気嫌いなのは知ってるでしょ」
 「そ、それはそうだけど・・・」
 柊さんは美和ちゃんに向き直る。
 「で、美和、アンタは私達の味方なの?それとも・・・」
 「・・・」
 美和ちゃんは黙ったまま口を開かない。
 何かを考え込むようにジッと視線を畳の上に落としたまま。
 それでも意を決したように顔を上げると・・・
 「お願いします!姉さんを・・・姉さんを止めてください!!」
 そう言って深々と頭を下げる美和ちゃん。
 「美和ちゃん、どういうこと?」
 柊さんとは対象的に優しく問い掛ける神坂さん。
 「私も詳しいことは分かりません。でもこのままじゃ姉さんは危険なことをしようとしてる気がするんです」
 「それは、どういう根拠なんだ?」
 今度は小日向くんが美和ちゃんに聞く。
 「ある日突然、姉さんが『藤林家の後継者は渚は相応しくない』って言い始めて・・・」
 美和ちゃんはポツポツと語り始める。
 「私はそれに猛反発しました。『何で今更そんなこと言うの!?』って。
  でも、姉さんは『美和には関係無い』の一点張りで・・・」
 その時のことを思い出したのか、悲しそうな顔で喋る美和ちゃん。
 「確かに、自分だけ事情を知らないって言うのはムカツクわよね」
 以前の綾乃さん達との戦いのことを思い出したのか、私達を見ながら言う柊さん。
 「それに、姉さんたちは前にも増して風流四家の皆さんで集まることが多くなって・・・」
 「でも、それは魔法の名家の当主候補なんだから当然なんじゃない?」
 私だって、京都にいる頃はお父様についていろんな人達に会うことも多かった。
 将来、藤林家の当主として顔を知っておいて貰うのは何よりも重要だから。
 ちなみに、式守さんともその時に出会っている。
 「渚さんの言ってるのは公式の場合じゃないですか?月に10回以上も『隠れて』会ってるとなると・・・
  だから、ある日、私は思い切って姉さんの後を付けて見たんです」
 「よく、バレなかったね」
 「私は魔法使いと言ってもそんなに力の強いほうじゃないですから・・・」
 自嘲気味に笑う美和ちゃん。
 「そしたら、姉さん達は山荘の中に入って・・・その中に居たんです」
 「誰が?」
 「柾影さんが・・・」
 『!!』
 驚く私と御薙先生。
 (じゃあやっぱり柾影さんは生きてるって言うの?)
 「その時、私は分かったんです。姉さん達は柾影さんを藤林家の後継者にしたいんだなって」
 「美和ちゃん、一つ聞くけどその時柾影くんの持ってたマジックワンドの形は?」
 「ええっと・・・」
 御薙先生の問いに思い出すように答える美和ちゃん。
 「・・・確か、植物の蔦が絡まったようなマジックワンドでした」
 「なるほど・・・」
 何かを確信したような表情になる御薙先生。
 「母さん、何か分かったのか?」
 「柾影くんが、『ラグナ=ワンド』の持ち主ってことはね」
 「でも、さっきの御薙先生の話だと、いくらその・・・柾影さん?って人が優秀な人だとしても、とても魔法使いを
  根こそぎ滅ぼすような力を持ったマジックワンドを扱えるほどの力を持ってるとは思えないよ?」
 「というかそんな危険なマジックワンドを操れる人間がいるのか?という点も疑問よね」
 神坂さんと柊さんが疑問の声を上げる。
 「・・・可能性は無い訳じゃないわ」
 御薙先生は考え込むように答える。
 「『ラグナロク』の時のことを綴った文献を調べると、ラグナ=ワンドを扱っていた魔法使いは何らかの原因で、
  『魔法に絶望した』ような経験をしたらしいわ。その理由までは分からなかったけど・・・」
 「じゃあ、まさか・・・」
 「恐らく、柾影くんもヨーロッパに留学した時に何か『魔法に絶望』するような経験をした可能性はあるわ・・・
  そこを『ラグナ=ワンド』に付けこまれたのか、柾影くんが自分から封印を解いたのかそれは分からないけど」
 「そんな・・・」
 また重苦しくなる雰囲気。
 「それに、もう一つあるんです。姉さん達が危険なことをしようとしている根拠が・・・」
 「何なの?美和ちゃん?」
 「・・・これです」
 そう言って美和ちゃんは自分の手の平を私達に見せる。
 そこには―――
 「これって・・・」
 私は驚きに目を見張る。
 美和ちゃんの手の平には桜の花びらの形をした文様が浮かんでいた。
 「何をそんなに驚いてるんだ?藤林?」
 「この模様は、風流四家の後継者に浮かぶ文様なの。風流四家はそれぞれ『扇花』・『鳥野』・『風雪』・『弧月』の四家が
  その役目を果たしているの。そしてそれぞれの当主や後継者にはその家を表す文様が体のどこかに浮かび上がるわ」
 小日向君の質問に答える私。
 「これがここ2・3日の間に急に私の手の平に出て来たんです」
 また俯く美和ちゃん。
 「私の身体にこれが浮き上がって来たってことは。もうすぐ姉さんが扇花家の当主じゃなくなるってことです・・・
  それはひょっとして姉さんの命に関わることなら・・・そう考えると不安で・・・」
 その声は段々涙声になっていった。
 「もう、姉さんは私の声には耳を貸してくれません・・・どうしようかと思った時に・・・」
 「私達が帰って来たってこと?」
 「お願いします!本当にムシが良すぎるお願いだと言うことは分かっています!でも、もう渚さん達に頼るしか・・・」
 「・・・分かったわ」
 そう答えたのは、私だった。
 「何が何でも、綾乃さん達は私が止めて見せるから」
 「・・・おい、藤林。そこは『私』じゃなくて『私達』に訂正しろよ」
 私の後ろから小日向君が声を掛ける。
 「そうだね。そういう事情なら止めて上げないと」
 「・・・まあ、美和があたし達の敵っていう可能性は低いだろうしね」
 「皆さん、ありがとうございます!!」
 泣きながら言う美和ちゃん。
 「それとな。美和ちゃん。お前は『もう姉さんは自分の声に耳を貸してくれない』って言うけど、そんなことは無いぞ。
  兄妹・姉妹で分かり合えないなんて、そんなことは絶対に無いからな。美和ちゃんが諦めさえしなければ、いつかきっと
  アイツにもその想いは届くさ」
 「小日向さん・・・」
 「・・・美和ちゃん。『兄弟姉妹の絆』に関しては小日向君の言ってることは間違い無いよ」
 「そうなんですか?」
 「そうよ。後で話して上げるけど、それはもうね・・・」
 「藤林〜余計なことは言うなよ〜」
 そんな小日向くんの声を聞きながら、ようやく美和ちゃんは笑ってくれた。
 「さて、それじゃあ、対策会議を始めましょうか?」
 御薙先生は私達を見渡して言う。
 「美和ちゃん、もちろんあなたにも協力してもらうわよ?」
 「は、はい!任せて下さい」
 そして、私達は作戦会議に入った。






  「はぁ・・・」
 私は深いため息を付いた。
 このため息の理由はハッキリと分かる。
 そもそものきっかけは、伊織に相談されたことだ。
 『綾乃さん、私達のしていることは間違ってるんじゃないでしょうか?』と。
 伊織の話では、柾影は最近夜寝ている時にうなされていることが多いらしい。
 寝言も多くなっていて、その寝言と言うのが・・・
 『どうしてそんな悲しそうな目で俺を見るんだ?』とか言ってるらしい。
 そんな言葉の節々に良心の呵責みたいなものを感じる・・・そう伊織は言っていた。
 『綾乃さん、確かに私達は柾影さんの過去を知って、協力することを決めました。
  でも、それが結果的に柾影さんを苦しめていることになるなら、止めてあげる勇気も必要なんじゃないかと思います』
 確かにそうなのかも知れない。でも・・・
 「どうした?綾乃?そんな深刻そうな顔して」
 「義人・・・」
 長年の私のパートナーである義人が話し掛ける。
 「顔に出てる?」
 「ああ、もう分かりやすくな」
 「・・・ねえ、義人」
 「何だ?」
 「あなたは、ここのところの柾影の態度、どう思う?」
 「まあ、アイツらしくないってのは分かるけどな」
 そう言って義人は1本のマジックワンドに目をやる。
 それは柾影から渡されたマジックワンドだった。
 黒い水晶がはめ込まれた今までに無い印象を受けるワンドだった。
 もし、ピンチになったらそれを使えってことらしいけど・・・
 「今までのアイツだったらこんな作戦提案しなかったと思うしな」
 「・・・私達は間違ってるのかしらね?」
 「さあ、どうだろうな・・・」
 2人で考え込む。このマジックワンドに秘められた『能力』のことを考えるとなるべくだったら使いたくない。
 そうすれば確実に無関係な人達を巻き込むことになる。
 今までは、渚達を襲うにしてもなるべく、無関係な人間は巻き込まないようにして来た。
 「でもな、柾影の『過去』を知った以上今更、やめろとも俺は言えない」
 「そうよね・・・」
 『あんな経験』をすれば誰だって魔法を滅ぼしたくなるだろう。
 それが、柾影自身の意志なのか、ラグナ=ワンドの思惑通りなのかは分からないが。
 いや、もうそんなことも柾影にはどうでもいいことなのかも知れない。
 「さて、そろそろ動き出す頃か?・・・渚達は?」
 「そうね」
 おそらく、時間的には式守家の方に行った伊織と純聖さんも動き出しているだろう。
 「こっちも動く前に最終確認だ。俺は『麒麟』を押さえる。これはお前に渡しておくぞ」
 義人から黒いマジックワンドを受け取る
 「私は、渚達を押さえるわ」
 「じゃあ、成功を祈るぞ」
 「義人もね」
 そう言って義人は姿を消した。
 「最後に確認だけしておきましょうか・・・」
 私はそう言ってそのマジックワンドの魔力を放出する。
 その魔力の塊の中に、このワンドの『能力』のターゲットが写る。
 (こんな可愛い一般人の女の子を巻き込むような真似はしたくないわね・・・)
 その『ターゲット』の―――紫色の長い髪がキレイな女の子を私は見ていた―――








                         〜第48話に続く〜


                 こんばんわ〜フォーゲルです。第47話になります〜


       今回は美和のお願いと『風流四家』の細かい設定。迷いを見せ始める綾乃達という感じですね。

             ちなみに『風流四家』の苗字は『花鳥風月』から連想しています。

         見ように寄っては、雄真が美和にもフラグを立ててしまっているように見えるな(笑)

                 そして、柾影の『過去』の謎と切り札の謎のワンド。

               謎のワンドの能力とは?そしてその『能力』のターゲットとは?

                   次回から渚達と綾乃達の対決が始まります。

                   楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは!!



管理人の感想

47話をお送りしました〜。

今回は、段々と事件の裏の部分が明らかになってきましたね。

柾影の「魔法に絶望した」という過去。伊織、綾乃、義人の想い。美和の手に浮かんだ紋章。

そして狙われた「ターゲット」。紫色の長い髪といえば・・・もしかして・・・。

続きが気になりますね^^;

ってことで、次の話もお楽しみに^^



2008.10.13