『解かれた魔法 運命の一日』〜第31話〜






                                   
                                    投稿者 フォーゲル





  “キーンコーンカーンコーン・・・”
 一日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
 そして、ある人は部活へ、ある人は帰宅する準備に取り掛かる。
 (どれ、俺も帰るか・・・)
 御薙先生に魔法使用禁止命令を出されている以上、修行をすることも出来ない。
 俺は、机の横に引っ掛けてあるカバンを掴んで席を立つ。
 「和志くん」
 後ろからすももが声を掛ける。
 「・・・どうしたんだ?すもも?」
 だが、俺の声にすももはすぐには返事をしなかった。
 何というか、聞いてもいいのかどうか迷っているかのようだった。
 それでも、意を決したように頷くと口を開いた。
 「和志くん、何か悩み事でもあるんですか?」
 「・・・どうしてそう思うんだ?」
 「ここ数日、深刻そうな顔をしてますから・・・」
 その問いに、俺は一瞬沈黙した。
 俺が姉ちゃんの家の人間に狙われていることが発覚して以来、周りに心配掛けないようにして来たつもりだけど・・・
 すももには俺の変化が分かるようだった。
 だけど、俺はすももにそのことを話すつもりは無かった。
 これは、俺と『四神』の力を受け継ぐ関係者だけの問題であって何も無関係のすももを巻き込む必要は無いと思うし。
 「何でも無いよ」
 「本当ですか?」
 すももの表情には若干の疑念が浮かんでいた。
 「本当だって!俺を信じろよ」
 「・・・分かりました。だけど・・・わたしでよければ力になりますからね」
 「分かった」
 俺がそうすももに返事をしたその時だった。
 「カズ君〜!!」
 教室の外から姉ちゃんが俺を呼ぶ。
 姉ちゃんは俺が狙われているということを知った後、『カズ君は私が守るから』という名目の元、毎日放課後になると、
 俺を迎えに来るようになっていた。
 (ああ、男子の視線が痛い・・・)
 嫉妬の感情に溢れた男子の視線に絶えながら、俺はすももに向き直る。
 「じゃあ、俺は帰るから、また明日な」
 「う、うん・・・」
 俺はそう言ってすももに別れを告げた。




  「ハァ・・・」
 今日何回目かになるかも分からないため息をわたしは付きました。
 それに合わせるようにコップの中の氷がカランと音を立てます。
 和志くんと別れた後、わたしは『Oasis』に来ていました。
 わたしの心は沈んでいます。
 何故なら・・・
 (和志くん・・・何でウソを付くんですか?)
 和志くんに質問をした時、明らかにわたしに隠し事をしているのが分かりました。
 ウソを付く時、和志くんは眉間に皺が寄ります。
 そのクセをわたしは見逃しませんでした。
 (私じゃ・・・全然力になれないってことなんですか?)
 それともう一つ気になることがありました。
 渚さんがここ数日和志くんと常に一緒にいるということ・・・
 周りの友達からも『吾妻くんと藤林先輩って付き合ってるのかな?』という声が上がってました。
 わたしが和志くんに深く聞けないのもそのことが理由でした。
 もし、渚さんとの恋愛関係のことでの悩みだったら・・・
 そう思うと不安で・・・怖くて・・・
 わたしがそんなことを考えていると・・・
 「すももちゃん、どうしたの?」
 「柊さん・・・」
 ウェイトレスのお仕事が休憩になったのか、柊さんがわたしのテーブルに来ました。
 「元気無いわね・・・ひょっとして和志のこと?」
 「え、ええっ!?」
 「最近、渚がバイト休んで和志と一緒にいることが多いしね。それに・・・」
 「それに?」
 「すももちゃんがそんなに悲しそうな顔をするのは、ちょっと前では雄真絡みだったけど、今は和志絡みだろうし」
 「そ、そんなに分かりやすいですか?」
 「うん。とっても」
 柊さんの言葉に思わず俯くわたし。
 「でも、そんなに心配することは無いんじゃない?」
 「どうしてですか?」
 「渚も和志も『付き合ってラブラブ』っていう感じじゃないのよね・・・
  どっちかというと『身を守るために一緒に居る』って感じかしら?」
 腕組みをして考え込む柊さん。
 「そういえば・・・『2人でいつも一緒に居る』って言えば雄真と春姫もそんな感じなのよね」
 「兄さん達ならいつものことじゃないですか?」
 「そうじゃなくて、今の2人からは渚や和志と同じ感じを受けるのよね・・・すももちゃん、何か聞いてない?」
 「いえ・・・わたしは何も」
 わたしと柊さんは2人で考え込みます。
 その時でした。
 「ううむ・・・俺では力不足だというのか・・・」
 「兄様、伊吹様にも何か考えあってのことだと・・・」
 信哉さんと沙耶さんがドアを開けて入って来るところでした。
 「2人共、どうしたのよ?」
 「むっ?柊殿か?」
 柊さんに気が付いたお2人がこちらに近づきます。
 「珍しいわね。2人が『Oasis』に来るなんて」
 「ええ、兄様を励まそうかと思いまして」
 挨拶をかわした後、そんなことを沙耶さんは話してくれました。
 「どういうことよ?」
 「最近、伊吹様が俺達に何かを内緒にしているようなのだ」
 「伊吹ちゃんがですか?」
 伊吹ちゃんが信哉さん達を心から信頼しているのはわたしも分かります。
 そのお2人にも内緒にしていることって・・・
 「最近、伊吹様が式守家直属の『お庭番』・・・すもも様達にも分かりやすく言うとスパイを使って何か情報を集めているようなのです。
  何をしているのか聞いても、『お主達が気にすることではない』の一点張りで・・・」
 そう言って肩を落とす沙耶さん。
 「これは・・・探って見る必要があるわね」
 そう言って立ち上がる柊さん。
 「雄真や春姫、和志に渚、それに何より『あの』伊吹が信哉達に何か隠し事をしている時点で何かあるのは確実よ。
  向こうが隠す気なら、こっちも勝手に探らせてもらうわ」
 それから、柊さんはわたしと信哉さん達を見て言いました。
 「もちろん、すももちゃん達も協力してくれるわよね」
 「・・・分かりました」
 わたしはその言葉にそう頷いていました。
 何故か、わたしの心には不安が拡がっていました―――





  (とはいえ・・・どうすればいいんでしょう)
 柊さん達と別れた後、わたしは考えこんでしまいました。
 素直に聞いたって話してくれないのは分かりきっています。
 となると、わたしはうまく探りを入れるしかないんですが・・・
 わたしはそんなことを考えながら、今日の晩御飯の買い物をするために商店街に入りました。
 「すももさん?どうされたんですか?」
 その時、わたしの耳に聞き慣れた声が聞こえて来ました。
 「あ・・・小雪さん」
 見慣れた魔法服に身を包み、魔法のグッズを机の上に拡げた小雪さんがそこには居ました。
 「こんにちは、すももさん・・・どうされました?元気が無いようですが。どうぞ」
 「分かりますか?」
 小雪さんの言葉に従って薦められた椅子に座りながら、わたしは答えます。
 「そういえば・・・私の占いは当たりましたか?」
 「えっ?」
 「5月ころでしたか・・・すももさんに『運命の出来事』があると予知しましたよね?」
 そんなこともあったことをわたしは思い出しました。
 (そう、そしてその次の日にわたしは和志くんと出会ったんですよね・・・)
 ジッと学園を見ていた和志くん。
 その哀しそうな瞳がいつまでも、わたしの印象に残っていて―――
 (今にして思えば、わたしはその時から和志くんのことが好きだったのかも・・・)
 「・・・小雪さん」
 「はい、何でしょうか?」
 「人から頼られる人になるにはどうすればいいんでしょうか?」
 わたしはそんなことを聞いていました。
 「?・・・すももさんは十分頼られていると思いますよ」
 「それは、表面上のことだけなんですよ」
 前に、伊吹ちゃんが事件を起こした時にも、兄さんも姫ちゃんもわたしにはほとんど何も話してくれませんでした。
 そして、今回の和志くんも・・・
 もちろん、わたしを危険に巻き込まないようにだと言うことは頭では分かっています。
 だけど・・・
 「『その人』が苦しい想いや悲しい想いをしているのに・・・わたしは―――わたしはただ見ていることしか出来なくて」
 私の心には初めて会った時の哀しそうな和志くんの顔と―――
 そして、さっきのウソを付いている和志くんの表情がよぎりました。
 “ポタッ・・・ポタッ”
 いつの間にか、わたしの瞳からは涙がこぼれていました。
 「もう、誰かが苦しんでいるのをただ見ているだけって言うのは・・・イヤなんです」
 それは、わたしの偽りの無い想い―――
 もし、和志くんが苦しみを背負っているのなら支えてあげたい、一人じゃ潰されそうなら半分背負ってあげたい―――
 
 “ソッ”

 その時でした。小雪さんがわたしの頬にそっと手を伸ばしていました。
 「大丈夫ですよ。すももさんは充分、『その人』の支えになっています」
 「で、でも・・・」
 「何も、神坂さんや柊さんみたいに首を突っ込むことだけが『支える』ってことじゃないと思います。
  すももさんの存在そのものが『支え』になる人だっていますよ」
 「わたしの、存在ですか?」
 「ええ、すももさんは自分が思っているよりも大切な人なんですよ。
  私は、その人にとってもすももさんがいることが何よりも大切なことだと思ってるんじゃないかと思います」
 「・・・」
 「だから、すももさんは『自分がしてあげたい』ことをしてあげて下さい。
  それがその人にとっても一番良いことだと思いますから」
 「そっか・・・そうですよね」
 わたしは立ち上がります。
 「吹っ切れましたか?」
 「はい!小雪さん、ありがとうございました!」
 わたしは小雪さんにお礼を言います。
 わたしの心に掛かっていたモヤが晴れていくような感覚をわたしは覚えていました。




  (ふう、すももさんが元気になって良かったです)
 私はすももさんに声を掛ける前に出た占い―――私達『四神』の力を受け継いだ者達の運命がどうなるかの結果を見ていた。
 それによると、『青龍』―――和志さんの運命が一度途切れると出ている。
 だが、それを『太陽』が復活させると出ている。
 「和志さんにとっての『太陽』はおそらく―――」
 私はそう呟くとすももさんが姿を消した方向を見つめた。





                       〜第32話に続く〜


                こんばんわ〜フォーゲルです。第31話になります。

                今回は直接四神には関係無い人達の話になりました。
 
        特に伊吹が信哉達を無視しているというのは意外かなと思って頂ければ嬉しいです。

               個人的には後半のすももと小雪のシーンは力入れました。

      何となく、秘宝事件でもすももは内心こんなことを思ってたんじゃないかと思って書きました。

         次回はついに動き出す陰謀。恋愛関係でも大きな動きが!?とだけ言っておきます。

                       それでは、失礼します〜


管理人の感想

第31話でした〜^^

渦巻く人間関係って感じですね。四神の家柄を取り巻く人たちが、探りをいれるということですが・・・。

今の段階で、和志には渚が。雄真には春姫がボディガードとして付いているということでしょうか。そして伊吹は、諜報部隊を使っての情報集め。

随身である上条姉妹になにも教えていないというのが、ちょっと驚きましたね。まあそれだけ、伊吹が彼らを巻き込みたくないと思っているということでしょう。

確かにすももは、直接事件には関われなくても、傍にいてそっと癒してくれるキャラですよね。雄真も秘宝事件のときは、だいぶ彼女の恩恵を受けていたと思います。

次回は恋愛方面にも大きな変化ということで。やはり和志とすもものことなのでしょうか。

楽しみにしましょ〜。



2008.5.22