『解かれた魔法 運命の一日』〜第17話〜





                                     投稿者 フォーゲル





  “ズゥゥゥゥ・・・ン”
 明らかに異質な魔力がぶつかり合う感覚を私は感じた。
 その魔力が混ざり合うような感覚を一瞬感じたがそれはすぐに掻き消えた。
 (どうやら・・・高峰さんがうまくやってくれたみたいね)
 私はホッとしながら、自分の目の前の事実に目を向ける。
 目の前には私の研究室の扉がある。
 私は警戒しながら、その扉を―――開けた。



  「無断で女性の部屋に侵入するのは感心出来ないわね」
 私の目の前には、黒い覆面で顔を覆った一人の男がいた。
 褐色の肌と何より彼が手に持ったマジックワンドが彼が魔法使いであることを裏付けていた。
 「あなたが探している物はここには無いわ。私が持ち歩いているから」
 覆面の下に隠されている表情に、一瞬動揺の気配が感じられたが、それもすぐに消える。
 「そうか・・・ではお前を倒して『あれ』を奪えばいいのか?」
 「やってみなさい・・・出来るものならね」
 彼の魔力が高まっていくのを感じる。
 それに合わせて私も魔力を上げる。
 『アウラ・フォルト』
 だが、彼が唱えた呪文は攻撃呪文では無かった。
 「・・・そっちも油断はしていないみたいだからな。今日は引き上げさせてもらう」
 彼の声は私の後ろから聞こえた。
 転移魔法で私の後ろに出現したのだ。
 慌ててそちらを振り向くと、もう彼はそのまま踵を返し、駆け出していた。
 「待ちなさい!」
 私はその後を追う。
 (捕まえて、黒幕を吐かせないと・・・)
 私は捕縛魔法の呪文を唱え始める。
 校内で攻撃魔法は使えないけど、これなら・・・
 その時、不意に逃げる彼が自分のマジックワンドを横に払う。
 “ズガァァァン!”
 突然横から飛び来た魔法がそれに当たり弾け散る。
 だが、その魔法の威力に押されたのか、彼は弾き飛ばされ壁に当たる。
 そして、呪文を放った相手が姿を表す。
 「どうした?御薙鈴莉よ。この程度の相手に逃げられかけるとは?」
 「式守さん?どうしてここに?」
 「お主が難しい顔をして魔法科の校舎に入っていくのが見えたのでな、ちょっと後を付けたのだ」
 式守さんはそう言った後、侵入者の方を見る。
 「で、こいつは一体何なのだ?」
 「まだ、詳しいことは分からないから話せないけど・・・何かが動き出していることだけは間違い無いわね」
 私は彼に向き直る。
 「さあ、じゃあいろいろと話してもらうわよ。まずは・・・」
 だが、彼は立ち上がり私達に向き直る。
 「2対1・・・しかも『御薙』と『式守』の名を持つ者が相手か」
 「どうやら、私達のことは知ってるみたいね」
 「だが、俺としてもあっさりと捕まる訳には行かないんでな」
 彼はチラリと窓の方を見る。
 (・・・まさか!?)
 彼は迷わずその窓に体当たりし、ガラスを割って外に逃げ出す。
 「しまった!!」
 式守さんが窓に走りより、外を眺める。
 だが、侵入者の気配も魔力の反応ももう感じられなかった。
 「多分、窓の外に飛び出した瞬間転移魔法で逃げたのね」
 私はフウッと一息付く。
 「しかし、あの男は一体何が目的で御薙鈴莉の研究室に忍び込んだのだ?」
 「おそらく、これが目的なんじゃないかと思うわ」
 式守さんの疑問に答えるように私は呪文を唱えると虚空からある物を取り出す。
 私の手には赤く輝く宝珠(オーブ)があった。
 「これなら、那津音姉様も持っておったぞ。色は白だったがな」
 「式守さん。そのオーブは今誰が持っているの?」
 式守さんはため息を付きながら言った。
 「もちろん、私が持っている・・・と言いたいのだが、秘宝が暴走した時に姉様の命と一緒に消えてしまったのだ。
  だから、今はどこにあるのか分からぬ」
 「そう・・・」
 私はいろいろと考えを整理する。
 最近になってこのオーブの輝きが急速に増して来たのは事実だった。
 いずれにせよ、何者かが何かを企んでこのオーブを狙い出して来ていることは間違いなかった。
 そして、このオーブを受け継ぐことになる『後継者』を探しているということも。
 『後継者』だけがこのオーブの魔力を引き出せるのだから。
 「何か、いろいろとやっかいなことになって来たわね・・・」
 私の呟きが風に流れた―――




  一足先に瑞穂坂学園を出て、私は近くの廃墟にいた。
 “シュゥゥゥ・・・”
 転移魔法で彼が目の前に姿を表す。
 「首尾はどうだったの?義人?」
 「いや、ダメだった。やっぱり向こうも油断はしてなかったな」
 そう言って義人は頭を掻く。
 「それにこっちの目的も感づかれてたぞ」
 「まあ、彼女ほどの切れ者だったら気付くでしょうね」
 「そこから俺達の目的はバレないだろうな?綾乃?」
 「大丈夫でしょう。それに私達も『彼ら』の力が覚醒しないと動きようがないんだし」
 「じゃあ、俺達は・・・」
 「『あの方』からも帰還命令が出てるし一旦戻りましょう。収穫もあったことだしね」
 少なくともあの学園には『後継者』が集まっていることは間違いないのだから。
 「あ、そのことなんだけどな・・・」
 義人は気付いたことでもあったのか私に意見する。
 「お前は、『御薙鈴莉に気を付けろ』と言ったが・・・俺はそいつからはそんなに怖さは感じなかったぞ」
 「そうなの?」
 「ああ、俺はむしろその後に現れた銀髪のガキ・・・『式守』って呼ばれてた奴の方が怖さを感じたぞ」
 「・・・」
 私は考え込む。
 義人も私と同じく『神の力』の一端を感じることが出来る。
 (ということは、『神の力』はもう後継者に引き継がれているってことかしら?)
 「綾乃!行くぞ」
 「あ、分かったわ」
 私は考えを打ち切ると、義人の転移魔法の中に飛び込んだ。





  (和志くん・・・)
 わたしはベットに寝かされている和志くんの顔を見つめます。
 和志くんと兄さんの試合は最後になって大変なことになりました。
 最後に撃ちあった大きな魔法はスゴイ力だったみたいで、強烈な爆風が巻き起こりました。
 その風が収まった時、和志くんも兄さんも気を失っていたので、試合はそこで中止。
 幸い、兄さんはあんまり大したことは無かったみたいでその場で目を覚ましましたが、
 和志くんは目を覚まさなかったので、そのまま保健室に運ばれました。
 姫ちゃんや小雪さんの見立てによると、ただでさえ体力、魔力を消耗していたところに、
 大きな魔法を使ったことによるショック症状で気を失っているだけだということでした。
 「始めて魔法を使った時ほどひどくはないから大丈夫だよ」
 と姫ちゃんは言ってましたが、
 それでも心配だったわたしはこうして和志くんに付き添っていることにしました。
 兄さんと姫ちゃんは表彰式に出ています。
 ついでに和志くんの賞状も貰って来てくれるとのことでした。
 今、保健室にはわたしと和志くんの2人だけです。
 わたしは和志くんの顔を見ながら考えます。
 (和志くん・・・やっぱりお姉さんに会いたいんですね)
 和志くんがこんなになるまで頑張った理由は、もちろん言うまでも無く、
 『ベスト4までに入って、お姉さんと再会するチャンスを増やすため』です。
 そのためには準々決勝で信哉さんに勝つことが必要でした。
 和志くんはそのために伊吹ちゃんのお弟子さんになったりして頑張りました。
 (『血の繋がりのないお姉さんのために―――』)
 そのことを考えるたびにわたしの心は切なくなります。
 どうしてそんな気分になるのか―――わたしは分かりませんでした。
 その理由を考えていた時に、わたしは不意に和志くんと試合前に約束したことを思い出しました。
 『兄さんに勝ったら、わたしから何か『ご褒美』あげるってことでどうですか?』
 結果的には兄さんには勝てませんでしたが、わたしとしては和志くんに『ご褒美』上げてもいいかなと思いました。
 (う〜ん、何がいいですかね〜〜〜)
 その時わたしはお昼休みの兄さんと姫ちゃんの姿を思い出しました。
 『兄さんの緊張を取るため』と言って姫ちゃんは―――
 兄さんに・・・キスをしました。
 わたしの目に和志くんの唇が写りました。
 その瞬間、わたしの心がドキドキし始めます。
 (えっ???)
 わたしは自分の心に疑問を持ちました。
 (イ、イヤだな〜わたし何考えてるんだろう?)
 わたしはその考えを頭から消そうとします。だけど・・・
 (わたし・・・和志くんだったらそういう『ご褒美』をあげてもいいかも・・・)
 そう思った瞬間、わたしは自分の顔を和志くんの顔に近づけます。
 (きっと、今わたしの顔は真っ赤になってるんだろうな・・・)
 和志くんの子供っぽい顔がわたしの目の前にあります。
 後数センチでわたしと和志くんの唇が触れ合う距離です。
 (わたし・・・ひょっとして―――)
 わたしが『あること』を考えたその瞬間・・・
 「すももちゃん〜和志くん、気がついた?」
 「!!」
 部屋の外から姫ちゃんの声が聞こえます。
 「入るよ〜?」
 わたしから返事が無かったことに疑問を持ったのか、姫ちゃんがドアを開けます。
 「・・・?どうしたの?すももちゃん?顔真っ赤だよ?」
 「えっ?な、何でも無いですよ?」
 ドアが開いた瞬間、わたしは和志くんから離れていました。
 「そう?ならいいけど」
 「何だ?和志はまだ目を覚まさないのか?」
 姫ちゃんの後ろから入ってきた兄さんが心配そうに聞きます。
 「もう、そろそろ目を覚ましてもいい頃なんだけど・・・」
 姫ちゃんの言葉に合わせるように―――
 「う、うん・・・」
 和志くんが身じろぎしてゆっくり目を覚ましました。




  俺はゆっくりと目を開ける。
 焦点が会って来て、誰がそこに居るのかだんだん分かってくる。
 「和志くん・・・大丈夫ですか?」
 そこにはすももと雄真さん、神坂さんがいた。
 (アレ・・・俺どうしたんだっけ)
 確か、雄真さんと戦ってる最中に訳分からない呪文を唱えて、龍が出たのに驚いて、
 雄真さんの方を見たら、そっちも火の鳥が出てて―――
 「そうだ!試合結果はどうなったんですか?」
 俺は慌てて起き上がる。
 その瞬間、全身の節々が痛む。
 「イテテ・・・」
 「あ〜ダメですよ〜まだムチャしちゃ・・・」
 すももが注意するように俺を介抱する。
 しかし、俺がこの状態なのに、雄真さんはピンピンしてるってことは・・・
 「そっか・・・俺、負けたんですね」
 「いや、そうじゃないぞ」
 俺の言葉を否定したのは雄真さんだった。
 「最後の魔法の撃ちあいでな、俺も和志も爆風で吹っ飛ばされて2人共場外に落ちたんだよ」
 「だから、同時優勝ってことかな?」
 雄真さんの言葉を神坂さんが繋げる。
 「そうですか・・・」
 「良かったですね。和志くん」
 すももが俺に祝福の言葉をくれる。
 その顔が何故か多少赤いのは気のせいだろうか?
 「で、和志・・・」
 「な、何ですか?」
 雄真さんの言葉にすももとの関係のことがあるので思わずビビリながら返事してしまう俺。
 「な、何もそんなに怯えるなよ。ちょっと聞きたいことがあるだけだって」
 「雄真くん、今まで散々すももちゃん絡みで怖がらせておいてそれはどうかな・・・
  すももちゃんのことが心配なのは分かるけど、和志くんは信頼出来る人だと思うよ?」
 「べ、別にそんなつもりはねーけど」
 (つーかあれで自覚無かったんですか・・・)
 俺はそう心の中でツッコんでいた。
 「で、何ですか?聞きたいことって?」
 「いや、その最後の呪文のことなんだが・・・あの呪文はお前のオリジナルか?」
 「それがよく分かんないんですよ・・・口が勝手に呪文を唱えたんで・・・」
 「お前もなのか?」
 雄真さんは不思議そうな声を上げる。
 「俺も勝手に口が呪文を動いてあの火の鳥が出たんだよ。だから和志が何か知ってるんじゃないかと思ってな」
 「そうですか・・・雄真さんは今までそんなことは無かったんですよね?」
 雄真さんが頷く。
 (ということは『俺と雄真さんが』戦ったことが原因ということになるのか?)
 だが、考えても結論は出そうに無かった。
 「とりあえず、御薙先生に後で報告しておいた方がいいんじゃないかな?」
 神坂さんの言葉に頷く俺と雄真さん。
 考えても結論が出なさそうな以上、それくらいしか出来ることは無さそうだった。
 「いや〜だけど、こんなに魔法を使うと疲れるな〜」
 「じゃあ、今日はお疲れ様パーティでも開きましょうか?」
 俺の言葉に魔法関連の話で話の輪に入れなかったすももが思いついたように口を開く。
 「あ、それいいかもね〜すももちゃん」
 「伊吹ちゃんや柊さんも呼んでですね」
 「みんなで盛大にやろうか?」
 話が盛り上がる女性陣を差し置いて、俺と雄真さんはお互いに笑いあったのだった。






  こうして、瑞穂坂学園で行われた『魔法科実技トーナメント』の結果は全国の魔法科のある学校に配信された。
 春姫の評価が関係者の間で更に上がったり、雄真や和志が注目される存在になったのは言うでもない。
 とある魔法科のある学園。
 そこにも、魔法科実技トーナメントの結果に注目している一人の少女がいた。
 ピンク色の髪を大きな白いリボンで纏めた姿がとても似合っている。
 事実、彼女は今、瑞穂坂学園で行われたトーナメントの結果をパソコンで見ているのだが・・・
 「あ〜やっぱり可愛いよな〜藤林(ふじばやし)さん。付き合ってくれないかな〜」
 「何言ってんだ。お前じゃ高嶺の花だよ」
 などと言う言葉を彼女の後ろで数人の男子生徒が囁きあっている。
 彼らだけではなく『男が10人いたら8人は振り返っている』という噂の美貌を彼女は持っていた。
 だが、噂になるほどの彼女の美貌は今、涙に暮れていた。
 最も、それは悲しみの涙ではなかったのだが。
 「見つけた―――見つけたよ―――『カズ君』」
 彼女の呟きが風に流れる。
 瑞穂坂学園・魔法科実技トーナメント・男子の部同時優勝者―――
 吾妻和志のデータ画面を彼女は見つめていた―――






                       〜第18話に続く〜


                こんばんわ〜フォーゲルです。第17話になります〜

           今回は前半・魔法絡み、後半・恋愛絡みとほぼ完全にストーリーが別れる結果に。

            前半は敵がそこそこの強さを持っていることに注目してほしいですね。

           鈴莉&伊吹という『はぴねす!』最強コンビを相手に逃げ切ってるし・・・

             『後継者』・『神の力』という言葉にも繋がりが出てきました。

             後半はすももがメッチャ和志を意識し始めているという点ですね。

                    春姫の行動に影響されてるし(笑)

           このSSで恋愛方面を注目している人は最後がスゴイ気になるでしょうね。

               次回は新展開ですももと和志の関係が再び動き始めます。

                     それでは、次回もお楽しみに!!


管理人の感想

今回はフォーゲルさんの仰る通り、見事にシリアスパートとラブラブ(?)パートにわかれてましたね^^

まずは前半。鈴莉の研究室に忍び込み、部屋を漁る謎の侵入者。

それを察知した鈴莉が、真っ向から向かう合う形になるのですが。

侵入者のレベルもなかなかに高いようで。後から参戦した伊吹を含めての2対1の局面でも逃げ切るとは・・・。

そして徐々に明らかになっていく謎。勘の良い人なら、この話で何となくストーリーは見えてきたのではないでしょうか?

そして後半。いきなりの和志とすもものベッドシーン(違)

(わたし・・・和志くんだったらそういう『ご褒美』をあげてもいいかも・・・)

・・・らぶらぶ?いいえ、ケフィアです(壊)

やはり想いは、和志よりすももの方が一歩リードって感じですね。もうほとんど自覚している様子ですし。

そして最後に出てきました!和志の姉的存在、藤林渚。

次回以降、彼女がどのように絡んでくるのかにも注目ですね^^

それでは、18話もお楽しみに〜。



2007.12.8