『解かれた魔法 運命の一日』〜第42話〜








                                       投稿者 フォーゲル





  「よく来てくれたわね〜和志くん」
 コーヒーを入れながら、上機嫌で言う音羽さん。
 「いえ、ヒマでしたし・・・それで俺に頼みたいことって言うのは・・・この子のことですか?」
 すももの胸の中でスヤスヤと寝ている赤ちゃんに目を向ける俺。
 「そうなのよ〜実はね・・・」
 この子のお母さんは音羽さんと同じく高校でカフェを開いている人らしい。
 その人は、今日が結婚して5回目の結婚記念日らしい。
 『旦那と2人でゆっくりしたいんですけど、この子を置いてどこかに行くわけにも行かないですし』
 そう言ってガッカリした表情を浮かべたその友人に音羽さんが提案した。
 「じゃあ、私が預かってあげるから、2人で過ごして来なさい!」と。
 その友人もその音羽さんの厚意に甘えることにしたらしい。
 ところが、その後で音羽さんの方にも用事が出来てしまったのだという。
 「『Oasis』に仕入れる食材の値段が業者さんと折り合わなくてね〜これから直接交渉よ」
 「そこは、音羽さんの愛嬌で何とかならないんですか?」
 「相手も手強くてね〜」
 (マトモに交渉する気は無いんですね・・・)
 思わず苦笑する俺。
 「なるべく早く、話を纏めて見せるからその間だけ、すももちゃんと一緒に面倒見ててね」
 「分かりました。そういうことなら、任せて下さい!!」
 「おお〜頼もしいわね、さすが将来のすももちゃんの旦那様ね♪」
 「お、お母さん・・・」
 照れて顔が真っ赤になるすもも。
 「そ、それよりもこの子の名前はなんて言うんですか?」
 このままだとまた音羽さんのオモチャにされる予感がヒシヒシとしたので、俺は話題を変える。
 「澄華(すみか)ちゃんよ」
 「じゃあ女の子なんですね」
 俺はそっと澄華ちゃんに近づく。
 「よろしくな。澄華ちゃん」
 寝ている澄華ちゃんの頬をツンツンと突付く。
 「フッ・・・フェェェェ〜〜ん!!」
 機嫌を損ねたのか澄華ちゃんは泣き出してしまった。
 「か、和志くん〜!何やってるんですか〜!!」
 「ゴ、ゴメン・・・」
 すももが慌ててあやしはじめるが、泣き止む気配を見せない澄華ちゃん。
 「ああ〜どうしましょう〜」
 「・・・しょうがないわね。ちょっと貸してみて」
 澄華ちゃんを音羽さんに渡すすもも。
 「ほら〜よしよし・・・」
 優しく背中を撫でながら澄華ちゃんをあやす音羽さん。
 数分後には澄華ちゃんは泣き止んでいた。
 「おお〜さすがですね。こうやって見ると音羽さんも母親なんですよね」
 思わず俺は感心していた。





  「う〜ん、いいお天気ですね」
 「そうだな〜」
 すももがベビーカーを押しながら言う。
 その中には言うまでも無く澄華ちゃん。
 俺とすももは澄華ちゃんを連れて散歩に出ていた。
 ちなみに、音羽さんが出かけた後、1時間くらいでようやく澄華ちゃんは俺に懐いてくれた。
 最もその懐いてくれるまでの1時間が大変だったんだけど・・・
 不意に泣いたりするので、俺とすももで交互にあやしたり、ミルクを飲ませたりしていたのだ。
 まあ、それだけに俺達2人を見てようやく笑ってくれた時にはかなり嬉しかったのだが。
 その後、俺の分のお昼ご飯が無いと言ったすももの主張でお昼ご飯の食材の買い込みも兼ねて、外に出たのだ。
 「俺としては、商店街の店の人のリアクションに困ったけどな」
 「そ、そうですね」
 前にも言ったと思うが、すももと商店街の人々はお得意様として面識がある。
 それで、以前からよく一緒に居る俺。傍らにはベビーカー。
 となれば、商店街の人達から出てくる人達の言葉は一つだ。

 『どこの新婚さんかと思ったよ〜』

 立ち寄ったほとんどの店でそう言われるとは思って無かったが。
 「でも、わたしは嬉しかったですよ・・・その、和志くんとそういう風に見られて」
 「・・・お、俺だってそうだよ」
 言ってからお互いに照れて、黙り込む俺達。
 俺達は、すももの家の近くの公園まで戻って来ていた。
 「少し休んでいくか?」
 「そうですね」
 公園の中のベンチに腰掛ける俺。
 すももは、ベビーカーから澄華ちゃんを優しく抱き上げていた。
 「よしよし・・・澄華ちゃん、疲れなかった?」
 俺はその光景にしばし見とれていた。
 いつものすもものイメージとは違う雰囲気に俺はしばし戸惑っていた。
 「・・・どうしたんですか?和志くん?」
 「い、いや・・・」
 「カズ君はすももちゃんの大人っぽい雰囲気に見とれてたのよね〜」
 俺の代わりに答えたのは、第3のよく知った声だった。
 「ね、姉ちゃん!?」
 「カズ君、そんなに驚かなくても・・・」
 「い、いや俺が驚いているのは・・・」
 俺は姉ちゃんの傍らにいるもう一人の人物の方を見ていた。
 「何よ、私が渚と一緒に居るのがそんなにおかしい?」
 もう一人の人物、柊さんはそう言って怒ったように眉を吊り上げる。
 「いや、バイト仲間だしそういう意味では珍しく無いけど、プライベートで2人だけでいるのは珍しいなとか思ったり」
 「そう言われればそうかもね」
 俺の疑問に今度は納得したように答える柊さん。
 「で・・・2人で何してたの?」
 「決まってるでしょ!『あいつ』に勝つための方法が何か無いかと思ってね!」
 「だから、もう気にしなくても・・・」
 「また、神坂さんに勝つための方法ですか?」
 俺は呆れながら言う。
 「違うわよ。あの男―――あの時にあたしがボロボロに負けた男、『風雪義人』だっけ?あいつよ!」
 「!!」
 あの、俺の魔法が暴走した時に、柊さんが足止めをしてくれた相手か―――
 「あの男、倒れたあたしを見てどうしたと思う?鼻で笑ったのよ!あ〜ムカツク!!」
 地団駄踏みながら言う柊さん。
 「だから次に会った時には、リベンジしてやろうかと思ってね!」
 「次に会った時って・・・もう会うこともないと思うけど」
 「フッ・・・甘いわね。女の勘だけど、もう一回対戦するような気がするのよ」
 姉ちゃんの呆れたような声に張り切って答える柊さん。
 俺は疲れたようなため息を付いた。
 その時だった。
 「フェェェェェェン〜!!」
 「あ、あれ〜・・・どうしたの澄華ちゃん?」
 突然泣き出した澄華ちゃんを慌ててあやすすもも。
 「フェェェ・・・グスッ、グスッ・・・」
 だが、それでも泣き止む気配が無い。
 「ど、どうしよう・・・」
 困り果てるすもも。
 「・・・すももちゃん、ちょっと貸してくれない?」
 そう声を掛けたのは姉ちゃんだった。
 「え、は、はい・・・」
 姉ちゃんは澄華ちゃんをすももから受け取ると優しく抱きしめた。
 「う〜ん・・・これは、オシッコしてるわね。すももちゃん!オシメあるかな?」
 「あ、は、はい!」
 「それと、カズ君は後ろ向いてなさい。・・・女の子なんだから」
 「あ、ああ」
 俺はクルリと後ろを向く。
 「よ〜しいい娘ね〜・・・」
 「渚さん、スゴイです」
 すももの感心した声からして、姉ちゃんはかなり手際がいいらしい。
 「だけど、渚・・・アンタまさか『経験者です』なんて言い出すんじゃないでしょうね?」
 笑いながら言う柊さん。
 「経験者よ」
 「ブッ!!」
 姉ちゃんの言葉に思わず吹き出す俺。
 「カズ君、言っとくけど、カズ君が考えてるようなことじゃないわよ」
 姉ちゃんが呆れたような声で言う。
 「藤林家は魔法の名家だからね・・・親戚とかが多くて小さい子とかも多かったから」
 「ああ、なるほどね」
 「・・・よし、これでOK!!はい、すももちゃん。カズ君もこっち見ていいわよ」
 「あ、ありがとうございます」
 「だけど・・・」
 澄華ちゃんをすももに託しながら姉ちゃんは笑いながら言う。
 「2人共・・・その娘は何なの?」
 「実はですね・・・」
 すももが姉ちゃんに事情を説明する。
 「なるほどね・・・じゃあ2人にとっては『将来の予行演習』みたいなものね」
 「えっ・・・」
 俺とすももは2人同時に顔を真っ赤にする。
 「う〜ん、私も音羽さんや小日向君に挨拶しておいた方がいいのかしら?」
 「い、いや・・・姉ちゃん、それはまだいいから!!」
 (というか姉ちゃん最近、思考回路が音羽さんに似てきたぞ・・・)
 俺は姉ちゃんにツッコミ入れつつそんなことを考えていた。




 
  (・・・あれ?)
 俺は横になっていた。
 (寝てたのか?)
 俺の身体は横に倒れていた。
 そして、懐かしい感覚に顔を上げる。
 (・・・!!)
 そこには母さんの懐かしい顔があった。
 俺は母さんに膝枕されていた。
 この間見たアルバムの写真の中のように・・・
 その瞬間に、俺はこれが夢だと悟った。
 母さんはもうこの世にいないのだから・・・
 それでも、この感触を俺は懐かしんでいた。もう2度と感じることが出来ないと思っていた感触を・・・



  (・・・うん?)
 俺はゆっくり目を開ける。
 今度はどうやら現実世界らしい。
 (だけど、何であんな夢を?)
 それに妙に枕の部分が柔らかいような・・・
 「起きたんですか?和志くん」
 すももの声がやけに近くから聞こえる。
 その時、俺は自分がどういう状態なのか分かった。
 俺の頭はすももの膝の上―――つまりすももに膝枕されていたのだ。
 それと同時に俺は状況を思い出した。
 姉ちゃん達と別れて帰って来た後、遅めのお昼ご飯を食べて―――
 その後、澄華ちゃんを2人であやしながらまったりとした後、すももが澄華ちゃんを寝かせつけようとして、
 子守唄を歌って―――
 (そうだ。すももの子守唄を聞きながら、俺も一緒に眠っちゃったのか・・・)
 俺は起き上がろうとする。すると―――
 「大丈夫ですよ。ゆっくりしてください」
 すももに押しとどめられた。
 「でも、すももだって疲れてるだろ?」
 「いいんですよ。少しは疲れてますけど・・・精神的には全然疲れてませんから」
 すももはそう言って俺の額に手を当てる。
 「だけど、和志くん・・・寝てる間、幸せそうな顔してましたけど何かいい夢を見てたんですか?」
 「ああ・・・母さんの夢を見たんだ」
 「・・・」
 「澄華ちゃんをあやしていたすももを見て、母さんのことを思い出したからかも知れないな」
 「・・・それならわたしもそうかも知れないです」
 「?」
 すももの言葉に疑問を抱く俺。
 「わたしも和志くんが澄華ちゃんを抱いてるのを見て、『わたしのお父さんもわたしをああやってあやしてくれたのかな』って・・・」
 「すもものお父さんって・・・今海外に長期出張しているはずじゃないのか?」
 「それは・・・『今の』お父さんですよ。わたしが言ってるのはわたしの『本当の』お父さんです」
 「!!」
 そういえば、確か雄真さんのお父さんと音羽さんが再婚したことで雄真さんとすももは兄妹になったと聞いたことがある。
 「・・・すももの本当のお父さんは今何してるんだ?」
 「・・・わたしが生まれてすぐに事故で亡くなりました」
 「あ・・・ゴ、ゴメン・・・」
 「大丈夫ですよ。気にしないで下さい。もう10年以上前のことですし・・・
  案外、和志くんの両親と一緒にわたし達のことを見守ってるかも知れないですよ」
 笑いながら言うすもも。
 「なあ、すもも」
 「何ですか?」
 俺は起き上がり、すももの目をジッと見ていた
 「もし、いつか・・・いつか俺達が『新しい家族』になれたらその時は―――子供に寂しい思いはさせないようにしたいよな」
 「!!・・・あ、あの和志くん、それって・・・」
 みるみる内にすももの顔が真っ赤になっていく。
 自分でも分かっている、今の言葉はほとんどプロポーズだと。
 それでも、すももには俺がいるからということを伝えたかった。
 「ありがとう・・・和志くん・・・大好き!!」
 俺に抱きつくすもも。
 俺はそのすももの身体を優しく抱きしめていた―――








                          〜第43話に続く〜


                  こんばんわ〜フォーゲルです。第42話になります。

                  今回は和志とすももの子育て奮闘記的な話ですね(違)

        もっとコメディ色強くなる予定だったんですが、終わって見ればやっぱりラブラブ話に(笑)

               それと何気に散りばめられた伏線にも注目して頂けると嬉しいです。

             『雄真の親父と音羽さんが再婚して、雄真とすももが兄妹になった』って設定は

                    かなり忘れ去られているような気がする(汗)

    『そういえばすももの本当の父親』ってのは自由に設定してもいいんだよな(ニヤリ)』と思った訳で・・・

                次回からいよいよ話が動き始めます。楽しみにして下さいね。

                          それでは、失礼します〜


管理人の感想

第42話、「すももと和志の未来予想図」でした〜(←勝手に題名付けてみたw)

でもホントに、こんな夫婦になりそうだなぁと思えますね。和志よ、割と尻に敷かれてますがな(笑)

しっかしらぶらぶですねぇ。すももがかなり、積極的になって来たような気がします。

次回からは展開が変わるということで、注目していきたいと思います。

それでは〜〜^^



2008.8.30