『解かれた魔法 運命の一日』〜第18話〜
投稿者 フォーゲル
朝からジリジリと夏の日差しが照りつける。
「まだ7月だっていうのに何でこんなに暑いんだ?」
例によって、俺、すもも、雄真さん、準さん、ハチ兄の5人で学園に続く道を行きながら、俺はグチっていた。
夏だから当たり前だと言われそうだが、それでも言わずにはいれなかった。
「和志くん。暑いって思うから暑いんですよ」
涼しそうなセーラータイプの制服に身を包んだすももが笑いながら言う。
「そりゃ、すももや準さんは白い部分が多いからいいんだろうけど・・・」
女子と違って男子は上がTシャツに変わるだけだからあんまり変わらない。
「あ〜、こりゃ夏休みの前に夏バテしそうだぞ・・・」
俺はげんなりとしながら呟いた。
「何言ってるんだ。和志?今から夏バテしててどうするんだよ。夏休みにはやることがあるだろうが」
ハチ兄が呆れたように言う。
「例えば?」
俺がそう聞くと、ハチ兄は逆に俺に質問して来た。
「和志。夏と言えば何を連想する?」
言われて俺は考え込む。
「・・・高校野球?」
甲子園での祭典では見るものを熱くするが・・・俺も好きだし。
だが、俺の答えにハチ兄は不満そうな声を上げて答えた。
「ちがーう!夏といえば『青い海。白い砂浜』に決まっているだろうが!』
「・・・」
何となくハチ兄の言いたいことは分かって来たが俺は黙っていた。
「じゃあ、『青い海、白い砂浜』といえば何だ?」
更に質問を続けるハチ兄。
「・・・スイカ割り?」
「和志・・・お前、ボケはもういいから」
ため息を付きながら言うハチ兄。
(いや、分かってるけどあえて触れないだけで・・・)
俺の内心の考えなど気にもせずにハチ兄は正解を告げた。
「いいか。『夏→青い海、白い砂浜』といえば『水着の女の子』に決まってるだろう!」
あまりにも予想通りの答えに俺は思わずため息を付いた。
「今年こそ、今年こそは浜辺で可愛い彼女をゲットするのだ〜〜!!」
「あのなぁ・・・ハチ、そういうこと言うから女の子達が引くんだと思うんだが」
雄真さんが呆れたように言う。
「フン!姫ちゃんみたいな可愛い彼女がいる雄真には俺の気持ちなんかわかんねーよ!」
ムクれたように答えるハチ兄。
「まあ、確かに春姫と色々なことして過ごす予定だけどな」
(とうとう否定しないし・・・)
内心ツッコミ入れる俺。
「という訳でだ・・・和志。今年はお前に期待を・・・」
「ナンパに付き合えってのは却下だから」
ハチ兄のお願いを言葉の途中で遮る俺。
「え〜何でだよ〜」
「・・・別にナンパしてまで彼女欲しいとは思わないし」
そういうのは出来る時には出来るし、出来ない時には出来ないものだ。
「それに、俺もハチ兄もモテるほどイケメンって訳でもないだろう?」
「あら〜それはどうかしら?」
準さんが疑問の声を上げる。
「ハチはともかく、和志くんは結構モテるタイプよ?可愛い顔してるし・・・年上にモテるタイプね」
「そ、そうですか?」
いくら『本当は男』とはいえ、準さんみたいな人に言われると嬉しいというか・・・
「和志くんを好きになる女の子は大変よね〜これからライバルが増えるでしょうし・・・そう思うでしょう?すももちゃん?」
すももに話を振る準さん
「えっ?そ、そうですね〜ダ、ダメですよ和志くん。お姉さん達を泣かせちゃ」
何かヒドいことを言われてるような・・・
俺が思わず抗議しようとしたその時―――
“キーン、コーン、カーン・・・”
「チャイム鳴ってます!皆さん急ぎましょう!」
すももの声に続いて俺達は学園に向って急いだ―――
「悪いな・・・すもも。付き合ってもらっちゃって」
そう言ってわたしに謝る和志くん。
「別にいいですよ〜和志くん困ってたみたいですし」
今日は夏休みまで後一週間、期末テストの結果発表がありました。
わたしや伊吹ちゃんは赤点を取らずに済みましたが・・・
「師匠との修行を頑張りすぎて普通科の勉強まで手が回らなかったもんな〜」
和志くんは、数学で赤点を取っていました。
『吾妻、一週間後の終業式の日に補習テストだからな』
そう担任の先生に宣言された和志くんは、『どうしよう・・・』みたいな顔をして困っていました。
そこでわたしは和志くんに提案しました。
『良かったら、わたしが勉強見てあげましょうか?』って。
和志くんは
、『ありがとう〜助かるよ』って言ってくれました。
「だけどさ・・・すもも」
「何ですか?」
和志くんは、ふと思いついたように言います。
「今日は、午前中で終わりだったんだし、わざわざ図書室に来なくても良かったんじゃないか?」
今、わたし達は自分達の教室を出て図書室で勉強しています。
「だ、だって静かなところの方が集中出来るじゃないですか〜」
「・・・まあ、そうだな」
それで納得したのか和志くんはまた、ノートに視線を落とします。
(本当はもう一つ理由があるんですけどね・・・)
わたしはここ数日の和志くんの周りの光景を思い出しました。
『魔法科実技トーナメント』で兄さんと同時優勝した和志くんの周りには―――
魔法科の女の子達が集まるようになっていました。
和志くんに魔法の勉強で分からないところを聞いているみたいでした。
伊吹ちゃんによると和志くんは魔法に関しては理論も実技も優秀らしいのでそれで聞きに来る女の子が多いようです。
しかも、最近は女の子達の間で―――
『吾妻くんって誰か『特定の彼女』っているのかな?』
『いてもおかしくないよね〜』
『誰もいないのなら、私、立候補しようかな〜♪』
なんていう会話もされています。
最も和志くんはそれに全く気付いていないみたいですが。
和志くんも自分の勉強が遅れているのに、女の子達の質問にはちゃんと答えているからなかなか勉強が進んでいないようでした。
そこで、わたしは意を決して和志くんを図書室に連れ出しました。
(自分のことは後回しなんですから・・・まあ、そんなところが和志くんのいいところでもあるんですけどね)
わたしがそんなことを考えてると・・・
「・・・もも?すもも?」
「えっ!あ、な、何ですか」
「『何ですか?』じゃないって・・・ここ分からないんだけど」
「どこですか?」
向かい合って座っていたので椅子から身を乗り出して見ます。
「ここなんだけど・・・見えるか?」
見えてないと判断したのか、和志くんは椅子を立って私の隣に移動してきます。
私の肩に和志くんの肩が触れます。
“ドキッ”
その瞬間、わたしの心が震えたような気がしました。
そして、気が付くと、わたしは和志くんから少し離れていました。
「すもも?どうしたんだ?」
「な、何でも無いですよ」
近くの本棚に寄っていたわたしは和志くんのところに戻ろうとします。
その時でした―――
“グラッ・・・グラグラグラッ”
(地震?)
本棚が揺れたかと思うと乱雑に押し込んであったのか、上の棚の本がわたしに向って倒れて来ました。
地震が来たと思った瞬間、すももが寄っていた本棚から本が崩れて来た。
俺の身体はとっさに動いてすももをその場所から押し出していた。
“ドサドサドサッ”
10冊以上の辞典のような本が俺の身体に降り注ぐ。
(痛って〜・・・)
俺は何とか痛みを堪える。
(ケガはしてないみたいだな・・・)
とりあえず安堵の気持ちになる俺。
「あ、あの〜和志くん?」
何故か上ずった口調で聞こえて来るすももの声。
俺は声のする方向を見てそして、気が付いた。
すももは俺に押された時にバランスを崩したのか、その場に倒れこむような形になったようだ。
そこに俺が覆い被さるように倒れこんだから―――
俺がすももを押し倒すような形になっていた。
「・・・」
「・・・」
2人して何も言えずに黙り込む。
すももの大きな瞳が俺の顔を写していた。
『ファイトー!ファイトー!』
外からは部活をしている生徒達の掛け声が聞こえて来る。
その声が、今は放課後、そして図書室には俺とすももの2人きり―――という事実を認識させた。
“ドキッ・・・ドキッ・・・”
急に激しくなる俺の心臓の鼓動。
それを落ち着かせるために俺はすももに話し掛ける。
「す、すもも?大丈夫か?」
「う、うん・・・和志くんは?」
「俺も大丈夫だ」
とりあえずお互いの無事を確認してホッとしたその時だった。
「和志〜!すももちゃん〜!ここにいるの?」
(柊さん!?)
図書室という部屋には無縁そうな柊さんの声が響き渡った。
(マ、マズイ・・・こんなところ見られたら、また数日中に噂が広まるぞ)
俺はすももを急いで立たせる。
「あ、2人ともこんなところに・・・ってどうしたのよ!これ!」
幸い柊さんは床に散らばった本に気を取られ、俺達の真っ赤に染まった表情には気がつかなかったようだった。
「で、どうしたんですか?柊さん?」
その後、何とか倒れた本の山を本棚に戻した俺達は柊さんに向き直る。
「あ、用事があるのはあたしじゃないのよ」
そう言って柊さんは自分の隣の人物に視線を送る。
薙刀を媒介にした変わったマジックワンドを持っていた彼女は
「こんにちは〜吾妻くんね。私は朝倉 美紀(あさくら みき)よろしくね。」
と自己紹介した。
「ひょっとして・・・『瑞穂坂の歩くジャーナリズム』って呼ばれているあの朝倉さんですか?」
すももがそんなことを言う。
「知ってるのか?すもも」
「うん、朝倉さんに知られたら最後、どんな情報もあっという間に学園内に広まるって言われてるの」
「普通科にも知られてるなんて光栄ね」
満足気な笑みを浮かべる朝倉さん。
「その人が俺に何の用ですか?」
「うん、今度発行する『瑞穂坂通信』に吾妻くんのインタビュー記事を載せたいのよ」
『瑞穂坂通信』とはウチの学園の新聞部が発行している学園内限定の新聞だ。
何でもそれに『学園で注目の人物』ということで雄真さんと一緒にインタビュー記事を載せたいらしい。
「でも、私吾妻くんのことよく知らないしどうしようかなと思ってたら、杏璃が知ってるって言うから」
「ここまで連れて来たって訳よ」
柊さんが言葉を繋げる。
「ねぇ、お願い和志、あたしの顔を立てると思って取材受けてくれない?」
顔の前で両手を合わせてお願いする柊さん。
(まあ、断る必要も無いか・・・)
「いいですよ。時間が掛からないなら」
「本当に!ありがとう!」
朝倉さんが俺の手を握ってお礼を言う。
手を握られて思わず顔が赤くなる俺。
そして、インタビューは始まった。
「ふうっ・・・」
わたしは思わずため息を付きました。
帰る前に先生にゴミ捨てを頼まれたわたしはそれを終わらせると、もう一つ仕事を頼まれた和志くんとの
待ち合わせ場所に戻る途中でした。
まだ、日が高いので兄さん達とも合流してゲームセンターにでも行こうとしていました。
和志くんのインタビューはあんまり時間は掛からずに終わりました。
ただ、その中でわたしには気になることがありました。
それは・・・
インタビューが終わり、和志くんがトイレに行くと行って席を立った後、
「う〜ん・・・ひとまずはOKね・・・だけど」
「だけど・・・何よ」
朝倉さんの言葉に聞き返す柊さん。
「和志くん・・・ウソついてるわね」
「どういうことですか?」
わたしもその言葉に思わず聞き返します。
「ああ・・・ウソってのは言い過ぎね。本人も気付いてないんだし」
朝倉さんは言葉を紡ぎます。
「私が和志くんにこの手のインタビューではお約束の『今、好きな人はいるの?』って質問したわよね?」
わたしと柊さんは同時に頷きます。
「あの時、和志くんは『居ませんよ〜』って言ったんだけど・・・その前に目が泳いだのよ」
考えながら言う朝倉さん。
「私の推測なんだけど、多分その時に『誰かの顔』が浮んだんじゃないかな〜」
「なるほどね〜だから、『本人も気付いてない』か・・・」
柊さんも頷きながら言います。
「いずれにしても、和志くんは追いかける価値があるかもね」
朝倉さんは嬉しそうに呟いていました。
わたしはその『和志くんが気になっている人』のことが気になっていました。
(一体誰なんだろう・・・)
そんなことを考えながらわたしは、校門の前を通ろうとしました。
(・・・?)
その時、一人の女の子が私の目に止まりました。
ピンク色―――いや、どっちかと言うと桜色と言った方が良い様な柔らかい色合いの髪を
大きな白いリボンで纏めていた掛け値無しの美少女さんです。
その女の子は学園の制服を来て、校門の前をウロウロしていました。
その人のことが気になったわたしは思わず声を掛けていました。
「どうしたんですか?」
「あ、こんにちは・・・あの私、明日からこの学園に転校することになってるんですけど・・・
学園主任の先生に挨拶しようと思ったんですけど、どこに行けばいいのかなと思って」
その人の背中には魔法使いさんの象徴、マジックワンドがありました。
(魔法科の生徒さん?ということは御薙先生に連絡取った方がいいのかな?)
私は和志くんか兄さんに連絡取って案内して貰おうと思いました。
その時です。
「おい、すもも。何やってるんだ?みんなまっ・・」
わたしがいつまでも来ないことに業を煮やしたのか、わたしの姿を見つけた和志くんはわたしに声を掛けて―――
その声は途中で消えました。
和志くんはわたしと話していた女の子を呆然と見つめていました。
見ると、その女の子も和志くんを見て固まっています。そして―――
その女の子は和志くんに近寄ると―――
いきなり、和志くんを抱きしめました。
女の子の涙声が聞こえて来ます。
「会いたかった・・・会いたかったよ。カズ君」
「・・・姉ちゃん!?もしかして渚姉ちゃんか!?」
「!!」
和志くんの言葉にその女の子―――渚さんは必死に頷きます。
(じゃあ、その娘が和志くんの探していた『血の繋がらない』お姉さん!?)
その時―――
“ズキッ”
胸に鈍い痛みが走ったのをわたしは感じていました―――
〜第19話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第18話になります〜
今回はまずはお礼を言わせて頂きます。鷹勝さんのSS『咲き誇りし魔法の奇跡』から朝倉 美紀ちゃんに
友情出演して頂きました。鷹勝さん、使用許可を頂きありがとうございました(^^)
さて、今回の内容ですが・・・トーナメントで雄真と同時優勝したことで、女の子にモテるようになった和志。
それをビミョーな感じで見ているすももの心境に注目して貰えるといいな〜と。
和志は和志ですももを意識し始めているし(押し倒しイベントとか)
そして、そんな2人の前に現れたすももにとっては最大最強のライバル、渚。
彼女の登場でさらに動き始める2人の関係に注目して頂けると嬉しいですね。
次回は・・・予定としては渚の『魔法使いとしての才能』お披露目話になるかなと〜
それでは、失礼します〜
管理人の感想
今回は魔法関係はほとんど触れず、和志とすももの日常的なお話でしたね。
普通科だというのに、魔法実技トーナメントで優勝してしまった和志。その上ルックスも上々とくれば、当然女子がほってるはずもなくて。
そのことにやきもきしながら、時折胸を刺す鋭い痛みに翻弄されるすももの様子が、非常に分かりやすく表現されていました。
そして図書室で・・・なにやっとんじゃーーーいっ!!!(笑)
こんなの雄真に見られたりでもしたら、マジでコロサレマスヨ?(爆)
最後には渚姉ちゃんがついに登場!キターーーって感じですね。キターーーって(ぉぃw)
さらにすももの目の前でいきなりの抱擁。その時、すももの胸には最大の痛みが走る・・・。
次回は来年ですね。皆様、これからも「解かれた魔法」をよろしくお願いします!^^