『解かれた魔法 運命の一日』〜第30話〜







                                    投稿者 フォーゲル





  「そうか・・・分かった、お前はそのまま瑞穂坂に滞在していろ。作戦は決行の予定だ」
 綾乃からの連絡を受けた俺はそう指示をする。
 『分かったわ』
 魔力で出来ているモニターから綾乃の姿が消える。
 (ここまでの俺の読みは当たってるな)
 俺がそんなことを考えてると、ノックと共にドアが開く。
 「柾影さん。義人さんと純聖(じゅんせい)さんを連れて来ました」
 伊織と共に義人と『風流四家』最後の一人である弧月(こげつ)純聖さんが入って来る。
 年は30代半ば、高い身長、短髪の髪に、何より印象的なのは、
 背中に背負った竹光(たけみつ)だ。
 「柾影殿、今回私と義人を呼んだ訳は何だ?」
 「祐兵さん、俺の方が年下なんですから、そんなかしこまらないで下さい」
 「私は、お主のことを認めているからこそ、忠誠を誓っているのだ。
  何しろ、お主は『正当な』後継者なのだからな」
 「・・・」
 祐兵さんの言葉に俺は沈黙する。
 「で、柾影・・・俺達2人を呼んだのはどういう訳だ?」
 その沈黙を破ったのは義人の声だった。
 「ああ、実は『こっち』の計画はうまく行った。これである程度は自由に動けるぞ」
 「そうか・・・じゃあ、綾乃の方か?」
 「そうだ、もう少しらしいんだが、あと一歩がうまく行かないらしい。
  そこで、お前と純聖さんに綾乃のバックアップに行って欲しいんだ」
 「OK、分かったぜ」
 「それと、計画成功のためには、これが必要だ」
 俺はそう言って、4つの小箱を取り出す。
 「何だ?それ?」
 「これは、封神(ふうじん)の箱だ。これがあれば『神の力』を手に入れることが出来る」
 俺はそれを義人に手渡す。
 「分かった。でも綾乃を入れても俺達は3人しか居ないぞ?」
 「綾乃だったら何とか2つ使えるはずだ」
 「なるほどな・・・じゃあ早速行って来る」
 「うむ、朗報を待っているのだ」
 そう言い残し、部屋を出て行く2人。
 後には、俺と伊織だけが残された。
 「・・・」
 俺は2人が出て行ったドアを見つめる。
 「心配なんですか?」
 様子を伺っていた伊織が言う。
 「大丈夫ですよ。お2人ともかなりの実力者なんですから」
 分かっている、俺も関西魔法連盟の中心を形成している『風流四家』の内2つ『風雪家』と『弧月家』の当主である
 2人の実力は疑う余地は無い。
 だが、それでも―――
 (ジャマが入るとすれば―――『あの女』だな)
 俺は以前に『青龍』が暴れた場所に現れた男と一緒に居たリボンの女を気にしていた。





  「失礼します」
 「どうぞ。開いてるわよ」
 聞こえた声の指示に従い、俺はドアを開けた。
 中には、御薙先生が笑顔を浮べて待っていた。
 ここは、御薙先生の研究室。
 昨日の夕方、俺の身に起こった事態を姉ちゃんは御薙先生にそれを報告。
 それを聞いた御薙先生は、俺に今日自分の研究室に来るように言われていたのだ。
 「これで全員ね」
 その言葉に俺は周りを見渡す。
 研究室の中には、俺以外に姉ちゃんと雄真さんに神坂さん、師匠と高峰さんが居た。
 「姉ちゃんは分かりますけど、何で雄真さんや師匠達が居るんですか?」
 「それは・・・」
 「昨日、吾妻くんに起こった現象がここにいる人間には関係あることだからよ」
 姉ちゃんの言葉を遮って御薙先生が口を開く。
 「どういうことだ?母さん?和志の背中に変な痣が広がってるって言うのは昨日すももから聞いたけど」
 「その雄真くんの疑問を解くためには、まず藤林さんからの話が必要ね」
 御薙先生の視線が動くのに合わせて、全員の視線が姉ちゃんに向く。
 「そうですね。まずはそこからですね」
 姉ちゃんは少し深呼吸してから口を開いた。
 「昨日、私やカズ君を襲った女性は扇花綾乃さん・・・藤林家をサポートする『風流四家』の内の一つ『扇花家』の当主です」
 「そのサポートするはずの家の人間が、どうして次の藤林家の後継者である渚ちゃん達を襲う必要があるんですか?」
 神坂さんの顔にも疑問の色が浮ぶ。
 「正直、私にも思い当たる節はありませんでした。だけど、一つだけ思い付いたことがあるの」
 「そう思い付いたこととは何だ?藤林渚よ」
 師匠の方を見ながら、姉ちゃんは言葉を続ける。
 「私は藤林家の後継者だけど、藤林家の血を引いている訳じゃない。だけどもし藤林家の血を引く『正統な』後継者が現れたとしたら?」
 「いるのか?そんな人間?第一そういう人間が居なかったから姉ちゃんが後継者に指名されたんじゃないのか?」
 「・・・正確には、一人だけ居るの。いや居たって言った方がいいのかな?」
 姉ちゃんは顎に手を当てて考え込む。
 「そいつの名前は何だ?藤林?」
 「名前は・・・『藤林 柾影』私のお義父さんの弟夫婦の一人息子です」
 「!!」
 雄真さんの問いに姉ちゃんの口から出てきた名前に俺は驚いた。
 それと同時にすももと一緒に行った俺の自宅で遭遇した男のことを思い出した。
 (あいつか?あいつなのか?)
 「でも、彼は私が藤林家に養子に来たのと同時期に魔法の留学のために旅立ったヨーロッパで両親共々消息を絶ってて。
  それで、私が藤林家の後継者に指名されたんです」
 「それなら実力行使に出なくても、渚さんが後継者の座をその柾影さんに譲ればいいんじゃないですか?」
 確かに、高峰さんの言う通りだ。
 「もちろん、私もそのつもりです。分からないのはそう言う話も無しで何で向こうがいきなり実力行使に出たのかということなんです」
 考え込む姉ちゃん。
 「だから、私はこれは何か裏があるんじゃないかと思ってるんです。それが何かは分からないですが」
 そう言って姉ちゃんはため息を付く。
 「その藤林さんの疑問は当たってるかも知れないわね」
 御薙先生が口を開く。
 「どういうことですか?」
 俺の問いに御薙先生は俺の方を見て言う。
 「それを象徴しているのが和志くんの背中の痣よ」
 「ようやく話が繋がって来たようだな」
 「どういうことだ?伊吹?」
 雄真さんの問いに答えたのは師匠では無かった。
 「その背中の痣は吾妻くんが『四神』の一つ『青龍』を引き継いでいるって証明よ」
 「『四神?』『青龍?』一体何のことです?」
 御薙先生は少しづつ噛んで含めるように俺達に事情を説明していく。
 「四神って言うのはその昔、この日本を守るために存在していた伝説の存在よ。
  文献によると、『青龍』の他に『朱雀』『玄武』『白虎』の3体が存在していたってことらしいわ」
 歴史の授業をするように言葉を続ける御薙先生。
 「その四神はそれぞれ、特定の家の守護聖獣のような存在として扱われていたの。
 『朱雀』は御薙家、『玄武』は高峰家、『白虎』は式守家にね」
 御薙先生の言葉に俺は雄真さん達を見る。
 「そして、『青龍』を引き継いでいるのが・・・吾妻くん、あなたの吾妻家という訳」
 「なるほど、それで俺達も集められたと言う訳か・・・」
 ようやく納得したかのように頷く雄真さん。
 「で、ここからが肝心なんだけど・・・その四神達は普段はその家の当主の体の中に封印されているのよ。
  だけど、もし世界に何か危険なことが起きようとしている時に封印から目覚めると言われているわ」
 「じゃあ、吾妻くんの背中の痣は・・・」
 「『青龍』が世界の危機を感じ取って目覚めかけているのね」
 神坂さんの問いに答える御薙先生。
 「幸いなことに、式守さんと高峰さんは封印されている四神の力をある程度コントロール出来るみたいだし、
  雄真くんは、私が持っているこの宝珠のおかげでいざという時も大丈夫だけど・・・」
 御薙先生が手をかざした虚空には、赤い宝珠が出現していた。
 「吾妻くんは宝珠も無ければ、コントロール方法も知らない。このままじゃ・・・」
 「このままじゃ?」
 「『青龍』に意識を乗っ取られるわね」
 「!!」
 「そんな・・・何とかならないんですか!?」
 姉ちゃんが懇願するような声を上げる。
 「それを何とかするために雄真くん達にも来てもらったのよ」
 御薙先生はそう言って隣の部屋のドアを開けた。





  「とりあえず、良かったわね。カズ君」
 「ああ・・・」
 姉ちゃんの言葉に安堵しながら、俺は教室に向っていた。
 暴走しかかっている『青龍』の力から、俺を守るために御薙先生が取った手法は、
 『青龍の力を他の3体の四神の力で押さえ込む』という方法だった。
 広がっている痣の中心から(よく見ると中心部分が龍の形をしていた)御薙先生が封印の印綬を刻み込み、
 そこから雄真さん達の残り3体分の四神の魔力を流し込み、無理矢理に抑えるという形だった。
 今、俺の背中の痣はすっかり引き、龍の形をした痣を囲むように鳥、虎、亀の形をした痣が浮いているという状態だった。
 「でも・・・魔法は使えないんだよな」
 そうなのだ。とりあえず抑えたとはいえ無理矢理に押さえ込んでいるような状態だから、刺激を与えるのは危険ということで、
 俺は御薙先生から魔法の使用禁止命令を出されてしまったのだ。
 「本来なら、四神の魔力に干渉出来る魔力を持った人が居れば完全に何とか出来るんだけど・・・」
 過去の文献ではそういう魔力を持った一族も居たらしい。
 だけど、その人達を探している時間も無いということで今回の方法になったのだ。
 「どうしよう・・・俺の魔力のコントロール方法を会得しない内にまた襲われたりしたら・・・」
 そう不安を口にする俺。
 すると―――

 “ガシッ”

 姉ちゃんが俺の肩を掴んで優しげな笑みを浮かべていた。
 「大丈夫だよ。カズ君は私が絶対に守ってみせるから―――」
 「・・・」
 その姉ちゃんの眼差しに思わず視線を逸らす俺。
 その時だった―――
 「和志く〜ん!!」
 俺の姿を見つけたすももが走り寄ってくる。
 「もう、どこに行ってたんですか?もう授業始まっちゃいますよ!?」
 「ああ、ゴメンな」
 「じゃあ、カズ君、私も教室に戻るね」
 「うん、分かった」
 姉ちゃんはそう言って教室に戻っていった。
 「・・・ねえ、和志くん」
 その様子を見ていたすももが口を開く。
 「どうしたんだ?」
 「・・・渚さんと何か合ったんですか?」
 「・・・いや、何にも?」
 俺を取り巻く変な状況にすももを巻き込む訳にはいかない。
 そう思った俺はそう答えた。
 「・・・そうですか・・・」
 その時の俺は気が付いていなかった。
 すももが寂しそうな―――不安そうな表情を浮かべていたことを。






                          〜第31話に続く〜


                  こんばんわ〜フォーゲルです。第30話になります。

         今回は柾影達敵サイドの設定と、和志達と『四神』の関係性が明らかになった話です。

            『おお〜こういう設定だったのか?』とか思って頂けると嬉しいです。

               最も今回の話で全ての謎が明らかになった訳では無いですが・・・

            魔法禁止命令を出されてしまった和志はどうするのか?すももとの関係は?

                      その辺にも注目して頂けると嬉しいです。

                 次回は今回出番が少なかった人が中心の話になるかなと。

                         それでは、失礼します〜


管理人の感想

第30話をお送りして頂きました〜^^

今回はシリアス一辺倒。そして段々と、ストーリーの核心とも言える部分に近づきつつありますね。

「風流四家」。藤林家をサポートする四家の当主たち。唯一藤林の血を継ぐ者、柾影。

相手側の全貌もだいぶ明らかになってきました。そしてその手は、和志だけでなく他の四神所有者にも伸びる・・・。

「四神」の設定は、大方私の読み通りでしたが、皆さまはどーでしたでしょー?

ただ、世界の危険を察知しての痣の発症、というのは流石に予想できませんでしたが。


さて、次回は今回で番の少なかった・・・すももかな?

ヒロインですもんねぇ。頑張ってください(笑)



2008.5.13