『解かれた魔法 運命の一日』〜第41話〜







        


                                      投稿者 フォーゲル





  「よし、これでOK・・・っと」
 ノートの最後のページを閉じて、俺は伸びをする。
 やっと、宿題を終わらせた俺はカレンダーの日付を見る。
 (そうだ、今度の日曜すももとデートだっけ・・・)
 俺は、デートスポットが載った雑誌を本棚から取ろうとする。
 (すももは、『和志くんと一緒ならどこでもいいです』なんて嬉しいことを言ってくれるけど、
  さすがにそういう訳にはいかないよな)
 そして、本棚から雑誌を抜いた瞬間―――
 
 “ドサッ”

 重い音と共にその隣りから何がが落ちた。
 「・・・?」
 本というにはかなり分厚い物だった。
 パラパラとページを捲る。
 (あ・・・)
 それは古いアルバムだった。
 父さんも母さんもまだ元気でいつも笑い声が絶えなかった頃のものだ。
 「・・・」
 その頃のことを思い出しながら、俺はページを捲っていく。
 ふと、一枚の写真が目に止まった。
 小さい頃の俺が、母さんの膝の上で安心しきった顔で眠っている。
 その俺の顔を笑いながらみている姉ちゃん。
 そんな俺達を見ている写真の中の母さんの笑顔が印象に残った。
 (何でだろう・・・)
 俺がそんなことを考えてると―――
 『♪〜♪〜♪』
 携帯電話が鳴った。
 「はい、もしもし?」
 『あ、和志くんですか?わたしです』
 「すももか?どうしたんだ?こんな時間に?」
 『え、え〜とですね。か、和志くんの声が聞きたいな〜と思いまして・・・』
 「すもも、そういう恥ずかしくなることを言うなよ」
 『しょうがないじゃないですか〜今聞きたくなったんですから・・・』
 そんな会話をしている内に、いつのまにかアルバムのことは俺の頭から消えていた。



  「ごめんなさい、和志くん」
 「別にいいよ。用事出来ちゃったんだろう?」
 謝るすももに気にしないようにする俺。
 次の日、学園で会った俺にすももは謝って来た。
 今度のデート、用事が出来ちゃって行けなくなっちゃったと。
 それを気にするすももを俺がこうやって励ましているという訳だ。
 2人ですももお手製のお弁当を食べた後、すももがお詫びに、飲み物を『Oasis』で何か奢ってくれるというので、
 こうして歩いているという訳だ。
 「でも、用事って何なんだ?」
 「え〜と、それはですね・・・」
 すももが答えようとするのを聞きながら、俺は『Oasis』のドアを開けた。
 「かーさん、ゴメン!!」
 「何とかならないの?雄真くん?」
 「両方こなせるように努力してみたんだけど・・・」
 『Oasis』に入った時、最初に聞こえて来たのは、雄真さんと音羽さんの会話だった。
 「2人共こっちこっち!!」
 ふと、見るとお昼を食べ終わった所なのか、神坂さんと準さん・ハチ兄が同じテーブルに座っていた。
 「姫ちゃん、お母さんと兄さん、何話してるんですか?」
 最初に近寄ったすももが神坂さんに質問している。
 「うん、実はね・・・」
 神坂さんが話してくれたことによると、雄真さんは音羽さんに用事を頼まれていたのをすっかり忘れて、
 同じ日に御薙先生との用事を入れてしまったらしい。
 「しかも、その用事って言うのが魔法絡みらしいのよ」
 準さんの声に神坂さんが頷く。
 「魔法の制御絡みのことなので、なるべく御薙先生と息の合う人がいいんです」
 私もお手伝いすることになってるんですけどね。
 そう神坂さんは付け加えた。
 なるほど、実際の息子である雄真さんと、愛弟子の神坂さんが一緒ならやりやすいだろう。
 加えるなら3人共使っている術式が同じだし。
 「そう・・・やっぱり雄真くんは、鈴莉ちゃんの方が大切なのね・・・」
 「いや、だから・・・」
 そう言いながらも、音羽さんの声にはトゲは無い。
 (アレは・・・雄真さんをからかってるな・・・)
 「だけど、俺にしてみれば、贅沢な悩みだな・・・」
 「どういうことだ、和志?」
 俺の呟きが聞こえたのか、問い掛けるハチ兄。
 「雄真さんは、2人も『母さん』がいて羨ましいって話だよ。俺には『母さん』って呼んでも返事してくれる人はもう居ないから」
 「和志くん・・・」
 すももの呟きが漏れる。
 「っと・・・心配するなよ。すもも。確かに母さんは居ないけど、その分すもも達が居てくれるからな」
 俺がそんなことを話している内に、雄真さんと音羽さんの会話は続いていた。
 「分かった。いいわよ。じゃあ『もう一人の息子』に頼むから」
 「?」
 音羽さんの言葉に雄真さんの顔に疑問が浮かぶ。
 最も、俺達の顔にも疑問が浮かんでいたが。
 音羽さんはそう言うと俺達の方に向って歩いて来た。
 そして、俺の前で立ち止まった。
 「という訳で・・・和志くん?今度の日曜日ヒマかしら?」
 「・・・は?」
 俺は間の抜けた声で聞き返す。
 「ち、ちょっと待って下さい。何で俺が音羽さんの『もう一人の息子』なんですか?」
 音羽さんは『何を今更・・・』みたいな感じで口を開く。
 「だって後10年もしたら、すももちゃんと結婚して自然とそうなる訳だし。だったら今そう呼んでも問題ないじゃない♪」
 「け、結婚って・・・」
 思わず、すももの方を見る。
 俺と同じように赤い顔をしているすもも。
 (そ、そりゃ、そうなれたらいいなとは思うけど・・・)
 「そういえば、和志くん?」
 今度は準さんが口を開く。
 「和志くんの誕生日の次の日なんだけど、私、朝のお散歩してたのよ」
 「ソ、ソウデスカ」
 ニコニコ笑顔で喋る準さんに嫌な予感を感じながら返事する俺。
 「和志くんの家からラブラブな感じで出てくる、和志くんとすももちゃんの姿を見たんだけど・・・
  2人で一晩中何をしてたのかしら〜」
 明らかに、からかいながら言う準さんに何も言えない俺。
 「なるほど、和志くんはすももちゃんの手料理だけじゃなくて、すももちゃん『も』美味しく食べちゃったってことなのね♪」
 音羽さんの言葉にもはや何も言い返せない俺とすもも。
 「ぬぁにぃぃぃぃぃ????」
 ハチ兄が俺に詰め寄る。
 「おい、和志!お前、すももちゃんとそんな羨ましいことを〜〜〜!!」
 本気で泣きながら俺の胸倉掴んでガックンガックン揺さぶるハチ兄。
 「ち、ちょっと、ハチ・・・兄・・・お、落ち着いて・・・」
 気絶しかけた俺を救ってくれたのは―――
 「ハチ、やめてやれよ」
 「あら、意外な反応ね、雄真」
 そう、ハチ兄を止めてくれたのは以外にも雄真さんだった。
 「まあ、俺だっていつまでもシスコンのレッテル貼られてる訳には行かないからな」
 ようやくハチ兄の攻撃から解放される俺。
 「あ、ありがとうございます。雄真さ・・・」
 お礼を言いかけてーーー俺は固まった。
 確かに顔は笑ってるんだけど、何かこめかみの当たりがピクピクしてたり、顔には怒筋が浮かんでるような気が・・・
 (こ・・・怖ぇ・・・かなり怖いんですけど)
 何より、そのプレッシャーが今までよりはるかに強烈だった。
 何か言われるよりよっぽど怖いぞ・・・
 その醸し出す雰囲気が雄弁に語っていた。
 (もしすももを悲しませたりしたら、その時には、分かってるよなぁ?)
 「は、はい・・・分かりました!」
 思わず大声で返事する俺。
 「?、どうしたんですか?和志くん?」
 ようやく硬直状態から脱出したすももが俺に話し掛ける。
 「い、いや、何でも無い」
 「それで、和志くん。今度の日曜日ヒマかしら?」
 ようやく真面目に話をする気になったのか、音羽さんは俺に聞いて来る。
 「すももちゃんも一緒だし、お願いできない?」
 「そうなんですか?」
 なるほど、すももの日曜日の用事って言うのはそれだったのか・・・
 (ヒマだし・・・すももと一緒に居られるならそれもいいか)
 「分かりました。いいですよ」
 「本当に?良かったわ〜」
 こうして、俺は雄真さんの代わりに音羽さんの用事を引き受けることになった。





  そして、日曜日。
 俺は指定された時間にすももの家に向った。
 (だけど、音羽さん・・・俺に一体何をさせる気なんだろ?)
 俺は当然その日何をやるのか音羽さんに聞こうとした。
 しかし、音羽さんは『当日のお楽しみよ』って言って教えてくれなかったのだ。
 それに、気になることもある。
 『よく考えると、雄真くんよりも和志くんの方がいいのね。すももちゃんのためには』
 (それはどういう意味だ?)
 考えてみても意味はよく分からなかった。
 「まあ、行って見れば分かるか・・・」
 そんなことを考えながら、俺はすももの家の前に着いていた。
 
 “ピンポーン”


 「は〜い」
 家の中からすももの声がする。
 ドアが開いた瞬間―――俺は目を見張った。
 そこにいるのは、いつものすもも。
 だけど、決定的に違うことが一つだけあった。
 それは―――
 「スー・・・スー・・・」
 すももの胸の中で、気持ち良さそうに寝ている赤ちゃんの姿だった。
 「・・・」
 「どうしたんですか?和志くん」
 「す・・・」
 「?」
 「すももに弟か妹が居たなんて・・・知らなかったぞ」
 「ち、違います!何でそうなるんですか?」
 すももの声が響いた。
 「ふぇッ・・・」
 赤ちゃんが泣きかける。
 『シーッ!!』
 俺とすももはお互いに人差し指を口に当てて静かにする。
 「・・・」
 赤ちゃんがまた眠ったのを見て、俺とすももはホッとため息を付いたのだった。






                        〜第42話に続く〜


                こんばんわ〜フォーゲルです。第41話になります。

              話を動かす予定だったんですが、思いついたネタがあるので、

                 今回と次の話はそのネタになるかと思います。

                今回は久々に音羽さんが大活躍な話でした。

              というか、音羽さんの中では和志はもう義理の息子に(笑)

          「すももを食べちゃった」発言は、1話目からいつか使いたい表現でした。

                  果物の名前だから出来る表現方法ですね。

                次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは!!


管理人の感想

というわけで、41話をお送りして頂きました〜。

微妙に新展開?音羽に頼まれごとをする和志とすもも。その内容は・・・ん?赤ちゃん?

それよりも意外だったのは、すももと一夜を共にしたことが明るみとなった和志への雄真の反応。

ハチの暴走を止めた時は、「あれ?」と驚きましたが。

・・・うん、やっぱり雄真は雄真ですね。今日も元気にシスコンでした(笑)


次回は子守りが主体となるのかな?またラブラブなんだろうなぁ(遠い目)

では!



2008.8.20