『解かれた魔法 運命の一日』〜第40話〜







    
                                     投稿者 フォーゲル






  (今日はみんなどうしたんだ?)
 俺はそんなことを考えながら家路に着いていた。
 今日一日の俺に対するすももや雄真さん達の態度が妙によそよそしかったし。
(すももはさっさと授業終わるなり帰っちゃうし、師匠もかなり早く修業終わらせたし)
 俺なりに理由を考えてみたが、思いつくことは無かった。
 
 “ヒュゥゥゥーーー”

 冬が近いことを示す秋風が俺の身体を吹きぬける。
 「寒いな・・・早く家に帰ろう」
 (こういう時に、家に帰って『お帰りなさい』って言ってくれる人がいるといいんだけどな)
 家に帰っても出迎える人がいないというのは少し寂しいんだよな。
 これから寒くなって、人恋しくなる季節にはなおさらだ。
 俺はそんなことを考えながら少し歩くペースを上げた。




 (アレ・・・おかしいな)
 俺は家のドアに手を掛けて、カギが開いてることに気が付いた。
 (朝、家を出るときには確かに閉めて出たんだけどな)
 一応、警戒しながら俺は、ドアを開けた。
 次の瞬間―――
 「お帰りなさい!」
 俺が長いこと聞くことが無かった出迎えの声が聞こえた。
 その声の主は―――
 「す、すもも!?どうしたんだ?」
 エプロン姿のすももが目の前に立っていた。
 その姿に目を奪われる俺。
 「えっとですね・・・今日は和志くんの誕生日ですよね」
 「あ・・・」
 そういえば、すっかり忘れてた。
 「それでね。プレゼント何がいいかな〜って考えた時に、前に和志くんが姫ちゃん達と話してたことを思い出したんです」
 その言葉で俺も思い出した。
 確かに、『家に帰っても出迎えてくれる人が居ないと寂しい』って話をして、
 それに、寮暮らしの神坂さんと柊さんが同意してくれたことがあった。
 言われて見れば、確かにその時すもももそばにいたっけ・・・
 「それで思ったんです。和志くんが寂しい想いをさせないようにしてあげたいって」
 「すもも・・・」
 「それに、こんなことが出来るのは、こ、恋人のわたししか出来ないって思いましたし・・・」
 自分で自分の言葉にテレたのか、エプロンの裾で顔を隠して恥ずかしがるすもも。
 そんなすももを俺は―――

 “ギュッ”

 思わず抱きしめていた。
 「か、和志くん・・・」
 「ありがとな。すもも」
 ここまで俺のことを考えてくれる人を大切にしたいと俺は心から思った―――




  その後、雄真さん達も俺の家に集まって来た。
 ちなみに雄真さん達の態度が妙によそよそしかったのは、俺に内緒で誕生日プレゼントを探すためだったらしい。
 姉ちゃんや師匠や、柊さん、高峰さん、信哉さん達、準さんやハチ兄達も集まって来て、大パーティ状態になった。
 みんなからいろいろな誕生日プレゼントも貰った。
 まあ、準さんから『化粧セット一式』を貰った時にはどうしようかとも思ったが。
 準さん曰く、「また和志くんの女装姿が見たい」とのことらしいが・・・
 それがトラウマになってるハチ兄が全力で『それはやめろ』と止めてみたり。
 高峰さんが開発した『真・タマ汁』(新じゃなく真なのがポイントらしい)を飲まされた女性陣がいつにも増して
 ハイテンションになり、それを止めるのに俺と雄真さんが死ぬほど苦労したり・・・
 (というか何で、主役の俺がこんなに苦労しなけりゃならんのだ?)
 そんなツッコミを入れつつ、パーティの夜は過ぎていった。




  「う〜疲れた・・・」
 浴槽に身体を付けながら、俺はそんなことを呟く。
 「しかし、妙なことになったな・・・」
 ついさっきのことを俺は思い出していた。

 
 「じゃあ、2人共。また月曜日に学園でね」
 「和志、すももを頼むぞ」
 「分かりました」
 「兄さんこそ、ハメを外しちゃダメですよ」
 「分かってるよ」
 最後に残っていた雄真さんと神坂さんがそんな言葉を残して帰った後、俺とすももは部屋の後片付けをしていた。
 ちなみに、雄真さん達はこれから週明けにある魔法科の実技試験のためにミニ合宿をするらしい。
 (一年は再来週だっけ・・・師匠と一緒にやろうかな)
 「和志くん、お風呂でも入って来たらどうですか?わたしが後片付けやっておきますから」
 「いや、いいよ。後片付けくらい俺がやらないと・・・それに」
 「それに?」
 「これからすももを家に送らなきゃならないしな」
 その後に入った方が湯冷めもしないだろう。
 「あ、そ、そのことなんですけど・・・」
 すももは何故か顔を赤くしながら俺を見る。
 「今日実は・・・家に帰っても誰も居ないんですよね・・・」
 「えっ?」
 すももによると、今日、音羽さんは御薙先生と飲みに行って帰ってこないらしい。
 「『鈴莉ちゃんと久々に飲むわよ〜』って言ってたんで、多分帰ってこないんじゃないかと思うんですよ」
 苦笑しながら言うすもも。
 「しょうがない人だな・・・」
 「それでですね・・・あの・・・今日泊めてほしいんですよ」
 「・・・ええっ!!」
 


  (別に泊めるのはいいんだけど・・・)
 俺はそう言ってため息を付く。
 (いろいろとヤバイ物が見つかる恐れがなぁ・・・)
 ベットの下のブツは・・・アレはハチ兄のコレクションだから問題無いにしても・・・
 というかいい加減引き取って欲しいんだが。
 俺がそんなことを考えてると・・・
 「和志くん〜着替えここにおいて置くね」
 擦りガラスのドアの向こうからすももの声がする。
 「あ、ああ、ありがとう・・・」
 だが、すももはしばらく考えるような素振りを見せた後、とんでもないことを言い出した。
 「・・・わたしも一緒に入ろうかな♪」
 「・・・ええっ!?」
 慌てまくる俺。
 「大丈夫ですよ〜タオル巻きますから」
 (いや、そういう問題じゃなくてだな・・・)
 俺の心のツッコミを知ってか知らずか、すももが服を脱ぎ始める様子がガラス越しにハッキリと分かる。
 慌てて、背を向ける俺。
 「エヘへ・・・お待たせしました」
 バスタオルを巻いたすももが入って来る。
 「・・・」
 普段、すももはスタイル良くないって悩んでいるけど・・・
 こうやって実際にセクシーな格好になると、色気があるのだ。
 実際に、胸元やら太腿やらに思わず視線がいってしまう。
 (というか、俺の下腹部がヤバイんだって・・・)
 浴槽にすももが入って来て、お湯が溢れる。
 と同時に、2人の身体が密着する。
 (ヤバイ・・・)
 「あ、あのさ・・・すもも」
 「何ですか?」
 何とか話題を見つけて話を振る。
 「その・・・ありがとうな」
 「えっ?何がですか?」
 「準さんから聞いたけど、今回の誕生パーティってすももが企画したんだろ?」
 「ええ、そうですけど・・・」
 「こんなに楽しい誕生日は何年ぶりだろうって考えると、嬉しくてな」
 「和志くん・・・」
 去年までは、母さんが本当にささやかなお祝いをしてくれたくらいだったから・・・
 それが嫌だった訳じゃないけど、心の中では、『盛大なパーティは出来ないよな』って思っていた。
 「それにこんなに盛大なお祝いをして貰えるなんて思ってなかったしな」
 「これからはずっとこんな感じですよ」
 すももが笑いながら言う。
 「それに、和志くんのそばにはこれからずっとわたしがいますから・・・だから和志くん」
 すももが俺の目を見て言う。
 「忘れないで下さいね。和志くんは一人ぼっちなんかじゃ無いってことを」
 「ああ、分かったよ」
 すももの言葉を俺は、深く心に刻みこんでいた。





  そして、お風呂から上がった後―――
 俺は、ジュースを飲みながらテレビを見ていた。
 『今夜は、この秋としては一番の寒さになるでしょう。暖かくして―――』
 テレビ画面の中のキャスターのそんな言葉を聞いていると。
 「和志く〜ん!大変大変〜!」
 すももがドタバタとリビングに入って来る。
 前にすももの家に泊まらせて貰った時と同じ白いパジャマがバッチリと似合っている。
 「どうしたんだ?すもも」
 「ストーブ、使えないですよ」
 「えっ?」
 確かに、俺の部屋のストーブは故障でもしているのか使えなくなっていた。
 「アチャ〜どうしよう・・・これじゃ寒くて寝れないな・・・」
 今から布団を引っ張り出すのも面倒くさいし。
 「あ、じゃあ・・・こういうのはどうですか?」
 すももは俺にこっそり耳打ちする。

 そして―――数十分後、俺とすももは一緒のベットに寝ていた。


 『じゃあ、一緒に寝ませんか?』
 すももにしてみれば、恋人同士なんだから当たり前なのかも知れない。
 だけど、俺は―――
 「和志くん・・・」
 俺の隣からすももの声がする。
 その声には若干、元気が無かった。
 「どうしたんだ?すもも」
 「いえ・・・やっぱりわたしは魅力無いのかなって・・・」
 「何でそうなるんだよ」
 「だって、和志くん・・・胸の大きな女の子が好きなんですよね」
 「えっ・・・」
 「わたし、知ってるんですよ。このベットの下に・・・その・・・『そういうDVD』があるのを」
 (し、しまった〜やっぱりバレてたのか!?)
 「ち、違う!アレはハチ兄のコレクションだ」
 「ハチさんのですか?」
 「雄真さんに断られたからって、俺に押し付けて言ったんだよ。それに・・・」
 「それに?」
 俺はすももの方に身体を向けながら言う。
 「本当はさっき風呂に入ってる時だって・・・ヤバかったんだぞ。後5分でもあんな格好を見せつけられたら・・・」
 きっとあのまま、すももを襲ってた可能性が高い。
 「でも、そんな強引なのはどうかとも思ったし、すももの気持ちもあるだろうし、それ考えるとな・・・」
 「和志くん・・・ありがとう。でもね、わたしは・・・」
 すももはそこまで言うと、俺の手を掴む。
 「?」
 俺は最初、すももが何をしたいのか分からなかった。
 すももは掴んだ俺の手を自分の胸に当てる。
 柔らかい感触と、そして―――
 “ドキン・ドキン・・・”
 すももの心臓の鼓動がハッキリと分かった。
 「わたし、こんなにドキドキしてるんですよ。何でか分かりますか?」
 「・・・」
 「大好きな和志くんと、『一歩進んだ関係』になりたいからです」
 そこまで言ってすももの顔がみるみるうちに真っ赤になる。
 「すもも・・・」
 そこまで言われて分からないほど、俺もバカじゃない。
 「和志くん・・・」
 潤んだ瞳で俺を見つめるすもも。
 そのすももの唇を俺は強引に塞いだ。
 舌を差し入れる大人のキス―――
 「あっ・・・ふぅん・・・か、和志くん・・・」
 そんなすももの甘い声を聞きながら、俺はすもものパジャマのボタンを一つ一つ外していった―――





  「う・・・うん」
 窓から差し込む陽の光に気がついて俺は目を覚ます。
 俺の隣では、すももが未だに寝息を立てていた。
 (そっか・・・俺とすももは・・・)
 昨日の夜のことを思い出して、今更ながらに照れくさい。
 寝ているすももの顔はちょっと雰囲気が変わっているように見えた。
 (何か・・・大人っぽくなった?)
 そういう風に見えるのは俺の気のせいだろうか?
 「うっ・・・」
 俺の視線に気がついたのが、すももが目を覚ます。
 「あ、和志くん・・・おはようございます」
 すももはしばらく、キョトンとしていたが、やがて俺の視線と、自分の格好を見て―――
 「キャッ!!」
 シーツで自分の身体を隠す。
 「か、和志くん、ジロジロと見ないで下さい〜!!」
 「いや、だって昨日は散々・・・」
 「そ、それはそれ、これはこれです!!」
 やがて、俺達はお互いに笑いあった。
 「和志くん・・・これからもよろしくお願いします」
 「ああ、よろしくな、すもも」
 俺とすももはお互いを抱きしめた。
 身も心も結ばれた喜びを感じながら―――







                        〜第41話に続く〜

  

                こんばんわ〜フォーゲルです。第40話になります。

                 今回は誕生日編とついに一線を越えるまでですね。

               その前にもいろいろとツッコミどころが満載でしたが(笑)

              音羽さん、年頃の娘ほったらかして飲みに行っていいのかとか。

          そして、問題のシーンは・・・作者的にどこまで書いていいものか悩みました。

              もっときわどくてもいいのかなとか個人的には思ったり(←マテ)

               今回の話は何かすもものサービスシーンが多かったなと。

                    そこらへんも楽しんで頂けたら幸いです。

                次回から、話を少しづつ動かそうかなと思っています。

                       それでは、失礼します〜



管理人の感想

和志の誕生日編、第40話でした〜^^

和志本人も忘れていたよいう記念日、すもも主催により敢行されるサプライズパーティー。

すももの真っ直ぐすぎる想いに、和志は言葉も出ずにただ彼女を抱き締める。いいですねぇ〜。

そしてなんとなんと。そのまますももはお泊りコースへ!しかも和志は一人ぐらしという、絶好のシチュエーション(笑)

雄真がこのことを知っていたのかどうかは・・・微妙なところですが^^;

そしてついに。ついに一線を越えてしまった二人。まあ和志から言いだせないのは何となく分かっていましたが、まさかすももから・・・あんな大胆な言葉が出てくるとは。

二人の絆は、これでより強く・・・。



2008.8.5