『解かれた魔法 運命の一日』〜第37話〜







                         
            
                                      投稿者 フォーゲル





  「ふぁ〜あ」
 俺は大きなあくびを一つ上げる。
 眠気をこらえながら、学園に行く準備をする。
 ちなみに今の時間は、朝の7時。
 学園に行くのは、もう少し余裕がある。
 では、何故こんなに朝早くから動いてるのかというと・・・
 (昨日のこと・・・だよな)
 ふと、気が付くと昨日あったこと―――
 すももとのキスを思い出して全然寝れなかった。
 なので、こうして意味も無くこんな朝っぱらから行動しているという訳だ。
 とはいえ、さすがにこんな時間から学園に行ってもな・・・
 俺が残り時間をどう過ごすか考えていると。
 “ピンポーン”
 インターホンが鳴る音が聞こえた。
 (誰だ?こんな朝早くに・・・)
 俺は玄関に向う。
 ドアの覗き穴から外を覗く。
 すると、そこには―――
 「すもも?」
 身支度を整えたすももが立っていた。
 (・・・!!)
 瞬間的に昨日のことをまた思い出す。
 それでも、どうにか平静を装いながら、俺は慌ててドアを開ける。
 「おはようございます〜和志くん」
 「どうしたんだよ。すもも。こんな朝早くに?」
 「え、え〜とですね・・・」
 モジモジしながら、言いよどむすもも。
 その仕草がたまらなく可愛い。
 「は、早く目が覚めちゃって・・・それで、せっかくだから和志くんと学園に行こうかなと思って・・・2人だけで」
 すもものその言葉に俺は自覚する。
 俺はすももと恋人同士になったんだということを。
 「そ、そうだな・・・じゃあ行くか?」
 「はい!」
 そうして俺とすももは連れ立って家を出た。



  さすがにこの時間ではあんまり人は居ない。
 そのせいか俺とすももは自然に手を繋いでいた。
 多分、後2・30分もすればこの道も生徒で溢れることになるだろうが。
 「ファ〜」
 すももが大きなあくびをする。
 「どうしたんだ?すもも?」
 「えっ?じ、実はその・・・寝不足で・・・」
 「寝不足って、さっきは『早く目が覚めて・・・』って言って無かったか?」
 「そ、そうでしたっけ?」
 明らかに視線が泳ぎまくるすもも。
 「じ、実は昨日の夜はほとんど寝てないんですよ」
 「何で、また?」
 すももはうつむきながら恥ずかしそうに言う。
 「き、昨日、その和志くんと・・・キ、キスしたことを思い出しちゃって、それで・・・ドキドキしちゃって・・・だから・・・」
 言いながらその顔が首筋まで真っ赤に染まっていく。
 「そうか・・・俺としては嬉しいな。それに・・・」
 「それに、何ですか?」
 「俺だって、すももと似たようなものだし」
 「えっ?」
 「俺も、その、すももとキスして、その・・・恋人同士になれたんだっていうのが嬉しくて、全然寝れなかったし」
 「和志くん・・・」
 「だ、だからその・・・俺達って似たもの同士なんだなと思って」
 「そうかも知れませんね」
 そんなやりとりをしながら、俺達は笑い合っていた。
 「あ、そういえば・・・」
 すももが何かに気が付いたのは、学園まで後少しのことだった。
 「その、まだ・・・『朝の挨拶』をしてないじゃないですか」
 「『朝の挨拶?』なら家で・・・」
 「いや、ですからそっちの挨拶じゃなくてですね・・・」
 もちろん、俺はすももの言いたいことは分かっていた。
 「分かってるよ」
 俺はすももの身体をゆっくりと抱き寄せる。
 そして―――唇を重ねた。
 「んっ・・・」
 すももの唇から吐息が漏れる。
 その手が俺の身体に回る。
 ずっとこうしてたかったけど、そういう訳にも行かない。
 俺はそっとすももの身体を離した。
 「和志くん・・・ありがとう。私の言いたいこと分かってくれたんですね」
 笑顔を浮かべるすもも。
 その表情が俺にも元気を与えてくれた。





   時間は過ぎて、お昼休み。
 (で、何でこうなってるんだろう)
 俺は今現在の状況になった理由を考えていた。

 すももと一緒に屋上でお弁当を食べた後、(ちなみに俺とすももが食べてる間、周りの人間が減っていったんだが・・・)
 教室に戻る途中で、何か荷物を持って困っている様子の業者さんがいた。
 俺とすももはその業者さんを手伝ってあげることにした。
 運び先を見た時点で、嫌な予感はしたんだよな。
 その運び先―――『Oasis』に荷物を運んだ後、さっさと立ち去ろうとしたら―――
 「あら、すももちゃんに和志くんじゃない♪ちょっとお願いがあるんだけどな」
 俺達に気が付いた音羽さんが声を掛ける。
 今にして思えば、その時の音羽さんの満面の笑顔で気が付けば良かったんだよな。
 「お母さん、何ですか?」
 俺と違って音羽さんの態度に疑問を持ってない様子のすもも。
 「ちょっと、2人に新メニューを試して貰いたいんだけどな〜」
 「新メニューですか?でも最近新メニューなんて・・・」
 「正確には新メニューの改良品かな?是非、2人に試して貰いたいのよ〜」
 「わたしは別にいいですけど・・・和志くんはどうですか?」
 笑顔で言うすもも。
 今の俺にそれを断れるほどの意志の強さがあるわけも無く・・・
 「分かりました」
 俺はそう答えていた。

 で、今―――俺とすももの目の前には、その新メニューの改良品。
 色とりどりのフルーツが載ったパフェ。
 だが、それにはスプーンが1つの皿に2つ載っているという、どう考えても『恋人同士のためのラブラブパフェ』としか思えない代物だった。
 「う〜ん。おいしいです〜」
 美味しそうに食べるすもも。
 確かに、味は美味しい。美味しいんだけど・・・
 「ありがとう〜すももちゃん。和志くんは?」
 「お、美味しいですよ」
 「そう、良かった。と・こ・ろ・で〜」
 音羽さんのテンションが一段と上がったような気がした。
 「和志くん〜すももちゃんのどこを好きになったのかしら♪」
 「ブッ!!」
 ある程度予想していたこととはいえ、あまりにストレートな質問に思わず食べているパフェにむせる俺。
 「和志くん、大丈夫ですか?」
 俺の背後に回り背中をさすってくれるすもも。
 「あ、ありがとうすもも」
 「う〜ん、すっかりおしどり夫婦って感じね」
 「ふ、夫婦って・・・」
 音羽さんの言葉に真っ赤になるすもも。
 「ちくしょー!何でだ?何で和志がすももちゃんと!?」
 「そりゃ、和志くんはハチと違って誠実そうだしね〜」
 「あ、準さんと八輔さん」
 その時、俺達はようやくこっちの様子を伺っている準さんとハチ兄の姿を見つけた。
 「すももちゃん、和志くん、こんにちは〜」
 「よう、2人共・・・」
 ハチ兄にはいつもの元気が無いようだった。
 「あ、ハチ兄・・・ありがとう。ハチ兄のおかげだよ」
 俺が今、こうしてすももと恋人同士になれたのは他ならないハチ兄のおかげだから・・・
 「あ〜別にいいよ・・・ところでさ、すももちゃん」
 ハチ兄は、すももに話をフる。
 「何ですか?ハチさん?」
 「和志のどこを好きになったんだ?」
 「えっ・・・そ、それは・・・」
 俺の方を見て、言葉に詰まるすもも。
 「八輔くん。ナイス質問よ!!」
 ハチ兄に向ってサムズアップする音羽さん。
 「わ、わたしは・・・別にどこが好きって訳じゃ・・・ただ・・・」
 いつの間にか、俺もその答えに注目していた。
 「いいところも悪いところも全部含めて、わたしは和志くんが好きなんです」
 それは、心からの言葉。
 「すもも・・・」
 「だってさ。ハチ」
 「しくしくしく・・・雄真ならともかく和志なら俺だっていくらか同じ血が流れているのに、どうしてなんだ〜?」
 慰める準さんと落ち込むハチ兄。
 「なるほど・・・で、和志くんはすももちゃんのどこを?」
 音羽さんがニッコリ笑顔で俺に詰め寄る。
 (こりゃ、聞き出すまで解放されそうにないな・・・)
 「俺も・・・そうですね。具体的に説明しろって言うのは難しいですけど・・・
  ただ、すももが困ってたり泣いてたりしたら、何が何でも助けてあげたいんです。そして―――」
 すももが俺を見つめている。
 「ずっと、そばに居て欲しいですね。それが俺がすももを好きってことなんだと思います」
 「か、和志くん・・・ありがとう」
 「う〜ん、娘のプロポーズされる現場を目撃するなんて、おかーさん嬉しいわ〜」
 『プ、プロ・・・』
 思わず声がハモる俺とすもも。
 た、確かに今の俺の発言はそれっぽいかも知れないけど・・・
 「雄真くんとすももちゃん。どっちが先に孫の顔を見せてくれるかしらね♪」
 その後、俺達がパフェを食べ終わるまで音羽さんのからかいが延々と続いたのは言うまでもない。




  放課後になって、俺とすももは一緒に下校していた。
 俺は一つ気になることがあった。
 音羽さんは、俺とすももが付き合っていることを知っていた。
 (ちなみに、どうして分かったかと言うとすももが昨日帰って来た時から、心ここにあらずと言った様子だったかららしい)
 音羽さんが知っていたということは・・・
 (間違いなく雄真さんも・・・)
 ゾクッと背中に悪寒が走る。
 「・・・くん!和志くん!!」
 ふと、すももの声で我に返る。
 「あ、ああどうしたんだ?すもも?」
 「さっきから呼んでるのに、返事しないんですもん」
 むくれるすもも。
 「それに・・・ほっぺた」
 「え?」
 さっき買ったクレープの生クリームが俺の頬に付いていた。
 「はぁ〜しょうがないですね〜兄さんもそうですけど、男の子ってみんな子供みたいなところがありますよね」
 すももは呆れたような顔で俺に近づく。
 最初、ハンカチか何かで拭き取ってくれるのかと思っていた。
 だけど、すももは―――
 そのまま、俺の頬に付いているクリームをペロッと舐めとった。
 「エヘへ・・・甘いです」
 ペロっと舌を出して笑うすもも。
 (ヤ、ヤバイ・・・凄い可愛い・・・)
 俺が暴走しそうな理性を必死にコントロールしていると。
 「すももちゃん・・・さすがに街中でそれは大胆すぎじゃないかな?」
 「和志もな〜顔がしまりなくなってるぞ」
 「ひ、姫ちゃん!?それに兄さんも!?」
 いつの間にか、神坂さんと雄真さんが俺達を見ていた。
 「ふ、2人共にちなみにどこから?」
 俺が聞くと神坂さんが笑いながら言った。
 「最初からだけど?ねえ雄真くん?」
 「・・・まあな」
 (ああ〜雄真さん、メチャ機嫌悪い〜・・・)
 「あっ、そうだ。ねえ2人共、今からヒマ?」
 「うん、わたしも和志くんもヒマですよ」
 「じゃあ、これからショッピングでもしない?ほとんどウィンドゥになるかも知れないけど」
 「いいですよ〜じゃあ行きましょうか?」
 そう言って歩き出すすももと神坂さん。
 俺と雄真さんはその後に付いて歩き始めた。



 
  女性陣はウィンドゥショッピングを楽しんでいた。
 その影響で必然的に俺と雄真さんは並んで歩くことになる。
 だが、雄真さんは俺に話し掛けてこない。
 (まいったな〜この空気)
 しかし、この空気のままという訳にも行かない。俺は意を決して―――
 「なあ、和志」
 「は、はい!?何ですか」
 先に口を開いたのは雄真さんだった。
 「すももと付き合うことにしたんだってな?」
 「は、はい」
 俺は真剣に答える。
 「そうか・・・和志」
 雄真さんは俺の目を見て言う。
 「あいつは―――すももは一見しっかりしているように見えるけど、実際は寂しがりやだったり、
  甘えん坊だったりするんだ。だから―――」
 雄真さんは、俺に向って―――頭を下げた。
 「ゆ、雄真さん!?」
 「あいつのことを頼む。俺はすももには必ず幸せになって欲しいんだ。俺は―――『あいつの気持ち』に答えてやれなかったから」
 「すももの気持ちにって―――雄真さん、ひょっとして」
 「ああ、薄々、気が付いてた。だけど、俺にとってすももはやっぱり『大切な妹』なんだよ」
 その気持ちは俺にも分かる。俺も姉ちゃんを結局は『大切な姉』以上の存在には見れなかったから―――
 「だから、すももが選んだお前に頼むんだ。すももを幸せにしてほしい」
 その言葉の節々から雄真さんがすももをどれだけ大切にしているかが伝わって来た。
 「分かりました。俺が必ず―――すももを幸せにします」
 雄真さんが頭を上げたその時―――
 「和志くんーーー!!」
 「雄真くんーーー!!」
 すももと神坂さんが俺達を呼ぶ声が聞こえた。
 「さて、じゃあ行くか・・・俺達の『大切な人』が呼んでるしな」
 「そうですね」
 俺達は顔を見合わせると、それぞれの恋人の下へ向った。






                         〜第38話に続く〜

                      
               こんばんわ〜フォーゲルです。第37話になります〜

               今回はほぼ和志とすもものラブラブ展開にしてみました。

             本当にコーヒー飲みながらじゃないとやってられないかも知れない(笑)

                     クレープのシーンなんか特に(爆)

           まあ、それだけじゃアレなんで、最後は雄真のシリアスなシーンを入れました。

                 次回は伊吹や杏璃も出したいな〜と思います。

               次回はラブラブ展開(デート編?)みたいな感じになるかなと。

                       それでは、失礼します〜


管理人の感想

・・・甘っ!そして甘っ!!!(笑)

まあすももの性格上、こんな感じになるんじゃないかとは思っていましたけどね。まさか和志まで、あんなに惚気るとは・・・。

まあ二人とも、結構早い段階で、お互いの気持ちには気づいていましたから。焦れた分、爆発しているのでしょうか。

そして後半の、雄真と和志の会話シーン。流石はゲーム本編主人公。なかなかかっこいいじゃないですかぁ〜。

もちろん、雄真が和志のことを信頼しているからこそ生まれた言葉なのでしょうが。


次回もラブラブ展開ということで。皆さん、コーヒーを持参の上お越しくださいねぇ〜(笑)

それではっ



2008.7.5