『解かれた魔法 運命の一日』〜第24話〜





                                     投稿者 フォーゲル





  『フォル・デクレスト』
 俺はトラップ解除の魔法を唱える。
 それと同時にすももの身体を捕らえていた魔法が消えた。
 「はぁ〜痛かったです・・・」
 その場に腰を下ろしながら言うすもも。
 そんなすももに俺は問い掛ける。
 「すもも、何でお前がこんなところに居るんだ?」
 まさか『俺の魔法が効かなかったのか?』とは聞けず、それは伏せたままですももに聞く。
 「あ、うん・・・わたし、おトイレに行ってたんですよ。済ませて部屋に戻ろうと思ったら、
  魔法服に着替えた和志くんが出て行くのが見えたから、『こんな時間にどこに行くのかな〜』って思いまして・・・」
 「な、なるほど・・・」
 (たまたま、魔法の有効範囲から外れてたんだな・・・)
 「だけど・・・どうしようか・・・」
 『どうするもこうするも・・・一緒に着いて来てもらうしか無いんじゃない?』
 俺の言葉に割り込んだのは、レイアだった。
 「そう簡単に言うけどな、さすがにすももを連れて行くのは気が引けるんだけど・・・」
 『だけど、ここまで着いて来ちゃった以上、しょうがないんじゃない?』
 「でも、危険かも知れないんだぞ?」
 『だからって、この真っ暗な山の中をすももちゃん一人に旅館まで戻ってもらう方がよっぽど危険よ?
  かと行って旅館に送ってから、また来るなんてやってたら確実に朝になっちゃうわよ』
 「そうだけど・・・」
 「あの〜・・・」
 俺とレイアとの会話にすももが割って入る。
 「そもそも、和志くん達は一体どこに行こうとしてたんですか?」
 すももの疑問は最もだった。
 俺は話すかどうか迷ったが、結局嘘をついてもしょうがないということで俺は素直に話すことにした。
 「俺の住んでた家だよ」
 「!!」
 俺の言葉にすももの表情が硬くなった。
 「そう、すももの想像通り・・・俺が魔法の暴走に巻き込まれた場所だ」
 俺はため息を付きながら言う。
 「正直、俺もこの場所に来ることは二度と無いと思ってたし、姉ちゃんがすももの誘いを断ったのも、その時のことを
 思い出したくなかったからかもな」
 「じゃあ、何で和志くんは来る気になったんですか?」
 「一ヶ月くらい前から、俺の夢の中に母さんが出てくるようになったんだ」
 思い出しながら俺は話す。
 「夢の中の母さんは何故か、俺に何か言いたいことと言うか伝えたいことがあるみたいに俺に呼びかけるんだ。
  そんな時にすももからの誘いがあって・・・これは本当に何かあるんじゃないかと思ってな」
 俺の言葉をすももは黙って聞いていた。
 「でも、これは俺の個人的な問題だし、危険もあるかも分からない。だから夜、みんなが寝静まった後に、
  こっそり出かけることにしたんだ」
 「そういう事情ですか・・・じゃあ」
 すももはそこで、言葉を切り俺の顔を見つめる。
 「わたしも一緒に行きます」
 (やっぱり・・・) 
 俺は心の中でそう呟いた。
 「和志くんだけそんな危険な場所に一人だけ行かせる訳には行きません」
 そう言うすももの瞳には強い意志が感じられた。
 『和志の負けね』
 レイアが諦めたように言った。
 『ここで下手に追い返して、こっそり付いてこられるよりは、そばに居て貰った方が和志としても守りやすいでしょ』
 「・・・だな。すもも、俺から離れないって約束出来るか?」
 「は、はい!!」
 「分かった。じゃあ付いて来い」
 俺はそう言ってすももに手を伸ばす。
 すももは俺の手をしっかりと握った。





  “ガサ・・・ガサ・・・”
 ほとんど獣道になっている山道を俺とすももは進んでいく。
 「だけど、和志くん達って本当に山の中に住んでたんですね」
 息を付きながら言うすもも。
 「父さんの研究のこともあってな・・・自然の多い場所に住んでたんだ」
 「お父さんの研究ですか?」
 「父さんは植物学者でな、『魔法植物学』っていうジャンルを研究してたんだ。学生時代から興味を持ってたらしくて・・・
  母さんと知り合ったのもそれがきっかけだったらしい」
 「そうなんですか?でも和志くんのお父さんってことは・・・ハチさんの叔父さんってことですよね」
 「そうなるな」
 「ハチさんのイメージと『学者さん』ってのがイメージとして結びつかないんですけど・・・」
 「まあ、確かにな・・・」
 俺は苦笑しながら言う。
 「でも疑問に思ってたんですけど、和志くんってそんな辛い想いをしている割にはあんまり魔法に関して悪いイメージを持ってないですよね?」
 すももが小首を傾げながら言う。
 「わたしは兄さんを見てるんで、不思議だな〜って思ってたんですけど」
 雄真さんは魔法に関してトラウマ持ってたんだったな・・・そういえば。
 「俺は魔法に関しては嬉しいことも経験してるからな」
 「嬉しいことってなんですか?」
 「い、いや・・べ、別にいいだろ?」
 「あ〜何か言えないことなんですか?」
 笑いながら言うすもも。
 (言えるか・・・女の子絡みなんて)
 もちろん10年も前のことだし、今関係あることでも無いんだが・・・やっぱり照れるぞ。
 その女の子とは事故の影響もあってその後会えてないけど。
 見栄張ってその娘に『僕は魔法使えるんだよ』って言っちゃって・・・
 何とか次の日に見せてあげるってことにしたんだった。
 それを聞いた時のその娘の笑顔が妙に印象に残って・・・
 (よく考えるとあの事故の前に魔法の練習していたのは、その娘にいいとこ見せたいってのもあったのかもな)
 多分、今にして思えばあれが俺の初恋だったのかも・・・
 「・・・くん!和志くん!!」
 「えっ?あ、ああ・・・どうしたんだ?すもも?」
 過去の思い出に浸っていた俺をすももの声が現実に引き戻す。
 「ひょっとして・・・アレですか?」
 すももが指差すその先―――
 俺の目は黒々とした建物を捉えていた。





  その建物は10年前で時が止まっているかのようだった。
 外見上はあんまりボロボロになっていないが、これは魔法の暴走が地下で起こったせいだろう。
 庭には父さんが研究していた植物が枯れた状態で残っていた。
 10年経っても朽ち果てていないのは、母さんの掛けた魔法の影響だろう。
 (父さんの研究に母さんが協力してたんだな)
 『いつか、和志くんと渚ちゃんが大人になった時に、この花が地球上に咲き乱れているといいな』
 母さんが優しい笑顔でそんなことを言っていたのを思い出す。
 その花は可能性次第では地球環境を改善させるほどの効果を持っているらしい。
 それを横目に見ながら、俺は家の前のドアに近づく。
 「ねぇねぇ・・・和志くん」
 家の中に入ろうとした瞬間、すももが俺に話し掛ける。
 「何だ?」
 「あそこに誰か居ませんか?」
 「えっ?」
 俺は必死ですももの指差す二階の窓を見る。
 だが、俺の目には何も写らなかった。
 「誰も居ないぞ?」
 「え〜、でも今白っぽい人影が見えたんですよ?」
 「・・・」
 すももの言うことを信じてない訳じゃないが・・・
 (警戒した方がいいな・・・)
 「すもも、行くぞ」
 「あ、は、はい!」
 すももが俺の近くに走りよって来るのを確認してから俺はドアを開けた。
 



  “ピチョン・・・ピチョン”
 地下に続く道を歩きながら、俺は警戒を強めていた。
 10年振りに入った家の中は予想通りにボロボロだった。
 そんな家の中で俺は確実に『何者かがいる気配』を感じていた。
 事故現場の―――地下室から。
 俺はすももの手を引きながらその地下室に向っていた。
 だんだん、周囲に嫌な感じが満ち満ちていく。
 すももの俺の手を握る力がだんだん強くなっていく。
 そして、俺達は地下室の最深部―――事故現場に辿り付いた。
 「・・・やっぱりだ、ここで『青龍』が暴れた可能性が高いな」
 その場には一人の若い男がいた。
 長く伸びた赤い髪、たくましく鍛え上げられた肉体。数々の修羅場を経験している―――そんな感じがした。
 『ラグド・フェルス・シランデ・ヴァイズ!!』
 いきなりその男が、俺達の方に向って攻撃呪文を放つ。
 その魔法は俺達が隠れていた岩を破壊し―――
 『ウェル・シンティア・レイ・フェニス・ダグ・ヴェルンド!』
 俺がすももを抱き寄せながら展開した防御魔法に防がれた。
 「お前・・・何者だ?」
 その男が俺を見据えて言い放つ。
 「そっちこそ・・・こんなところで何やってるんだ?」
 「お前には関係ない・・・とっとと消えたら見逃してやる」
 「あいにくと、そういう訳には行かないんだよ」
 その男は俺の顔をマジマジと見つめ―――
 「そうか、貴様が―――」
 その男はそんなことを呟くと、虚空に手をかざした。
 『ラグディーン!!』
 その声に答えて蔦が杖全体に絡みついたようなマジックワンドが出現した。
 男の手にマジックワンドが握られたその瞬間―――

  “ズグンッ”

 目の前の男の雰囲気が急に変わった。
 瞳が金色に輝き、それと同時にその男の魔力が急激に膨れ上がったのが分かった。
 『ラグド・フェルス・ディ・ケルス・ジ・グラディード!』
 “ズシッ”
 俺の身体が急に重くなりそのまま地面に叩き付けられる。
 「和志くん!?」
 すももの言葉を気にもせずに、その男は自分のマジックワンドと会話を始める。
 『柾影、ひょっとしてこいつか?』
 「ああ、おそらくは間違い無い」
 その男は地面に這いつくばっている俺を見ながら、口を開く。
 「さあ、どうだ、『力』を解放して見せろ」
 「なんの・・・ことだ・・・」
 俺はとぎれとぎれながら言葉を紡ぐ。
 「しらばっくれるつもりか・・・まあいい」
 柾影と呼ばれた男はそれを見ながら視線を―――俺に寄り添っているすももに向けた。
 「そういえば、前に『青龍』が暴れた時も、『自分以外の誰か』が危険にさらされた時に発動したらしいな」
 柾影はマジックワンドをすももに向ける。
 「や、やめろ・・・」
 「やめて欲しかったら力づくで止めることだな」
 マジックワンドの先に魔力の光が宿る。
 そして―――
 魔法が放たれるのと、俺がその柾影の魔法を無理矢理破るのと、そして―――すももの姿が消えたのは同時だった。
 

 無我夢中だった。
 俺は自分の動きを封じていた魔法を破ると、そのまま右手に溜まっていた暴発しそうな魔力を柾影に向けて放つ!!
 魔法としての構成も、統制もされていない純粋な魔力―――
 それが柾影に向って収束する!!
 「ぐぉぉぉぉぉ!!」
 柾影はそれを全力でガードし、耐え切った。
 「な、なるほど、な・・・これで確信した」
 そんなことを呟いた後、ボロボロになった身体を引きずりながら、口の中で呪文を唱え―――
 柾影は姿を消した。
 だが、俺にはそんなことはどうでも良かった。
 (すもも・・・すももはどこに行った?)
 そんなことを考えながら俺の意識は闇に落ちていく。
 『和志!大丈夫よ!すももちゃんは転移魔法で―――』
 最後に聞こえたのはレイアのそんな声だった―――





  気がついた時、わたしは暗い部屋の中にいました。
 (???)
 わたしはさっきまで目の前で展開されていた光景を思い出します。
 男の人が和志くんに会話しながら、魔法の杖―――マジックワンドを私に向けました。
 それを見た和志くんが魔法を無理矢理破って―――
 「・・・和志くん!?」
 わたしは慌てて立ち上がろうとして―――
 “コツン”
 自分の膝に何か当たるのを感じます。
 わたしの足元に一冊の本がありました。
 かなり分厚い本です。
 わたしはそれを手に取り、ページを捲ります。
 中には写真が一杯ありました。
 その中には―――
 (和志くん?)
 和志くんと渚さんに良く似た子供が写っていました。
 (これ・・・和志くんのアルバム?じゃあ・・・)
 わたしはその写真の中で、和志くんの肩を抱きながら笑顔を浮べる、和志くんによく似た女性を見ていました。
 (この人が・・・和志くんの亡くなった―――)
 『大丈夫かしら?』
 不意に声が聞こえて来て、わたしは思わずそちらを振り向きます。
 白っぽい姿をした優しそうな女性です。
 その女性は写真の中と全く変わらない印象でした―――




                        〜第25話に続く〜


                 こんばんわ〜フォーゲルです。第24話になります〜

                  今回はほとんどシリアスな流れになりました。

         和志が魔法で辛い目にあっても雄真ほどにはトラウマになっていない理由も書いてみました。

                   和志の過去に纏わる場所。柾影との邂逅。

                 そして、攻撃されそうになったすももを救ったのは―――

                様々な謎を残しつつ、次回を楽しみにして頂けると嬉しいです。

                       それでは、失礼します〜


管理人の感想

24話をお届け致しました〜^^

結局すももが睡眠の魔法に掛かっていなかったのは、単にトイレに行っていたからという話でしたが・・・もしかしたら別の要素もあるのかもしれませんね。

そしてすももを引き連れて自宅へ・・・というと何だか怪しげな響きになってしまいますが(笑)

しかしそこに待っていたのは、伏線にも度々登場するあの男。

すももに向けられた魔力に、和志の「青龍」が遂に目覚めたのか?

そしてすももが出会ったのは、やはり和志母のゴーストなのか?(爆)

・・・ってことで次回をお楽しみに。



2008.2.29