『解かれた魔法 運命の一日〜第2話』
投稿者 フォーゲル
「皆さん、ありがとうございました」
俺はそう言って頭を下げる。
結局、本来学園内を案内してくれるはずだったハチ兄が捕まらなかったので、
放課後、小日向さん達に学園を案内してもらった。
最も、小日向さんが張り切って俺を案内しているのを、雄真さんと準さんが付いて来ているという感じだったが。
ミョーに準さんが意味ありげな笑いを浮べているように見えたのは気のせいだろうか?
「いいんですよ〜困った時はお互い様です」
にっこり笑顔の小日向さん。
「ねぇ、和志くん。これからどうするの?」
「え〜とですね・・・借りた本をゆっくり読める場所ってどこかありませんか?」
準さんの質問にさっき図書室で借りた本を掲げながら質問する。
図書室で読めれば良かったんだけど、人が多くてゆっくり読めるような状態では無かった。
「今の時間帯なら・・・『Oasis』なんか狙いどころじゃないのか?」
「でも、兄さん。柊さん目当てのお客さんで混んでるんじゃないですか?」
「杏璃ちゃん、今日は掃除当番だって言ってたから大丈夫じゃない?」
3人はそんな話をしていた。
そんなこともあって俺達4人は学園の敷地内にあるカフェテリア『Oasis』に来ていた。
小日向さん曰く、サンドイッチなどの軽食からカレーライスなどのメインディッシュまで何でもお任せらしい。
3人の読み通り、ちょうどエアポケットな時間帯のせいか人はまばらだった。
俺達は、丸テーブルに陣取る。
「だけど・・・和志くん、魔導書なんて読むんだ」
俺が図書館から借りてきた本を見て準さんが感心したような声を上げる。
「ええ、まあ・・・興味はあるんで」
そう言ってパラパラと魔導書を捲る。
「あれ?でも魔法科に転入した訳じゃないですよね」
小日向さんが不思議そうに聞く。
確かに俺は普通科の生徒ととして瑞穂坂学園に転入して来た。
「俺は、魔法を使えないんですよ・・・母親は結構有名な魔法使いだったらしいんですけどね」
俺の家、『吾妻家』は魔法使いの家系の中でもトップクラスに近い家系だ。
一時期は名門中の名門『式守家』や『御薙家』にも並び称されたほどらしい。
まあ、そのおかげで家には結構貴重な魔導書とかがゴロゴロしていたのだが。
それに興味を持って、こうして魔法の知識だけは増えていったという訳だが・・・
「俺は、魔法の素質は受け継がなかったみたいです」
「・・・まあ、魔法使えなくたって別に生きていけない訳じゃ無いしな」
「そうですよね〜」
雄真さんの言葉に何故だか自分自身と似たような感じを覚えた。
「・・・あれ?」
そのまましばらく、小日向さん達と談笑しながらパラパラと魔導書を読んでいた俺の手の動きが止まる。
「どうしたんですか?吾妻くん」
手の動きが止まった俺を興味深そうに見る小日向さん。
「いや、ちょっと読めないところが・・・」
魔導書というのは、歴史的価値も去ることながら、原文をそのまま唱えないと発動しない魔法などもあるので、
古代文字などをそのまま訳さずにしておく魔導書なども存在するのだが・・・
「このメンバーで誰か読める人います?」
「わたしとすももちゃんは無理よ。そっち方面はサッパリだし。雄真は?」
準さんはこのメンバーで唯一の魔法科所属の雄真さんに話を振る。
「どれ・・・ちょっと貸して見ろ。和志」
雄真さんはしばらく魔導書を見つめていたが、やがて大きくため息をついた。
「ダメだ。俺にも訳わかんねー」
「雄真でもダメなの?」
「あのな、準。俺まだ魔法科に転入して2ヶ月くらいだぞ。呪文の言葉くらいだったらともかく、
古代文字はさすがにわかんねーよ」
「そうですか・・・」
(しょうがない、家に帰ってから辞書でも使って調べるか・・・)
俺がそう考えた時だった。
「雄真く〜ん!ここにいたんだ」
突如掛けられた声に思わず振り向く。
そこには、栗色の髪の一部を三つ編みにして、それをヘアピンでまとめた一人の女の子が立っていた。
「春姫!もう御薙先生の手伝いは終わったのか?」
「うん、『後は一人でも大丈夫だからって・・・」
その女の子はしばらく周りを見ていたようだったが、その視線が俺の所で止まった。
「雄真くんのお友達ですか?」
「いや・・・俺じゃなくてな・・・」
「私のクラスの転校生なんですよ〜姫ちゃん」
小日向さんが俺の紹介をする。
「そうですか・・・神坂春姫と言います。よろしくお願いしますね」
ペコリと頭を下げる神坂さん。
「あっ!ねぇねぇ和志くん。春姫ちゃんだったら読めるんじゃないの?」
準さんが思い出したように声を上げる。
「何ですか?」
神坂さんの言葉に答えるように俺は例の魔導書を取り出す。
「みんな、読めなくて困ってたのよね〜春姫ちゃん・・・読めそう?」
俺の手から魔導書を受け取った神坂さんはしばらく魔導書を眺めていたが・・・
「これなら何とか大丈夫ですよ。ちょっと待って下さいね」
神坂さんは近くから余った椅子を取ってくると、雄真さんの隣に座り翻訳を始めた。
「ふぅっ・・・これでOKですね」
神坂さんは一息付くと、俺に魔導書と翻訳文を渡す。
「それと、一応その魔導書の翻訳に必要な文字の対応表も付けましたから。それがあれば、読めない文字があっても大丈夫だと思いますよ」
「すいません、ありがとうございます」
俺はそれを受け取る。
ザッと見ただけでも、神坂さんの翻訳は正確で、しかも難しい意味の言葉には注釈までしてあるという完璧な仕事だ。
(う〜ん・・・スゴイな・・・)
俺は思わず神坂さんの顔をじっと見つめてしまう。
「あ・・・あの・・・何か付いてますか?」
ジッと見つめられていることに気づいた神坂さんは頬を染めながら俺を見ていた。
「い、いいえ!!何でも無いです」
俺は慌てて神坂さんから視線を逸らす。
「・・・ダメですよ?吾妻くん?」
小日向さんが咎めるような声を上げる。
「ダメって・・・何が?」
「姫ちゃんがカワイイからって見とれてちゃ」
「な・・・べ、別に見とれてた訳じゃ・・・」
反論する俺に小日向さんは言葉を続ける。
「もちろん姫ちゃんは女の子のわたしから見てもカワイイと思うし、吾妻くんが見とれちゃうのも分かりますけど・・・」
「す、すももちゃん・・・そんなことないよ」
ますます赤くなる神坂さんを置きざりにして小日向さんの言葉はさらに続く。
「でも、姫ちゃんは兄さんとお付き合いしてるんですからね」
「あ、そうなんですか?」
俺は雄真さんに話を振る。
「・・・ああ、まあ一応な」
ぶっきらぼうに答える雄真さん。
「そうなのよ〜最近は見てるこっちが呆れるくらいラブラブでね〜」
むしろ準さんの方が積極的に雄真さんと神坂さんのラブラブぶりを教えてくれた。
その後、準さんの口を塞ぐのに雄真さんが悪戦苦闘していたのは言うまでもない。
「だけど、私はすももちゃんの言葉が意外だったな〜」
そんな騒動が一旦収束した後、口を開いたのはやっぱり準さんだった。
「わたしですか?」
「そうよ〜すももちゃんが雄真以外の男の子にあんなこと言うなんて・・・さては・・・」
俺と小日向さんを交互に見ながら、意味深な笑みを浮かべる準さん。
「な・・・何でそうなるんですか!?わ、私はただ・・・」
「『吾妻くんがわたし以外の女の子を見るのはイヤなんです〜』とか?」
「だから、そんなんじゃないですってば〜!・・・吾妻くんも何顔赤くしてるんですか!?」
「えっ・・・俺、顔赤いですか?」
「タコみたいに真っ赤よ〜和志くんもまんざらじゃないみたいね〜」
満面の笑みを浮かべる準さん。
「そ・・・そりゃあ小日向さんは神坂さんに負けないくらいカワイイし、そう思ってくれるのは嬉しいけど・・・」
思わず、素で答えてしまう俺。
「そ、そんなこと思ってないのに〜」
小日向さんはそんなことを言いながら俺から視線を逸らす。
「あら〜随分盛り上がってるのね」
そんな俺達のテーブルに割って入って来た声があった。
「あ、かーさん。悪い。うるさかった?」
(母さん?じゃあ雄真さんと小日向さんのお母さん?)
準さんの攻撃(?)に何かドッと疲れた俺は下を向いていた顔を上げた。
そこには、見た目は小日向さん達と変わらない女性が立っていた。
「雄真さん・・・お母さんなんですか?」
「和志・・・信じられないかも知れんが、一応俺とすもものかーさんだ」
「あら、じゃああなたがすももちゃんのクラスに転校してきたっていう噂の男の子?」
「ついでに、すももちゃんの彼氏みたいですよ〜音羽さん」
「へ〜すももちゃんもやるわね〜さっそく彼のハートをゲットするなんて♪」
「準さん〜!お母さんも一緒になってノらないで下さい〜」
俺よりも精神的に疲れていた小日向さんがようやく反論する。
「まあまあ、すももちゃん。そんなに怒らないで〜今日はすももちゃんの好きなものサービスしてあげるから〜」
「まったく・・・しょうがないですね。お母さんは」
小日向さんを宥めた音羽さんは俺に向き直る。
「では、改めて・・・小日向 音羽で〜す。このカフェテリア『Oasis』のチーフやってま〜す。よろしくね」
年長者とは思えない軽いノリで挨拶してくる。
「あ、吾妻 和志です。よろしくお願いします」
「『吾妻?』」
俺の苗字を聞いた音羽さんはしばらく考えた後、俺の顔をジッと覗き込むように見る。
「ひょっとして・・・お母さんの名前は『玲香』(れいか)っていうんじゃない?」
「え?は、はい。確かに俺の母の名前は玲香ですけど・・・」
「じゃあ、やっぱり『玲香ちゃん』の息子さん?」
「あれ?お母さん、吾妻くんと知り合いなの?」
俺と同じ疑問を小日向さんも口にする。
「和志くんとじゃなくて、お母さんとだけどね。学生時代の大親友だったのよ」
そういえば、母さんのアルバムの中に学生時代の写真があったけど、その中によく母さんとよく写ってる人物が2人いたが・・・
そのうちの一人が音羽さんとよく似ていたな。
(というか音羽さんはほとんど変わってない・・・)
俺がそんな苦笑を浮かべてると、不意に音羽さんは俺の頭を撫でた。
「そう・・・あなたが玲香ちゃんの息子・・・」
音羽さんは優しく俺の頭を撫でる。
その優しさと寂しさが混じったような表情を見た時、俺は思った。
(音羽さんはひょっとして・・・母さんが亡くなったことを・・・)
俺がそんなことを考えてると音羽さんは俺の頭から手を放して、話し始めた。
「懐かしいな〜私と玲香ちゃんと鈴莉ちゃんは『瑞穂坂の三人娘』って言われて結構モテてたのよ」
「へ〜そうなんですか・・・ちなみに誰が一番モテたんですか?」
準さんが興味津々という感じで聞いてくる。
「や〜ね。準ちゃん。もちろん私に決まってるじゃない」
「いや、それはちょっとウソくさい・・・」
「ゆ〜う〜ま〜く〜ん?聞き捨てならないわよ〜・・・あ、雄真くんとしては鈴莉ちゃんが一番モテたほうが良かった?」
「い、いやそんなことは・・・」
そんなことを言いながら音羽さんは、学生時代の思い出話をしてくれた。
俺としては学生時代の母さんがこの瑞穂坂学園でどんな生活を送ってたのを知ることが出来たのが嬉しかった―――
「う〜ん、混んで来たかしら」
音羽さんが思い出話を話終わった時『Oasis』には大分お客さんが入って来ていた。
「かーさん、もうそろそろ行かなくてもいいのか?」
「あ〜そうね。杏璃ちゃんもそろそろ来るだろうし。じゃあみんなはゆっくりしててね」
そう言うと音羽さんはバタバタとキッチンに戻っていった。
「面白い人ですね〜」
「お母さんは面白いこと命の人ですから・・・」
「そのためだったら、俺やすももでも容赦なくネタにするからな・・・お前も油断してるとターゲットになるかも知れんぞ」
「気を付けます」
俺達がそんな話をしてると、不意に小日向さんが思いついたように言う。
「そう言えば・・・兄さん、考えました?」
「何を?」
「もうすぐ母の日じゃないですか〜お母さんに上げるプレゼント、何にするかですよ」
「ああ、そうか・・・もうそんな季節か」
少し考え込むような表情になる雄真さん。
「と言ってもな・・・あのかーさんだから毎年変わったものをあげようとは思うんだけど、さすがにネタ切れ気味だ・・・」
「ですよね〜」
兄妹揃って考え込む2人。
「・・・吾妻くんは何あげるんですか?お母さんに?」
小日向さんは俺に話を振る。
「俺?俺は・・・」
俺は考え込む―――いや、正確には考え込むフリをした。
(何あげてももう喜んでるのか、不満なのかも分からないしな・・・)
俺は心の中で深くため息をついた。
「・・・どうしたの?小日向さん?」
ふと、気が付くと小日向さんが何故か心配そうな眼差しで俺を見ていた。
「あ、い、いえ・・・何でもないです、何でも・・・」
俺が不思議に思いながら、首を傾げたその時・・・
【ドカーン!!】
不意に爆発音が響いた。
「な、何だ!?」
雄真さんが『Oasis』の外に出たのを見て俺達も外に出た。
見ると、普通科校舎の教室から煙が立ち昇っていた。
「雄真くん、あれって私達のクラスじゃない?」
「そうだな・・・つーことは・・・」
「また、杏璃ちゃんが魔法の制御を失敗したのかしら?」
―――魔法の制御の失敗―――
その言葉を聞いたとたん俺の体は普通科の校舎に向かって走っていた。
「吾妻くん!?」
俺の行動に驚いた小日向さんが慌てて俺の後に付いて来る。
さらにその後を雄真さんと神坂さんが付いてくるのが分かった―――
〜第3話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。
PCの故障でほぼ一ヶ月振りの更新になります。楽しみにしてた方にはまずお詫び申し上げたいと思います。
さて、内容についてですが・・・この話に関しては影の主役は準じゃないのかと(笑)
準(と音羽)にしてみれば、雄真と春姫に続くネタにしやすいカップル候補発見って感じか?(笑)
>「そ・・・そりゃあ小日向さんは神坂さんに負けないくらいカワイイし、そう思って(自分を好きになって)くれるのは嬉しいけど・・・」
いきなりこう思ってしまうあたり『和志はハチの従兄弟なんだなあ』とか思ってくれると嬉しいです。
それとこのSSでは音羽と鈴莉も瑞穂坂学園の卒業生という設定です。
次回は和志の過去が明かされる(?)予定です。
それでは、失礼します〜
管理人の感想
PCのクラッシュから見事に復活を遂げてくれたフォーゲルさんのはぴねす!SS。皆様いかがでしたでしょうか?
やっぱりすももが中心で物語が進んでいるって感じですね。初登場は春姫に音羽。
・・・あれ?従兄であるはずのハチが見あたらな(ry
さてさて、魔力の制御の失敗という言葉を聞き、一目散に駆け出す和志。
・・・まあ行動の理由はなんとなく分かっちゃいましたが^^;
それより杏璃が無事なのかどうかが心配(笑)
それでは、次の話も期待しましょ〜^^