『解かれた魔法 運命の一日』〜第36話〜






                                         投稿者 フォーゲル






  「す、すもも・・・」
 和志くんの顔がみるみるうちに赤くなっていきます。
 わたしは言葉を続けます。
 「本当は伝える気はありませんでした。でも・・・」
 一度自分の想いを口にしたらもう止まりませんでした。
 「和志くんを大切に想っている人は、渚さんだけじゃないんですよ!!だから・・・」
 わたしは必死に喋り続けます。
 「お願いですから・・・そんなこと・・・言わないで下さい」
 わたしはゆっくりと和志くんに近づいて行きます。
 「く、来るな!」
 警告を無視してわたしは和志くんの目の前まで行きました。
 「大丈夫です。わたしは怖くないですから」
 根拠はありません。ただ和志くんを安心させたかった。
 そうすれば、和志くんの恐れが消えてくれると思ったから・・・
 その時です。

 『そこまでにしてもらおうか』

 突然響いた声と共にわたしの身体が舞い上がりました。



  「キャアッ!!」
 「すもも!!」
 俺の声と共にすももの身体が魔力の渦に巻き込まれて空中で止まった。
 『もう少しで完全に支配出来るところだったのだがな・・・』
 耳慣れない声が、俺の耳に届いた。
 「だ、誰だ!」
 『我が名は『青龍』四神の一つ』
 「!!」
 青龍だって?じゃあ四神って言うのは意志を持った『生物』なのか?
 「お前が意志があるモノなら聞きたいことがある。何であの時暴走したんだ!!」
 『我も好きで暴走した訳じゃない。お主の思いに答えただけだ。コントロール出来なかったのは、お主がまだ未熟だったからだろう』
 「・・・」
 黙り込む俺を無視して語り続ける『青龍』。
 『それにもう時間が無い。このままでは我ら―――いや『魔法』が世界から消える』
 「どういうことだ?」
 『10年程前に、我らとは違う『神』が目覚めた』
 10年前というと・・・ヨーロッパで伝説のワンドが無くなった時期、そして柾影が消息を絶った時期と重なる。
 『その神の目的は、魔法の消去』
 「そんなことが可能なのか?」
 『もっと単純に言うのなら、自分自身も含めた我ら『神』と呼ばれる存在を滅ぼすこと』
 「そんなら、お前らだけで勝手にやれ!俺達人間を巻き込むな!」
 『そういう訳にはいかない。我らもそうだが、奴らは人間に取り付いて行動することが多いのだからな・・・
  そして、奴らに支配された人間は、お互いを殺し合い、最終的には自分が憑り付いた人間ごと滅ぼす』
 柾影や綾乃の姿を思い出す。
 じゃあ、あいつらも神に憑り付かれた存在なのか?
 『我も含めて、『朱雀』『白虎』『玄武』はそれを防ごうとする存在なのだ』
 『青龍』はなおも語り続ける。
 『我らはそれぞれの後継者が我らの力を使いこなせるのを待った。他の3体はそれぞれに見通しが立ったが・・・
  お主には未だにその傾向が見えない』
 「・・・」
 『だから、苦渋の決断としてお主の身体を強制的に支配することにしたのだ。そうしなければ、
  奴らに先にお主達人間も含め世界が滅ぼされる』
 「・・・」
 「勝手なこと言わないで下さい!!」
 その声は上の方から聞こえて来た。
 「すもも!!」
 すももは俺の言葉には答えず、どこにいるか分からない『青龍』に語りかける。
 「そんなの、和志くんの身体を乗っ取っていい理由にはならないじゃないですか?」
 『では、お主は世界がどうなるかよりも、その男一人の方が大切だと?』
 「そうは言ってません。でも・・・みんなを助けるために誰か一人が犠牲になるなんて・・・わたしは納得出来ません!」
 『お主の『能力』もそっちの男が我の力を制御出来れば、有効な力なのだが・・・残念だ』
 その声と共に、すももに巻きついている魔力の渦がすももを締め上げる!!
 「うっ・・・くっ・・・」
 「すもも!!おい!やめろ!」
 『やめて欲しければ、素直に支配されるか、我を制御してみることだな』
 (クソっ!どうする!)
 俺は必死に対策を考える。
 ふと、思い出す。
 さっき見せられた過去の映像の中に、『青龍』と一緒に身体の中に入っていった宝珠のことを。
 (アレを取り出せれば・・・でも方法が・・・)
 ふと、上を見ると、すももの手からレイアが離れて―――落ちて来た。
 俺は、それを見るとダッシュでレイアを掴んだ。
 「レイア!大丈夫か」
 『ええ、何とかね』
 「レイア、宝珠の出し方だけど・・・」
 『多分、今『青龍』の魔力は外で暴れているはずだから、今ここで意識を集中すれば宝珠は取り出せるはず』
 「それは分かってる。けど・・・」
 今、この精神世界で魔力を集めるだけでもどうなるか分からない。それに―――
 もし、ここでもその集めた魔力を暴走させるようなことがあったら、今度こそ本当にすももも含めて―――
 ふと、視線を感じる。
 すももが俺のことをジッと見ていた。
 その眼差しは、『俺のことを信じている』そういう眼差しだった。
 それを見ると、不思議と恐怖心が消えて行った。
 俺はゆっくりと目を閉じて、精神集中に入った。

 
 目を閉じると過去の記憶の風景が浮かんで来た。
 家族の楽しかった光景などがよぎる。
 そして―――
 (和志―――)
 母さんの声が聞こえたような気がした。
 (母さん、ゴメンな―――)
 俺はそう語りかける。
 (俺が母さんや父さんを殺したも同然だったのに―――)
 (そんなこと気にしなくていいのよ―――)
 優しかった母さんの声が聞こえて来る。
 俺のかざした手の周りに魔力が集まってくる。
 (そうね。もし私達に悪いと思ってるのなら―――)
 母さんの声が続く。
 (私達の分まで幸せになりなさい。私達が望むのはそれだけよ―――)
 (母さん―――ありがとう)
 その声を最後に母さんの声は聞こえなくなった。


 そして―――俺はゆっくりと目を開ける。
 俺の両手の中には青い宝珠があった。
 (これが・・・宝珠か?)
 そして、宝珠を中心に魔力が収縮を始める。
 だんだん、俺のいる空間の魔力が少なくなっていくのを感じる。
 宝珠から小さな龍が出る。
 『なるほど・・・宝珠を見つけ出したか?』
 「ああ。これで文句は無いだろ」
 『確かにな』
 『青龍』は俺の目をジッと見て、何かを確信したようだった。
 『お主のことを認めよう。我もその方が力を発揮出来る。それと―――』
 『青龍』はすももの方を見て、呟いた。
 『彼女の能力は奴らも警戒している。気をつけることだな―――』
 「ち、ちょっと待て、それってどういう―――」
 しかし、それを言い残すと『青龍』は再び宝珠の中に戻っていった。
 それと同時に―――
 すももを縛っていた魔力の渦も消えて落ちて来た。
 「すもも!!」
 俺は落ちてくるすももの身体を落下地点に先回りし、キャッチした。
 「すもも!すもも!」
 「うっ・・・うん!?」
 「大丈夫か?すもも!」
 「か、和志くん・・・和志くん!!」
 俺の首に思いっきりしがみつくすもも。
 「良かった・・・無事で・・・本当に・・・」
 すももの声は涙声だった。
 「ゴメンな。心配掛けて・・・」
 俺は謝りながら、次のことを考える。
 「さて、どうやってこの空間から脱出しよう・・・」
 「あ、それならわたしに任せて下さい」
 すももの言葉に答えるように背中の金色の羽が広がって、俺達を包む。
 「すもも・・・これは?」
 「う〜ん、わたしもよく分かんないんですけど、きっと何とかなりますよ」
 「おいおい・・・」
 『2人共、目を閉じて』
 レイアの声に俺は目を閉じる。
 それと同時に、また意識が遠くなって行くのを俺は感じていた。






  「・・・」
  「・・・」
 俺とすももは並んで歩いていた。
 だが、お互いに何も語らず、ただ黙々と歩いていた。
 あの後、俺とすももが目を覚ましたのは師匠の家だった。
 説明によると、俺とすももが気を失っていたので、とりあえず師匠の家に運んで式守家が誇る医療魔法の使い手を集めて
 治療してくれたらしい。
 それでも、俺達が目を覚まさないのでどうしたものか困っていると、調べ物があると言って出かけていた御薙先生が戻って来た。
 師匠の説明を聞いた御薙先生の指示で何とか俺達を回復させたらしい。
 最も、魔法に慣れていた俺はともかく、すももはダメージが大きくしばらくは寝ていたのだが。
 そして、すももが目を覚ました後、師匠にお礼を言って俺達はこうして家路に付いている。
 余談だが、みんなは俺達と一緒に師匠の家を出ると、そそくさと帰っていった。
 俺としては、雄真さんが複雑な表情を浮かべながら、神坂さんと帰っていったのが印象に残っていた。
 それと―――姉ちゃんが精一杯の笑顔を浮かべていたことが。
 そんなことを考えながら、俺はすももを見る
 すももと一緒に帰るのは、いつものこと―――とは言わないが結構多かったりする。
 しかし、いつもとは雰囲気が違っていた。
 理由は分かっている。
 しかし、いつまでもこうしている訳にもいかない。俺は口を開いた。
 『あの・・・』
 俺とすももが同時に口を開く。
 「な、何だよ、すもも」
 「か、和志くんこそ・・・」
 俺達はいつの間にか、お互いの家の分岐点まで来ていた。
 「和志くん。ここまででいいですよ」
 笑いながら言うすもも。
 「早く、渚さんのところに行って上げてください・・・可愛い彼女さんを放っておいたらダメですよ」
 そう言うすももの表情はどこか無理しているような気がした。
 「ああ・・・その説明をしなきゃならないんだな」
 「えっ?」
 「姉ちゃんの告白は、その―――断ったよ」
 「ど、どうしてですか!?和志くん、渚さんのこと・・・」
 「確かに好きだよ、でもやっぱり俺にとって姉ちゃんは『大切な姉ちゃん』なんだよ。それに―――」
 「それに?」
 「俺、好きな人がいるし」
 「そ、そうですか・・・渚さん以外の人だとは思いませんでしたよ」
 すももがうつむき気味に言う。
 「未だに10年前の初恋の人が好きなんだよな・・・どんだけ好きなんだよって話だし」
 「女の子としては羨ましいですよ。未だに和志くんに想われているその人が」
 「でも、情けないことに再会していたことに気が付かなかったんだよな」
 「再会してたんですか?」
 「そうだよ。その女の子は10年前と変わってなくてな・・・今でもそばにいてくれるんだ。
  大きなリボンと元気な笑顔が特徴的なんだ」
 「えっ・・・」
 すももが弾かれたように俺を見る。
 
 「俺は・・・すもものことが好きだ。気づいてなかったけど10年前からずっと」

 
 すももは俺のことをジッと見ていた。
 そして―――
 “ポロ・・・ポロ・・・”
 その瞳から涙がこぼれる。
 「あ、あれ・・・おかしいですね。どうして嬉しいのに涙が・・・」
 俺は泣いているすももの身体を―――そっと抱きしめた。
 「ゴメンな、すぐに気づいてやれなくて」
 ブンブンと首を振るすもも。
 「気、気にしないで下さい・・・和志くん。わたしも和志くんのこと・・・好きです。大好きです」
 俺の胸に顔を埋めるすもも。
 俺は泣いているすももの涙をそっと指で拭ってやる。
 「すもも、これからも俺と一緒に居てくれるか?」
 「はい。もちろんです。ずっと一緒だよ。和志くん」
 笑顔を浮かべたすももがゆっくりと目を閉じる。

 俺は―――ゆっくりとすももの唇にキスをした。

 それは、時間にしてみれば、数十秒のことだっただろう。
 だけど、俺にはこの時間が永遠に続いて欲しかった。
 名残を惜しむように俺とすももの唇がゆっくりと―――離れた。
 すももの顔が真っ赤に見えるのは、夕陽のせいだろうか?
 俺も似たような状態だから人のことは言えないが。
 「エヘヘ・・・和志くんがファーストキスの相手で良かったです」
 「こ、こら・・・そういうことを普通に言わない!」
 そんなことを話しながら、俺はすももを家まで送っていった。
 今までと違うのは―――
 俺の手とすももの手がしっかりと繋がれているということ。
 そして、幸せそうな笑顔を浮かべるすももの表情を見てると、
 俺も幸せな気分になっているということだった―――






                       〜第37話に続く〜


                こんばんわ〜フォーゲルです。第36話になります。

       前半はついに姿を表した『青龍』ですが、散々喋り倒した挙句、謎だけが増えたような(汗)

           すももの『能力』に関してもほとんど分からずじまいなのはどうなんだ?とか

                     ツッコミが飛んで来そうだ。

        そして後半は・・・読者的にも作者的にも『キターーーーー!!』な展開に(爆)

             読者的には「やっとかい・・・」と思ってる人が多そうですが(笑)

     次回は・・・ついに結ばれた和志とすもも。2人の周りにはこんなめでたいことをネタにしない訳が・・・もとい。

                 祝福してくれる仲間達がいるという話になるかと。

            後は、コーヒーを用意しておいた方が(予想どおりのアレな展開の予定)(笑)

                       それでは、失礼します〜


管理人の感想

キターーーーーーーーーーーー!!(笑)

ついに結ばれた和志とすもも。おめでとうございまーす!

なんだか、前半のシリアスがぶっ飛ぶほどの甘々テイスティ。結局今の段階では、すももの能力など謎が残っていますが。

でもまあ、今くらいは幸せに浸かっててもバチは当たりませんよね♪

次回はラブラブ編? すももは天然なので、甘いときはとことん甘そう。とりあえず、ブラックコーヒーを用意しとかなくちゃ(笑)

ではでは〜、雅輝でした。



2008.6.25