『解かれた魔法 運命の一日』〜第16話〜





                                     投稿者 フォーゲル




  “ワァー!!ワァーー!!”
 体育館の方から歓声が聞こえて来る。
 今は、トーナメント女子の部決勝の神坂さんVS柊さんの決勝戦が行われているはずだった。
 だが、俺はその決勝を見ることなく、学園の中庭に来ていた。
 その理由は・・・
 『和志・・・大丈夫?』
 レイアが心配そうに声を掛ける。
 「ああ・・・何とかな」
 俺はそう言いながら白と青をベースにした自分の魔法服の胸元を開ける。
 空色をしたレイアと合わせて、『水』をイメージさせる服だ。
 その開けた胸元の鎖骨の辺りが赤く腫れて、ズキズキと痛みが増していた。
 さっき信哉さんとの試合で『風神雷神』が当たった場所だ。
 準決勝は、痛み止めの魔法を掛けて、何とか誤魔化したが・・・
 その魔法も効かなくなるほど、痛みが増して来ていた。
 (こんな痛みを抱えたまま、戦えるほど、雄真さんは甘い相手じゃないってのは分かってるけど・・・)
 ここまで来た以上、棄権負けはしたくなかった。
 ダメ元で俺は、回復魔法を使う。
 骨折してるかもしれないほどのケガが短時間で回復するとも思えなかったが・・・
 意識を集中させて、回復魔法を試みる。
 「どうしたんですか?」
 聞き覚えの無い声がしたのはその時だった。
 声の方を見ると、20代半ばくらいのメガネを掛けたプラチナブロンドの女性がそこにいた。
 「い、いえ・・・何でも」
 だが、俺の言葉に不審な点を感じたのかその女性は俺の方に近寄ると、胸元を覗き込んだ。
 「ケガしてるじゃないですか?」
 「た、大したことは無いですから」
 その女性はしばらく考えた後、虚空に手をかざした。
 『エイル!』
 女性の叫びと共に現れたのは―――
 (マジックワンド?ということは彼女も魔法使い?)
 その女性は取り出したマジックワンドを俺のケガの場所に当てて、呪文を唱える。
 『ライズ・サイリアス』
 その言葉と共に、俺のケガの場所から痛みが消えて、ケガが治っていた。
 「これで大丈夫ですよ」
 「あ、ありがとうございます」
 (凄いな・・・)
 通常、体力の回復くらいならともかく、ケガを―――それも他人のケガを治すのは、大変に困難なのだ。
 人間は魔法使いじゃ無くても、魔力を持っていてその波動は人それぞれで違う。
 他人のケガを治すということは、魔力で他人の魔力に介入して、かつその人間と魔力を同調させなければならない。
 ましてや、骨折しているかも知れないほどのケガを直すとなると、かなりの魔力が必要のはずだ。
 「では、私はこれで」
 そう言って彼女は立ち去ろうと、校舎の角を曲がった。
 「ま、待って下さい!」
 俺は彼女の後を追って曲がったが、もう彼女の姿はどこにも無かった。
 (親切な人もいるんだな・・・)
 その時、体育館の方から一際大きな歓声が聞こえた。
 (神坂さん達の試合、決着付いたのかな?)
 俺は自分の試合が近いことを感じ、体育館に戻った。




 
 「ふう・・・」
 彼のケガを回復させた後、私は転移魔法を使って移動して来た。
 「計画通りに済んだのか?綾乃(あやの)?」
 「ええ、何とかね」
 自分の名前を呼ばれた私は声の方に返事をする。
 声の主はその褐色の肌をした顔には似合わないような表情をしながら呟く。
 「しかし、あんなガキが本当に『後継者』なのか?とてもそうは見えないが・・・」
 どうやら、魔法を使って様子を見ていたようだ。
 「人は見かけによらないと言うわよ?」
 「お前は、どう思うんだ?『チュール?』」
 彼は自分のマジックワンドに問い掛ける。
 『・・・あの少年の奥底に流れる魔力には我と―――いや、『我ら』と同じモノを感じるが、確証はまだ持てん』
 「いずれにせよ、彼の次の試合で分かるわよ」
 「そうなったら、俺の出番か?」
 「ええ、頼んだわよ。義人(よしひと)。侵入方法はあなたに任せるから」
 「分かったよ。じゃあ計画がうまく行ったら合流して一旦引くってことでな」
 「了解」
 義人は呪文を唱えると『チュール』と共に消えた。
 (次の試合で『彼ら』の魔力がぶつかりあえば―――)
 私はそんなことを考えていた。




 
 
  俺が体育館に戻ると丁度神坂さんが場外に落ちた柊さんに手を伸ばしているところだった。
 (女子はやっぱり神坂さんか・・・)
 俺がそんなことを考えてると―――
 「あ〜!和志くん!どこに行ってたんですか?」
 俺の姿を見つけたすももが近寄って来る。
 「一緒に姫ちゃんの試合見ようと思ってたのにどっか行っちゃうんですから・・・」
 「ゴメン、ゴメン・・・」
 文句を言うすももに平謝りに謝る俺。
 「しかし、なんと言うか・・・」
 俺は体育館の雰囲気を感じて戸惑っていた。
 トーナメントも後は男子の決勝・俺と雄真さんの試合を残すだけだ。
 「何か、女子の比率が多いような・・・」
 観客の男女差が明らかに女子に偏っていた。
 元々、魔法科は女子の方が人数多いってのもあるかも知れない。
 だけど・・・
 「やっぱり、雄真さん目当ての女子が多いのかな〜」
 いくら、神坂さんという恋人が居るとはいえ、雄真さんイケメンだし。
 (万が一、俺が勝っちゃったりしたら『空気読め』と思われるんだろうか・・・)
 俺が若干ヘコんだその時だった。
 「そんなことないんじゃないでしょうか」
 「あ、高峰さん、どうしたんですか?」
 魔法服を着込んだ高峰さんがそこには立っていた。
 「雄真さんと和志さんの決勝戦は私が審判を勤めさせて頂くことになりましたので、万全をと思いまして・・・」
 「って・・・御薙先生はどうしたんですか?」
 「御薙先生は、用事が出来たそうです」
 「そうですか・・・よろしくお願いします」
 「用事っていえば、伊吹ちゃんも用事出来たとかでさっきから姿が見えないんですよね」
 すももが不思議そうな感じで言う。
 「で、高峰さん。さっきの『そんなことない』ってのはどういう意味ですか?」
 「単純に『和志さんを応援している女性も多い』のでは無いかと」
 「そ、そうですか?」
 「和志さんも雄真さんから教えて貰っておいた方がよろしいのでは?」
 「何をですか?」
 「女性への対応の仕方です」
 「そりゃ、雄真さんは今でも告白されたりしているみたいですからね。でも俺には必要無いですよ」
  そんな単純な人達ばかりだとも思えないし。
 「私は和志さんにも必要なことだと思いますが・・・」
 俺の顔をジッと見ながら言う高峰さん。
 (・・・そんな気は無いとはいえ高峰さんみたいな美人に見つめられるとテレるな・・・)
 「和志くん・・・鼻の下が伸びてますよ」
 気が付くとすももがジト目で俺を見ていた。
 「べ、別にそんなことは・・・」
 「そんなことあります!」
 俺の抗議を完璧にシャットアウトするすもも。
 (つーかそんなに怒らなくても・・・)
 「お2人とも相変わらず仲がよろしいですね」
 笑いながら言う高峰さん。
 「べ、別にそんなことは・・・っていうか高峰さん、遊んでるでしょう!?」
 よく考えると例の『噂』が高峰さんの耳に入っている可能性は高かった。
 「さて、私はそろそろ行きます。和志さん、時間通りに来て下さいね」
 俺のツッコミには答えず、高峰さんはそのまま立ち去っていった。
 そして、その後には・・・
 「じ〜〜〜〜〜っ・・・」
 俺をジト目で見つめ続けるすももが残されたのだった。





  その後、微妙に機嫌が悪くなったすももをどうにかフォローし、俺は試合場に向った。
 すももは『伊吹ちゃんが見つからないから、姫ちゃん達と一緒に観客席で見てます』と言っていた。
 (最も、雄真さんが相手じゃ応援は期待出来ないけどな)
 俺は何故だか『ハァ〜〜〜ッ』とため息付きたい気分になった。
 『それでは、雄真さん、和志さん、試合場へ上がって下さい』
 高峰さんの声に答えて俺は試合場に上がる。
 「和志・・・よろしくな」
 「は、はい」
 俺は雄真さんと試合前の握手を交わす。
 (お、雄真さん、怒ってないのかな)とか思ったのだが・・・
 “ギュゥゥゥゥッ!!”
 雄真さんは俺の手を『思いっきり』握って来た。
 (い、痛い、痛い〜〜〜!)
 そして雄真さんは、俺の耳元で囁いた。
 「さっきまで、すももと仲良くしてたみたいじゃねーか・・・試合前に随分と余裕だな?」
 「え、え〜とですね・・・」
 俺は思わず高峰さんを見る。
 ニコッとお茶目に笑う高峰さん。
 (雄真さんに余計なことを吹き込みましたね〜〜〜!!)
 ムチャクチャ抗議したかったが、状況がそれを許さなかった。
 「それでは・・・タマちゃん!!」
 『わかったで〜姉さん』
 試合場の上空でタマちゃんが爆発する。それが俺と雄真さんの試合の始まりだった。





  俺から間合いを取り呪文を唱え始める雄真さん。
 すかさず、俺も全く同じ行動を取る。
 そして、先に呪文が完成したのは雄真さんだった。
 『ディ・アダファルス!!』
 (短縮詠唱?だけどそれじゃ威力が・・・)
 だが、それは俺の甘い考えだった。
 (・・・!!)
 俺はとっさの判断で身を交わす。
 “ズガァァァン!!”
 着弾した魔法は普通に呪文を唱えた時となんら変わらなかった。
 「和志・・・どんどん行くぞ!!」
 まさか、雄真さん・・・魔力が上がってる?
 (クソ〜まさかすももと仲良くしてたことがこんなところで影響与えるなんて・・・)
 シスコンパワー恐るべしという感じか?
 『・・・ディ・アストゥム・アダファルス!!』
 今度は数発に別れた炎が俺を襲う!!
 『ウェル・シンティア・レイ・フェニス・ダグ・ウェルド!!』
 何発かは避け、残りの何発かは俺が唱えた防御呪文で弾き散らす。が・・・
 “ズズズ・・・ンッ!!”
 やっぱり威力が上がってるせいか鎖状の障壁を通して威力が伝わる。
 (あんまり長くは持ちそうにないな・・・)
 短期決戦を考えながら、俺は反撃に転じる。
 『ウェル・シンティア・レイ・フェニス・ラル・フェステル!』
 魔法弾が雄真さんに向って飛んで行く。
 『エル・アムスティア・ラル・セイレス・ディ・ラティル・アムレスト!!』
 雄真さんの眼前に現れた光の壁が俺の魔法弾を消滅させる。
 全てが消えた後・・・さらに雄真さんに魔法弾が迫る!
 連続で詠唱していた『ラル・フェール』単発の魔法弾だ。
 『ディ・アストゥム!』
 だが、それも読みきったのか、雄真さんは再詠唱した防御呪文で掻き消す。
 「和志、お前が考えそうなことを、俺が考え付かないと思ったのか?」
 笑みを浮かべながら言う雄真さん。
 「だけど、伊吹が教える気になっただけあって、なかなかやるな」
 「あ、ありがとうございます」
 「だが、勝負は別だぞ!」
 そう言ってマジックワンドを構える雄真さん。
 「望むところです!」
 俺達はそろって、呪文を唱え始めた。





  兄さんと和志くんの戦いは一進一退になっていました。
 魔法に関しては素人さんのわたしでも、2人の戦いは見てて『スゴイ・・・』と思いました。
 だけど、わたしとしては『2人ともケガしないで帰って来てほしい』それだけ考えていました。
 「へ〜和志もなかなかやるじゃない」
 「そうだね。私も吾妻くんがここまで戦えるとは思ってなかったよ」
 柊さんと姫ちゃんが関心したように言いました。
 和志くんが褒められるとわたしも嬉しくなります。
 「雄真くんもそうだけど、吾妻くんはよっぽど努力したんだね」
 「そうですよ〜わたしも知ってます」
 和志くんが毎日伊吹ちゃんのところに通いつめていた努力をわたしは見ていました。
 魔法のことを熱心に勉強している和志くんは、少し・・・カッコ良かった。
 「だけど・・・もう和志は限界が近づいて来てるわね」
 「えっ?」
 柊さんの言葉にわたしは思わず聞き返します。
 「すももちゃんには分からないかもしれないけど、あたし達魔法使いにはその魔法使いが使う魔法の『構成』が見えるのよ」
 「それで、その魔法使いの力量とかはある程度分かるようになってるんだけど・・・」
 柊さんの言葉を姫ちゃんが繋げます。
 「吾妻くんの魔力構成がだんだん雑になって来てる・・・多分体力も魔力も限界まで来てるんじゃないかな?」
 姫ちゃんのその言葉を肯定するように―――
 ”ズガンッ”
 小さな爆発音と共に兄さんの魔法に吹き飛ばされた和志くんがわたし達の目の前に倒れこみました。
 何とか、動こうと和志くんはもがいています。
 「マズイわね・・・次に雄真の魔法が当たったら和志の負けよ」
 柊さんの言葉を聞いたとたん、わたしは立ち上がって思わず叫んでいました―――





  ”ズガンッ”
 何とか防御したものの俺は爆風で吹き飛ばされて試合場の床に転がる。
 (だ、ダメだ・・・もう体力も魔力も・・・)
 雄真さんは俺を倒すために呪文を唱え始める。
 (こ、ここまでか・・・)
 俺が諦めかけたその時―――

  『頑張って下さい!和志くん!!』

 その声が聞こえた瞬間―――
 俺の動かないはずの身体が動いた。
 何とか、雄真さんの魔法を交わし俺は何とか間合いを取る。
 俺は声の主を探した。
 そして―――
 胸の前で手を組み、祈るような表情で俺を見ているすももの姿が目に入った。
 自分の身体に少しだけ気力が沸いて来るのを俺は感じていた。
(ありがとう・・・すもも)
 俺は心の中で感謝しながら、再び雄真さんに向き直る。
 雄真さんはすかさず次の呪文を唱え始める。
 しかし、状況は変わった訳じゃない。
 相変わらず俺が不利な状況は変わっていなかった。
 (どうする・・・?)
 その時―――
 ”ドクン”
 俺の身体に変な感覚が生まれた。
 例えるなら『身体と魂が引き剥がされる』ような感覚だ。
 そして―――
 『ウェル・シンティアス・レイ・フェニルート・・・』
 「!!」
 俺は驚愕した。
 自分の意思とは関係無く、『口が勝手に』俺の知らない呪文を紡いでいく。
 『ディアルス・シンアルド・オル・ドルシアーニス!!』
 俺の知らない呪文が完成した。
 その瞬間―――
 俺の身体から、全ての魔力が根こそぎ持っていかれたような感覚を覚え、俺は自分の頭の上を見た。
 そこには、まるで全長5Mくらいの『青い龍』のような形をした『モノ』がいた。
 (な・・・)
 俺は驚きながら雄真さんの方を見て―――さらに驚いた。
 雄真さんの頭上にも同じ大きさくらいの『火の鳥』のような『モノ』が出現していた。
 何となく、何となくだが―――
 俺の『青い龍』と雄真さんの『火の鳥』がぶつかったらマズイような気がした。
 何とか、その『龍』をコントロールしようとする。
 しかし、俺の意思とはうらはらに『龍』は『火の鳥』に向っていく。
 『龍』と『火の鳥』がぶつかりそうになったその時。
 「いけない!タマちゃん!!」
 『あいあいさ〜』
 2つの『モノ』の間にタマちゃんが割って入り、爆発した。
 その爆風に吹き飛ばされながら、俺の意識は闇に落ちていった―――





                       〜第17話に続く〜



              こんばんわ〜フォーゲルです。第16話になります。

           和志の魔法に関して『謎に迫る』どころか返って謎が増えたような(汗)

           『はぴねす!』で召喚系(?)の魔法は珍しいな〜とか思っています。

       以前出てきた謎の2人組も動き始めましたし、こちらの動きも注目して頂けると嬉しいです。

        恋愛面では、大分すももが和志に惹かれてきているな〜とか思って頂けるといいなと。

           つーか雄真との試合で和志を応援している時点で(ry)って感じも・・・

                      それでは、失礼します〜


管理人の感想

とうとう始まりました、決勝戦!

女子の部は順当に春姫が優勝、杏璃が準優勝という形になりましたが、注目の男子の部はというと。

・・・ついに雄真のシスコンパワーが爆発しましたねぇ^^;

さっきまですももと仲良くしてたみたいじゃねーか・・・ってどこの極道だよっ!(笑)

そしてあり得ないことに、普通に魔力も上がってるし。このSSの雄真くんは、嫉妬心旺盛のようで。

そしてシリアス部分も出てきましたねぇ。和志に迫る闇。

最後に和志が放った魔法に関係あるのでしょうか?もちろん、雄真もということになりますが。

火の鳥と龍。まあおそらくというか、ほぼ間違いなく四神の朱雀と青龍でしょうね。

それがなぜ和志と雄真に発動できたのか。フォーゲルさんは召喚系の魔法と言っているようですが・・・。

今後の展開に、目が離せませんね!



2007.11.27