『解かれた魔法 運命の一日』〜第34話〜





                                     投稿者 フォーゲル





  「か、和志くん・・・どうして・・・」
 俺の顔を見ながら、不思議そうに問い掛けるすもも。
 それには答えず、俺はゆっくりと周りを見渡す。
 俺達の方を見ながら余裕の笑みを浮かべる綾乃。
 その奥に動きを封じられた師匠と高峰さんの姿が見える。
 何故か、俺の心は凄く冷静だった。
 (腹を括ったからかな・・・)
 俺はちょっと前の出来事を思い出していた。




 「ハァ・・・ハァ・・・」
 俺は走っていた。
 もちろん、俺と姉ちゃんの関係を完璧に誤解しているすももの姿を探して。
 そして―――
 (どうなるかは分からない。だけど―――)
 姉ちゃんは勇気を出して、俺に想いを伝えてくれた。だったら俺も―――
 そんなことを考えていた時だった。
 「和志くん!」
 声のした方向を向くと、準さんとハチ兄がこっちに来るところだった。
 「和志くん。どうしたの。そんなに急いで・・・」
 不思議そうな表情をする準さん。
 「2人共、すももを見ませんでしたか?」
 「見たわよ・・・だけど・・・」
 難しい顔をしながら準さんは俺を見る。
 「和志くん、すももちゃんと何かあったの?」
 「な、何でですか?」
 「私達に気づかず、走っていっちゃったから・・・それに、すももちゃん泣いてたし」
 「・・・」
 「ねえ、和志くん。良かったら相談してみない?」
 「・・・」
 「なるほど・・・魔法絡みかよ」
 そう言ったのはそれまで黙っていたハチ兄だった。
 「な、何で分かるの?」
 「雄真も、伊吹ちゃん絡みの騒動の時、俺や準には内緒だったからな」
 少し呆れたように、そして寂しそうに言うハチ兄。
 「雄真といい、お前といいどうして俺の周りには魔法絡みになると考えすぎる奴が多いのか・・・どうせお前のことだ。
 『魔法絡みのトラブルだから、すももちゃんを巻き込む訳にはいかない』とか思ってすももちゃんを避けてたとかだろ」
 「・・・そうだよ。それに魔法の使用を禁止されてる今の俺にはすももを守れる自信が無いんだ」
 現に自分の身さえ、守れるかどうか分からないのに・・・
 「じゃあ、聞くけどよ・・・お前がすももちゃんと初めて会った日、魔法を使ってすももちゃんを助けたんだよな?」
 頷く俺。
 「お前、その時に『魔法が使えるから』すももちゃんを助けたのか?」
 「!!」
 それだけは、自信を持って違うと言える。
 俺が、すももを絶対に助けたかったから―――
 「魔法が使える使えないなんて、そんなことはどうでもいいんだよ。大事なのはお前がすももちゃんを守りたいと思ったかかどうかだ。
  その気持ちには変わりないんだよな」
 「そ、それはもちろん!!」
 「なら、自分の気持ちに素直に行動しろ。そして、何が何でもすももちゃんを守ってやれ。
  惚れた女を泣かせるのは、男にとって最低のことだからな」
 「分かった!ありがとうハチ兄!」
 「あ〜あ、私の言いたいこと全部ハチが代弁しちゃったわね」
 苦笑いを浮かべる準さん。
 「あ、準さんもきっかけを作ってくれて・・・」
 俺が準さんにもお礼を言おうとしたら、準さんは笑いながら言った。
 「お礼はいいわよ。すももちゃんは学園の森の方に行ったわよ」
 「森ですか?」
 というと・・・『使鬼の杜』の方か?
 「分かりました!ありがとうございます!」
 俺はそう言うと、また走りだした。





 (今なら師匠に言われた言葉の意味も分かる)
 師匠は俺に『魔法から離れてみるのもいいのではないか?』と言った。
 それは、俺が魔法にとらわれすぎて、大事なこと―――『大切な人を傷つけないこと』を見失ってたからだ。
 大切な人を守るのに魔法は関係無い―――今自分に出来ることをやることが大切なんだ。
 俺は、そんなことを考えながら、背中からレイアを取り出す。
 「ふ〜ん・・・やる気なのね」
 不適に笑う綾乃。
 「俺は魔法を使う気は無い。だけど・・・あんた達がすももや俺の周りの大切な人達を傷つけると言うのなら
  ためらいなく、魔法を使うぞ」
 例え、それが結果的にあいつらの思惑通りだとしても・・・
 「すもも、俺から離れるなよ」
 「う、うん・・・」
 すももが頷くのを確認してから呪文を唱え始めた。




  “ドォォォォォォン・・・・”
 森の奥の方から爆発音が聞こえたのはその時だった。
 私は、思わず足を止める。
 小日向君達と一緒に森に入ってからしばらく経っていた。
 「藤林!!今のは・・・」
 「魔法の爆発音だよね?それにこの魔力反応・・・」
 小日向君と神坂さんが交互に私に話し掛ける。
 「カズ君の魔力反応・・・」
 だけど、私はそれに若干の違和感を感じていた。
 「でも、吾妻くんの魔力にしては、荒々しくない?」
 私と同じ疑問を神坂さんが口にする。
 「分かるのか?春姫?」
 「うん、吾妻くんの魔力の流れのイメージは、『山の中のキレイな川』って感じだから」
 「多分・・・カズ君の『青龍』の封印が解けかかっているんだと思う」
 (どうして?何でカズ君、魔法を使ってるの?)
 「とにかく、ここで考えていてもラチがあかない。急ぐぞ」
 小日向君に続いて、私と神坂さんも走りだす。
 (カズ君。お願い・・・ムチャはしないで!!)
 私はそれだけを願っていた。





  「はぁ・・・はぁ・・・」
 肩で息をする綾乃の姿を俺は見ていた。
 予想に反して、俺は綾乃を押している。
 だが、俺は警戒していた。
 綾乃の表情からは笑みが消えないこと、そして―――
 「ふっ・・・さすが『四神』の後継者、なかなかやるわね」
 感心したように言う綾乃。
 「だけど、私の目は誤魔化せないわよ」
 「何のことだ?」
 「あなたは、封印された状態から無理に魔法を使っている。正直魔法を使っている今の状態は、辛いはずよ」
 確かに、指摘通りだった。
 魔法を使うたびに、封印を施された痣の部分から激痛が走る。
 「和志くん・・・」
 俺の後ろから、すももの不安そうな声が上がる。
 その声に後ろを振り向いた俺は、笑顔を浮かべる。
 すももに心配させないように気を配りながら。
 『シャル・リール・ライズ・ディス・アルフェイズ!!』
 綾乃の声が響いたのは、その時だった。
 「くっ!!」
 俺が防御呪文を唱えようとしたその時だった。
 “ズキィィィィィッ”
 背中に激痛が走る!
 (し、しまった!呪文が間に合わない!)
 数本の光の槍が俺達に迫る。
 俺はすももを抱きしめると背中を向ける。
 例え、俺に何かあってもすももだけは守りたかった。
 だが、俺にその攻撃呪文が当たることは無かった。
 何故なら―――
 俺の前に小さな竜巻が展開されていた。
 そして―――
 『・・・エル・アダファルス!!』
 聞き覚えのある攻撃呪文が綾乃に向って飛んで行く!!
 だが、綾乃はその攻撃もマジックワンドで弾く。
 「やっぱり、来たわね。渚」
 「カズ君!!」
 その声に合わせるように姉ちゃんと、雄真さん、神坂さんが現れた。
 3人は俺達をガードするように前に立ちはだかる。
 「大丈夫?吾妻くん?」
 「・・・すももがどうしてここにいるかは・・・後で聞くか」
 3人は警戒しながら綾乃さんの方位を狭めていく。
 「綾乃さん・・・話して貰います。あなた達が『最終的に』何を企んでいるのか・・・」
 マジックワンドを突きつけながら、綾乃に忍び寄る姉ちゃん。
 だが、その時―――
 「皆さん!よけて下さい!」
 それまで動きを封じられていた高峰さんの声が響いた。
 とっさに回避行動に移る姉ちゃん達。
 光の刃が姉ちゃん達3人を吹き飛ばす!!。
 「遅かったわよ。純聖さん。義人」
 綾乃の声に答えて、褐色の青年と、竹光を持った短髪の男が現れた。
 「いや、悪かったな。ちょっとジャマが入ったのでな」
 そう言って、小脇に抱えた『何か』を師匠と高峰さんの方に向って投げる。
 「信哉!沙耶!」
 そこにはボロボロになった信哉さんと沙耶さんの姿があった。
 「じゃあ、こいつはこっちだな」
 もう一人の青年の方が同じように、姉ちゃんや神坂さんの方に投げる。
 「杏璃ちゃん!」
 同じような状態になった柊さんの状態を見て、神坂さんが声を上げる。
 「さて、形勢逆転ね」
 立ち上がった綾乃が俺達を見る。
 「・・・」
 俺は綾乃を睨みつける。
 「安心しなさい。あの3人は殺していないから」
 「あんたらは、何が目的なんだ。『青龍』の力が欲しいなら俺だけを狙えばいいだろ!!」
 俺は綾乃の目を見て問い掛ける。
 「言われなくてもそうするわ」
 その言葉と同時に、師匠と高峰さんの動きを封じていたマジックワンドの魔法が解けた。
 (・・・?)
 そして―――
 “ズドンッ”
 その掛かっていた魔法が俺一人に掛かる。
 「和志くん!?」
 すももが俺に近寄る。
 「カズ君!?」
 姉ちゃんも俺に近寄ろうとする。
 「おっと、黙って見ててもらおうか?」
 義人が姉ちゃん達3人の前に立ちはだかる。
 同じように、師匠達の前には、純聖が立ちはだかっていた。
 「さあ、それじゃ・・・」
 綾乃が俺に近寄ろうとしてそして―――止まった。
 「お嬢さん、そこをどいて貰えるかしら」
 数メートル離れた俺と綾乃の間、倒れた俺をかばうように―――

 すももが立っていた。大きく両手を広げて。

 「す、すもも・・・何やってるんだ。早く・・・逃げろ」
 息も絶え絶えに言う俺。
 しかし、すももは俺の言葉に首を振る。
 「イヤです!絶対にどきません!」
 その口調には、絶対引かない覚悟があった。
 「和志くんは、今まで何度もわたしを助けてくれました。だから今度はわたしが和志くんを助ける番です!」
 「そう、仕方ないわね」
 綾乃の手のひらに魔力の光が灯る。
 「すもも!!」
 俺が絶叫する。
 すももが俺の方を振り向く。
 その顔には―――笑みが浮かんでいた。
 俺には、その表情が―――『あの時』―――俺と姉ちゃんを守るために『青龍』の力を使った母さんの顔にダブって見えた。
 それを最後に―――俺の理性はフッ飛んだ。



  私の目には信じられない光景が『2つ』写っていた。
 一つは、綾乃さんの攻撃魔法が放たれて、すももちゃんに当たる直前―――
 すももちゃんの目の前で突然、攻撃魔法が掻き消えて、すももちゃんの背中から金色の羽が出ていた。
 そして、もう一つ―――
 気を失って倒れたカズ君の身体から膨大な攻撃力を伴った魔力が溢れ始めていたこと。
 私はハッキリと確信していた。
 カズ君の中の『青龍』が暴走を始めたことを。
 「な、何だ?この魔力は?うわぁぁぁぁ!!」
 私達の動きを抑えていた義人さんがあっさりと魔力の渦に飲み込まれる。
 綾乃さんと純聖さんも姿が見えない。
 逃げたか、巻き込まれたか・・・
 「藤林渚!!」
 何とかうまく式守さんと高峰さんが私達のところに来る。
 「一体何が起こっているのだ?」
 「カズ君の魔力が暴走を始めたの・・・このままじゃカズ君は魔力の全てを放出させられて・・・死ぬわ」
 そう言葉を切ったその瞬間―――
 “ドンッ”
 更に爆発的な魔力がカズ君の身体から溢れる。
 その爆風に吹き飛ばされたのか、すももちゃんが私達の方にやってくる。

 「すもも!大丈夫か?」
 その様子に小日向君が心配そうに声を掛ける。
 「わ、わたしは大丈夫です。それより和志くんに何が起きてるんですか?」
 私はさっきと同じ説明をすももちゃんにもする。
 「そ、そんな・・・何とかならないんですか?」
 「・・・」
 私は黙り込む。その時私の目にすももちゃんが持っているものが目に入った。
 「レイアちゃん?すももちゃん、何ですももちゃんがレイアちゃんを持ってるの?」
 カズ君のマジックワンド・レイアちゃんをすももちゃんはしっかりと握り締めていた。
 「これは・・・和志くんがわたしに投げたんです。倒れた後に」
 (倒れた後―――)
 「すももちゃん、カズ君を助けられるかも知れない。だけど、それにはすももちゃんの力が必要なの」
 私はすももちゃんの目を見つめて言った。




 「すももちゃん、カズ君を助けられるかも知れない。だけど、それにはすももちゃんの力が必要なの」
 渚さんの言葉を聞くまでも無く、わたしの決意は決まっていました。
 「どうすればいいんですか?わたし、和志くんを助けられるなら何でもします!!」
 私はそう答えていました―――



                     〜第35話に続く〜


              こんばんわ〜フォーゲルです。第34話になります〜

                   今回は引き続き激動の回です。

              前半では、ハチにカッコイイシーンを与えてみました。

                 たまにはこういう役も与えてあげないと(笑)

        後半は二転三転しながら綾乃達に追い詰められていく和志達の様子を書いて見ました。

    杏璃達は、足止めに失敗して敗北。すももは綾乃に攻撃されそうになり、渚達は逆に足止めされて動けず。

    絶対絶命の状態で、始まってしまった和志の魔力暴走と呼応するように発現したすももの背中の金色の羽。
 
               そして、次回果たしてすももは和志を救えるのか!?

                 楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは!!


管理人の感想

燃え展開になってきましたね〜。すももを護る和志。そして、和志を庇うすもも。

前半のハチもかっこよかったです。ハチは普段は道化役を演じていますが、いざという時は、ある意味一番男らしいかもしれませんね。

庇うすももに迫る綾乃の魔法。過去の惨劇とダブる光景に、和志の理性もなくなり、そして・・・四神である青龍の暴走。

すももの力は必要だという、和志を救う方法とは?

次回にも大いに期待です^^



2008.6.10