『解かれた魔法 運命の一日』〜第20話〜




                                    投稿者 フォーゲル





  白い花が風に揺れる。
 その前には、たなびく線香の煙―――
 そして、姉ちゃんはしゃがんで手を合わせていた。
 みんなと別れた後、俺は姉ちゃんを連れて母さん達の墓の前に来た。
 姉ちゃんにとっても辛いことだが、いつまでも秘密にしておく訳にもいかない。
 今、姉ちゃんは母さん達とどんな会話を交わしているのだろうか?
 そんなことが気になった。
 「ふうっ・・・」
 姉ちゃんが一息ついて墓の前から立つ。
 その瞳が少し濡れていたのに俺は気が付いた。
 「大丈夫?」
 「えっ?う、うん。・・・まさか母さんがもう亡くなってるなんて知らなかったから・・・」
 そう言って瞳を拭う姉ちゃん。
 「・・・母さん、最期まで姉ちゃんのことも心配してたよ。『渚は幸せに暮らしてるかしら?』って」
 「そうなんだ・・・」
 しんみりした空気が流れる。
 (・・・?)
 その時、俺は変な感じを覚えた。
 何か、誰かに見られているような・・・
 俺は視線をキョロキョロされる。
 そして、俺の視線は姉ちゃんのマジックワンド―――名前は確か『スワンウインド』―――とか言ったか?
 そのところで止まった。
 (何か・・・じーーーと見られているような・・・)
 俺の視線に気がついたのか、姉ちゃんも『スワンウインド』を背中から外す。
 「どうしたの?スー君?・・・あっ?そうか・・・」
 姉ちゃんは納得が行ったように頷いた。
 「スー君はカズ君の分身みたいなものだからね。気になるの?」
 『・・・うん』
 きっと顔があったら頷いていた。そんな感じで答える『スワンウインド』。
 「どういうことだ?俺の分身って?」
 「スー君はね、私がカズ君に作ってあげた『白鳥の像』をベースにして作ったから・・・」
 姉ちゃんの言葉に俺は思い出した。
 あの魔法の暴走事故が起こる前に姉ちゃんが俺を励ますために魔法で作ったもののことだ。
 「でも、魔法で作ったものに更に魔法を掛けるなんてのは無理なんじゃないか?」
 「だから、私が持っている『もう一つの魔力』を使ったの。一旦白鳥の像を物理的に凍らせてから、
  掛けてあった魔法を解いて、違う魔法式でワンドの作成呪文を掛けたって訳」
 「どうしてそんな面倒くさい方法で作ったんだ?」
 俺の質問に姉ちゃんは、その時のことを思い出したのかフッと寂しそうな表情を見せた。
 「私が持っているカズ君の思い出の品がそれしか無かったから・・・」
 「姉ちゃん・・・」
 「あ、もちろん今のお父さんやお母さんに不満があるとか、寂しかったとかそういう訳じゃないよ?
  ただ、そうすることで、カズ君がそばにいるってことを感じたかったのかも」
 笑顔を浮かべながら言う姉ちゃん。
 「だけど・・・私にとってはカズ君の方が意外だったな〜」
 「何が?」
 いきなり話題を変える姉ちゃん。
 「だって、カズ君はあの事故のせいで魔法を嫌いになってると思ってたし・・・
  それが、魔法を習っているどころか、試験のトーナメントで上位に来ている程の実力を持ってるなんて思わなかったし」
 「まあ、それに関しては教えている人がいいんだろ?」
 スパルタな師匠の顔を思い出しながら俺は、苦笑を浮かべる。
 「それに・・・カズ君、凄く明るくなったし」
 「そうかな?そんなことも無いと思うんだけど」
 「ううん、子供の頃は凄く人見知りするタイプだったじゃない。それで私の後ろをいつもくっついて歩いてたんだよ。
  そのカズ君が今やね〜あんなに友達がいるなんて・・・特に女の子の」
 「『女の子』のところはおいとくとしても、俺にあんなに友達が出来たのは・・・すもものおかげだな」
 いつにまにかジト目で俺を見ていた姉ちゃんを抑えるように俺は言う。
 「『すもも』って・・・ああ、私が最初に会った女の子ね。リボンを付けた」
 姉ちゃんの言葉に頷く俺。
 「・・・というか魔法を使えるようになったのもすももがきっかけなんだよな」
 「どういうこと?」
 俺は簡単に姉ちゃんに俺が魔法を使えるきっかけになった出来事について話した。
 「へ〜そんなことがね・・・」
 姉ちゃんはしきりに頷きながら話を聞いていた。
 「そういえば・・・すももの奴、あんな大声で反対しなくても・・・」
 俺はさっきの出来事、すももが『俺の家に姉ちゃんが泊まる』ってことに反論した時のことを思い出した。
 (常識的に考えて周りの人間が止めるに決まっているだろうに・・・)
 そんなことを考えている俺の横顔をいつの間にか姉ちゃんが見ていた。
 「・・・カズ君。ひょっとして気づいてないの?」
 「何に?」
 「う、ううん?何でもないの!」
 何故か慌てながら首を振る姉ちゃん。
 「そ、それより暗くなって来たし、そろそろ帰ろうか?」
 「あ、う、うん・・・そうだな・・・魔法科の寮まで送っていくよ」
 「そう?ありがとう!カズ君」
 そう言って俺の隣に並ぶ姉ちゃん。
 「だったら・・・私にもまだ・・・」
 そんなことを小さく呟いた姉ちゃんの声が俺の耳に届いた―――





  “チャプン”
 湯船に入ると同時に少しお湯が浴槽から溢れます。
 「はぁ・・・」
 わたしはお風呂に入りながらため息を付きました。
 今日は珍しく兄さんや姫ちゃん、柊さんも魔法科での用事や『Oasis』でのアルバイトが無かったようでしたので
 一緒にゲームセンターで遊んで来ました。
 (伊吹ちゃんを誘えなかったのが残念でしたけど・・・)
 それを差し引いても楽しい時間になる―――はずでした。
 だけど、今日は―――全く楽しくありませんでした。
 そのせいで、兄さんに『どうしたんだ?すもも?具合でも悪いのか?』と心配されてしまいましたし。
 わたしは、「いいえ〜そんなことないですよ」とその場では返事しました。
 決して体調が悪かった訳ではありません。
 ううん、私も『その理由』は分かっていました。
 (和志くんが―――居なかったから―――)
 正確には和志くんが渚さんと一緒に行動しているということが原因だと分かっていました。
 ・・・和志くんがずっと会いたくて、そのために努力もしていたのはわたしも知っています。
 だから、渚さんと再会出来たことに関してはわたしも嬉しいです。
 だけど・・・
 その一方でそんな2人の様子を見ていると胸が苦しくなるような感覚をわたしは覚えました。
 それに、渚さんは、掛け値なしの美人さんで・・・
 (スタイルも・・・いいですし)
 思わず、お湯の中に沈んでいる自分の胸を見ながらわたしはまた、ため息を付きました。
 「和志くん・・・」
 “キュン”
 名前を呟いただけでわたしの心は切ないような苦しいような―――そんな感覚に襲われます。
 “ポタッ・・・ポタッ・・・”
 (えっ・・・)
 気が付くとわたしの瞳から涙が流れていることに気が付きました。
 (・・・)
 涙を拭いながら、わたしは自分が何故こんな気持ちになっているのか―――
 『その理由』がおぼろげに分かって来ました。
 (多分―――明日和志くんに会えば―――)
 わたしはそんなことを考えていました。




  「38度2分・・・完全に風邪ね」
 お母さんが体温計を見ながら、呟きます。
 朝、わたしが目を覚ますと体全体がだるくて重いような感覚に襲われました。
 「全く・・・お風呂で2時間も考え事なんかしてるからよ」
 「ううっ・・・面目ないです」
 ベットに入ったまま、答えるわたし。
 「今日は学校お休みして、ゆっくりしていなさい。すももちゃん」
 「はい・・・分かりました」
 「うん、よろしい」
 お母さんは満足そうに頷くとそのまま部屋を出て行きました。
 “コン・コン”
 「はい・・・」
 ドアのノックの音にわたしは返事をします。
 「すもも〜大丈夫か?」
 わたしが今日学校をお休みするということを聞いたのか、兄さんが心配そうな顔をして入って来ました。
 「あ、兄さん・・・」
 「すももが風邪を引くとはな〜」
 「兄さん・・・どういう意味ですか?」
 わたしは思わず聞き返します。
 「ほら、すももには風邪のウイルスすら寄り付かなさそうだしな」
 「それは褒めてるんですか・・・」
 「まあ、そう思ってくれ。それよりも、何か欲しい物ないか?学校帰りにでも何か買ってきてやるぞ」
 「そうですね・・・それじゃ―――」
 欲しい物をリクエストしながら、兄さんの顔を見てわたしはある事に気がつきました。
 それは、何故わたしが和志くんと渚さんを見て不安になるのかということです。
 (わたしも―――血の繋がらない兄さんを好きだったから―――)
 渚さんも和志くんを好きなんじゃないか―――
 そう考えるとわたしの心にモヤモヤとした想いが生まれました。


 “チッ・・・チッ・・・”
 時計の秒針がわたしの耳に聞こえて来ます。
 お薬を飲んで午前中は寝ていたせいか、大分熱は下がりました。
 お母さんが用意してくれたお粥を食べて、わたしはまたベットの中に戻りました。
 ふと、気が付くとベットサイドに置いていた携帯電話がチカチカと点滅していました。
 わたしが携帯を開くと―――
 「あ・・・」
 そこには、姫ちゃんや準さん、ハチさんや柊さん、他のクラスメートのみんなから、
 わたしのことを心配するメールが入ってました。
 中でも意外だったのは、伊吹ちゃんからもメールが来ていたことです。
 アドレスが兄さんのメールアドレスだったのできっと兄さんの携帯を借りたのでしょう。
 『小日向雄真よ!これは一体どう使うのだ』
 そう言いながら携帯を操作する伊吹ちゃんの姿を想像してわたしは思わず笑ってしまいました。
 わたしは着信をチェックします。
 そしてあることに気が付きました。
 (和志くんからは・・・来てないですね)
 ―――今日も渚さんと一緒なのかな―――
 わたしがそんなことを考えながら寝ようとしたその時です。
 “ブーーー!ブーーー!”
 バイブ機能にしていた携帯が震えます。
 (メールじゃない・・・着信?)
 わたしは携帯を見て―――そして―――
 (!!)
 慌てて電話に出ました。
 『あ、すももか?俺だけど・・・大丈夫か?』
 「は、はい!大丈夫です。和志くん」
 きっと今わたしの体温を測ったら、40度くらいまで上がってるんじゃないか―――
 そんなことをわたしは考えていました。
 「だけど、和志くん・・・何で電話して来たんですか?」
 『・・・迷惑だったか?』
 「い、いえそうじゃないですけど・・・どうしてかな〜って思って・・・」
 『本当は俺もメールにしようかと思ったんだけど、音羽さんが『和志くんは電話して上げなさい』って。
  その方がすももちゃんも喜ぶから―――ってな』
 「そうですか・・・」
 何となく和志くんの後ろで笑っているお母さんの姿が浮びます。
 その後、わたしと和志くんはしばらく会話をしました。そして―――
 『・・・じゃあ、そろそろ切るな』
 和志くんが電話を切ろうとします。
 「あ、ま、待って下さい!」
 わたしは思わずそう叫んでいました。
 『ど、どうしたんだよ』
 電話の向こうでビックリした感じの和志くん。
 「も、もう少しだけお話しませんか?」
 『何でだよ・・・あ、さては・・・』
 「な、何ですか?」
 『すもも、一人で退屈なんだろ?』
 「そ、そうなんですよ〜だからわたしの相手して下さいよ」
 『分かったよ。午後の授業が始まるまでな』
 そう言って和志くんはギリギリまでわたしの相手をしてくれました。
 本当は退屈なんかが理由じゃありませんでした。
 ただ、わたしが―――和志くんの声をずっと聞いていたかったから―――



  『じゃあな、すもも。明日待ち合わせ場所で待ってるからな』
 「はい、じゃあまた明日」
 そう言ってわたしは携帯を切りました。
 「・・・」
 ベットに入ってもまだ、胸がドキドキしています。
 熱も下がって、明日には和志くんに会える、そう思うとわたしの心は嬉しくなりました。
 (ああ、そうだったんですね・・・)
 わたしは寝返りを打ちながら自分の気持ちを確信していました。


  (わたしは和志くんのことが好きなんだ―――)





                      〜第21話に続く〜


                こんばんわ〜フォーゲルです。第20話になります。

            今回は前半が渚の想い。後半がすももの想いをメインに書いてみました。

             特にすももの気持ちの揺れを表現出来ていたらいいな〜と思っています。

        和志のお見舞い方法ですが、メールじゃ味気ない、直接行くのはお約束過ぎるということで、

                   電話で声だけという形に落ち着きました。

                それによってすももの想いを感じ取って頂ければ幸いです。

        次回は新展開(まあ、次はそのフリの話ですが・・・)舞台はアニメの8話目をイメージして貰えればと思います。

             自分の気持ちに気がついたすももの動きにも注目してほしいですね。

                      それでは、失礼します〜


管理人の感想

ついに20話の大台に乗りましたね〜。

今回はストーリー的にはほとんど進まず・・・渚とすももの想いが書かれていましたね。

長年、弟という以上の感情を持ち続けて、ようやく再会を果たせた渚。

兄への気持ちを封じて、乗り越えて。そしてその先に新しい恋を見つけたすもも。

特にすももの方は進展ありって感じでしたね。自分の想いを悟ったのですから。

問題は・・・やはり和志の方か。あの鈍さでは、自覚するのは・・・ましてやすももの想いに気づくのはいつになることやら^^;

では!



2008.1.22