『解かれた魔法 運命の一日』〜第23話〜
投稿者 フォーゲル
海に夕陽が沈んでいく。
その風景を眺めながら、俺は雄真さん達と後片付けをしていた。
「楽しかったですね」
「俺はあんまり楽しく無かったぞ」
グチりながら言うハチ兄。
「それはハチが悪いんだろうが・・・女の子に声掛けまくってことごとく全滅してるんだからな」
呆れながら言う雄真さん。
「ムガ――!!お前は姫ちゃんという可愛い彼女がいるからいいだろうが!!
俺は『数打ちゃ当たる』という方法を実践するしかねえんだよ!」
確かに柊さん達はハチ兄のことはことごとくスルーしていたしな・・・
「それがダメなんだと思うんだけど・・・」
俺もため息付きながら言う。
「お前もそんなこと言いながら、すももちゃんといい感じだったじゃねーか」
「い、いやそんなことは・・・師匠も一緒だったし」
すももの足の怪我を直した後、俺達は師匠も交えて3人で遊んでいた。
ハチ兄の言葉に、雄真さんの視線を気にしながら何とか反論する俺。
「あのな、和志・・・そうやって俺の視線を気にするのはやめてくれるか?」
「いや、だって・・・ねぇ?」
俺は思わずハチ兄の顔を見た。ハチ兄もそれに合わせて苦笑いを浮かべる。
「お前ら・・・一体人を何だと思ってるんだ?」
雄真さんが怒りの声を上げたその時―――
「はい、はい、雄真くん。和志くんをイジメるんじゃないの」
音羽さんが笑いながら俺達に声を掛ける。
「かーさん・・・人聞きの悪いことを言わないでくれるか?」
「そうかしら?すももちゃんを和志くんに取られそうで寂しいんじゃないの?」
(えっ?そ、それってどういう意味だ?)
俺の疑問をよそに音羽さんは話を続ける。
「だ、誰も寂しくなんかねーよ」
「無理しちゃって♪」
「だから・・・」
「あ、あの音羽さん、俺達に何か用ですか?」
からかいモードに入り始めた音羽さんに俺は話掛ける。
「あ、そうそう。そのすももちゃんなんだけど・・・さっきから姿が見えないのよ。雄真くん達は知らない?」
「いや、俺達は見てないぞ・・・伊吹と一緒じゃないのか?」
「伊吹ちゃんも見てないらしいのよ・・・どこ行ったのかしら?荷物は置いてあるからそんな遠くには行ってないと思うんだけど」
腕を組んで考え込む音羽さん。
「あっ、そうだ」
音羽さんが何かを思いついたように口を開く。
「和志くん、探してきてくれない?」
「俺ですか?雄真さんの方が・・・」
「そうしたいところなんだけどね〜雄真くんと八輔くんにはバーベキューの準備を手伝って貰おうかと思ってるのよ〜だから、ねっ!」
俺の目の前で手を合わせてお願いする音羽さん。
「はあ・・・そういうことなら」
「よし、じゃあ決まりね」
そう言うやいなや音羽さんは雄真さんとハチ兄を促す。
「じゃあ、和志くん。よろしくね」
そう言って音羽さんは2人を連れて行った。
(しかし、本当にどこ行ったんだ?)
俺はほとんど人が居なくなった浜辺をすももの姿を探しながら歩いていた。
音羽さんが去り際に俺に意味深なウインクしたのも気になるし。
(音羽さん・・・何か勘違いしてるんじゃ・・・)
俺はそんなことを考えながら歩いていたその時―――
(あ、いた・・・)
浜辺のある場所にすももは立っていた。
(あれは・・・)
すももはどこか寂しそうな表情を浮かべながら、手に持ったペンダントを眺めていた。
「さすがに水着だと寒くないか?」
俺はそう言いながら持って来たパーカーをそっとすももに掛ける。
「あ、和志くん・・・」
言うその声にもさっきまでの元気は無い。
「どうしたんだよ・・・ひょっとしてそのペンダントに関係あるのか?」
確か、そのペンダントはすももが昔知り合った友達との思い出になるはずだったもののはずだけど・・・
しばらく考えた後、すももはコックリと頷いた。
「・・・わたしは、子供の頃、泣き虫だったんですよね」
すももはポツリ、ポツリと子供の頃の話を始めた。
俺はそれに黙って耳を傾ける。
「そのせいで、いつも兄さんや姫ちゃんに助けられてたんですけど・・・わたしはそんな自分が嫌いだったんです」
どこか遠い目をしながら言うすもも。
その言葉は俺にとっては意外だった。
いつも明るくて元気で誰からも好かれているすももが子供の頃は自分のことをそんな風に思ってたなんて・・・
「そんな時に、この浜辺で『あの男の子』に会ったんです」
「・・・男の子なんだ」
何故かそんなことを俺はすももに聞いていた。
「そうなんですよ。その男の子は何故か知りませんけど、泣いてたんです」
すももが言葉を続ける。
「わたし、その男の子のことが放っとけなくて、気が付くとその男の子の頭を撫でてたんです。そしたら・・・」
「そしたら?」
「その男の子が、笑ってくれたんです」
その時のことを思い出したのかすももの顔には笑みが浮んでいた。
「その時に思ったんです。『こんなわたしでも誰かを笑顔にすることが出来るんだ』って。
そう思ったら嫌いだった自分のことをだんだん好きになれたんです」
そこまで言ってすももは笑った。
「だから、あの男の子はわたしにとって恩人でもあるんですよ。その時にした約束が・・・」
「前に俺に話してくれた『ペンダントの思い出』か?」
「そうなんですよ。今年も会えそうには無いですけど」
すももはそう言って俯いた。
「・・・記憶を掘り起こせば何とかなるかも」
気が付くと俺はそんな言葉を口走っていた。
「えっ?・・・どういうことですか?」
すももが俺に問い掛ける。
「この浜辺にはその昔、『記憶を呼び覚ます魔法の石』があったんだよ。確か名前は『アルカンシェル』とか言ったかな?
その石を使ってすもものその時の記憶を呼び覚ませば・・・」
「その男の子のことが何か分かるかも知れないってことですか?」
「最も・・・昔のことだからな。今もこの場所にあるかどうか・・・」
アレは確か、かなり貴重な魔力を帯びていたはずだから、採掘されまくったという話を聞いている。
「そうですか・・・でも探してみる価値はありますよね」
「そうだな・・・明日一日時間あるから、探して見るか?」
「やってみましょう!」
笑顔を見せながら言うすもも。その笑顔に何故か俺の心がチクリと痛んだ。
「でも・・・和志くん。何でこの海岸についてそんなこと知ってるんですか?ガイドブックにもそんなこと書いてませんでしたよ?」
「えっ?い、いや、本で読んだことがあるんだよ」
慌てて釈明する俺。
「ふ〜ん・・・そうですか・・・」
何か釈然としない表情を浮かべながらも、とりあえずすももはそれ以上聞いてこなかった。
(ふう、とりあえずは誤魔化したか・・・すももには俺がこの旅行に来た『もう一つの目的』を知られない方がいいしな)
俺はそんなことを考えながら、海岸から見える岬を眺めていた―――
“カラカラカラ・・・”
俺はお風呂場の引き戸を開けて浴槽に向う。
日焼けしかけた肌にお湯の感触がピリピリと痛い。
(でも、気持ち良いな〜〜〜)
俺はゆっくり上空に見える星空を眺める。
ここの旅館名物の露天風呂に漬かりながら上空を見ていた。
(しかし、ハチ兄もお約束なことをやってるんじゃないよって話だな〜)
俺は温泉に来る前の情景を思い出し笑みが漏れた。
ハチ兄は女湯を覗こうとして見つかり、柊さん達に魔法で攻撃されて真っ黒コゲにされていた。
(それでも満足そうな表情をしていたから、本人的には良かったのかも知れないが)
俺がそんなことを考えてると・・・
湯気の向こうに何かが見えた。
(?)
俺が疑問に思いながら近づくと―――
長い紫色の髪の毛が見えた。
(―――って女の人!?)
俺は慌てて距離を取る。
(な、何で!?俺確かに男湯から入ったよな!?)
混乱しまくりながら、俺はバレないようにそっと出口に向う。
「ちょっと!」
(ギクッ!?)
お、終わった―――
俺はそんなことを考えながら、ギギギッと声の方に首を向けた。
「逃げなくても大丈夫よ、和志くん?」
(えっ・・・この声は・・・)
「じ、準さんですか〜ビックリさせないでくださいよ」
必要ないだろうにきっちり胸のところでタオルを巻いた準さんが笑っていた。
「で、和志くん。それでどうだったの?」
「何がですか?」
俺の隣に移動しながら(男だと分かっていてもドキドキするな)準さんは俺に問い掛ける。
「トボけるんじゃないわよ〜すももちゃんと2人きりで何かあったんでしょ?」
「何も無いですよ・・・少なくとも準さんが期待しているようなことは」
まあ、すももの意外な一面を知ることが出来たけど・・・
「はあ・・・せっかく音羽さんがチャンス作って上げたのに、和志くんも・・・」
何やらブツブツと呟く準さん。
「どうしたんですか?準さん?」
「何でもないわよ」
俺達はそんなことを考えながら俺達はしばらく温泉に入っていた。
どれくらいの時間が経ったのだろうか?
遠くから聞き覚えのある声が聞こえて来た。
『う〜ん、熱いですね。慣れるまで時間掛かりますよ?姫ちゃん?』
『火傷しないようにゆっくり入ろう?すももちゃん』
・・・すももと神坂さん!?
「あら?2人共来たのね〜」
あっけらかんと言う準さん。
「いや、のんびりしているじゃないですって!?出ましょう?」
「大丈夫よ、今、この時間帯は混浴になってるから」
「そうなんですか?」
「そうよ。最も、脱衣所は男女別だから気が付いてないでしょうけど」
準さんの言葉に安堵する俺。
この温泉はかなり広いからよっぽど近づかないと気が付かないだろうけど・・・
それでも、緊張するな・・・
遠くからすももと神坂さんの会話が聞こえて来る。
『どうしたの?すももちゃん?』
『う〜・・・姫ちゃんのオッパイ、やっぱり大きいです』
『そ、そんなことないよ・・・』
『それに・・・すごく柔らかいです』
『す、すももちゃん・・・そこはダメ・・・』
・・・どうやらすももが神坂さんの胸を揉んでいるらしい。
(というか誰かに聞かれているという可能性を考慮してくれ)
2人は聞いてるこっちが顔真っ赤にするような会話をしていた。
どうも2人とも今自分達しかいないと思っているらしい。
「和志くんには刺激が強すぎるかしら?」
笑いをかみ殺しながら準さんが言う。
そんなこんなですももと神坂さんの会話は違う話題に移っていた。
『はぁ・・・わたしも姫ちゃんみたいにスタイル良ければな〜』
『そんなこと言って。すももちゃんは『好きな人』に「そのままでいいよ」って言って貰えればそれでいいんでしょ?』
『はい、そうなんですけど・・・アピールはしてるんですよ。でもなかなか・・・』
すももと神坂さんの会話は俺の耳には入って来なかった。
(すももに好きな人が・・・)
俺の頭の中で、その言葉がグルグルと回っていた。
温泉から上がっても俺はまんじりとしていた。
理由は分かっている。
すももに好きな人がいると言う発言に関してだ。
いや、もちろんすももだって年頃の女の子なんだから好きな人の一人や二人いてもおかしくないのだが・・・
その言葉に自分が少なからずショックを受けているという事実が俺にとっての驚きだった。
(これは・・・ひょっとして・・・)
俺がすももに対する自分の考えを纏めていると―――
『・・・志!和志!』
自分の名を呼ぶ声に俺は反応する。
「レイアか・・・どうしたんだ?」
「『どうしたんだ?』じゃないわよ。これから『あの場所』に行こうっていうのに・・・本当に大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ」
ひとまず、すもものことは頭の隅に追いやって、『魔法服を着た』俺は立ち上がる。
「時間は?」
「日付が変わるくらいね・・・朝までには調査が終わるでしょう」
「分かった・・・とその前に」
俺は床に手を付き呪文を唱える。
『ウェル・シンティア・ラス・モニスル』
手から魔法が波紋のように広がっていく。
俺が今唱えたのは眠りの魔法。
これで、この部屋で寝ている雄真さんとハチ兄。隣で寝ているすもも達女性陣は朝まで目が覚めないはずだ。
「よし・・・行くぞ」
俺はレイアを手に取ると、そっと部屋を出た。
“ホウ、ホウ・・・”
昼間遊んだ浜辺とは逆方向、山の中に入って俺は目的地に向っていた。
何が起きるか分からないので慎重に進んだ。
しかし・・・
「付けられているわね」
レイアが呟いたのは山の中に入ってしばらく立った時だった。
「・・・強そうか?」
「いいえ。というか魔法使いにしては魔力の反応が凄く小さいわね」
「ここは・・・」
「ええ・・・」
俺達は打ち合わせるとしばらく進んで、物陰に身を隠した。
そして、トラップ魔法を仕掛ける。
しばらくしてその気配がだんだん近づいて来る。
そして―――
“バチィ!!”
トラップ魔法の発動音と―――
「キャッ!!」
聞いたことのある悲鳴が聞こえて来た。
(・・・!?)
俺は慌てて飛び出しその気配の持ち主―――
「か、和志く〜ん・・・」
トラップ魔法に引っかかったすももの姿を呆然と見ていた―――
〜第24話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第23話になります。
今回の見所は中盤のすももの独白ですかね。
性格的にこういうことも考えたこともあるんじゃないかなと思って書きました。
そして、すももに好きな人がいることを知ってモヤモヤする和志。
さらに、雄真達を魔法使って眠らせてまで単独行動しなけばならない理由は?
すももは何故付いて来た(付いて来れた)のかなどにも注目してくれると嬉しいです。
それでは、失礼します〜
管理人の感想
海水浴編(?)、夕方から夜に掛けてって感じでしたね。
すももの想いと和志の想い・・・今回はそれらが中心の話でした。
幼い頃の記憶。すももはその思い出の男の子に勇気を貰い、また和志にとっては両親を失った悲しいもの。
和志はその思い出の男の子に対して軽く嫉妬しているご様子。さらに風呂場で聞こえてきたすももの「好きな人」に対してもそれは同様で・・・。
ここにきてようやく、和志もおぼろげながら自分の気持ちに気付き始めたようですね。もっとも、すももの想いに気づくのはまだまだ先の話でしょうが。
そして真夜中になり行動を起こす和志。眠りの魔法をかけたはずなのに、なぜかすももは付いて来ていて・・・。
何故魔法に掛かっていないのでしょうか?・・・メインヒロインだから?(ぇ
ではでは〜