『解かれた魔法 運命の一日』〜第22話〜




                                      


                                     投稿者 フォーゲル





  俺は、『あいつ』から呼び出しをくらい、京都郊外の山荘に来ていた。
 京都は古くからの歴史の街、関西の魔法連盟の本部もここにある。
 表立って動けないのは、俺達の動きを藤林家に悟られないためにだ。
 『あいつ』の計画がうまくいけば、こんなコソコソとしなくても良くなるのだが・・・
 “バタン”
 ドアが開いて、一人の女性が入って来る。
 「もう来ていたの?義人?」
 「ああ、早めに来ておいた方がいいかと思ってな。お前も同じことを考えて来たんだろ?綾乃?」
 俺と同じ風流四家の一員で、仕事上のパートナーでもある、扇花(せんか)綾乃はそう告げた。
 「それもあるけど・・・いろいろと報告することもあるから」
 「ほう・・・では、早速聞こうか?綾乃?」
 唐突に、本当に全く唐突にその場に魔力反応が出現した。
 俺がその方向に目をやると、若い男がその場に立っている。
 長く伸びた赤い髪、たくましく鍛え上げられた肉体。手には蔦のようなものが絡みついたマジックワンド。
 そして何よりも特徴的なのは―――
 「分かったわ、柾影(まさかげ)」
 名を呼ばれて、『あいつ』―――柾影がこちらを向く。
 俺はその瞳を見つめ、萎縮した。
 金色に輝くその瞳は見るもの全てを圧倒するほどの存在感に満ちていた。
 俺も、綾乃も失踪して行方不明だった柾影と再会した時にはビビッてしまうほどだった。
 「どうなのだ?四神家(しじんけ)の連中の覚醒具合は?」
 「この間、四神家の後継者が集まっている瑞穂坂学園に義人と侵入したんだけど・・・
  完全に四神の力を覚醒した状態で受け継いでいるのは、『玄武』の力を受け継いでいる高峰家だけね」
 「あの、予知の力を極めし一族か・・・」
 「他の三つ―――『青龍』『朱雀』『白虎』は四神は受け継がれているけど、宝珠は前の当主がまだ持っていたり、
  行方知れずだったりで完全には継承されていないわ」
 「そうか・・・『計画』のためには四神と宝珠を揃えて完全な状態にして貰わないと困るのでな」
 薄く笑う柾影。その笑みは冷たさが漂うものだった。
 「ところで・・・純聖(じゅんせい)さんと伊織(いおり)は?」
 他でもない風流四家残り2人のことを俺は聞く。
 「あの2人には別の計画で動いてもらっている・・・俺達が自由に動けるための計画のためにな」
 「・・・報告はこんなところね」
 綾乃が一息付く。
 「そうか・・・分かった。お前達はしばらく休んでいろ」
 「柾影はどうするんだ?」
 俺の問いに、柾影は呪文を唱える。
 両手の間に、立体の地図が浮かび上がった。
 「俺は、『玄武』以外の四神が最後に出現した場所を調べる・・・そうだな、まずは・・・」
 柾影は、地図上のある一点を指差した。
 「『青龍』の出現した場所でも調べるさ」







 『・・・志。・・・和志』
 闇の中から俺を呼ぶ声。
 だけど、余り不快な感じはしなかった。
 (誰だ?俺を呼ぶのは・・・?)
 俺は意識を集中させる。
 だが、その声が誰のものか気が付く前に、俺の意識は晴れていった。

 「・・・うん?」
 俺はゆっくりを目を覚ます。
 夏の暑い日差しが俺の身体に当たっている。
 ビーチパラソルの下で俺は眠っていた。
 (そうか・・・いつの間にか眠ってたんだな)
 音羽さんが当てた団体旅行にすももから誘われた俺は喜んでついて行くことにした。
 すももの話だと、元々家族旅行で行く場所だったらしく、せっかく行ける人数が増えたのなら、
 友達誘っていこうということになったらしい。
 そういう訳で俺以外だと、神坂さんに柊さん、準さんにハチ兄、それに師匠も一緒だった。
 (師匠はすもものアタックを断り切れなかったんだろうけどな)
 俺はそんな光景を思い浮かべながら苦笑する。
 「ねぇねぇ〜彼女〜今ヒマ?」
 ふと、遠くの方から聞き覚えのある声がする。
 見ると、ハチ兄が女の子をナンパしている声だった。
 (はあ・・・全く元気だな・・・)
 俺は呆れながらそんな光景を見ていた。
 「和志く〜ん!!」
 元気な声が聞こえて来た。
 そっちの方を見ると、今まで散歩でもしていたのか、すももと師匠がこっちに歩いて来るのが見えた。
 「和志くん、やっと起きたんですね〜」
 「全くだ、一日中浜辺で寝て過ごすつもりか?」
 白いビキニを着たすももと、オレンジのワンピースタイプの水着を着た師匠が呆れたように言う。
 「しょうがないだろ・・・雄真さんに睨まれてテンションダウンしてたんだから」
 「それは、和志くんが悪いんじゃないですか?・・・姫ちゃんを見てデレデレしてるんですから」
 「うっ・・・」
 少し尖ったような口調で言うすももに俺は反論出来なかった。
 神坂さんのスタイルが良いのは分かっていたが、水着になるとそれがよりいっそう強調されて・・・
 (男だったらどうしても見ちゃうのはしょうがないことだと思うんだが・・・)
 俺はため息を付く。
 (まあ、最も俺の場合は雄真さんから睨まれるのはもう慣れて来てるけどさ)
 他でもない、すももと同じクラスで席も前後なだけに、どうしても雄真さんには、俺とすももが
 『友達以上』の親密な関係に見えるらしい。
 (だけど・・・他の人からそういう風に見えるってことは・・・何か意識しちゃうんだよな)
 「和志くん?どうしたんですか?」
 すももが寝ている俺を膝に手を当てて屈みこむように見ている。
 その手の位置のせいでスタイルを気にしているすももでも、胸が寄せて上げる形になって谷間が出来ていた。
 「い、いや、何でもない!!」
 俺は慌てて目を逸らす。
 「どれ、だいぶ休んだし・・・俺も泳いで来るかな」
 寝ていたビニールシートから立ち上がり、準備体操をする俺。
 「じゃあ、わたしも行きます!・・・伊吹ちゃんはどうします?」
 「私は少し疲れたのでな、休ませてもらうぞ」
 俺と入れ替わるようにビニールシートに座る師匠。
 「そうですか?じゃあ行きましょう!!和志くん!」
 俺の手を掴んで歩き出すすもも。
 その手の温もりに俺の心は何故かドキドキしていた―――





  「いや〜だけど良かったよ」
 わたしの隣を泳ぎながら和志くんが安心したような声を上げます。
 「何がですか?」
 わたしと和志くんは少し浜辺から離れた沖合いに来て泳いでいました。
 「雄真さんから『すももは運動神経ゼロ』だって聞いたからな〜
  正直、浮き輪付けて出てこられたらどうしようかなと思ってたんだ」
 「・・・わたし、そんな子供じゃないですよ?」
 「ああ、悪い悪い・・・」
 思わず怒りながら言うわたしに謝る和志くん。
 「あ、ところで和志くん・・・」
 「何だ?」
 「和志くんの率直な意見を聞きたいんですけど・・・わたしの水着・・・に、似合ってますか?」
 「・・・何でそんなことを聞くんだ」
 「だって、姫ちゃんとか柊さんとか・・・スタイルのいい人ばっかりですし」
 「・・・」
 和志くんはジッと話を聞いています。
 (それに、この水着は―――)
 わたしはこの間のお祭りの時、和志くんにした質問を思い出します。
 
 『和志くんの好きな色って何ですか?』
 わたしにそう質問された和志くんはしばらく考えてからこう言いました。
 『やっぱり単色系の色が好きかな・・・白とか』


 (和志くんが白が好きだって言うから、この水着にしたんですよ?)
 とはいえ、恥ずかしくてそんなことを口に出せずにわたしはジッと和志くんの解答を待ってました。
 「似合ってるよ・・・それに」
 「それに?」
 「すももは他人と自分を比較しすぎなんじゃないか?神坂さん達には神坂さん達の良さがあって、
  すももにはすももなりの良さがあるんだから」
 「和志くん・・・」
 わたしは和志くんの―――自分の大好きな人の言葉に思わず嬉しくなるのを感じました。
 その時です。
 “チクッ”
 わたしの足に何か痛みが走りました。
 そして、次の瞬間―――
 急にわたしの足が吊りました。
 「!!」
 わたしの足が動かなくなり、身体が沈みかけます。
 「すももっ!?」
 慌てて、和志くんがわたしに近づきます。
 わたしは近づいて来た和志くんの身体に思わず抱きつきました。
 (・・・)
 前にも和志くんに抱きしめられたりして体が密着したことがありました。
 だけど、和志くんのことを好きだと自覚した今は、前よりもドキドキしていました。
 「・・・クラゲに刺されたんだな」
 和志くんの言葉に周りを見渡すとたくさんのクラゲがわたしと和志くんの周りを漂ってました。
 「一旦戻るぞ」
 和志くんの言葉にわたしは頷きました。

 その後、わたしは和志くんの肩に捕まりながら、何とか足の付くところまで戻って来ました。
 「すもも、足付くか?」
 和志くんの言葉にわたしはそっと刺された足を地面に付けようとします。
 「痛ッ・・・」
 だけど、足を付けようとした瞬間にわたしの足には激痛が走ります。
 「ダメか・・・どうしようか・・・」
 和志くんはしばらく考えた後、覚悟を決めたようにわたしの後ろに回りこみます。
 「すもも・・・雄真さんに見つかったらフォロー頼むな」
 「えっ?」
 和志くんはそう言うと、左手をわたしの背中に回し、右手をわたしの膝の裏に回すと―――
 そのまま、わたしを一気に抱きあげました。
 (こ、これって『お姫様だっこ』って奴ですか?」
 意識したとたん、わたしのドキドキが更に増したような気がしました。
 「すもも、急いで浜辺に戻るからな」
 和志くんはそのまま水の中を歩き始めます。
 でも、わたしは―――
 (出来れば、ゆっくりと戻って欲しいな・・・)
 そんなことを考えながら、わたしは思わず自分の腕を和志くんの首に回してキュッと力を込めました。




  「あら〜2人共ずいぶん仲良くなったのね?」
 何故かスクール水着を着ている音羽さんが俺達を出迎える。
 「見せ付けてくれるじゃない・・・」
 同時に休憩していた柊さんもからかいながら見ていた。
 まあ、すももをお姫様だっこしている時点でからかわれてるのは覚悟していたが・・・
 (やっぱり恥ずかしいな・・・)
 「2人共、笑ってる場合じゃないですって」
 そう言いながら、俺はすももを下ろす。
 「どうしたの?すももちゃん?」
 さすがに音羽さんが心配そうに声を掛ける。
 「クラゲに刺されたみたいなんですよ・・・どうしましょう?」
 俺がどうしようか考えてると―――
 「和志、あたしに任せなさい」
 そう言うと、柊さんはパエリアを取り出した。
 「回復魔法を掛けてあげるから、ちょっと待っててね。すももちゃん」
 腫れたすももの足にパエリアをかざして呪文を唱える柊さん。
 「・・・おかしいわね?」
 首を捻りながら柊さんが考え込む。
 「また、失敗したんじゃないですか?」
 「和志・・・アンタ喧嘩売ってるの?」
 怒りの表情を浮かべながら言う柊さん。
 いずれにしても、すももの足の腫れは引かなかった。
 「吾妻和志、お前が回復呪文掛けてやったらどうだのだ?」
 いつの間にどこかに行っていて戻って来た師匠が俺に声を掛ける。
 「でも、俺の回復魔法じゃ痛みは取れても、腫れまでは引きませんよ?」
 「それでも、痛みが無くなればマシであろう?」
 「和志くん・・・お願いします」
 すももの頼みにも押され俺はレイアを構えて呪文を唱える。
 『ウェル・シンティア・レイ・フェニス・サイ・ライファル』
 “ポウッ”
 青白い光がすももの腫れた足の部分を覆う。
 そして。数秒後・・・
 すももの足からは腫れも完全に引いていた。
 「これで、大丈夫だと思うけど・・・」
 ためしにその場に立ち上がるすもも。
 「大丈夫です。痛みもありません。ありがとう!和志くん!」
 「あ、ああ・・・別にいいよ」
 すももの笑顔を見ながら、俺は自分の魔法について考えていた。
 (さっきの回復魔法・・・あんなに効きがいいわけないんだけどな・・・)
 俺はそんな疑問を考えていた―――







                        〜第23話に続く〜


                 こんばんわ〜フォーゲルです。第22話になります〜

                  今回は前半は前回と同じく敵サイドの話です。

           ついに現れた敵のボスに、いろいろと動いている『計画』などがメインですね。 

                   そして後半は、旅行編のスタートです。

          え〜何だ?この『友達以上恋人未満』な2人は?とか思ってくれると嬉しいです(笑)

                       お姫様だっこしてるし・・・

          作者的には『和志好みの水着を着てアピールするすもも』に書いてて激しく萌えだったと(爆)

        次回は一緒に旅行に来てるのに出番無かった春姫や雄真、準を多く出せたらなと思ってます〜


                          それでは、失礼します〜


管理人の感想

ってことですもも長編の22話でした〜^^

今回も前回同様、前半が伏線で後半がほのぼの・・・というかラブコメ話でしたね。

和志もだいぶ、すももへの想いを自覚し始めてきたのではないでしょうか。ドキドキしっぱなしっすね(笑)

もうすももの方は完全に「恋する乙女」ですがw それにしても、お姫様抱っこのシチュエーションは美味しすぎる(主に和志が)

そして異様に効いたすももへの回復魔法。最初は伊吹が何らか(例えば、こっそりと増幅魔法)をしたのかと思ったのですが・・・。

もしかすると、前半の複線に関係あるのかも?

ってことで、また次話もお楽しみください^^



2008.2.8