『解かれた魔法 運命の一日』〜第3話〜
投稿者 フォーゲル
「ハァ・・・ハァ・・・」
俺は階段を一段飛ばしで駆け上がりながら、爆発のあったと思われる教室を目指す。
「一体誰だよ・・シャレにならないことやってるのは・・・」
爆発音はあの一回だけだが、それでこれから先、何も起こらないとは限らないし。何より・・・
(あんな思いをするのはもう嫌なんだよ・・・)
俺は、昔自分が見た光景を思い出してしまう。
メチャクチャに破壊された魔法陣、燃やされて焦げ臭い匂いを発する魔導書、血だまりの中に倒れる人―――
「・・・クッ!」
俺は走りながら、頭を抑える。
最近は『あの事故』のことは普通にしていれば、思い出すことも少なくなって来ていたし、
かいつまんでなら話すことも出来るようになって来ていた。
とはいえ、たまにこうやって魔法関係の事故に出くわすと、頭の中にあの時の光景が・・・
(ああ〜でも思い出してる場合じゃない!)
こうしている間にも、あの時みたいにマズいことになっているのかも知れないのだ。
俺はようやく、爆発のあった教室―――雄真さん達のクラスのある階にたどり着いた。
階段を駆け上がり、スピードの付いたそのままで角を曲がる。
その時だった。
【ドンッ!!】
角の向こうからやってきた『何か』とぶつかった。
「うわっ!!」
「キャッ!!」
悲鳴がしたかと思うと、俺はその場に立ち止まる。
どうも、向こうの方が勢いよくぶつかってきたせいで、俺の方には衝撃は来なかったようだ。
そして―――
「いった〜い・・・ちょっとアンタ!!ちゃんと前見て歩きなさいよ!」
俺とぶつかったと思われる金髪でツインテールの女の子が俺に怒りの声を上げていた。
その上から目線の物言いに俺は思わず言い返す。
「そっちだってよく前を見てなかったんじゃないんですか?」
「ア・・・アンタねぇ・・・」
俺の言葉にさらにその女の子が反論しようとしたその時―――
【ゾクッ】
一瞬俺の背中を悪寒が走りぬける。
廊下の奥の方―――ちょうどあの爆発があった教室の当たりから変な―――魔力の反応がある。
俺は、魔力が近くにある環境にいたので、魔法を使えなくてもそれを感じ取れるのだが・・・
見ると、俺とぶつかった女の子もそれを感じたようだ。
そういえば、彼女は魔法使いの象徴である『マジックワンド』を背中に担いでいる。
(ということは・・・魔法科の生徒?)
「マズイわね〜・・・そこのアンタも早く逃げた方がいいわよ!」
そう言い残すと彼女は立ち上がり階段を下へと降りて行った。
「あ、待っ・・・」
(早く逃げた方がって・・・じゃあやっぱり何かマズイ状況になってるのか?)
俺は、一応警戒しながら、その教室へと近づいていった。
そこには異様な光景が広がっていた。
いや、俺の想像したような『血みどろの人間がバタバタ倒れてる』という状況では無かったのだが・・・
教室の中には机やら椅子やら、メチャクチャに倒れていて、まるで台風が通ったような後だった。
そしてその中心に・・・
(鉢植え?)
この場所には似つかわしくない鉢植えが置かれていて、そこから例の魔力反応が感じられた。
ドアからゆっくり中を伺う。
(!!)
ふと、その鉢植えのそばに俺の知ってる人物が倒れていた。
「ハチ兄!!」
俺のことを案内してくれるはずだったハチ兄がそこに倒れていた。
見ると、体のあちこちが煤けてたりする。
「どうしたんだ?一体何があったんだよ!?」
「う、う〜ん」
俺に揺さぶられて、ハチ兄が目を覚ます。
「か、和志か・・・一つ伝言があるんだが・・・」
目を覚ますなり、そんなことを言うハチ兄。
「な、何?」
「この高溝八輔・・・杏璃ちゃんを守って死ぬのなら、後悔は無いと・・・ガクッ」
「ち、ちょっと?しっかりしろって!」
再び、気絶したハチ兄を尻目に、俺は再び鉢植えを見る。
(ハチ兄をこんなにしたのは多分、この鉢植えなんだろうけど・・・)
見た目的には普通の鉢植えなんだが・・・
その時だった。
鉢植えからみるみるうちに植物が生えて来て、あっという間に花が開き―――
その花がいきなり炎を噴いた!!
「うわっ!!」
俺は何とかその炎から身を交わす。
さらに鉢植えからは、蔦のようなものが伸びて来て、鞭のようにしなり近くの机を打ち倒す。
何とか教室から廊下に出る俺。
(と、とにかくアレを何とかしないと・・・)
俺がどうするか方法を考え始めた時・・・
「吾妻くん!!」
「こ、小日向さん?何でこんなところに?」
俺の後を追っかけてきたのか、小日向さんが息を切らして立っていた。
「途中で柊さんに会って吾妻くんがどこに行ったか聞いたら、多分こっちの方にいるかも知れないって」
小日向さんが事情説明を始めたその時―――
俺は、教室の中の鉢植えが攻撃のためのモーションを見せたのに気が付いた。
狙いは―――小日向さん!?
「危ない!!」
小日向さんの手を掴むと思いっきりこちらに引き寄せる。
【ジャッ!!】
鉢植えの放った蔦が今まで小日向さんのいた空間を通過する。
「フゥ・・・大丈夫?こ・・・」
俺は小日向さんに声を掛けようとして思わず黙ってしまう。
気がつくと、俺は小日向さんを抱きしめるようにしていた。
そして、小日向さんの顔が予想よりも近くにあって―――
『和志くんも満更じゃないみたいね〜』
何故かさっきの準さんの言葉が脳裏に蘇る。
「あ・・・」
小日向さんも呆けたような声を上げて俺の顔を見ている。
2人してそんな状態で固まってると―――
「すももちゃん!吾妻くん!伏せて!」
神坂さんの声が響いたのはその時だった。
本能でその場にしゃがみこむ俺達。そして―――
『・・・ディ・ルテ・エル・アダファルス!』
雄真さんの声と共に放たれた魔法は俺の背中をかすめ、いつのまにか俺達の背後に忍びよって来ていた蔦を焼き払っていた。
「2人とも!!大丈夫!?」
心配そうに駆け寄ってくる神坂さん。
「ええ、大丈夫ですよ。俺も小日向さんも」
俺はそう声を上げる。
「雄真さんもありがとうございます」
蔦を焼き払ってくれたことに対して俺は感謝の言葉を言う。
「ああ、大したことじゃねーよ」
「でも、一体何があったの?」
神坂さんの問いに俺は今まであったことを簡単に説明する。
「やっぱり、杏璃ちゃんの魔法の制御のミスね」
呆れたような声を上げる神坂さん。
「でも、どうしましょう?あの鉢植え、まだ動いてるみたいですよ」
小日向さんの声に鉢植えを見ると、確かにまだ動きそうだった。
「柊の奴をもう一回ここに連れてくるか?」
雄真さんがそんなことを言った時だった。
「あの〜みんな〜・・・大丈夫?」
俺がさっき廊下でぶつかった金髪ツインテールの女の子がそこにいた。
「杏璃ちゃん!?」
神坂さんが驚きの声を上げる。
「柊・・・一体何がどうなってこうなったんだ?」
「え〜とね、あたし、今日掃除当番だったのよね。で早く終わらせようと思って、
植物に意思を植え付ける魔法を使って、手伝ってもらおうとしたのよ。ハチに手伝ってもらうと後で、
『デートしてくれ』とか言われそうだったし」
「で、制御に失敗して、こうなったと」
「うん・・・」
「はぁ〜お前はしょうがねぇな・・・」
ため息を付きながら、雄真さんが次の質問を発する。
「で、制御出来ない以上、止めるしかないと思うんだが、一体どうすればいいんだ?」
「そ、それが・・・」
「ひ、柊・・・まさか、『止める方法知りません』とかいうんじゃないだろうな?」
こっくりと頷く柊さん。
「マジかよ・・・どうすんだ?」
「・・・大丈夫ですよ」
そう言ったのは俺だった。
「あれは、植物の特性は変わってる訳じゃないですから」
「じゃあ、何とかなるんですね?」
神坂さんの問いに頷く俺。
「雄真さんと神坂さん、俺の指示に従ってもらえますか?」
「ああ、分かった・・・で、和志、お前に聞きたいんだが」
「何ですか?」
「・・・すももといつまでそうやってるつもりだ?」
「え?」
よく考えると俺と小日向さんは俺が小日向さんを助けた時の格好―――
つまり、小日向さんを抱きしめるような格好のままでしゃがんでいた。
「あ、ゴ、ゴメン!!」
「わ、わたしこそ」
慌ててお互いに相手から離れる。
「ふ〜ん、なるほどね〜」
この事件の当事者である柊さんがニヤニヤしながら俺達を見ていたような気がした。
「よし、これで終わりですね」
俺の目の前にはすっかり落ち着いた鉢植えがあった。
「兄さんも、姫ちゃんもお疲れ様です」
小日向さんが激励の言葉を2人に投げかける。
鉢植えの植物は熱攻撃に対して、自分の回りに蔦を展開させて防衛するという特性があった。
だから、さっきの雄真さんの魔法を喰らってもまだ、動けたのだ。
そこで、神坂さんに拘束呪文を使ってもらって、蔦を展開しようとした瞬間に、動きを捉えてもらい、
雄真さんの魔法で焼き払って貰うという方法を取った。
「でも、どうして吾妻くん、この植物のことに詳しいんですか?」
「・・・父さんが植物の研究をしていたんだ」
小日向さんの問いに答える俺。
(考えてみれば、植物学者だった父さんとどっちかというと水系の魔法が得意だった母さんは相性良かったのかも知れないな)
「だけど・・・」
俺は立ち上がり、この事件の犯人である柊さんに近寄る。
「柊さん・・・反省してますか?」
「ああ、分かってるわよ〜次からはもうあんなことしないわよ」
だが、その口調からはとても反省しているようには俺には感じられなかった。
「・・・本当に分かってます!?自分のやったことの危険さに!!」
「・・・だから、分かってるわよ!」
だんだん、語気が荒くなってきているのが自分でも分かった。だが、一度言い出すともう止められなかった。
「いいや、あなたは分かってないです!大した怪我人が居なかったから良かったですけど・・・
ここにいる誰かが怪我してたらどうするつもりだったんですか!?」
「あんな魔法で怪我人なんて出る訳無いじゃない!第一・・・
アンタ、普通科の人間でしょう!?魔法の『ま』の字も知らない人間にそんなこと言われたくないわよ!!」
「魔法科だろうと普通科だろうと、危険なものを危険と言って何が悪いんですか!」
「今回はたまたま失敗しただけよ!それに失敗したらまたやり直せばいいじゃない!!」
(その『やり直し』が聞かないことだって世の中にはあるんですよ!!)
だが、その言葉は俺の口からは出なかった。
柊さんの言葉に頭に血が昇ってしまった俺は、思わず手を―――
【ガシッ!!】
だが、俺の手は柊さんに振り下ろされることは無かった。
「和志・・・何でそんなに怒ってるのか知らないが、それは無いと思うぞ」
雄真さんの言葉に俺は我に返る。
小日向さんも、神坂さんも突然怒り出した俺を呆然と見つめていた。
「あ・・・その・・・すいません!!今日は帰ります!!」
俺は自分のカバンを取ると、逃げるように教室を出た。
「待ってよ!吾妻くん!」
わたしは慌てて、廊下に出ました。
だけど、吾妻くんの姿はもうどこにもありませんでした。
「何よ!何なのよ!アイツは〜〜〜!!」
柊さんは怒りながら、近くにあった椅子に座ります。
「だけど・・・杏璃ちゃんも悪いと思うわ」
「何よ〜〜!春姫まで私が悪いって言うの!?」
「・・・この際どっちが悪いかはともかく、和志のあの怒り方は尋常じゃないぞ。すもも。お前は何か知らないのか?」
兄さんの問いにわたしは首を振ります。
その時でした。
「う、う〜ん」
「あ、高溝くんが・・・」
姫ちゃんの声に耳を傾けると、ずっと気絶していたハチさんが目を覚ますところでした。
「お目覚めか?ハチ」
兄さんの声にハチさんはブンブンと頭を振ります。
「雄真・・・それに姫ちゃんに杏璃ちゃんにすももちゃん!?そうか・・・3人とも俺のことが心配で・・・いや〜光栄だな〜」
「ハチ、俺達な、今日お前の従兄弟って奴と知り合ったんだが」
「雄真、サラっと流すな・・・ひょっとして和志のことか?」
「そうだ。で、ちょっと柊と大喧嘩しちまってな・・・お前何か知らないか?」
「・・・ひょっとして魔法絡みでか?」
「そうだけど・・・心当たりあるのか?」
ハチさんは兄さんの問いには答えず、柊さんに向き直ります。
「杏璃ちゃん・・・悪いけどあいつのことは俺の顔に面じて許してやってくんないかな?」
「・・・どういうことよ」
「・・・あいつ、魔法の暴走で両親亡くしてるんだよ」
『!!』
わたし達3人の表情が驚きで固まったような気がしました。
「俺もあんまり詳しくは聞いてないんだけどな・・・」
ハチさんが吾妻くんのことを説明しようとした次の瞬間―――
「和志くん〜ここにいるの?」
準さんがひょっこりと姿を見せました。
「準さん・・・どうしたんですか?」
「和志くんが『Oasis』で忘れ物をしたみたいだから、届けてあげようかと思って」
そう言って準さんは『それ』を私達に見せます。
「あ・・・」
それは、わたしが始めて吾妻くんと出会った時、吾妻くんが哀しそうな顔で見つめていたペンダントでした。
「知ってるの?すももちゃん?」
「は、はい・・・多分、吾妻くんが大切にしているものだと思います」
「そうなんだ・・・でも居ないみたいだし・・・」
「あの、準さん?わたしが届けてきますよ」
「え、でもすももちゃん、和志くんがどこにいったか分かるの?」
「今、出て行ったばかりですから大丈夫ですよ・・・それに」
わたしの心に哀しそうな顔をした和志くんの表情がよぎります。
「早く届けてあげないと大変かなと思って」
「分かった。じゃあお願いね」
わたしは準さんから吾妻くんのペンダントを受け取ります。
「じゃあ、兄さん・・・」
「ああ、早く届けてやれ」
兄さんの声に送られて、わたしは教室を出ます。
「さて、じゃあハチ、お前の知ってることでいいから教えてくれ」
兄さんがそうハチさんに話を促すのがわたしの耳に聞こえました。
わたしは吾妻くんの姿を探しながら、町の中を歩いていました。
そして、自分のしたことを後悔していました。
さっき『Oasis』で吾妻くんにした質問・・・
『・・・吾妻くんは何あげるんですか?お母さんに?』
吾妻くんは何も答えず、ため息を付いただけでした。
(あれは、もうお母さんはいないからあげられないってことだったんですね)
その時に、吾妻くんも気づいていなかったみたいでしたけど、わたしが初めて吾妻くんを見た時と同じ哀しい表情をしていました。
まだ知り合ってから一日も経ってないけど、吾妻くんは普段はとっても明るくて笑顔が似合う男の子です。
その吾妻くんにあんな表情をされると・・・
(わたしも・・・哀しくなっちゃう・・・)
正確には2回目はわたしがそんな表情をさせてしまいました。
(だから、謝って・・・また笑ってもらいたいな)
わたしはそんなことを考えながら、吾妻くんの姿を探しました―――
〜第4話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第3話になります。
今回はどっちかというとシリアスな展開ですね。初登場ヒロインは杏璃です。
・・・出会いが最悪ですが(汗)
雄真の魔法・・・その前の和志とすももの状況考えると、『和志には当たっても・・・』とか思ってる可能性が(笑)
次回こそ和志の過去になります(プロローグ編3話予定が5話ぐらいになる予感)
それでは、失礼します〜
管理人の感想
というわけで、「解かれた魔法 運命の一日」の第3話をお送りしました〜。
今回は前回の話の続きで、魔法が暴発した場所に和志が駆けつけるというところからでしたね。
そして、いつものようにそこには制御に失敗した杏璃と、巻き添えを食らったハチの姿が(笑)
そして杏璃と和志は出会い頭に喧嘩。さらにまた事件が収束してからも喧嘩。
この二人は、かなり相性わるそうですねぇ。和志は杏璃の上から目線にムカっときていたようですし、杏璃の方も生意気な年下って感じでしょうか。
・・・あ、なんかラブってる二人がいる〜(笑)
和志、オイシイなぁ(ニヤニヤ)
さて、次回は和志の悲しい過去。気になる話ですね。
それでは、次をお楽しみに〜^^