『解かれた魔法 運命の一日』〜第44話〜







                                        投稿者 フォーゲル






  “コンコン”
 ドアをノックする。
 姉ちゃんから電話を受けた後、俺は約束通りすもも達を連れて御薙先生の研究室に来た。
 「御薙先生、俺です。吾妻です」
 「は〜い。どうぞ」
 中から声が聞こえたことを確認してから俺はドアを開ける。
 「みんな来たわね」
 「ゴメンね、カズ君、それにみんなも。呼び出しちゃって・・・」
 御薙先生と姉ちゃんが俺達を出迎えた。
 「いや、いいよ・・・修行も終わりだったし」
 「・・・その代わり、話が終わったら吾妻和志と小日向雄真には森を庭として直してもらうがな」
 『うッ・・・』
 思わず呻く俺と雄真さん。
 「だ、大丈夫ですよ〜和志くん。わたしと姫ちゃんも手伝ってあげますから」
 「そうだよ〜雄真くんも落ち込まないで」
 落ち込む2人を励ます私と姫ちゃん。
 「・・・2人ともどんな修行をしたの?というか何でそんな事態に?」
 「原因は和志に聞いてくれ。というかそもそもの原因は和志だ」
 笑いながら言う姉ちゃんに答えたのは雄真さんだった。
 「ふ〜ん・・・つまり・・・」
 姉ちゃんは考え込んだ後、口を開いた。
 『お姉ちゃんはカズ君をそんなエッチな男の子に育てた覚えは無いよ?』って・・・こんなリアクションでOK?」
 「なっ・・・」
 見事に言い当てた姉ちゃんに黙る俺。
 「まあ、そんな感じだな」
 苦笑しながら言う雄真さん。
 「し、仕方ないでしょう!?大体雄真さんだって神坂さんとああいう雰囲気になったら、ああいう行動しちゃうでしょう!?」
 「ま、まあ、それは否定しないが・・・」
 言いよどむ雄真さん。
 「だけど、みんな・・・教師の前でそういう話するなんて勇気あるわね〜」
 笑いながら言う御薙先生。
 「だけど、4人共?避妊だけはちゃんとしてね。さすがに学生の内はどうかと思うし・・・
  私も音羽もまだ『お祖母ちゃん』とは呼ばれたくないしね〜」
 『なっ・・・』
 御薙先生の言葉に固まる俺達4人。
 「あ〜そろそろ話を元に戻したらどうなのだ?」
 師匠が呆れたように助け船を出す。
 「そうね〜カズ君達をからかうために呼んだ訳じゃないし」
 (姉ちゃんの話からズレはじめたんじゃないか・・・)
 口には出さずにツッコむ俺。
 「で、姉ちゃん・・・俺達に大事な話って?」
 「ちょっと待って、まだ全員揃ってないから」
 姉ちゃんがそんなことを言ったその時だった。
 “コンコン”
 またノックの音がする。
 「失礼します〜」
 うん、この声は・・・
 「あら、雄真さん達もお揃いだったんですね」
 高峰さんが入って来る。それと―――
 「渚、私達に話って何よ・・・って雄真達も?何で?」
 「伊吹様も一緒ということは・・・かなり重要な話ということか?」
 「そのようですね。兄様」
 その後ろから柊さんと信哉さん達も顔を覗かせた。
 




  「これで全員揃ったわね」
 みんなの顔を見ながら、姉ちゃんが言う。
 「姉ちゃん、大事な話って何だ?」
 これだけのメンバーを集めたということはかなり重大な話なんだろう。
 「うん、実はね・・・」
 姉ちゃんは1枚の封筒を取り出す。
 「それは?」
 「中身を見てみれば、分かるわ」
 俺は言われるままに封筒を開ける。
 「・・・!!」
 そこに書かれていた内容は―――
 姉ちゃんの今のお義父さんからの手紙だった。関西魔法連盟トップの藤林謙三さん―――


 『渚。元気でやっているか?
  瑞穂坂学園での生活はどうだ?
  生き別れていた弟にも会えたようで何よりだ。
  さて、今回わざわざこうして手紙を送ったのには、理由があってだな・・・
  そろそろ、お前を藤林家の後継者として、関西魔法連盟の所属の魔法使いにお披露目しようと思う。
  ついては、一度京都に帰って来て欲しい。
  日時は―――』


  それは、姉ちゃんを藤林家の後継者として認めるための儀式を行うことを告げるものだった。
 それだけなら、何の問題も無いのだが・・・
 「問題は、その儀式をサポートするメンバーよ」
 御薙先生の口調は、厳しいものだった。
 手紙の最後には―――
 
 『立会人は、長年我が藤林家を支えて来た風流四家の皆が勤めてくれる―――』



 「・・・」
 俺は黙りこくった。
 言うまでもなく、俺達の命を狙ってきた風流四家の連中が立会人ということは―――
 「どう考えても、罠だな」
 横から覗き見ていた雄真さんが訝しげに言う。
 「姉ちゃん・・・」
 「カズ君、前にも言ったと思うけど、私はもう決めたからね。
  もう、これ以上綾乃さん達に好き勝手をさせる訳には行かないし」
 その瞳には強い意志が宿っていた。
 「・・・分かってるよ」
 多分、姉ちゃんを止めることは出来ないだろう。
 「じゃあ、俺も付いていくよ」
 だったら、俺はそばにいて姉ちゃんを守ってあげたい。
 「そう言うと思ったわ」
 姉ちゃんは笑いながら言う。
 「だけどね、カズ君。カズ君にはこっちに残ってほしいの」
 「な・・・何でだよ!」
 「これは、危険だからね・・・カズ君には私に何かあった時、綾乃さん達を止めて欲しいから」
 「そんなの納得できないよ!!」
 それは姉ちゃんに何かあっても、こらえて我慢しろってことだ。
 「俺は、何も出来ずにいるなんてゴメンなんだよ!」
 「ち、ちょっと和志、落ち着け!」
 頭に血が昇った俺を宥める雄真さん。
 「つまり藤林はこんな危険なことに和志を巻き込みたくないって訳だな?」
 「そうよ・・・」
 「よし、それなら俺が付いて行く」
 「ゆ、雄真くん!?」
 その言葉に今度は神坂さんが驚く。
 「そんな危険なら尚更、藤林一人で行かせる訳にはいかないだろ?それに・・・」
 雄真さんは御薙先生を見る。
 「そもそも、そういう相談をするつもりで母さんは俺達を呼んだんだろ?」
 雄真さんの言葉に、御薙先生は肩をすくめる。
 「そうよ。それに私も付いて行くつもりだったし」
 「そうなんですか?」
 神坂さんが御薙先生に聞く。
 「生徒が自分から危険なところに飛び込んでいこうとしているのを放置する訳にはいかないでしょう?それに・・・」
 「それに?」
 「ムチャして一人で行きそうだったしね。そういう行動を取られる前に、こっちで手を打たせてもらったの」
 「・・・分かりました。なら、私も行きます」
 神坂さんも名乗りを上げる。
 「それはダメだ!」
 さすがに、それには抗議する雄真さん。
 「私にとっても渚ちゃんは大切な友達だから・・・放っとけないし」
 「ふっふ〜ん、雄真と春姫が行くのならあたしも行くわよ」
 柊さんも言う。
 「渚に何かあったらあたしが永遠にナンバー3のままだからね。きっちり勝つためにも、
  渚にはしっかり生きていてもらわないと困るのよ」
 「みんな・・・ありがとう」
 お礼を言う姉ちゃん。
 「・・・では、こっちも好きに動かせてもらうぞ」
 そう言ったのは師匠だった。
 手紙を見ながら考え込む。
 「どうしたんですか?」
 「藤林渚に届いた手紙を見てたのだが・・・その儀式のある日が、護国が吾妻和志とすももに会いたいと
  指定して来た日と同じなのだ」
 それって・・・どういうことだ?
 「そうなのか?どうしよう・・・でも優先順位としては藤林に着いていった方がいいんだろうしな」
 さっき、俺とすもものガード役をすると言った雄真さんが考え込む。
 「でしたら・・・私が雄真さん達の代わりに着いて行きますよ」
 そう言ったのは高峰さんだった。
 「久々に護国様に挨拶もしたいですし・・・何かあっても神の力を使える人間がいた方がいいでしょう?」
 「ふむ・・・では、信哉、沙耶、お前達も着いて来てくれぬか?」
 「俺達は伊吹様のご命令でしたらどこにでも」
 「そうです!おまかせ下さい」
 「よし、じゃあ渚には、俺と春姫、柊と母さんが付いて行く」
 「私の方には、吾妻和志とすもも、高峰小雪と信哉に沙耶だな」
 確認をするように話す師匠と雄真さん。
 俺達の行動方針はひとまず決まった。





  「あ、でも・・・」
 ふと、何かを思い出したように呟いたのは雄真さんだった。
 「当然、奴らの本拠地に乗り込む訳だけどな・・・」
 不安そうな表情になる。
 「俺達はともかくとして、柊と信哉達は大丈夫なのか?」
 「雄真・・・それはどういう意味よ」
 「聞き捨てならぬぞ、小日向殿」
 「お前達が弱いって言ってる訳じゃない」
 雄真さんは真面目な口調で続ける。
 「ただ、お前達は前に風流四家の連中と戦った時に、ボコボコにやられてたじゃないか」
 「あっ、あれは途中までは互角だったのよ。ただあいつの片目の色が変わった瞬間からいきなりこっちの攻撃が聞かなくなって・・・」
 「柊殿もそうなのか?」
 「あたしもってことは、信哉達も?」
 頷く信哉さん。
 「私達も、戦っていた相手の片目の色が変わった瞬間に私の魔法も兄様の魔力を込めた斬撃も効かなくなりました」
 「・・・それは多分、彼らが『神の力』を解放したからね」
 御薙先生が会話に割って入る。
 「神の力を使った魔法は柊さん達が使っている一般的な魔法とは違っててね。神の力を行使する時には、
  その術者の周りに特殊な魔法障壁が発生するの。その障壁は同じ神の力でしか破れない」
 「だから、あたし達の魔法は通じなかったのね」
 「もちろん、神の力を持つものでないと彼らに勝てないなんてことは無いわ」
 「本当ですか!?」
 勢い込んで聞く柊さん。
 「本当よ?その証拠に神の力は持って無くても、私と同じ魔法式を使っている春姫ちゃんは戦えたんでしょう?」
 「は、はい、確かに私の魔法は彼らに通じました」
 「それなら・・・何とかなるかも」
 そう答えたのは、姉ちゃんだった。
 「本当に!?渚?」
 「うん、ウチの古い文献には『四神以外の神』を記したものもたくさんあるから、それを調べれば・・・」
 「よ〜し、希望が出てきたわね」
 「それなら、式守家の本家にもあるかも知れん」
 師匠も思い出したように言う。
 「那津音姉様がたまに調べていたようなのだ・・・その時は何故そんなものを調べているのか、
  分からなかったのだが・・・今にして思えば、今回の事態を予期していたのかも知れぬ」
 「それは、私と兄様で徹底的に調べます」
 頷く信哉さん達。
 「じゃあ、行動方針は決まったわね」
 御薙先生が話をまとめた。
 「みんな、最後にこれだけは約束して」
 御薙先生が真剣な表情になる。
 「必ず無事に帰って来ること。いいわね!」
 『はい!!』
 俺達全員の声がハモった。





  その後は準備のために一旦解散になった。
 女性陣が前を歩く中、俺は雄真さんに話し掛ける。
 「雄真さん、姉ちゃんをよろしくお願いします」
 「分かってるよ。和志こそ、すももをよろしく頼むぞ」
 「分かりました!」
 雄真さんの問いに俺は自信を持って答えていた―――







                         〜第45話に続く〜


                  こんばんわ〜フォーゲルです。第44話になります。

                      今回は、完全に繋ぎの話ですね〜

             まあ、この手のファンタジーものではお約束のパーティ分断ネタです。

            後は、前の襲撃の時、何故杏璃達の魔法が通用しなかったのかの伏線解きですね。

           次回からは渚視点の『藤林家編』と和志視点の『式守家編』に分かれます。

              他のキャラの視点も入りますが、概ねこの二人になるかと。

                 まずは、渚視点の『藤林家編』からになると思います。

                次回も楽しんで頂けると嬉しいです。それでは!! 


管理人の感想

44話、風流四家との最後の戦いのプロローグとも言える話でしたね。

パーティーは二つに分割。関西の式典に乗り込み、おそらく風流四家と直接対峙することになるであろう渚組と、地元に残り護国との対談を設ける和志組。

これからはこの二つのグループが物語の中軸を担い、同時に動いていくわけですが。

はたして、どうなっていくのか。先の展開がまったく読めませんねぇ^^



2008.9.18