『解かれた魔法 運命の一日』〜第45話〜
投稿者 フォーゲル
窓の外を風景が流れるように過ぎていく。
新幹線のシートに身を沈めながら私は窓の外を見つめていた。
ちなみに座席はグリーン車。小日向君達も連れて行くことを聞いたお父さんが、切符を取ってくれた。
「はぁ・・・」
私の口からはため息が漏れる。
もちろん、いろいろと不安なことがあるからだ。
何故、この時期にお披露目会をやるのか?
どうして、私達の命を狙って来た綾乃さん達が私の立会人をやるのか?
それより何より―――
『藤林!!』
私の思考はそこで遮られた。
「どうしたんだよ。さっきからボーーーッとして」
不思議そうな顔をして、小日向君が私に話し掛ける。
「あ、ご、ゴメンね」
「渚ちゃん、やっぱり怖いの?」
向かい合った小日向君の隣りに座る神坂さんが話し掛ける。
「怖いっていうか、不安かな」
「不安?」
「そう、ずっと引っ掛かってることがあって・・・」
「何よ?」
これは私の隣りに座ってる柊さん。
「お父さん達は綾乃さん達がやってること知ってるのかなって」
『・・・』
3人共私の言葉を黙って聞いている。
「知らないのならまだ良くて、私としては『最悪の可能性』も考えちゃうから・・・」
「最悪の可能性?」
疑問符を浮かべながら聞く小日向君に私は答える。
「・・・もう藤林家そのものが綾乃さん達に乗っ取られてるって言う可能性よ」
『!!』
藤林家を乗っ取った綾乃さん達が念のためにってことでお披露目式にかこつけて私を消そうとしている
ということも考えられる。
その場合はお父さん達ももう・・・
「それは、大丈夫じゃないかしら」
ふと、顔を上げると御薙先生が立っていた。
「根拠があるんですか?」
「渚ちゃん。お披露目式の案内の手紙持ってる?」
「あ、はい」
私は手紙を御薙先生に渡す。
御薙先生は口の中で呪文を唱えた。すると―――
“ポウッ”
そんな柔らかい音と共に手紙が光に包まれる。
そして、手紙の一部が青く輝く。
「今、光っている部分が花押(かおう)って言ってその魔法使いが書いた公式な文書に書かれるサインなんだけど・・・」
御薙先生が腕を組んで言葉を続ける。
「花押はその魔法使いが一人一人違うものを使っててマネをすることは不可能なのよ。ちなみに私が使っているのはこういうサインよ」
御薙先生は手近にあったナプキンにさらさらとサインを書く。
そのサインは御薙先生の魔力を受けてキラキラと輝き始めた。
「で、この手紙に書かれているサインはまぎれもなく、謙三さんのサインよ」
「じゃあ・・・」
「そう、このサインが謙三さんが生きているってことの何よりの証よ」
「そうですか・・・良かったです」
「でも、渚ちゃんには酷な言い方になっちゃうけど、いろいろな可能性を考えておくことは必要ね」
「どういうことですか?」
春姫ちゃんの問いに御薙先生が答える。
「生きてるけど、無事じゃないって可能性もあるんじゃないかってことよ」
「母さん!!」
立ち上がって御薙先生に詰め寄る小日向君。
「雄真くん・・・向こうがなんらかの悪意を持ってる可能性がある以上あらゆる可能性を想定しておく必要があるわ。
それが、現実って言うものよ」
「・・・分かったよ。それに・・・」
「それに?」
春姫ちゃんの問いに小日向君は答える。
「もし、そんな事態になってたら俺達で藤林の両親を助ければいいんだよな?」
「そうだね。そのために私達がいるんだし」
「まあ、あたし達がいないと、渚が一人でムチャしそうだしね〜」
「柊・・・お前が言うなよ」
「ちょっと雄真!あたしがいつムチャしたって言うのよ!」
「お前はいっつもムチャじゃねーか!」
「ま、まあまあ、雄真くんも杏璃ちゃんも落ち着いて・・・」
口ゲンカする2人を神坂さんが必死に宥める。
(みんな・・・ありがとう)
私は心の中でそっとみんなにお礼を言った。
そんな私達を乗せた新幹線は確実に、目的地である京都に近づいていた。
「で、いいの?あたし達はこんなにのんびりしてて・・・」
私の隣りを歩く杏璃ちゃんに私は答える。
「でも本格的に式典があるのは明日からだしね〜今日はゆっくりしてていいんじゃないかな?」
「何かが間違ってる気がするけど・・・」
腕組みしながら考えている杏璃ちゃん。
「だけど・・・本当にカップルばかりよね〜」
私はみんなを京都観光に案内していた。
いろんな場所を巡って、最後に来たのがここ、八坂神社。
もちろん、言うまでもなく縁結びの神様が祭られていることで有名だ。
「こういう所を女2人で歩くっていうのも悲しいものがあるね・・・」
「そうね〜雄真と春姫はラブラブな感じだし・・・」
その様子を思い出したのか苦笑を浮かべる柊さん。
2人は今頃、境内内を回っているはずだった。
ちなみに、御薙先生は関西魔法連盟に顔を出してくると言って今はいない。
後で、私の家で合流することになっている。
「でも、柊さんは買っておいた方がいいんじゃない?縁結びのお守り」
「そんなのいらないわよ・・・別に相手がいる訳じゃないし」
「えっ?でも柊さん、恋人いるんじゃないの?」
「なっ!何でそうなるのよ!」
私の疑問に顔を赤くしながら答える柊さん。
「いや、立ち聞きするつもりは無かったんだけど、この間柊さん、幼馴染の男の子と電話で話してたじゃない?凄く嬉しそうに」
「ち、違うわよ!あいつは今、イギリスに魔法留学に行ってて、かなり久々に連絡してきたから・・・」
「そういうのが、いつの間にか恋愛に発展したりするもんなんだけど・・・」
「ち、違うって言ってるでしょ!第一、アンタはどうなのよ!」
「私?」
「そうよ!・・・和志にフラれたとはいえ、アンタも男子には人気あるでしょうが!」
「わ、私は・・・しばらく恋愛は・・・」
実際問題として、この状況じゃ恋愛にうつつをぬかしている場合じゃないし。
「本当に〜?案外そういう場合は意外と身近にアンタを好きな人間がいたりするわよ〜」
笑いながら言う柊さん。
(そうかな・・・)
そんなことを考えながら、私は雰囲気を変えるために、口を開く。
「だけど、柊さんの言う通り本当に人が多いね〜」
周りを見渡す私。
その人波の中に私は見知った姿を見つける。
「あっ!渚ちゃんと杏璃ちゃん?どうしてここに?」
「決まってるだろ!俺に会いにわざわざ京都まで来たに決まってるじゃないか?」
「そんな訳ないでしょ?」
「というか2人共何やってるのよ。ハチも準ちゃんも」
そう、そこには旅行でも来たのか準ちゃんと八輔君がいた。
「で、2人共何でここにいるんだよ」
その後、小日向君達と合流した私達。
当然、渡良瀬さん達がいることに驚いた小日向君が最初に聞いたのがそれだった。
「う〜ん・・・話せば長くなるんだけどね・・・」
何でも、渡良瀬さんはそのルックスを生かして、たまにファッション雑誌でモデルのバイトをしているらしい。
「それで、京都旅行のガイドブックの撮影をするはずだった女の子が急に病気で倒れちゃって・・・」
「準さんにお鉢が回って来たってことなの?」
神坂さんが納得したように頷く。
「でも・・・それって問題無いのか?」
不思議そうに呟く小日向君。
「何が?」
「何がって・・・お前男だろうよ。読者騙してるってことにならないのか?」
「う〜ん・・・大丈夫じゃない?私普通に女の子向けの雑誌でモデルやってるけど、文句は来ないし。
もちろん、カミングアウトしてね」
「そうなのか?」
「それに、最近では可愛いなら男の子でもOKって風潮になりつつあるし」
「確かに、テレビでもニューハーフでも超美人ってのをウリにしているタレントもいるしね」
柊さんが頷く。
「何か、間違ってるような気がするんだが・・・」
ため息を付く小日向君。
「それで、八輔君は何で?」
「ふっ!それは・・・」
「・・・どうせ。準に付いていけばモデルやってる可愛い女の子に会えるとかそんな理由だろうが」
「雄真・・・あっさり当てるなよ〜盛り上がらねぇじゃねえか〜」
「お前の考えてることなんかすぐに分かるんだよ!」
「雄真くん、落ち着いて・・・」
ふと、気が付くと私達の周りの人達が興味深そうに私達を見ていた。
「それで、渚ちゃん達は何で京都に?渚ちゃんの実家が京都だって言うのは知ってるけど・・・」
「えっ・・・」
私はそう問われて言葉に詰まった。
説明するのは簡単だけど・・・言ったら渡良瀬さん達を巻き込むことになるかも知れない。
悩んだ末に私は―――本当のことを説明した。
ウソを言ってもバレるかも知れないし。綾乃さん達も一般人を巻き込むようなことはしないだろうという判断だった。
「ふ〜ん、渚ちゃんの家ってそんなに凄い家だったんだ」
「うん、そうなの」
「じゃあ、私達もその式典に出ていいかな?」
「えっ?」
「私も友達の晴れ姿を見たいし・・・ダメかな?」
「あ、俺も!」
嬉しそうに言ってくれる渡良瀬さんと八輔君。
(ど、どうしよう・・・)
私が困っていると・・・
「いいんじゃない?条件があるけれど」
「御薙先生?挨拶は終わったんですか?」
神坂さんが声を掛ける。
「ついさっきね。雄真くん達を探してここまで来たのよ」
「御薙先生、条件って何ですか?」
「常に、雄真くん達の目の届くところにいて欲しいのよ」
「それだけなら・・・分かりました」
「高溝くんも、それでOK?」
「は、はい・・・」
八輔君が頷いたその時だった。
「あ〜やっと見つけました!渚さん探しましたよ!」
その声に振り向く私。
そこには髪をショートボブにした快活そうな可愛い女の子が立っていた。
「美和ちゃん!久しぶり〜!!」
走り寄る美和ちゃんを抱きしめる私。
「渚さん、会いたかったです」
そんな私達を不思議そうに見つめる小日向君達。
(そうか、説明しないといけないよね・・・)
「みんな、紹介するね。この娘は・・・」
私は一泊間を置くと口を開いた。
「『扇花』美和ちゃん。・・・綾乃さんの妹よ」
その言葉に、案の定小日向くん達の表情が固くなる。
ただ一人、御薙先生を除いては―――
〜第46話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第45話になります〜
まずは渚視点の『藤林家』編の第1話ですね。
今回は導入部なんで、あんまり動きはないですが。
それでも、準とハチの登場は意外だったんじゃないかと。
綾乃の妹、美和の登場などにも注目して頂けると嬉しいです。
次回は杏璃のパワーアップネタのふりなども入れて行きたいと思います。
それでは、失礼します〜
管理人の感想
45話。動きだした各組。まずは渚チームからですか。
まず何に一番驚いたかといえば・・・杏璃に男の影があったことですね(笑)
今までまったく出てこなかっただけに、その留学した幼馴染というのが気になります。物語に関わってくるのかどうかも。
そして結構気になる終わり方をしてますね。綾乃の妹の美和。同様が走るメンバーを余所に、鈴莉は何を思っているのか。
では、次の話もお楽しみに〜^^