『解かれた魔法 運命の一日』〜第46話〜
投稿者 フォーゲル
当然、こうなる予感はしていた。
綾乃さんは今まで散々、私やカズ君、小日向君達の命を狙って来た。
その綾乃さんの妹となれば、当然警戒するだろう。
油断無く、美和ちゃんを見つめる小日向君と神坂さん。
柊さんに至ってはパエリアに手を伸ばそうとしている。
「あ、あの待って!みんな」
私がそうみんなに呼びかけた時、一つの影が動いた。
「初めまして!高溝八輔です。よろしくお願いします!」
可愛い女の子に目が無い八輔君が美和ちゃんの前に跪いて挨拶していた。
ちゃんと手を取っているのが八輔君らしい。
「え、え〜と・・・」
戸惑っている美和ちゃん。
そして―――
「こら、何やってんのよ!ハチ!」
“ドカッ”
渡良瀬さんのパンチが八輔君の頭に命中した。
「イッテ〜何すんだよ!準!」
「それは私のセリフよ!怯えてるじゃない・・・」
そう言いながら、渡良瀬さんは美和ちゃんに向き直る。
「美和ちゃん・・・だっけ?私は渡良瀬準。渚ちゃんの親友よ」
「あ、は、初めまして・・・扇花美和です」
「プッ」
私の後ろで吹き出すような笑い声が聞こえる。
見ると、小日向君が苦笑しているのが見えた。
「ちょっと、雄真、何で笑うのよ」
「いや、お前ら、相変わらずだなと思ってな」
そう言いながら、小日向君はゆっくりと美和ちゃんに近づく。
「ちょっと!?雄真!」
警戒している柊さんが小日向君を止めようとする。
「柊、『アイツ』は『アイツ』、美和ちゃんは美和ちゃんだろ?」
「・・・そうだね」
同意した神坂さんも美和ちゃんに近づく。
「小日向雄真だ」
「神坂春姫です」
2人共、美和ちゃんに自己紹介する。
「全く、雄真も春姫もお人好しなんだから・・・」
そう言いながら柊さんも美和ちゃんに近寄ると自己紹介をした。
少しずつとは言え、和みはじめた4人の姿を見ながら私はホッとしていた。
「さあ、着いたよ!」
私は車に乗っている皆に声を掛ける。
あの後、私達は美和ちゃんと一緒に迎えに来た車に乗って藤林家に帰って来た。
私にとっては半年ぶりになる。
そして―――
「・・・?どうしたの?3人共?」
ちなみに渡良瀬さん達はまだ仕事があると言うので一旦ホテルに戻った。
いつ来ればいいかはこっちから連絡することになっている。
「いや、凄い家だなと思って・・・」
呆然と見上げる小日向君。
「そうだね。式守さんの家に行ったことあるけど、全然大きいよ」
「瑞穂坂にある式守さんの家は、確か分家で元々式守さんの実家なんだよ」
那津音さんの後継者として式守さんが本家に養子に行ったということを思い出しながら言う私。
「式守家の本家はもっと大きいんじゃないかな・・・」
3人にそんなことを話しながら私は実家の敷地に足を踏み入れる。
その瞬間。
『お帰りなさいませ!渚お嬢様』
ズラッと並んだ使用人達の姿に驚く小日向君達。
「みんな、ありがとう」
その中を普通に歩いていく私。
後からかしこまったように付いて来るみんな。
そして―――
前の方に2人の人影が見える。
一人は、長い黒髪の女性。もう一人はメガネを掛けた中年の男性。
「母さん、ひょっとして・・・」
「そうよ。彼らが―――」
後ろで御薙先生達の会話が聞こえて来る。
「謙三様、小百合さん、渚様をお連れしました」
お仕えモードになった美和ちゃんがお父さん達に挨拶する。
「只今、戻りました。お父様、お母様」
「お帰りなさい。渚」
「瑞穂坂学園では、弟にも会えたようだな」
「はい、何とか・・・」
「御薙殿にも渚がお世話になったようで、ありがとうございます」
お父さんが御薙先生に話し掛ける。
「いえ、私は何も・・・」
その後、小日向君達の自己紹介を終えて、私達はその場で話が弾む。
「なるほど、渚も瑞穂坂学園でいろいろと学んだのだな」
「うん、辛いこともあったけど、私瑞穂坂学園に行って良かった」
「ほらほら、あなたも渚も、積もる話はあるでしょうけど、まずは食事にしましょう?皆さんを歓迎する準備も出来てますよ」
「あ、でも皆荷物を置いてこないと」
「では、お部屋には私が案内しましょう」
その声に私は息を呑む。
美和ちゃんがハッキリと動揺するのが分かった。
そこに立っていたのは、今回の私のお披露目式の立会人の一人―――綾乃さんだった。
「分かりました。じゃあお願いします」
そう言ったのは小日向君だった。
―――私の指摘通りに。
「うわ〜緊張した〜」
私の部屋に来るなり、そんな声を漏らす小日向君。
「うん、本当に・・・だけど渚ちゃん。あの人がいるって分かってたの?」
神坂さんの問いに、頷く私。
私達を歓迎する宴会が終わった後、小日向君達に私の部屋に来て欲しいと告げておいたのだ。
「風流四家で一番上なのは、綾乃さんの扇花家だから、多分責任者としているんじゃないかとは思ってた」
だから、家に来る前小日向君達に教えておいた。
『もし、綾乃さん達が現れても普通にしてて欲しい』と。
「あたしが負けた男―――義人だっけ?あいつも居たわね」
壁にもたれながら言う柊さん。
「でも、その2人しか居なかったというのは・・・気になるわね」
御薙先生が疑問を浮かべる。
そう、確かに宴会には綾乃さんと義人さんしか居なかった。
風流四家、残りの2人伊織ちゃんと純聖さんはその姿を見なかった。
「多分・・・2人は式守家の本家に行ってるんだと思う」
『!!』
みんなの驚きが重なった。
「綾乃さん達の目的は、私と小日向君達、神の力を使える者達の抹殺」
私は自分の推理を披露する。
「でも、彼らには恐れていることがあるの」
「何なの?」
神坂さんの問いに頷く私。
「私達の『四神』以外の神の力の覚醒」
「そんな力があるの?」
身を乗り出すように聞いてくる柊さん。
「ええ、少なくとも家の文献で残っている『神の力』があるの。『麒麟』(きりん)っていう神の記述が残ってる」
「渚ちゃん、ひょっとして・・・」
「うん。その力をもし柊さんが使えるようになれば、十分戦えるようになると思う」
「よし!じゃあすぐに行くわよ!」
勢い込んで立ち上がる柊さん。
「ま、待って!」
柊さんを止める私。
「柊さん、言っとくけど、そんな簡単なものじゃ無いよ。過去の文献だと何人もの魔法使いがその力を自分のものに
しようとして―――失敗してる。この場合の『失敗』は―――」
「・・・死ぬってこと?」
柊さんの問いに頷く私。
重苦しい空気が流れる。
「・・・どうせ、このままでもあたしは足を引っ張るだけでしょう?」
そこには、覚悟を決めた表情の柊さんがいた。
「あたしは、自分が死ぬことよりも渚や春姫達がやられていくのを見てるだけなのは・・・嫌なの」
前の綾乃さん達の襲撃の時、何も出来ずにやられるだけだった自分の姿を思い出したのか、
歯を食いしばる柊さん。
「だから、渚、あたしを信用しなさい!」
「まあ、諦めろ。藤林。こうなったら柊は聞かないぞ」
「そうだね。杏璃ちゃんも負けず嫌いだから」
小日向君と神坂さんが笑いながら言う。
「みんな・・・ありがとう」
こうして、私達の最初の作戦が決まった。
「でも、残りの2人が和志達の方に入ってる理由は何なんだ?」
そんな疑問を口にしていたのは小日向君。
「多分、式守さんにも何か考えがあるんじゃないかな?」
「理由としては、式守家にも『麒麟』みたいに封印されている神の力があると思うんだけど」
神坂さんの問いに疑問を持ちながら答える私。
「それだけじゃないわ」
私達の会話に割って入ったのは御薙先生だった。
「もちろんそれもあるかも知れないけど、おそらく彼らは、すももちゃんの『力』を恐れている」
「どういうことだよ?母さん」
「私は以前から『神の力』にある仮説を持ってたの」
「仮説?」
「そう。『神』は『膨大な魔力を持った生き物』を古代の魔法使い達が畏怖の対象として崇めていた存在だと思っていた」
御薙先生は流れるように語り続ける。
「だけど、この前彼らが襲撃した時に吾妻くんが何て言ったか覚えてる?」
首を振る私達。
「『青龍』と会話したって言ってたのよ」
御薙先生の言いたいことが未だによく分からずジッと聞き続ける私達。
「その時思ったの。『神』は『膨大な魔力を持った生き物』じゃなくて『意志を持った膨大な魔力そのもの』なんじゃないかって」
「!!」
「・・・確かに、そう考えればつじつまが合うかも」
神坂さんは自分のマジックワンド、ソプラノを見つめる。
魔法使いが持ってるマジックワンドは、その媒介に寄っては意志を持つものが生まれることがある。
それは、その媒介になる品物に対する持ち主の想いが深ければだ。
だが、もし魔力そのものが長い期間―――それこそ気の遠くなるような期間、存在しつづけたとしたら―――
「でも、ちょっと待て」
小日向君が疑問を浮かべる。
「それは、その魔力の『持ち主』がいる場合だろ?『神』の魔力の持ち主って―――」
小日向君の疑問に御薙先生は答える。
「突拍子も無いんだけど・・・地球そのものだとしたら?」
「・・・」
「この地球そのものがその魔力の持ち主で、魔法が『地球を守る』ために存在するものだとしたら・・・私はそう信じたいわ」
御薙先生はそこで一旦話を切った。
「今は、神の力に関してはどうでもいいよ。母さん。それより―――」
「そうそう、すももちゃんの力に関してね」
話を促す小日向君に御薙先生は口を開く。
「魔力って言うのは密度が濃ければ濃いほどその力も増えるわ。今現在も研究が進んでるけど、魔力を『融合』させるのは
人類の悲願と言ってもいいかも知れないわね」
「じゃあ、神の力なんて尚更・・・」
「でも、古代の文献―――魔法使い同士の世界最終戦争―――『ラグナロク』では最終的に一本のマジックワンドが戦争を終わらせた」
「まさか―――」
神坂さんと柊さんの問いに御薙先生は頷く。
「そう、もしそのマジックワンド―――『ラグナ=ワンド』が『戦争を引き起こした』としたら?
力に溺れた魔法使いをマジックワンドそのものが滅ぼしたと考えれば、そして『ラグナ=ワンド』は死んだ魔法使いの魔力を
自分の身体、この場合はワンドそのものに融合させて眠りに着いた」
「そして、それがどういう訳か目覚めたってのか?」
小日向くんの問いに頷く御薙先生。
「そして、私達の『神の力』はこの世界を守るための力、でも、さすがに魔力を融合させて自分のものに出来るラグナ=ワンドには
勝てないのよ。そのままだったらね」
「もしかして―――」
私の顔を見て御薙先生は頷く。
「そう、普通に考えて融合させるのが難しい神の力を融合させることが出来るのが―――」
「すもものあの『金色の羽』の力か―――」
「だから、彼らはすももちゃんの力を恐れている。あの力さえどうにか出来れば、ラグナ=ワンドに取っての敵は無くなるから」
そこまで、言って御薙先生はふすまを見る。
「という訳で、美和ちゃん!そこにいるのは分かってるのよ。入って来なさい!」
「・・・」
「美和ちゃん・・・」
そこには美和ちゃんが立っていた。何かを思いつめたような表情で―――
〜第47話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第46話になります〜
今回はかなり物語の核心に触れる話ですね〜。
すももの能力についてもやっと語れたし・・・
というかストーリーの規模が地球規模になって来たな(汗)
『神』=意志を持った魔力そのものっていうのは、発想の転換で思いついた設定だったりします。
もはや『はぴねす!』っぽさが最初のハチと準以外には無いんだが・・・
次回は綾乃サイドの話も入るかも知れません。それでは、失礼します〜
管理人の感想
46話、今までの謎が次々と明らかになった回でしたね。
神の定義。四神以外の神の可能性。・・・すももの力。
神同士の融合。なるほど、ラグナ=ワンドに対抗できる唯一無二の力といえ、それゆえにすももの力が恐れられていると。
伏線であった点達が、段々と繋がって線になりつつありますね。
そして部屋の外で盗み聞きしていた様子の美和の真意とは?